薪の種類や焚き火に必要な量、調達方法を知ろう【日本ブッシュクラフト協会理事監修】
日本ブッシュクラフト協会理事・川村知義さんの監修のもと、薪の種類や選び方、購入できる場所など、基礎的な知識を解説していきます!薪についてより多くの知識を身につけて、安全かつ楽しく、火をのんびり眺める時間を楽しみましょう。また、薪の知識とともに、おすすめの薪割りアイテムや収納グッズも一緒に紹介しているので、購入時の参考にどうぞ。
薪の選び方
いざ自分で薪を調達するとなると、どこから手をつければいいのか迷ってしまいます。薪を種類分けする際に注目すべきは、薪の太さと薪の材質(木の種類)の2点。今回は、この2点について詳しく解説します。
薪の種類
薪には、針葉樹と広葉樹の2種類を使用するのが一般的です。薪の材質の特性に合わせてた使い方を知っていると、なかなか火がつかなくて苦労したり、無駄に多くの薪を使ってしまったりといった失敗が減ります。
- 針葉樹
【見分け方】葉の形が針のように尖って細い木本。
【代表種】スギ、ヒノキ、松など。
【特徴】比較的軽く、柔らかいので割れやすい。油分を含むため燃えやすく、短時間で燃え尽きる。
【使い方】細かく割って焚き付けにすれば、素早く大きな火を得られる。
- 広葉樹
【見分け方】葉が人のてのひらのように大きく広がる木本。
【代表種】ケヤキ、クヌギ、カシ、コナラ、白樺、ブナ、サクラなど。
【特徴】比較的重く、硬くて割りにくい。目は詰まっているため燃えにくく、長時間燃焼する。
【使い方】焚き火を持続させるために使える。大きな火になりにくく、調理などに使用する。
薪の太さ
燃焼時間や温度を調整するために、3種類の太さの薪を用意するのがベストです。
- 細い薪(焚き付け用)…1~2cmほど。割りばし、鉛筆程度の太さ。
- 中くらいの薪(火の大きさの調整用)…3~4cmほど。ペットボトルのふたや、親指と人差し指で握れる程度のサイズ。
- 太い薪(長時間の燃焼用)…5cmか、それ以上。ロール状のキッチンペーパー程度の大きさ。
いきなり太い薪を投入してしまうと火が消えてしまうため、中くらいの薪から入れて徐々に太い薪を追加していきましょう。
薪の乾燥状態
販売品の薪を購入した際、小さな虫が潜り込んでいたり、ゴミやカビといった汚れが付着している場合があります。保存状態が悪く、上手く乾燥できてないことが原因で起こりがちです。また、広葉樹や針葉樹、どちらも十分に乾燥させていないとススが発生し、着火しにくくなります。
そのことから、伐採、剪定材を入手する場合はもとより、販売品であっても乾燥状態を確認してから購入するのは大切です。乾燥した薪を見分けるには、見た目以上に軽く、薪同士の断面を叩くと、「カンカン」という高い音が鳴るかがポイントです。
焚き火に向いている木【針葉樹】
針葉樹が薪になったときの最大の特徴は、一気に燃え上がること。樹液が多いためよく燃えるので、最初の焚き付け用に最適。また、広葉樹と比べると木の密度が低く密度が低いので、薪割りしやすいです。
杉(スギ)
火付きが早く、火力も強いため、キャンプやアウトドアに最適。柔らかいため材質なので薪割りしやすいのもうれしいポイントです。また、杉に限ることではありませんが、伐採や製材直後の木の場合はしっかり乾燥させる必要があります。今回紹介している商品は、良く乾燥した国産天然杉です!購入後、乾燥状態は良好か、自分の目で確認しましょう。
松(マツ)
油分が多いので焚き付けしやすく、キャンプやアウトドアでの火起こしに好まれています。火力がとても強いので、調理に最適です。この薪は半乾きの状態で届くため、日当たりと風通しの良い屋外でしっかりと乾燥させてから使いましょう。
桧(ヒノキ)
スギよりも乾燥が早く、火付き・火持ちしやすいので薪に使いやすいです。しかし、有機性の接着剤が使われている場合、燃焼すると有害な煙が出てしまうので、使用する際は周囲に十分配慮しなければいけません。
焚き火に向いている木【広葉樹】
一般的に広葉樹が一番薪に使われています。薪に使用した場合の魅力は、針葉樹と比べて燃焼時間が長く、熱量が強いこと!薪ストーブの燃料にぴったりです!
楢(ナラ)
火持ちや火力が優れているので、薪ストーブに最適。薪を継ぎ足す必要が少なく、灰の出る量も減ります。焚き付け用の細い枝に着火して十分に火が回った後、火が良く燃えている状態になってから薪を追加するだけ。着火材を使用しなくても火をおこせます。
椚(クヌギ)
この木は堅く火持ちがいいのが特徴です。薪ストーブに適していますが重量感があるので、ストーブに入れる作業の大変です。しかし、それよりも乾燥した椚は硬いため割り出しが一苦労。その代わり、火が長持ちしやすいので、薪を継ぎ足す必要がぐんと減ります。
樫(カシ)
非常に堅く重量感があり、薪の王様とも言われている木です。火力・火持ちに優れているので、キャンプやアウトドアで使いやすい薪として定評があります。
欅(ケヤキ)
お香を焚いたような独特な香りが特徴で、堅く比重が高い木。着火はしずらいですが、火持ちが良いので薪ストーブに適しています。
桜(サクラ)
燻製材としても使われるほど、燃やすと甘い香りがする木。火持ちはコナラやカシと比べると劣りますが、火持ちが良いので、薪を使った調理に適しています。
必要な薪の量は?
火を焚べる際に必要な薪はどの程度必要なのか、焚き火と薪ストーブ別に必要な薪の量を紹介します。最低限必要な分だけ準備知れば、片付けが楽になること間違いなし!
焚き火の場合
広葉樹の薪は1束3〜4時間、針葉樹の薪は1束1〜2時間は保ちます。冬の屋外キャンプで即座に温まりたいときだけ針葉樹を使い、主な焚き火シーンは広葉樹一択です。
晴天に恵まれた冬場、標高が低いキャンプ場で広葉樹の薪を使って焚き火を行う場合、朝昼に焚き火をするなら3束ほど(約9時間)、夜なら2束ほど(約6時間)を想定して薪を用意しましょう。焚き火を一度始めたら、薪が燃え尽きるまで就寝できないので、就寝の時間を逆算しておくのがポイントです。
薪ストーブの場合
焚き火は目的ごとに針葉樹と広葉樹を使い分けますが、煤を多く排出する・油分の含んでいる・燃焼時間が短いことから、薪ストーブに針葉樹は極力使わない場合が多いです。
1泊2日の冬キャンプの場合、薪ストーブの燃料は広葉樹の薪を最低でも30kg程度は用意しておきましょう。また、分量に不安のあるはじめたてのころは、薪の販売を行っているキャンプ場を利用し、スタッフのアドバイスを参考にしながら薪を購入するのがおすすめです。
薪の保管方法は?
薪を保管する際に注意すべきは湿気と虫です。自宅とキャンプサイト、2パターン別に保管方法を紹介します。
【自宅】
薪を箱や袋から出した後、日当たりが良い場所に置くのがおすすめ!風がよく通り、雨よけの屋根も付いている場所であれば、薪が湿気にくいですし、屋外は虫が出たとしてもあまり気になりません。但し、どうしても冬眠場所や餌、産卵場所として集積した薪に虫が寄り付きます。やはり、早めに薪を使い切るのが一番です。
【キャンプサイト】
雪面や濡れた地面の場合は薪を置く台を用意したり、降雪・雨天時は薪の上にシートをかけたり、タープの下に置き、濡れや湿気を極力避けて保管する必要があります。
薪の炎で料理を楽しむ!
キャンプ場で購入できる薪は針葉樹のものが多く、比較的小さめに割られているという話を聞きます。針葉樹は焚き付け用には良いですが、ススやヤニが多いため調理には不向きです。
調理に最適な薪は、広葉樹の堅くて重い(密度が高い)木を割ったものがおすすめ。これらは火が安定するまではテクニックを必要としますが、一度火が安定すると燃焼時間が長く、煤も出にくいため調理に扱いやすい点が優れています。樹木の種類でいうと、「クヌギ」「シイノキ」「ナラ」「ヤマザクラ」など。
薪を販売している場所
薪を購入したいけどどこに買いに行けばいいかわからないという方に向けて、薪を販売している場所を一挙紹介。お金をかけずに手に入れる方法もお届けします。
ホームセンター
薪を専門に扱うホームセンターは全国各地にあります。人気のホームセンターは、「コメリ」「ロイヤルホームセンター」「コーナン」。ホームセンターのメリットは、品揃えが豊富で、細かい相談にのってもらえることです。近隣にキャンプ場があることを踏まえて店舗に出向き、木材に触れて選べるもの魅力。
キャンプ場
最近、キャンプ場で薪を販売しているところが増えてきています。1束500〜600円ほどで販売していることが多く、ワンコインで購入できるお手軽さも魅力です。事前に購入して持参する必要がなく、荷物が少なくてすみますので、キャンプ場を選ぶ上で薪を販売しているかを確認するものおすすめ。
道の駅
地産品が大充実している道の駅。こちらもホームセンター同様に、キャンプ場の近隣であれば、薪の品ぞろえが充実している可能性があります。
森林組合
自分で丸太を入手するには、地元の森林組合や営林署で購入するのもおすすめです。ホームセンターやキャンプ場で購入するよりも、圧倒的に激安で手に入るので、多めに薪を調達したい方は費用を抑えられます。購入する際は、電話で問い合わせて伺いましょう。こちらは伐採材ですので、入手後はすぐに使わず、しっかり乾燥させることが重要です。
無料で調達する方法
果樹園や公園の木や街路樹などの剪定枝を譲ってもらう、近所で新築工事があった場合は大工さんに掛け合って端材を譲ってもらう、山林を所有する地主から間伐材を譲ってもらうなどが方法があります。遠方の場合、運搬コストがかかってしまうので、できるかぎり
近場で現地調達するのがベストです。
ここで注意するべきポイントは、どんな樹種か。
薪として使えない樹種の代表はこちらです。
- キョウチクトウ…枝や葉を燃やすことで有毒ガスが発生し、吸引すれば下痢や嘔吐といった症状が出る。
- ウルシ、ヤマウルシ、ハゼノキ…肌がかぶれやすく、アレルギー反応を引き起こす可能性が高い。
これらの樹種から分かるように、
有毒ガス発生やアレルギー反応などの影響がない材料であることを確認すべきです。また、大工さんの端材であっても防腐剤、接着剤、塗装剤が塗布されていないことも。合板では無い無垢端材に限定することも望ましいです。
そして、森林組合と同様に、こちらも伐採、剪定材となります。
すぐに使わず、しっかり乾燥させましょう。薪割りにもこだわりたい
薪割りの相方①:ナタ・手斧
ナタ(鉈)は、小さめの斧のようなもので、大きめの薪を、さらに小さくする際に使用するアイテムです。手斧もナタと同じく、片手で使える斧。太めの薪を適切なサイズに割ることで、細かな炎の調整しやすくなります。
薪割りの相方②:ナイフ
ナタよりも、ひとまわりコンパクトなのがアウトドアナイフです。焚付用の薪が必要な際に、焚き付け用の薪を作成したり、薪の先端を割いたりすることで、焚き付けが容易にできるようになります。
焚き火に便利な薪割りナイフを使ってキャンプを楽しく!
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薪割りの相方③:薪割り台
薪割りといったら薪割り台。あるだけでより一層雰囲気が出ます。コンパクトな上、軽いので持ち運びにも便利。これを使って味のある焚き火をしてみましょう。
ハンドル付きの薪割り台。本体は広葉樹に比べて軽量な針葉樹を採用しており、持ち運びやすいです。キャンプの持ち運びに重宝すること間違いなし!
【基本情報】
- 直径:15.0~18cm前後
- 高さ:4.6~7.2cm
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収納して薪運び楽々!薪バッグがおすすめ!
薪を収納して楽に持ち運びたい方に向けて、丈夫な作りで破れにくく、撥水加工を施した人気の薪バッグを紹介します。
最大30kgまで薪を入れられる大容量の薪バッグ。使わないときは、2Lペットボトル2本分のサイズに折りたためるので荷物になりません。薪スタンドも付いており、焚き火をする際にとても便利です。
キャンプ用品のケースなどを販売しているasobitoから発売されている薪バッグ。防水帆布を採用しており、丈夫な作りをしているのでたくさんの薪を入れても大丈夫!パラフィン加工で防水性能も十分あります。
カンガルーの子育て袋から着想を得て作られた薪バッグ。背中を中心とした荷重によって、腕や腰の負担を軽減しました。他のキャンプギアを運びながら、一度に多くの薪を運べます。
薪運びが劇的にラクになる!おすすめ薪バッグ32選
「薪バッグ」は焚き火の薪を運ぶためのアイテム。ギアを運んだりなど、さまざまな用途に使えるため、一つ持っておくと便利です。この記事では、おすすめの薪バッグをタイプ別に紹介します。人気定番ブランド以外に、100均や無印良品の代用グッズも解説!
トーク番組「石橋、薪を焚べる」も話題
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薪の種類や太さを理解して、焚き火を楽しもう!
今回は、日本ブッシュクラフト協会理事・川村知義さんの監修のもと、薪の種類や調達方法といった基本的な知識を解説しました。自分好みの薪を手に入れたり、丸太から薪を作ったりすることができたら、火を囲む時間がより一層味わい深いものになるはず!ぜひ、多くの探究を重ねて、よりよい焚き火ライフを楽しみましょう。