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犬が頭に氷嚢を載せているところ

【獣医師監修】「犬の熱中症」はキャンプでも注意!覚えておきたいサインと対策

2023.08.09ノウハウ

※本記事には一部プロモーションが含まれます

「地球沸騰化」という言葉も飛び出すほど、近年の猛暑は異常。人間より体温が高い犬も熱中症にかかることがあり、ひどいと命に関わります。犬の熱中症を正しく知り、予兆を見逃さない知識は犬連れキャンパーさんにとっても大切。症状や、もしもかかってしまった時の対策、夏のキャンプで注意したいことなどを日本橋動物病院の園田院長先生にうかがいました。

犬の熱中症は、3~5割が死亡する恐ろしい病気

暑くてぐったりしている犬

出典:PIXTA

年々暑さが厳しくなっている日本の夏。2023年の7月も、東京では連続猛暑日が記録を更新しました。人間の熱中症患者も増え続けていますが、ワンちゃんはどうなのでしょうか? 実は犬も熱中症にかかることがあり、しかも死亡率は36~50%。さらに、ほとんどは発症してから24時間以内に死亡するという大変危険な病気です。どんな状況だとリスクが高まるのか、愛犬の様子で気を付けるべきことは何なのか。日本橋動物病院の園田開院長先生に伺ってみました。
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日本橋動物病院 院長

園田 開(そのだ かい)

2007年に開業した「日本橋動物病院」(東京都中央区)の院長であり、皇居の警察犬担当獣医師。年間のべ10,000匹以上もの犬・猫・その他動物を診療し、豊かな経験を基にした、動物と飼い主に寄り添うスタイルが好評。近々、愛犬のボーダーコリー・さよちゃんとのアウトドアデビューを計画中。診療で出会う物語を分かりやすくかきとめたブログ「かいぼっち」は、愛犬・愛猫家必見!

園田先生のブログはこちら:かいぼっち
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hinata編集部

舟橋 愛

乗馬のインストラクター、制作会社などを経て編集ライターとして独立。甲斐犬に魅せられて2020年に房総半島に移住。本業の傍ら、保存のために甲斐犬のブリーダーをしている。現在、一緒に暮らす犬は7頭。愛玩動物飼養管理士2級、ペット共生住宅管理士。

犬の熱中症はどうして起こる?

日陰にいる犬

出典:PIXTA

夏になると犬が運動していなくてもハアハアしていたり食欲が落ちたりすることが。「熱中症かも…」と心配になってしまいますが、実際どういう症状が出たら本当に熱中症の疑いがあるのかって案外知らないもの。犬の熱中症とはどんな病気で、どんなときに起こり得るのでしょう。
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園田 開先生

熱中症とは、高温環境とその他に誘発される原因によって、犬の体温が高温になって起こる病気のことです。 犬の体温が高温になるのは、高くなった体温を下げることができなくなって起こる「高体温」と、 体に起こった炎症や感染症によって起こる「高熱」の2つがありますが、 熱中症の始まりは高体温。つまり、体温低下機能の異常なんです。 熱中症は、程度によって「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」の3つに分類され、熱射病は高熱によって全身に炎症反応が起こり、脳障害によって意識がはっきりとせず、多臓器不全が起こっている状態。こうなるとほとんどが24時間以内に死亡します。
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hinata舟橋

かなり怖い病気ですね…。体温を下げることができなくなるというのは、やはり異常な暑さの環境に長時間いることが原因になるのでしょうか?
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園田 開先生

理由はいくつかあるのですが、最も多いのは仰る通り、高温多湿の環境にいることです。私たちは「高温多湿の環境での運動」と表現しますが、この場合の運動は積極的な運動ではなく、「ただそこにいること」を意味します。
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hinata舟橋

ただ蒸し暑い場所にいるだけでも熱中症リスクが高いということですね。
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園田 開先生

そうです。悪い条件が重なれば、30分程度でも熱中症を発症しますよ。あとは、体に溜まった熱を逃がす「放熱機能」が低いこと、熱生産が増加すること…例えば、体温が上がるほど動き回るといったことも原因になります。

同じ環境でも熱中症になりやすい犬がいる

いろいろな種類の犬が並んでいるところ

出典:PIXTA

高温多湿の環境に置かれること、放射機能が低いこと、熱生産が増加すること。熱中症の原因となるのは主にこの3つだそうですが、同じ条件であっても犬種や年齢、基礎疾患などによってリスクは高まるようです。
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園田 開先生

呼吸器や循環器の病気がある犬はリスクが高くなり、特に上気道に疾患があると、口や鼻から熱を逃がす動きが低いので高体温になりやすいんです。先にお話しした、「放射機能が低い」、ということですね。
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hinata舟橋

基礎疾患以外の、年齢や犬種による違いはどうでしょうか?
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園田 開先生

熱中症になりやすいのは、短頭種、咽頭麻痺、気管虚脱、肥満、心疾患、老犬、被毛が厚いといった犬が挙げられます。短頭種はフレンチ・ブルドッグやボストン・テリア、パグ、シーズー、ペキニーズといった鼻が短い犬種のことです。

犬の熱中症リスクが高まる気温は何℃から?

気温計が35℃を示しているところ

出典:PIXTA

熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された「暑さ指数」(WBGT)によると、人間の場合、気温28℃以上から「警戒」31℃以上で「厳重警戒」35℃以上で「運動は原則中止」となります。 ※気温のほか、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境が加味されます。 犬の場合、危険の目安となる気温はあるのでしょうか?
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園田 開先生

犬が熱中症を発症する気温はさまざまで、環境や動物の状態によります。でも、高温多湿に対して犬の体が順応できていない時期に多く、初夏の気温が高くなり始める時期は特に注意が必要です。 また、いつもは室内にいて散歩のときだけ外に出る犬が、長時間にわたって高い気温の下におかれる場合は、熱中症のリスクを気にしなくてはいけません。
ということは、室内犬がキャンプやアウトドアに行く場合も気を付けた方が良さそう。園田先生曰く、特に、初夏から秋口までのアウトドアは注意が必要だそうです。風通しの悪いテントの中やクルマの中は特に気を付けたい場所。テント泊であれば、ベンチレーションは必須!

こんなサインがあったら危険信号!熱中症チェック

暑くてぐったりしている犬

出典:PIXTA

発症してしまってからでは、致死率が圧倒的に高くなる熱中症。その前に発見できるかどうかが大きな分岐点になりそうです。犬が熱中症になりかけているとき、以下のような兆候があると危険信号だそう!
  • 体温が高い(耳の毛のない側を触る)
  • パンティング(ハアハアする呼吸が速くなる)
  • よだれが出ている
  • 元気がなくなる
  • 嘔吐
  • 下痢
  • いつも必ず欲しがるオヤツを食べようとしない
  • 名前を呼んでも反応が弱い
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園田 開先生

この中でも、何より高体温に気付かなければいけません。 肛門に入れて測る犬用の体温計が使えるなら、日頃から体温を測り、犬の平熱を知っておくことがとても有用です。肛門で測った体温40.5℃を超えていれば、ほぼ熱中症です。 犬の高体温は熱中症の初期に起こるため、気付くことで助かる確率も高くなります。
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hinata舟橋

犬の平熱というと、大体38.5℃前後なので、たった2℃くらい上がっただけで熱中症になってしまうんですね!?
犬の体温と健康被害の関係はものすごくシビアで、 40.5℃を超えたら熱中症と診断。 41℃~43℃で脳障害が起こる可能性あり。 43~49℃で臓器不全が起こる可能性が高くなる。 49℃以上が5分以上続くと死に至る。 のだそうです。愛犬の平熱を知り、できれば家庭でも体温が測れるようにしておきたいですが、犬用の体温計がない場合や外出時の緊急時に熱を測る方法はあるのでしょうか。
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園田 開先生

体温計がない場合は、耳の毛がない部分を触っていつもより熱いかどうかを確認するといいですよ。人間がおでこに手を当てて熱を測る感覚と同じですね。 これも、平熱の感覚を知らないと判断ができないため、散歩の前、散歩から帰ったときなどに耳を触り、いろいろなタイミングで日頃から犬の体温感覚を知っておくことをおすすめします。
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hinata舟橋

人間のおでこと同じ感覚で耳で測れる…というのは分かりやすいですね。熱がなくても、ハアハアしたりよだれが出たり、元気がなくなる…というのも、症状があれば熱中症を疑った方がいいのでしょうか?
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園田 開先生

実は、それらの症状で「熱中症だ!」と病院を訪れる患者さんもとても多いのですが、パンティングやよだれ、元気がなくなるなどは熱中症ではなくても出る症状なので一概にそうとは言えません。 これらの症状が出て疑わしいと思ったら、予断をせず、症状や体温をそのまま伝えていただいて、診断を待って頂ければと思います。

熱中症の心配があるときはまず流水で犬の体を冷やす

これらの症状を知った上で、外で遊ばせた後などに、熱中症かも…と思った場合、本当にそうなら一刻を争う状況です。病院に連れていくまでに、飼い主にできる応急処置はあるのでしょうか。
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園田 開先生

熱中症の心配がある時には、まず冷やす必要があります。最も有効な冷やし方は流水を犬に直接かけること。流水をかける時間は、まずは1分間。その後、犬の様子を見ながら繰り返します。 また、水をかけながら、扇風機やファンで風を送り、流水で冷やすのが終わっても、風を送り続けるのが有用です。動物病院に向かうときや、流水で冷やした後には、水で濡らしたタオルをかけて風を送ってあげる方法もあります。 ちなみに、水は必ず常温で!焦って早く冷やそうとして氷水や冷たすぎる川の水をかけると、逆効果になることがあります。
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hinata舟橋

冷たい水が逆効果というのは…?
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園田 開先生

犬の表面にある末梢血管が、冷やしすぎることで縮んでしまうからです。末梢血管の収縮で犬の熱が逃げにくくなってしまうんです。表面は冷えているけど、体の中は熱いままということ。 診察室に入った段階で、稀に平熱だけど実は熱中症にかかっている犬、というのもいます。体温だけで判断せずに動物病院を診察した方がいいというのもこういった理由があります。
水を流し続けることで体の表面が冷えて、ハアハアと速かった呼吸が穏やかになればほぼ心配はなくなるそう。犬が水を飲んだり、好きなおやつを食べたりできればなおさら安心ですが、それでも、できるだけ早い動物病院での診察がおすすめです。 暑い時期にキャンプに行くときは、近くの動物病院をあらかじめ調べておくとより安心!

キャンプ場での熱中症対策やあると便利なグッズ

扇風機の風にあたっている犬

出典:PIXTA

初夏から秋口のキャンプは気を付けた方がいい…というお話もあったものの、その時期はアウトドアのオンシーズンなのも確か。お出かけする際のおすすめのグッズや予防方法についても伺ってみました。
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園田 開先生

気温や湿度が高い時期に屋外で遊ばせる時は、できるだけ気温が高いところで遊ぶ時間を短くすることが大切です。流れる水や風があれば心配は少なくなりますが、それでも必ずということはありません。 グッズとしては、ファンや水に濡らして着せると熱を外に逃がしてくれるクールベストなどがおすすめです。クールベストとファンのW使いもいい方法ですよ。

人間も愛犬も快適!ワイヤレスの強力マルチファン

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hinata舟橋

テントの設営に関しては、ベンチレーションは必須だし、風通しや日陰にも気を配るということですよね。
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園田 開先生

そうですね…。これは思いつきなのですが、農家の方が農作物を暑さから守る「寒冷紗」というものがあります。強い太陽光を適度にやわらげてくれるものですが、こちらを使ってみるのもいいかもしれません。 タープでも問題ないと思うのですが、タープ自体が熱くなるとやや蓄熱もするのかなと思いました。
実はこれを聞いて、取材後に筆者の家の犬たちの小屋に試してみました。「寒冷紗」はホームセンターなどで、「遮光ネット」という名前で売っています。2m×2mで1,000円程度と価格もお手頃!
遮光ネット
筆者の家はブリーダーなので、大きな屋根の下に犬舎が4つと3つに分かれて設置されています。その入り口を寒冷紗(遮光ネット)で覆ってみたところ…なんと、ほんの30分ほどで犬舎内の気温が2℃下がりました! 購入したのは1mおきにハトメがあるタイプなので、ガイロープやカラビナを使ってタープのように固定することもでき、キャンプでの使い勝手もよさそうです。サイズもいろいろあるので、日影を作りたいスペースに合わせて選べます! これらのアイテムを駆使すれば、愛犬も比較的熱中症リスクを避けて夏のキャンプを過ごせそう。
寒冷紗で日光を遮っているところ

獣医さん的夏のおすすめ散歩コースで熱中症を回避!

影を選らんで散歩する園田院長先生と愛犬のさよちゃん
園田先生も愛犬のさよちゃんと夏のお散歩をするときは日陰を選んでお散歩。川沿いは涼しい風も吹いていそう!
一度かかると命の危険にさらされる熱中症。回避するには、「高温多湿」「長時間の直射日光」「熱い場所での激しい運動」を避けることが大事です。それでも外に連れ出してあげたい場合は、日影を選んで歩いたり、気温が高くない朝晩を選んでのお散歩が比較的安全なのだそう。 次回は、それを踏まえて朝晩でも楽しめる夏のお散歩モデルコースを紹介予定。熱中症に気を付けながら、愛犬と楽しい夏を過ごしましょう! 愛犬とのアウトドア情報や知りたいことなど募集中!Instagramで 「#hinataいぬ部」のハッシュタグを付けてどんどんお寄せください。Instagram(@hinata_outdoor)と「#hinataいぬ部」もぜひフォローよろしくお願いします!

今回紹介したアイテム

商品画像犬用クールベストS遮光ネットハトメ付き2m×2m
商品名犬用クールベストS遮光ネットハトメ付き2m×2m
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#hinataいぬ部

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