キャンプの教科書 きほんの「き」〜vol.3 焚き火編〜
今回は、キャンプの醍醐味である焚き火の基本を一から解説。焚き火マイスターとして知られる著名アウトドアプランナー猪野正哉さんが講師を務め、初心者はもちろん、独学の中級者、教えることの多い上級者にも役立つ基礎知識をレクチャーします。
まず知っておきたい、キャンプの基本
キャンプの基本を5回に分けて紹介する連載企画「キャンプの教科書 きほんの『き』」。3回目となる今回のテーマは、焚き火の基本。キャンプのマニュアル本でも見逃されがちなポイントを、焚き火マイスターの猪野さんが丁寧に解説します。
▼前回の「Vol.2 テント設営編」はこちら
講師は焚き火マイスター・猪野正哉(いのまさや)さん
猪野さんは、焚き火マイスターとして、焚き火の楽しさと正しい知識を全国各地のワークショップなどで広めています。初心者へのわかりやすい解説が好評で、テレビ番組のキャンプ特集でもひっぱりだこ。大物有名人との出演が相次ぐ人気ぶりです。現在は千葉県にあるアウトドアスペース「たき火ヴィレッジ〈いの〉」を、イベントや撮影場所の提供に限って運営。一般開放できるように開墾中。焚き火文化の普及を目指す
日本焚き火協会の会長も務めています。
猪野さんのSNSはこちら!
Instagram:
@inomushi75
Twitter:
@takibimeisterきほん【13】焚き火をする場所の選び方
周りに燃えやすいものがないか注意する
さっそく焚き火台の設置と行きたいところですが、その前に大事なポイントが、焚き火をする場所選び。まずは周囲を見渡し、燃えやすいものが無いか確認します。足元に燃えやすそうな枯れ草が茂っていないか、燃えやすい素材のテントが無いかなど、よく確認しましょう。難燃加工が施されていないテントは、火の粉や爆ぜた薪で穴が開いてしまうリスクがあるので、離れた場所に焚き火スペースを設けます。
足元も重要ですが、頭上の確認も忘れずに。焚き火の炎は肉眼で見えない炎も含めると、予想以上の高さに達します。木の枝葉が頭上にある場所は、引火して木にダメージを与えるだけでなく、森林火災のリスクがあるので避けます。
難燃シートを敷いて環境に配慮
焚き火台を使って焚き火をしていても、焚き火台からの熱で地中の微生物や芝に影響を及ぼす可能性があります。環境に配慮するなら、焚き火台の下に難燃シートを敷きます。
きほん【14】薪の種類と良い薪の見分け方
薪は針葉樹と広葉樹の2種類を使い分ける
薪選びのポイントですが、薪には大きく分けて針葉樹と広葉樹の2種類があります。スギなどの針葉樹の薪の長所は、着火がしやすいこと。そのかわり火が広葉樹の薪に比べて長持ちしない点が短所です。ナラなどの広葉樹の薪は、着火が難しいですが、火持ちが良いのが特徴。焚き火の序盤は、着火しやすい針葉樹の薪、途中からは広葉樹の薪を使用し、ゆっくりと焚き火を楽しむ使い分けが理想です。
針葉樹の薪と広葉樹の薪の見分け方は重さ。針葉樹の薪の方が軽く、広葉樹の薪の方が重いので、持ってみるとその違いがわかります。
湿った薪は要注意
薪を選ぶ上で避けたい点が、薪が湿っていないかどうかです。薪が湿っていると、火がつきにくいだけでなく、熱せられて薪の中の水分が膨張し、薪が爆ぜる原因になります。十分乾いたものを入手するようにします。
きほん【15】薪の火起こし
着火剤を使う
薪の用意ができたら、次は火をつけるための着火剤。着火剤には、チューブに入ったジェル状のタイプや、燃料を固めたブロック状の固形タイプ、松ぼっくりや杉の葉などの自然のものがあります。ジェルタイプや固形タイプも簡単で良いですが、万一忘れてしまったときなどは、近くを散策して天然の着火剤を探してみましょう。松ぼっくりや杉の葉、木などは、油分を含んでいるので、よく燃えます。
まずは枝を用意する
薪をくべる前に木の枝をひろっておきましょう。いきなり薪に着火するよりは、こういった枝にまず火をつけ、順に薪へと火を移していくとスムーズに火付けができます。
薪は細いものから順にくべ、樹皮を火に向ける
着火剤、小枝の次はいよいよ薪をのせていきます。ここでのポイントは、細い薪からくべること。いきなり太い薪をくべてもなかなか、火がつきません。さらに、木の皮の部分を火に当たるようにくべると燃えやすいです。樹皮には油分が含まれているので、燃焼を促進してくれます。
100円ショップの空気入れが焚き火に便利
火おこしを便利にするアイテムはキャンプ用品とは限りません。例えば、100円ショップで手に入る風船用の空気入れ。シリンダーを前後させることで、ピンポイントで空気を送り出せるので、口で息を吹きかけるよりも素早く火の勢いを強められます。値段もリーズナブルで、ベテランキャンパーたちもイチオシのアイテムです。
きほん【16】火の粉の対策
服装は難燃ウェア or 穴が開いてもいいウェア
焚き火で注意が必要なポイントが、焚き火の火の粉や爆ぜた薪。火に弱い素材の生地に当たると燃え広がり、溶けてしまう恐れがあります。服装は、火に強い、綿やレザーなどの難燃性の高い素材が望ましいです。
おすすめ難燃ウェアはポンチョ
アウトドア用の難燃ウェアの中で、最初の一着におすすめなアイテムが、各社から展開されている焚き火ポンチョ。着ている服の上からさっと羽織ることができ、腰下までカバーできるので手軽です。
ブランケットを活用する
服の火の粉対策も大事ですが、キャンプチェアなども、座面が燃えやすい化学素材でできている場合も多くあります。わざわざ難燃素材のチェアをそろえなくとも、コットンのブランケットなどをかぶせることで、手軽に対策ができます。
きほん【17】焚き火の火の消し方
基本は消えるまで待つ。どうしてもというときは火消しツボを活用
多くのキャンパーから出るのが、焚き火の消火方法についての疑問。火が消えるまで待つことが基本です。あまり薪をたくさんくべると、鎮火に時間がかかるので、焚き火をやめる時間を計算して薪を燃やすペースを考えます。
とはいえ、どうしても焚き火を途中で切り上げないといけない場面はあるもの。そんなときに便利なアイテムが「火消しツボ」です。金属製の筒にフタがついたツボで、燃え残った灰や炭をこの中に入れ、フタをすることで酸素を遮断。素早く鎮火できます。水をかけての消火は、急な冷却による焚き火台の変形や、泥状になった灰の処分の手間につながるので避けるのが無難です。
緊急消火の備えをしておく
急な突風にあおられたり、足に引っかかって焚き火台が倒れる不測の事態もあるので、いざという時のための備えも必要。水を張ったバケツを置くのが一番手軽ですが、スプレー缶タイプの消火器や、重曹も消火に有効です。消化のための道具を焚き火台とセットで持っていくことを習慣にしましょう。
きほん【18】こんな時の焚き火は潔くあきらめを
強い風が吹いているとき
キャンプの醍醐味である焚き火。ときには焚き火を我慢しなければならないシチュエーションがあります。そのひとつが風が強いとき。強風にあおられ勢いを増した炎が、山火事につながった事例も過去にあります。強い風が吹きがちな、川や湖畔、海などの水辺のキャンプ場、高原などのひらけたキャンプ場の焚き火では風の強さに細心の注意を払う必要があります。
他のテントとの距離が近いキャンプ場では、火の粉が飛んで隣のテントに穴が空くトラブルも発生しており、注意が必要です。
キャンプ場が混んでいて十分な距離が確保できないとき
スペースに区切りのないフリーサイトが混雑しているときは、隣のキャンパーさんとのテントの間隔が近くなりがちです。焚き火の火の粉がテントなどに飛んだことが原因で喧嘩に発展する事例もあるので、こういったシチュエーションでは、焚き火を避けたほうが無難です。焚き火をすることも大事ですが、キャンプ自体が楽しい思い出になることを大事にしましょう。
次回の「雨対策編」は6月8日公開
焚き火の場所選びから焚き火の終わり方までを教えてもらった今回。次回のテーマは「雨対策」です。キャンプ慣れしていても戸惑う雨への対策ですが、基本を押さえておけば安心で快適なキャンプが楽しめます。「キャンプの教科書」で予習、復習をして、また次の休日も行きたくなるキャンプを目指しましょう。
▼「vol.4 雨対策編」はこちら