ランタンの魅力は「音」にある。二子玉川の名店「ビブラント」オーナーが語るマニアな楽しみ方とは
全国の人気アウトドアショップのリアルな魅力にせまる「愛せるお店と出会おう」。オーナーの店づくりやアウトドアに対する想いを聞き、「つい訪れたくなる」「ずっと通いたくなる」理由を探ります。今回は、東京都の二子玉川にあるランタン専門ショップ「viblant(ビブラント)」。オーナーの石角直樹さんは、“分解癖”からランタンに出会ったといいます。そしてランタンの最大の魅力は「音」にあるとも。そのワケとは?
マニア心をくすぐる逸品が並ぶ「viblant」
コアなコレクターが多いことでも知られる「ビンテージランタン」。100年前につくられたものでも、ていねいにメンテナンスすることで、“生涯の相棒”としてキャンプの夜を明るく照らしてくれます。
そんなキャンパーなら一度は憧れるビンテージランタンを専門で扱っているのが、今回訪れた「viblant(ビブラント)」。東京都の二子玉川駅(東急田園都市線・東急大井町線)から徒歩5分の場所にある店内には、希少価値の高い逸品がずらりと並びます。
それらの一つひとつは、オーナーの石角直樹さんが国内外から買い付けたもの。劣化の激しいものでも、分解・メンテナンスを施すことで、ランタンを蘇らせます。石角さんが古いものに手間暇をかけて命を吹き込む理由には、「良い物は時代を超えて残していきたい」という想いがありました。
“分解癖”が引き寄せたランタンとの出会い
ーー石角さんとアウトドアとの出会いを教えてください。
石角直樹さん(以下、石角):子どもの頃から、いつもそばに自然があったんですよね。祖父が淡路島に住んでいて、よくそこで過ごしていました。1人きりで山の中にこもったり、海で釣りに明け暮れたりするような子ども時代でした。
石角:いえ、たまたまなんですよ。高校卒業後に就職した量販店で、偶然にもアウトドア用品の売り場を担当することになったんです。そのときの職場の先輩がランタンを持っていて、「なんだこれは?」と興味をもったのがランタンとの出会いですね。
ーーランタンのどんなところに興味をもったんですか?
石角:僕、小さい頃から“分解癖”があって、おもちゃでも何でも分解するのが好きだったんです。そんな分解マニアにとってランタンはかっこうのアイテム。
複雑な構造をしているから分解のしがいがあるんです(笑)。ジャンク品を買っては家で分解しながら遊んで、また使えるようにすることを繰り返していました。
ーー分解ですか!今のランタンをメンテナンスするという仕事につながっているわけですね。石角さんは、
コールマンでも働かれていたんですよね?
石角:はい、コールマンが日本で直営店を出すタイミングで、店長として引き抜かれたんです。店長を4年間経験したあとは本社勤務になりました。
お店にはコールマンをはじめ、時代を感じさせるビンテージランタンがずらりと並びます
石角:日本全国の店舗の管理と運営を全て任されました。コールマンが地方にどんどん出店していた時期なので、全国各地に出張していましたね。
ただ、出張先で余った時間がもったいなくて、近隣のキャンプ場に飛び込み営業もしていました。「キャンプ場にコールマンの売店をつくりましょうよ」と言って、キャンプ場にギアを勝手に売り込んでいました(笑)。
「準備ゼロ」で始まったランタンショップ
ーーそれからは、どんな経緯でビブラントをオープンしたんですか?
石角:子どもが生まれたことがきっかけで、会社を辞めようと思ったんです。子どもと自由にキャンプに行きたいなと思って(笑)。それを当時の上司に伝えたら「今が頑張りどきだろ!」って引き留められちゃって。
でも、家族との時間を大切にしたい気持ちは変わらず、2人目の子どもが生まれたタイミングで会社を辞めました。
石角:実は何も決まっていなくて…自分で決心したものの、これはまずいなと(笑)。
そのとき、奥さんから「得意なことを生かして、道具のメンテナンスのお店でもすれば」と言われて、コレクションとして持っていたランタンを商品にお店を始めました。何の前触れもなく、何の準備もなく、何気なく始めたのが2013年のことでした。
ーーさまざまなめぐり合わせでビブラントは生まれたのですね!
石角:当時の日本には、ランタンのメンテナンスを仕事として責任をもってできる人が少なくて。そこで、「じゃあ、メンテナンスのお店をやってみるか」とラフな感じでビブラントをオープンさせました。
ランタンの魅力は「音」にある
ーー石角さんの考える「ランタンの魅力」を教えてください。
石角:ランタンは、「自分と同じ生まれ年」のものが楽しめる数少ないギアです。自転車やバイクなども愛着の湧く道具ですが、部品が多すぎてメンテナンスが大変ですよね。何十年も使い続けるのは難しい。
一方、ランタンは複雑な構造ながら意外と部品は少ない。しっかりメンテナンスをすれば「一生モノ」として使い続けられます。僕は1971年生まれですが、同い年のランタンを愛用しているんです。
ーーたしかに、自分と「同い年」の道具を持ち続けるのは難しいですよね。ランタンならではの魅力ですね!
ランタンを改造したインテリアが並ぶのもビブラントならでは
石角:あと、「音」こそランタンの魅力だと思っています。
石角:「シュコー」という独特の燃焼音がたまらないんです。個体や使用年数によっても微妙に音が違うし、その差を楽しむマニアも多いですよ。僕のお店に来るランタン好きは、みんなランタンの音に魅了されています。
光とともに、ランタンの音をキャンプ場で聞くのは至福の時間です。この音のためにランタンを使っていると言っても過言ではない。
ーーランタンの「音」を楽しむとは、まさに通な楽しみ方ですね。
石角:ほかにも、模倣品が出回りにくいというのもコレクターが多いポイントですね。ランタンは構造が複雑なので、しっかりとした技術力がないと大量生産は難しいんです。コールマンのランタンの「偽物」なんて、なかなか出回りません。
ーービンテージランタンには、たくさんの魅力があるんですね。
石角:生産国によっても、異なるキャタクターを楽しむことができますよ。たとえば、アメリカ製だと燃料はホワイトガソリンを使うことが多く、構造が比較的シンプルでメンテナンスしやすい。
一方、ヨーロッパ圏のランタンの燃料は灯油がほとんど。ドイツ製は細かな部品がたくさんあってマニアにはたまらないのですが、メンテナンスが大変。イギリス製はデザインが秀逸で、高級車の「ジャガー」のような洗練されたシャープなルックスが特徴です。
「2つのキャンプブーム」をランタンがつなぐ
ーーLEDランタンなど便利なギアが人気の一方で、ビンテージランタンを扱う意義は何だと思いますか?
石角:「世代間をつなぐ役目」だと思っています。1990年代の「第一次キャンプブーム」と、2020年前後の「第二次キャンプブーム」を両方経験して感じたのが、ギアの手に入れ方の違いです。
第一次ブームのとき、高いギアを手に入れた人たちの子どもが第二次ブームをつくりました。今の若者は親から譲り受けたギアを使う傾向があり、特にランタンのおさがりを使っている人が多いんです。
「実家にあったランタンが壊れていないかどうかチェックしてください」とランタンを持ち込む若者がとても増えました。
ーーランタンを通じて、親子のキャンプの思い出がつながっていくのですね。
石角:そうなんです。それって、いいことだと思うんですよね。誰かが大事に使ってきたものを受け継いで、また次の誰かに譲っていく。そんなふうに良い物はずっと残って、循環していくのではないでしょうか。これからも受け継ぐためのお手伝いをしていきたいですね。
オープン10周年を記念したキャンプイベント開催!
イベントでは音楽ライブの開催も!石角さんもバンドメンバーとして出演するのだとか
ランタンを通してキャンプシーンを見守ってきたビブラント。そんなお店は2023年9月で10周年を迎えます。それを記念してキャンプイベントの開催が決定!
群馬県のoutside BASEで開催される「viblant 10th Anniversary Camp EAST」と、滋賀県のマイアミ浜オートキャンプ場で開催される「viblant 10th Anniversary Camp WEST」の2本立て。オールナイトで楽しめるスペースもあったりと、全国のビブラントファン、ランタンマニアが楽しめること間違いなしのイベントになるはず!詳細は以下をチェック!
【店舗情報】
住所:東京都世田谷区玉川2-15-13
電話番号:03-6805-6366
営業時間:11:00〜20:00
定休日:火曜
詳細はこちら:
ビブラント
Instagramはこちら:
@viblant_official