ナンガにモンベル…寝袋の違いの見分け方。温度表示だけで決めると失敗してしまうワケ【みゆキャンプ】
テント泊の満足度を左右する「寝袋」。気温や体格、体質にあったものを選べば、そのぬくもりは多幸感。それだけに、知識がないまま買うのは避けたいアイテムです。アイドルグループNGT48のメンバーで、女子キャンパーの藤崎未夢さん(20)は今回、大きさやダウンの質の違い、メーカーごとの特徴など、気になっていた疑問について、寝袋選びのスペシャリストに根堀り葉掘り聞きました。
寝袋の違いの見分け方を徹底取材
約40種類の寝袋を販売するWEST
今年も秋までキャンプを楽しんだNGT48の藤崎未夢さん。これまで未経験だった冬のキャンプに挑戦しようかと考えていたときに、気になったのが寝袋。調べれば、ナンガ、モンベル、イスカ…、と多くのメーカーがあり、同じ温度帯のものでも違いがよくわからずモヤモヤ…。
そこでやってきたのが、新潟のアウトドアカルチャーの発信拠点である大型アウトドア専門店「WEST(ウエスト)」の長岡店。2019年4月にオープンしたばかりの店舗で、カフェ併設のおしゃれな雰囲気ながら、寝袋は約40種類を販売する本格派のショップです。
寝袋知識が豊富なプロバイヤー加藤さんのもとへ
藤崎さんに寝袋について教えてくれたのが、WEST本部チーフバイヤーの加藤俊さん(41)。15歳から釣りをはじめたのをきっかけに、キャンプや登山を楽しみ、アウトドア歴26年。新潟有数のアウトドアギアに造詣が深い一人。寝袋の最新知識も豊富で、気さくに相談にのってくれます。
実はこんなにあった選び方のポイント
まずは寝袋の形状から解説
藤崎:寝袋がこんなに並んでいるのはすごいですね。ますますどれを選んだらいいのか、わからなくなってしまいそうです。
加藤:では、まずは寝袋にどんな種類があるのか解説しますね。大きく分けてあるのがこの2つ。
・封筒型
・マミー型
封筒型は家の布団のように違和感なく寝られますが、肩から冷気が入ってくるなど、すき間が多いから、寒いときに使うのは避けてほしいですね。
藤崎:それでは、この時期はマミー型一択という感じですね。こちらもデメリットはあったりするのですか?
加藤:頭まですっぽり覆うマミー型は慣れない人にとっては、拘束具のような感じに不快に感じてしまいます。後で説明しますが、寝相が悪い人は、モンベルのようなストレッチの効くタイプなら、違和感はやわらげられます。意外と閉所恐怖症の人もマミー型は気をつけたほうがいいですよ。
寝袋の温度の表示と、季節ごとのスペックのめやす
▲ダウンを使ったダウンハガー#3(右)と化繊のバロウバッグ#3(左)の大きさの違い
藤崎:値段も1万円台から5万円を超えるものまで、さまざまな価格のものがありますね。やはりなるべく高いのを選んだほうがいいのでしょうか。
加藤:まず知ってほしいのが、「あたたかさ=値段の高さ」ではないということです。
藤崎:それはどうしてですか?
加藤:生地が薄くて丈夫なものは一般的に作られていないアウトドア専用の素材になるので、それだけ高くなってしまうと考えてください。大量に生産できる化学繊維の綿か、コンパクトになる天然のダウンかでも値段はもちろん、異なってきます。つまり、「生地の軽さ+丈夫さ=値段の高さ」となっていくわけです。
藤崎:軽くてコンパクトになるほど、値段が上がっていくわけですね!化繊の寝袋は1万円台が多くて、車で移動するキャンプには良さそうです。
加藤:それが実は一概にもいえなくて、化繊だと大きさがこんなに大きくなってしまうので、家族2〜3人でキャンプとなると、かなりの荷物になってしまいます。そこで小さくなるダウンが重宝します。ただ、それだけ価格が高くなってしまうので、そこは車の大きさや家族構成、予算によって選んでいく必要があります。
温度表示を過信しない方がいいワケ
コンフォートを基準に
▲快適温度0度までのモンベルのダウンハガー800#2
藤崎:使用できる温度帯の表示もいろいろありますよね。
加藤:ひと昔前の寝袋は人間のテスターの主観にたよっていた部分があって、登山をする人と、オートキャンプだけする人で感じるマイナス10度は異なります。そこで、公平なジャッジをするために、国内メーカーでも欧州の基準(ユーロノーム)が一般的になってきました。
【コンフォート】女性でも快適にちょうどよく使える。
【リミット】寒さを感じながらも使える。
【エクストリーム】限界値。死んでしまうかも。
この3つが選ぶときに参考にすべき基準です。
藤崎:エクストリームで選ぶことはなさそうですね…。
加藤:それは絶対にやめましょう(笑)。基本的にはコンフォートを基準に考えるようにしてください。ただし、表記に従うと、やはり体感と違うので注意が必要です。欧米人の感覚を基準にしたテストでは多くの日本人には当てはまらないことが多いので、寒さに自信がないなら、「コンフォート+5度」をめやすに考えてみるといいでしょう。寒がりな女性であれば、使いたい気温の+10度でもいいぐらいです。
なによりも「この寝袋はやっぱり寒かった」となってしまうと、また違うのを買うために数万円の出費が増えてしまうので、寝袋はあたたかいものを選んでおいて損はありません。暑くてもサイドのジッパーなので、調整はできます。
軽くてコンパクトなダウンに軍配
ダウンがいいワケ
藤崎:寝袋はダウンがいいというのはなんとなく分かるのですが、どうしてなのでしょうか。
加藤:それはコンパクトさと暖かさですね。これだけアウトドア素材が開発されていても、寝袋に使える軽くて、あたたかさが求められる素材は、現代の人間の科学をもってしてもまだあらわれていません。一言にダウンと言っても、とれる毛や部位によって機能も違います。風切羽は固くてダウンには使えないなど、細くて柔らかい毛は全身からとれるわけではないから、希少部位になるわけです。
藤崎:化繊に比べて、ダウンとなるとお値段が少々高くなるイメージですよね…。
加藤:いい羽は機械でとれるわけでなく手積みの作業になるので、当然高くなってしまいます。牛肉の最高等級A5ランクみたいに高品質のものでは、繊細で柔らかな毛のみを集めるのでより高くなります。その品質を示すのがFP(フィルパワー)というダウンの性能を示す表記にも関係してきます。
FPフィルパワーって何?
藤崎:たしかに、寝袋のパッケージをみていると、FPという表記がありますよね。
加藤:正確にいうと、FPはダウンに重さをかけたときの復元力のことをいいます。つまり、反発が強いということはそれだけ膨らむということなので、同じ100gでもよりあたたかくなるということになります。
例えば、FP800は、1オンス(28g)の羽毛が800立方インチふくらむということになるわけです。より数値が大きければ大きいほど、軽くてあたたかくなるということですね。
藤崎:650や800など、いろいろな数値がありますけど、実際にキャンプではどのぐらいのものを使うのがいいのですか。
加藤:だいたい国内で売られているダウンのFPは650〜900ぐらい。寝袋を持ち運んで行動しないオートキャンプなら650程度でもいいのですが、それはダウンでは重たいものになります。もちろん、価格も安くなりますが、収納サイズも化繊に近いものになります。バイクツーリングや山でテント泊となると、もっと上のものを選んでほしいですね。軽量性が必要な登山は基本は800から選んでほしいですね。
ダウンだけで判断してはまる落とし穴とは?
藤崎:なるほど、じゃあFPと羽毛の量をめやすにすれば、あたたかいのが選べそうですね。
加藤:実はそこに落とし穴があるんですよ。
藤崎:えっ、どういうことでしょうか?
加藤:そこで重要なのが、フィット感です。この唇みたいになっているところをリムというのですが、昔はただ紐ですぼめるものだけで、顔あたりが悪く、冷気が入ってきやすくなっていました。リムにダウンが入っているものを選ぶと、より顔に密着するようになって、保温性能が高まります。
藤崎:温度表示だけで選ぶと、本当にわからないものですね。
ナンガ、モンベル…。大手メーカーの最新事情
ナンガは防水に強みあり
藤崎:SNSでもナンガの寝袋を使っている人をよく見ます。
加藤:ナンガは高品質ダウンを手掛ける国産メーカーです。代表的なものとして、防水透湿性素材を表生地に使った
オーロラがあります。なので多少の水滴でも、シュラフカバーもいりません。ただ、防水性のある生地は、体から出る湿気で「蒸れる感じがする」という意見があります。
藤崎:人間も寝ているときにかなりの汗をかくといいますもんね。
加藤:オートキャンプではあまり関係ないかもしれないですが、登山で冬に連泊する場合には内側が結露してしまう可能性があります。厳冬期にシュラフカバーを使うと結露したカバーの内側が凍ることがあるぐらいなので、人間の身体から出る見えない湿気には注意が必要です。
藤崎:暖房が使えるオートキャンプでは想像できない世界ですね…。
加藤:オーロラの次にナンガから登場したのが、
UDDバッグ。
ダウン自体に超撥水加工を施したことで、水が染み込んでもロフト(かさ)が落ちず、保温力が落ちることがありません。
藤崎:ダウンはやはり濡らすとよくないんですね。ナンガではない場合は、水や汚れを防ぐためのシュラフカバーも必要なのでしょうか。
加藤:そもそもオートキャンプではテントに水が入ってくることはまれだと思いますし、料理もテントの寝室部分で食べることもないので、汚れる心配はありません。この部分は寝室が狭く、結露のしやすい山岳テントでなければ、気にする必要はありません。
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ナンガ公式サイトを見る ストレッチ性と寝心地はモンベル
藤崎:やはり大手のモンベルからはいろいろな寝袋が出ていますね。
加藤:モンベルは創業のときから寝袋を開発しているだけあって、寝袋には力が入っています。ハンカチを伸ばすとわかると思うのですが、縦、横にひっぱってもあまり伸びないですが、ななめだと伸びますよね。モンベルのダウンハガーは、ステッチ部分に倍ぐらいに伸びるゴム紐のような素材を使い、さらに生地の繊維の方向をななめにすることで、フィットするけど、窮屈でもないストレッチ性を出しています。あぐらをかいたり、体育座りができるので、テント内で寝袋にくるまってくつろぐ場合には重宝します。
藤崎:そういえば、ほかのブランドのFPとダウンの量がありますけど、モンベルは、ダウンの量が書いていませんね。
加藤:リムの部分や、
ストレッチ性のある生地を使うことでより体に密着し、デッドスペースをなくすことで、暖かさを実現しているのは、さすがモンベルです。だから、ダウン量を判断材料にしないために、公表していないと聞いています。
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公式サイトの寝袋ページを見る コスパ、機能に優れたSEA TO SUMMIT(シートゥサミット) に注目
▲注目の寝袋SEA TO SUMMIT「アルパインApⅡ」
藤崎:今回、撮影で使ったSEA TO SUMMIT(シートゥサミット) の寝袋もよさそうでした。
加藤:オーストラリアのアドベンチャーレース向けのブランドで、基本はUL(ウルトラライト)向きのアイテムが多いのが特徴です。この快適温度−12度のアルパインApⅡは「850+」という表記になっています。
藤崎:なぜ「+」がついているのでしょうか。
加藤:いい質問ですね。検査をかけると最低ラインが850、運がいいとそれ以上の数値が出るようなのです。値段も普通の850と変わらないので、コストパフォーマンスはいいですね。輸入代理店のロストアローが頑張っていて価格を抑えているので、個人的に私も買ってしまったぐらい注目の寝袋です。
最新機能を詰め込んだニーモ
藤崎:ニーモもテントはキャンプ場でもだいぶ見るようになりましたね。
加藤:アメリカのブランドで、国内の老舗にはない最先端の取り組みをしています。オートキャンプではほとんどオーバースペックになると思いますが、寒がりさんにおすすめはソニック-20。下限温度-29度を誇るだけあって、各所に冷気が入らないようにする機能がついています。
藤崎:首元には、輪みたいのがついていますね。
加藤:顔の部分をパスした冷気をさらに、ここでブロックする仕組みです。さらに小さなポケットがついていて、携帯が寒さでバッテリーがなくなってしまうのを避け、凍らせたくないコンタクトレンズを入れるポケットにもいいですね。
藤崎:お腹の部分に2つジッパーがついています。
加藤:暑かったときに簡単に温度調節ができるようになっています。ただそれだけ、ほかの大手ブランドより1割程度重くなっています。素材でいったら、ザ・ノースフェイスやマウンテンハードウェアなどもかなりいいものを作っていますが、コストパフォーマンスで考えると、本日紹介した国内外のブランドが良い選択肢になるかと思います。
知っておきたい寝袋のあわせ技
シュラフカバーよりシーツが重要!
加藤:シーツはモンベルなど各社出ていますが、特におすすめはSEA TO SUMMITのリアクターシリーズ。5000円〜10000円ほどのものがあって、これで温度をプラスに調整できる、汚れが防止できます。家のお布団を1カ月使っても、洗濯している人はほとんどいないと思います。それと同じで、寝袋も正直、数回使った程度で洗濯するのは手間です。そこでシーツを使えば、汗や皮脂汚れを防止でき、洗濯の手間から解放されます。
藤崎:暖かくなった時期でも、ちょっと寒いなというときに重宝しますね。
加藤:女性は足先が冷える人が多いと思うので、寝袋にダウンシューズを追加するといいと思いますよ。モンベルのダウンシューズもお手軽価格なので、おすすめです。
寝袋のしまい方と保存方法
藤崎:そういえば、いつも寝袋がうまくしまえないのでが、正しいしまい方はあるのでしょうか。
加藤:工場から出荷された状態では二つ折り、三つ折りになっているのですが、使い終わった後は足の先を持って、どんどんぶっこんでいきます。これが一番入るし、何よりも早いです。ただ、帰ってそのままにしないのがポイントです。
藤崎:テントは干したりしますが、寝袋はそのままにしがちですよね。
加藤:寝袋は人間から出る蒸気で湿気をおびた状態になっています。使ったのをそのまま入れるのは、濡れた頭に帽子をかぶるようなものです。なので、使用後は家でしっかり陰干しすることをお忘れなく。除湿機をかけたりしながらして一晩干せば、綺麗に湿気が抜けてよくなります。
そのまま収納袋に入れると、羽毛がおしつぶされたままのストレスのある状態なので、大きさが半分から3分の1ぐらいになるストレージバッグを使いましょう。メーカーによってはもともとついているものもありますが、洗濯ネットでもかまいません。
藤崎:帰って片付けるまでがキャンプ。この一手間は忘れないようにします!
取材を終えて
私の家族でのキャンプはいつも夏の暑い時期に行っていたので、寝袋を使う機会も少なく、肌寒く感じたときに封筒型の寝袋を使う程度でした。
今回寝袋について詳しく教えていただき、こんなに奥が深いとは知りませんでした!!
寝袋を選ぶうえでの注目すべきポイントがいくつもあって、単に価格や大きさだけで判断するのではなく、何の条件を優先して考えるかや、使用する場所などによって細かく判断する必要があると感じました。
それぞれのメーカーによって特徴があり、様々な工夫がされているからこそ、しっかりと見極めて、快適な睡眠ができる自分にぴったりの寝袋を見つけたいと思いました!
NGT48藤崎未夢さん プロフィール
キャンプ好きの両親の英才教育を受け、幼少期からキャンプを楽しむ。父親だのみのキャンプから脱却し、一人でもキャンプができるようになるため、県内産のアウトドアギアを集めながらキャンプを勉強中。アウトドア検定3級。お気に入りのキャンプ場は、新潟県三条市にあるスノーピークヘッドクオーターズキャンプフィールド。新潟市出身。2000年11月17日生まれの20歳。愛称みゆみゆ。
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