親子で直火を楽しむ!「地面を傷つけない焚き火のやり方」徹底マニュアル
子どもと、キャンプで何をして遊ぼうか?と悩むなんてナンセンス!「キャンプに行こう」と決めた瞬間から“遊び”は始まり、準備から後片づけまで、ぜんぶが遊びです。焚き火もそのひとつ。プロが教える「自然にダメージを与えない直火」のやりかたを覚えて、楽しみながら火の扱い方、自然との上手なつき合い方を身につけましょう。子どもにとって、ゼロから育てた火を愛でる経験はかけがえのないものに。親子で挑戦してみてください!
最も原始的な遊び“焚き火”
キャンプでは、暖をとったり調理をしたり、山の中での灯りなど様々な用途のある焚き火。日ごろ、各々のことで忙しくしている家族が、焚き火を囲んで語り合ったりと、みんなの癒しの役割もあります。子どもは火を眺めるだけでもテンション上がりますが、せっかくならゼロから焚き火を育ててみませんか?
今回は、プロ監修のもと、自然にダメージを与えず、直火で行える焚き火のやりかたを紹介。土を集めて「マウンドファイヤー(かまど)」をつくり、薪拾いから、火おこし、後かたづけまで。ゼロから自分たちで作り上げる焚き火は、火を愛でる気持ちが生まれ、子どもにとっても良い経験になります。
※昨今は、フィールドへのダメージやキャンパーのマナー悪化の背景から、焚き火台や焚き火シートの使用が推奨されています。直火で焚き火をする際は、許可されているキャンプ場やフィールドを選びましょう。
野外活動のプロフェッショナルが監修!
NPO法人リーブノートレイスジャパン代表理事/backcountry classroom代表取締役
岡村泰斗さん
筑波大学にて野外教育に関する論文では国内初となる博士号取得後、奈良教育大学、筑波大学で野外教育を指導。2011年にbackcountry classroomを設立。日本全国で野外企業研修、野外指導者養成などの人材育成を行い、幼少年向けのキャンプも実施。環境に対するインパクトを最小限にした、責任あるアウトドアの楽しみ方の教育と普及に務める。
直火で焚き火をする際に、まず準備すること
立木から離れたところを選び、まわりの落ち葉をどかす
火の粉が飛んで、山火事の原因となることも。焚き火の周りに、燃え移る対象がないことを確認しましょう。
シューズを履き替える
テントサイトでは、登山靴など靴底がしっかりしたものから、地面に優しい靴底が柔らかいシューズに履き替えましょう。また、サンダルは飛火による火傷の危険があるので避けるべきです。
ステップ1. 小枝を集める
大きく3種類の太さの枝が必要
拾ったり、集めたりが大好きな子どもたちが進んでやってくれる薪拾い。小さな子でもできるので、ポイントを伝えて、一緒に探しましょう。焚き火は、
「目的を考えて必要最小限の大きさ」にすることが重要。基本的には、燃え尽きる太さの3種類の枝と、着火剤となる火口を必要な分だけ拾います。
- 火口(着火剤):杉っ葉・松ぼっくり・麻など
- 焚きつけ/こっぱ:楊枝くらいの太さの枝
- 火つけ:割り箸くらいの太さの枝
- 薪:親指くらいの太さの枝
枝の特徴は、“5D”がポイント!
「拾う薪は“5D”だよ!」と教えると、子どもは何かのおまじないのように、「ふぁいぶでぃー、ふぁいぶでぃー…」と唱えながら喜んで探してくれます。意味は、実物を見ながら少しずつ覚えればよし!
Dead:枯れた枝
生木はなかなか火がつきません。たとえ枯れた木でも、まだ立っている木は使わないようにしましょう。多くの昆虫や鳥類などの生態系の一部となっています。
Dry:乾いた枝
折ったときにパキッと乾いた音がするのが、使える薪の基準。表面が雨で濡れている薪も、中は乾いているので、パキッとしたら薪として使えます。火がつきにくいときは、濡れた樹皮をナイフで削ると燃えやすくなります。
Down:落ちている枝
たとえ枯れていても、まだ生えている枝を折らないようにしましょう。また、腕よりも太い落枝は、時として野生動物のすみかとなっていることがあります。親指よりも細い枝を拾うようにしましょう。
Dinky:細い枝
細かいという意味ですが、ここでは、細い枝。基準は、前述の通り。
Distant:離れた場所の枝
薪は、できるだけ離れた場所から拾ってきましょう。キャンプサイトの周りで薪を拾うと、すぐになくなってしまい、次の人が結局、生えている枝を折ったりと、よくない方法につながってしまいます。
拾った枝を使いやすい長さに折り、太さ別に分けておきます。適切な枝を集めれば、雨の中でも火をおこせますよ!
ステップ2. マウンドファイヤー(かまど)をつくる
まずは赤土集めから
焚き火シートやグランドシート(ブルーシートでもOK)に、海辺なら砂、山なら赤土を集めます。(山肌などからかき集めるとよい)
黒土や腐葉土は有機物からできていて、土壌生物が活動していたり、時には燃えることもあるので、ふさわしくありません。
砂場で幼児がつくる山くらいの量の土が取れたら、土の中に混じっている石や葉っぱを取り除いておきます。
マウンドファイヤーを作ります!
集めた赤土をシートの上に広げ、山を作ります。山の高さは、火の熱から下の地面を断熱するために10cmほどは必要です。砂遊びと同じ要領なので、子どもでも簡単!
ある程度山になったら、火種がこぼれないよう、頭頂の中心を火山の火口のようにくぼませます。
火の粉が落ちて燃え広がらないように、シートをマウンドファイヤーの底に折り込みます。
シートがすっかり隠れればOK。これでマウンドファイヤーのベースが完成!
薪を組んでいきます
薪が直接湿った土に触れたり、土の水分が蒸発して火力を弱めるのを防ぐため、頭頂の凹み部分に、親指の太さの枝で火床(ひどこ)をつくります。
くぼみに敷き詰めるイメージ。薪の下から空気を入れやすくする役割もあります。
着火剤となる火口(今回は杉っ葉を使用)を中心に、焚きつけを囲うようにして持ち、火床の周りに円錐形になるように置きます。
火口から徐々に太い枝に火が移るようにするのが大事。空気が通るように詰めすぎず、荒すぎない具合を探ります。
少し難しいので、まずはパパかママがやってみてください!
ステップ3. 火をつける
ファイヤースターターで火おこしに挑戦してみよう
ここまで準備できたら、いよいよ着火!マッチでもいいですが、ファイヤースターターなどの道具で火おこしするのも、より原始的で楽しいです。小学生くらいになると、ファイヤースターターも上手に扱えますよ。
火がついたら、手早く割り箸の太さの“火つけ”と、指の太さの“薪”を順番にくべ、火つけから薪に火を移して持続させます。
細い枝はすぐに燃え尽きてしまうので、火つけに火が移るまでは、息を吹きかけるのを我慢。火つけや薪に火がしっかり移ったあと、火が小さくなってきたら、息を細く吹きかけて大きくします。
熾火で、焼きマシュマロを楽しむ
火を絶やさないよう薪をくべ、15〜20分ほどメラメラとした炎を眺められます。暖をとるには十分の火力です。炭になったら、子どもたちお待ちかねの焼きマシュマロ。煙も少なく火力も安定した熾火で、ちょうどよく焼けました!
ステップ4. 後片づけ
後片づけも遊びにしちゃう!
焚き火は後片づけが一番大事!と言えるものの、子どもに「片づけなさい」と押しつけても乗ってきません。マウンドファイヤーは、後片づけも遊びのひとつとして楽しめます。なぜなら、子どもが大好きな砂遊びと、ふだん“やってはいけない”砂まきの要素が入っているから。
炭は自然の中で生分解されず、そのままの形で残ってしまいます。すべての枝を灰になるまで燃やしましょう。燃え尽きなかった枝は、炭の部分をそぎ落としたら、拾った場所付近に戻します。
灰にならなかった炭は、水などで完全に消火した後、できる限り指で細かく砕き、土と攪拌します。その際、まずは大人が手を近づけ、子どもが触れる前に、燃殻が手で触れるぐらいの熱さになっていることを確認しましょう。
敷いておいたシートを引き出し、焚き火をしたあとの灰、細かく砕いて土と攪拌した炭とマウンドファイヤーを、その上にまとめます。
まとめた土を元の場所に運び、一カ所に固めず、分散して撒きます。ここは、親子で協力して思い切りバラ撒きましょう!
焚き火の「あとかたもなく」スッキリ!
焚き火をした場所に、どかした落ち葉を戻します。これで、地面はおろか、下に敷いたシートにもほとんど影響はありません!元通りなのはもちろん、「来たときより美しく」なれば、自分たちも次使う人も気持ちがいいですよね。
持続可能な焚き火を楽しもう
自然へダメージを与えない焚き火の知識は、将来的に子どもにとって大きな財産になるはず。ゼロから火を育てて焚き火をした経験は、子どもにとって楽しいだけでなく、サバイバル能力という観点からも武器になります。どうしてこうした方がいいのか?まで、一緒に考えながらできたらいいですね!
撮影/瀧川寛 モデル/渡部由佳ファミリー 撮影協力/一般社団法人フォースウエルネス 代表理事 宮入正陽、トレーナー 師岡龍也、MOKKI NO MORI