ナイフの「研ぎ方」完全ガイド!砥石種類や刃の形状まで詳しく解説
買ったばかりの切れ味がいいナイフも何度も使えば性能が下がってしまうもの。愛用のナイフを長く、安全に使い続けるためにもこまめなメンテナンスは欠かせません。とはいえ、どのようにすれば良いのかわからないという人も多いはず。今回は、ナイフの研ぎ方を詳しく解説!ナイフの種類や使う砥石の違いなど、初めてでもわかりやすいように紹介します。
 こんなナイフはすぐに研いで!
  アウトドアナイフは硬い木や丈夫な縄を切ったり、食材を捌いたりと頻繁に使用するので、ブレードが激しく傷つきやすいです。切れ味が悪いナイフは怪我する危険性が高いので、こまめにナイフを研いで切れ味を良くしておきましょう。
葉物野菜やトマトなどの柔らかい野菜を切ってみた時になかなか刃が入らなかったり、切り込んで繊維が切り残るようであればナイフを研いでおくのがおすすめです。
ナイフ刃形の種類で研ぐ範囲が違う
 ナイフはスパイン(刃の背)からブレード(刃)に向かった形状が何種類かありますので、形状によって研ぐ範囲が決まってきます。自分のナイフがどんな形状か知っておきましょう。
ホローグラインド
  ナイフによくみられる形状です。腹部分がくびれるようなカーブで、ブレードに1mm程度の段が付いています。この段はセカンドベベル(またはマイクロベベル)と言い、刃が付いている部分を指します(まれにセカンドベベルの無い物もある)。メンテナンス時は、このセカンドベベルの所を研ぎましょう。
フラットグラインド
  スパインのわずかに下からブレードに向かって平らに仕上がっており、ブレード近くにセカンドベベルを持った形状のナイフです。このタイプは動物の解体で皮を剥ぐスキナーナイフに多く見られます。刃厚が薄いクッキングナイフやポケットナイフもこの形状が多いです。
スカンジグラインド
  北欧製のナイフが発祥で、ブッシュクラフト(一般的にはキャンプ)用ナイフとしてはこの形状が最も多く、さまざまな使用用途に使われています。全体的に平らに仕上がっており、比較的ブレードの幅が広いので、研ぐ角度を決めやすく砥ぎやすいです。
コンベックスグラインド
  和名を蛤刃(はまぐりば)と言い、ブレードの直前から丸味がある独特な形状のナイフ。この形状は刃持ちが良く、ナイフ愛好家は好んでこの形にナイフを研ぎ直しますが、研ぐのに少々技術が必要です。慣れないと研ぐのに時間がかかったり、手が滑って怪我をする可能性もあるので、扱いには十分気をつけましょう。
ブレードのダメージ
  ナイフは何度も使用すると金属が摩耗し、本来の切れ味が落ちてしまいます。特にキャンプでは、バトニングと呼ばれる硬い木を削る作業を何度も行うので、ブレードが潰れたり欠けたりしやすいです。切れ味が落ちた状態で作業すると、作業効率が落ちてしまい怪我のリスクが高まるので、しっかり研いでおきましょう。
ナイフを研ぐときに必要なもの
 ここからはナイフを研ぐときに必要な道具を紹介!これらがそろえばすぐに研ぎ作業に入れます。
砥石
  砥石は刃物や石材などを研いだり磨いたりする石のこと。粒子の大小や硬さによって、 荒砥(あらと)・中砥(なかと)・仕上げ砥などの種類があります。1本あるだけでも十分研げますが、仕上がりの美しさを追求したければ、2〜3本ほど購入して使い分けるのがおすすめ!
布
  砥石の上でナイフを研いでいると、砥石自体が滑って研ぎにくい場合があります。怪我にもつながりかねません。適度に水を拭き取る役割として、布を一枚用意しておきましょう。事前に布を濡らして砥石の下に敷けば、作業効率がアップ。汚れるので、雑巾でも大丈夫です。
水を入れる容器
 ナイフを研ぐ際は、砥石とセットで水も用意するのが一般的です。水を入れるための浅めの容器を準備して、砥石の側に置いておきましょう。
砥石を使い分けよう
 ここからは砥石について詳しく解説します。砥石は使用用途に沿ってサイズや種類が異なるので、購入前に違いを理解して適切にナイフを研ぎましょう。
砥石の番手について
 砥石には番手が付いており、数字が多いほどきめが細かくなります。荒砥、中砥、仕上げ砥という分類に分けられ、数百番台から数千番台まで存在。番手や分類はメーカーやによって異なります。
- 荒砥…500番前後以下の数字のもので、触感はざらざらとしている。荒砥はナイフが刃こぼれしていたり、グラインドの形状をカスタマイズするようなときに使います。
- 中砥…800番から1500番ぐらいまでのものを指します。メーカーや人によっては2000番ぐらいまでも中砥と呼ぶ場合もあります。中砥は鈍くなった切れ味を戻すためや、通常のメンテナンスで使用することが多い砥石です。
- 仕上げ砥…通常2000番以上で、中には数万番までのものも存在します。金属表面の傷を取り、鏡面のように仕上げられます。アウトドアナイフの仕上げには3000番くらいのものがおすすめ。
- 革砥とコンパウンド…ストロップと呼ばれる革を貼ったパドルにコンパウンドを塗り、最後の仕上げに使用。コンパウンドは白棒と呼ばれる研磨剤を固めたものを使います。白棒は中仕上げ用の分類です。
砥石の種類
 
- 人造砥石…スーパーやホームセンターで見かけるタイプで、天然砥石と遜色ないほどに安定して刃物を研げるます。
- 天然砥石…全体的にムラなく刃物を研げる。高価ですが、安定した粒度を選べるので初心者でも扱いやすいのが特徴。
- オイルストーン…油を含ませて刃物を研ぐ砥石。水を使うものに比べて減りが遅いのが特徴。
シャープナーは砥石の代わりではない
  シャープナーは器具の隙間に刃を滑らせるようにして刃物を研げるアイテム。シャープナーは砥石と形状や使用方法が大きく異なります。シャープナーで刃物を研ぎ続けると、刃先の強度が落ちて刃割れや刃欠けの原因になることも。ナイフを長く使いたい場合は砥石を使いましょう。
研ぐ前に確認!ナイフの研ぎの重要なポイント
 ナイフを研ぐ前に必ず確認するべきポイントを解説。事前に確認しておくだけでより研ぎやすくなります。
刃を当てる「角度」が重要
  ナイフを研ぐ時に一番重要なのは刃を当てる角度を一定に保つこと。多くのアウトドアナイフは刃の角度が20°~25°になっているので、砥石には10°~12.5°の角度を維持して刃を当てましょう。
実際には正確に角度を測れるわけではないので、ナイフを砥石に当てて横から見て、ブレードが砥石にピッタリついていると思われる角度で行うのがポイントです。
「かえし」を感じ取る
  刃を研ぐと砥石に当たっている面と反対側に小さい金属の塊が発生します。これは砥いだ面の金属が擦り落とされたもので、確かに砥がれているという証です。
これは目に見えないほど小さなものですから、指の感触で感じ取るしかありませんが、確認する時には指を這わす方向を絶対に間違えないようにしてください。砥いだ面と反対側のスパインからブレードに向かって(ブレードに対して直角)軽く指を当てる程度です。決してブレードに沿って横方向に指を動かさないでください。
作業する際は手袋はつけない
 研ぐ時は砥石のほかに、水とナイフに着いた砥石粉を拭き取るぼろ布などが必要です。砥ぎの作業は手が汚れますが、手袋などは着けないでください。手の中のナイフの動きを感じ取ったり、かえしを確認するためには素手であることが重要で、ビニール手袋などを着けているとかえって怪我の原因になります。
常に「切るための道具を扱っている」という意識を忘れないようにしてください。
▼ナイフ砥ぎを実際に行った動画を参考にしてみてください
ナイフの素材別に研ぎ方を解説
 ナイフの素材別に研ぎ方を解説!さびにくさや耐久性が異なるので、素材にも注目してナイフを購入するのも大切です。
ステンレス
  ステンレスはさびにくいので頻繁にメンテナンスする必要がありません。耐摩耗性が高いので、セラミックなどの硬い表面で使用しても刃が欠けにくいのも魅力です。研ぐ際は、1000番の中砥石が向いています。1か月に1~2回の頻度で研ぐのがおすすめです。
炭素鋼
 鋼製のナイフは硬度が高いので、粗めの砥石で研いでいくのがおすすめ。粗い砥石で刃の欠けなどを修正し、中砥石で仕上げていきましょう。鋼では効率が良く素早く仕上げることができます。おすすめは500番前後以下の粗めの砥石。
チタン
  チタンは比較的柔らかい金属なので、中砥石や仕上げ砥石といった硬度の低い砥石を使用しましょう。とても粘り気がある素材なので研ぐのが難しいですが、刃は長持ちするので一度研いでしまえば、しばらくの間は研がなくてもOK。使用する際は、6000~8000番の仕上げ砥石がおすすめです。
研ぎ終わったら
 ナイフを研いだ結果を確認する
  自分で納得した砥ぎができたら試し切りをします。これには紙を使い、ナイフを少し滑らせながら斜めに切りつけてみてください。引っかからずに切れれば完了です。
トマトなどの柔らかい野菜を試し切りすることもおすすめします。また、キウイフルーツの表面の毛を剃ってみるのも良いでしょう。これが剃れるようならしっかりと刃が研がれている証拠です。鋭い刃物は例え斧でも野菜が切れます。
オイルを忘れずに
  砥ぎ終わったらナイフの水分を良く拭きとり、胡桃油などの乾性油を薄く塗っておきましょう。特にカーボンスチール(炭素鋼)のナイフは水分が残っているとすぐにさびてしまうので念入りに水分を拭き取りましょう。
ナイフはしっかり研いでおこう
 キャンプ必携のアイテム「ナイフ」は、自分で砥いだ切れ味の良いナイフは作業を効率良く進めてくれるばかりか、キャンプの楽しさを倍増させてもくれます。特に非力な女性には少ない力で物を切ることができる鋭いナイフが必要です。砥ぎの作業は初心者でもナイフ1本あたり40分程度でできますのでチャレンジしてみてください。