アウトドアを通じて子どもの自主性やリーダーシップが身に付くボーイスカウトを深堀り!
28歳で自分の山を持つキャンパーに聞いた「自然との向き合い方」。"遊ぶ"だけでなく"守る"
2021.08.30キャンプ場
近頃雑誌やテレビでもよく目にする、「山を買った人」。愛知県にお住まいの会社員ジンヤさんも、28歳にして自分の山を持つひとり。友人たちと自分の山でキャンプなどを楽しんだり、放置山林の保全活動を行ったりしています。今回は、若くして山のオーナーとなったジンヤさんに、山を持つことになった経緯や、山で行っている活動について話を聞きました。
制作者
近藤みのる
hinata編集部のみのるです!
月2回は必ずキャンプに行くhinata編集部きってのキャンパー!グルキャンと、チャリキャンプが好き。
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もくじ
400坪の山を持つオーナーにインタビュー!
山を買うとはどういうことか
最近、山を買うのがちょっとしたブームになっています。キャンパーやアウトドア好きなタレントが、自分の遊び場として山を買った話を雑誌やテレビでちょくちょく見かけるようになりました。しかし、山を買うことは服や家電を買うような、普通の買い物とは違います。
今回は実際に山を持つキャンパーに、山を買うことと持ってからの実情について話を聞きました。
通称「ジン山」。オーナーのジンヤさん
【プロフィール】
ジンヤさん(28)
岐阜県郡上市の山、通称「ジン山」のオーナー。
会社員として働く傍ら、森林保全ボランティア「地球の整備士たち」に参加。愛知県の里山の整備にもかかわる。
「キャンプをカルチャーで耕す」をテーマにしたWEBサイト「モンターニュアヴァンギャルド」を主催・運営。情報の発信やアパレルの販売を行う。
取材で話を聞いたのは、愛知県在住の会社員ジンヤさん(28)。岐阜県郡上市に広さ400坪ほどの山を所有するオーナー。週末には自分の山に仲間と訪れ、山を整備したり、キャンプをして遊んだりしています。
ジンヤさんが山を持ったのは1年前。当時27歳にしてどのように山を手に入れ、どのような活動をしているのか、詳しく話を聞いていきます。
6人の地主から引き継いだ山
山を持つきっかけは祖父が持っていた30坪の土地
▲ジン山のプロフィール
・場所:岐阜県郡上市
・標高:300m
・広さ:400坪程度
・自宅からの距離:車で1時間30分ほど
━━━━ジンヤさんが山を持つことになったきっかけを教えてください。
ジンヤ:きっかけは、祖父が山に30坪くらいの土地を持っていたことです。そこは、土砂災害の危険性が高い山という話があり、長らく放置されていた山でした。でも、実際に見に行ってみると、平らな場所があり、水場も近く、キャンプをするのにすごくいい山で、欲しいと思いました(笑)。
キャンプとか自然の中で遊ぶことが多く、自由に使える遊び場が欲しかったので、ちょうどよかったです。
6人の地主を探し出して直談判。
━━━━おじいさんの土地があったとのことですが、30坪だと山のほんの一部ですよね?
ジンヤ:すごい狭かったです(笑)。でも周りの山も祖父の土地と同じように、きっと不要だろうから、なんとか手に入れられないだろうかと。調べてみると、6人の地主さんがいるとわかり、ひとりひとりに話を聞きに行きました。
地主さんを辿るのが1番大変でしたね。連絡先もわかりませんでしたし、中には横浜に住んでいる人もいました。でも全員に話をしに行きました(笑)。6人の地主さんから譲り受けたり、購入したりして、結果400坪くらいの広さになりました。
地域住民の理解が1番大事
━━━━山を持つにあたって、地主さんとの話のほか、やったことはありますか?
ジンヤ:山に出入りするにあたって、「僕たちはこういう者で、この山でこんなことをします」と、近隣住民の方全員に話を通しています。山の周辺は4〜5世帯しかないし、高齢者ばかりの本当に小さい集落。自治会長に話を通したり、遊びに来てもらったりしました。
近所の山に遠くから来た車が出入りしていると、普通に心配になりますよね。僕たちも、「よく思われていないかも」と思うと安心して遊べないですし、お互いのストレスになってしまいます。このコミュニケーションをひとつさえやっておけば円滑だし、もしかしたら自分たちのいないときに助けてくれるかもしれません。山を持つ上では、これが1番大事だと思います。
平地で近くに川も流れるキャンプに向いた場所
とてもかわいそうな山だった
━━━━もともと放置されていたとのことでしたが、最初山はどんな状態だったのでしょうか?
ジンヤ:足の踏み場もない密林でしたね(笑)。落ち葉が30〜40センチくらい積もっていましたし、倒木もすごかったです。もともと人工林で、建築用に針葉樹が植えられまくっていた場所。木が管理されずに伸びきって、光も入らない。不法投棄されたゴミもちらほらあり、かわいそうな山でした。
倒木と腐った木の処理
━━━━そうなのですね。そのような放置山林は、どのようにして整備を進めるのですか?
ジンヤ:倒木をチェーンソーで切って薪にしています。また、山には倒れないままで枯れた木もあり、それらも薪にしていますね。どちらも密林に光を入れて、足場をきれいにするための作業です。
━━━━自分たちで整備を進めているのですね!チェーンソーなどを扱うのは怖くないですか?
ジンヤ:もちろん怖いです(笑)。でも、YouTubeなどを見て勉強しながら手探りでやっています。木を倒す方向とか、平行に入れるとか、扱い方にもコツがあるんですよ。チェーンソー抜くタイミングとか遅いと歯が抜けなくなりますし。
林業の方でも時々けが人が出るそうなので、自分たちはその倍気をつけようと意識しています。
キャンプしやすい場所
━━━━キャンプをする場所として、条件の良し悪しはどうなのでしょうか?
ジンヤ:毎月2〜3回来て、基本キャンプしながら整備を進めていますが、とてもキャンプがしやすい山ですね。平らな場所があって、テントが20張、たちました。気温は8月で昼28度、夜24度とけっこう涼しいです。隣にはとてもきれいな川も流れています。
近くの源流からゴムホースとポリエチレンのホースを伸ばし、水道も設置しました。最近はお風呂も作っています。
自分の山に関しては誰よりも詳しく
山の整備は元の生態系を壊さないように
━━━━整備を進めていく上で気をつけていることはありますか?
ジンヤ:「人間メイン」の山にならないようには気をつけています。本来あったサイクル、生態系を崩さず、動植物と共存できる環境を作りたいですね。
僕たちは山を整備するにあたり、専門書や論文などを読んで勉強をしています。ですが、どれだけ勉強しても山はそれぞれ性質が違っていて、何をするのが正解とか一概には言えないんですよね。木1本切るのも仲間と相談しながら知恵をあわせてやっています。
僕たちは森の専門家ではありません。でも、自分たちの山に関しては、誰よりも詳しくなろうという意識で活動しています。僕たちは僕たちなりに、トライ&エラーを繰り返しながら学んでいけたらなと。
整備をすすめていくことで目的に変化が
━━━━ただ自分たちが楽しく遊べる場所を作るだけではないのですね。
ジンヤ:もちろんそれもあります。でも、人間の都合だけ考えて整備をすすめると返って失敗することもあります。一度、山の整備を進める上で、作業の障害になっていた小川を埋めようとしたことがありました。
小川はヤゴの生息地で、それを潰すことは山からトンボがいなくなってしまいます。トンボはアブとかブヨの天敵なので、もし川を潰していたら、アブ、ブヨが増えて、自分たちが被害に遭う確率が上がっていたかもしれません。
━━━━たしかに害虫が増えれば、どれだけ整備していても過ごしにくい場所になってしまいますね。
ジンヤ:そうなんです。僕もこういう学びを経て、最初の遊び場を作りたいというところから、少しずつ山での活動の目的が変化してきました。
自然の大切さを後世に伝えたい
自然で遊ぶからには、自然へ感謝を
ジンヤ:自分たちも、自然の中で遊ぶからには、自然にもっと感謝しなければいけないと、考えが変わってきました。この自然を守り、自然の素晴らしさを周りの仲間や後世に伝えていくことが、今の活動の目的です。
現在、仲間と一緒に「地球の整備士たち」というボランティア団体で、放置山林の整備や子どもたちへのワークショップなどを行っています。
虫取りを通して、子どもたちに生物の多様性を使える
━━━━子どもたちへのワークショップはどのようなことを行っているのですか?
ジンヤ:虫取り教室をやっています(笑)。でもあくまで虫取りはきっかけ。子どもたちへ、生物の多様性や、森との共存の仕方について伝えるためにやっています。
若いからこそ、自分たちにできる
━━━━20代でそこまで考えている人は少ないですよね。
ジンヤ:そうですね。僕らはたまたま山を手に入れたから自然への関心をもてました。しかし、多くの若者の自然への関心は薄れていく一方です。林業の人手や後継者不足の問題で、後世につなぐ働きをしている地域、コミュニティーもありますが、そういう活動を担うのは50代〜60代。もちろん素晴らしい活動ですが、若者が参加するかといえば、しないと思います。
次の世代につなげる一点においては、若い自分たちの方が得意。実際、僕たちの活動に興味を持って参加してくれる仲間も増えてきました。山林の知識もまだまだだけど、自分たちにできることでやっていこうと思っています。
これからもありのままの山を守り、遊ぶ
▲仲間を集めてプライベートイベントを開催することも。
━━━━今後も、ジン山とジンヤさんたちの活動からは目が離せないですね。
ジンヤ:山はあるべき姿を守りつつ、もっとよくしていきたいと思っています。新たに山の木でサウナ小屋を作る計画もあるので、よかったら遊びにきてください(笑)。僕たちの活動を見て、「自分たちでもできるじゃん」と、同じことを始める若い世代が出てきてくれたらうれしいですね。活動のマニュアル化も計画しています。もし使っていない山を持っている人がいたら、ぜひチャレンジしてほしいです。