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「アニサキス」これで怖くない?サンマの秋に知っておきたい知識と対策
2023.09.05ノウハウ
秋になると恋しくなる「サンマ」。キャンプでも、BBQや炭焼きで食べるという人も多いのではないでしょうか。でも、気を付けたいのが寄生虫の「アニサキス」。食材の調理で注意すべきことは?もし食べてしまったらどうしたらいい?などなど、気になるあれこれを専門家に聞きました。
監修者
新見正則医院院長 新見正則
1985年慶應義塾大学医学部卒業。'98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研さんを積む。
現在は自由診療のクリニック新見正則医院で、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓もう普及のためにがん、難病・難症の治療を行っている。新刊『フローチャート整形外科漢方薬』はAmazonで三冠(臨床外科、整形外科、東洋医学)。最新刊は「しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通」。
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制作者
キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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もくじ
「アニサキス」ってどんな生き物?
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ここ数年ですっかり有名になった「アニサキス症」。旬の味覚を楽しむキャンパーにとっても、決して他人事ではありません。外科・免疫学・漢方と、医学のジャンルを横断して幅広い知見を持つ新見正則先生にお話を伺ってみました。
――改めて、アニサキスとはどんな生態の生き物なんですか?
新見先生:アニサキスとは、海の生物に付く寄生虫の一種です。小さな幼虫の時はオキアミなどに寄生しており、それを食べたサバやイカへ、最後はクジラへと宿主を変えながら成長していきます。悪さをするのはなぜか、我々が食べるサバやイカなどの魚介に付いている幼虫のみなんですよ。そのときの大きさは大体2~3cm。丸まってると5mmくらいです。
――その、ちょうど悪さする状態の幼虫を食べると、食中毒の「アニサキス症」になっちゃうんですね。
新見先生:と、思うでしょう?
――えっ。
新見先生:どうもね、アニサキスは一匹でも体に入ったら最後、ほぼかかる!って思われてるような風潮がありますがそうじゃありません。逆に、かかることの方がめずらしいです。ヒトの体内に入ったとき、まれに、胃の壁に吸い付いちゃう子がいて、そうすると人によってアレルギー反応が起こることがあります。それで初めて「アニサキス症」になるんです。
――ということは、かみつかれて痛いわけじゃないんですね。
新見先生:そう、胃の粘膜って痛覚がないんですよ。アレルギーなので、つんつんされても無症状な人もいます。だから、体内に入っても気づかないうちに排せつされてるということもあるわけです。
体内に入るとどんな症状や危険があるの?
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――そうは言っても、かかった場合は重篤な症状が出るんですよね?
新見先生:と、いうイメージが強いんですけども、
――そうなんですか!?
新見先生:あえて言うなら、通常は胃を刺激するアニサキスが腸まで行って悪さした場合は腸壁を食い破って潜行したり、腸閉そくを引き起こしたりする…ということがあるかもしれません。あと、複数回かかることによるアナフィラキシーショックとか。でも、本当にまれな例だと思います。
――どんな症状が出たらアニサキス症を疑った方がいいんでしょうか?
新見先生:魚介類、特に生の魚を食べてから、3~10時間で症状が出ることが多いです。それくらいで胃が痛い、みぞおちが痛い、吐き気がする…といったことがあれば疑わしいです。
――ちなみに、アニサキス症を放っておいたらどうなるんでしょう?
新見先生:3~4日放っておくと自然に流れていって治ります。とはいえ、強い痛みが出たらほかの病気の可能性だってあるわけですから、まずは病院へ行った方がいいですね。
加熱すればOK?塩焼きは?調理で気を付けるべきこと
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――秋になるとアニサキス症、増えますよね。キャンプ料理でもサンマが人気なのですが、下処理や調理でどんなことに気を付けたらいいですか?
新見先生:アニサキスは-20℃で24時間以上、もしくは60℃で1分以上で死滅します。一番いいのは、冷凍の魚を使うこと。そうではない場合は、しっかりと焼くことです。
――内臓にいることが多いと聞くのですが、内臓も取った方がいいのでしょうか?
新見先生:内臓を取るというの、よく聞くんですが…実はね、
――では、内臓を取っても安全とは言えないんですね…。
新見先生:うん、でも、塩焼きにするにしても丸のままだと内臓って火が通りにくいでしょう。いるかいないかではなくて、しっかり火を通すという意味では取った方がいいですね。内臓が好きならしっかり奥まで焼いて食べればOKです。
あと、もしお刺身を食べたいならいつもお刺身をつくっているお店で買うのが一番。プロは、アニサキスが目視でわかるから取って提供してくれています。
食べてしまったときの治療や対策は?
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――もし海の魚を食べたあとに、疑わしい症状が出た場合はどうしたらいいですか?
新見先生:内視鏡ができる、消化器内科で診てもらってください。土日や夜だと診られる先生がいないことがあるので「緊急」で探すのも大切です。
――内視鏡で見つかった場合、どんな治療になりますか?
新見先生:アニサキスの除去ですが、痛みや吐き気はアレルギー反応なので、原因を取り除くことでケロリと治まります。
――酢や塩で死ぬとか、よくかんだらいいなんていう話も聞きますが実際はどうでしょう?
新見先生:酢や塩では死なないんですよね。胃の中で悪さできるんだから、酸に強いということです。あと、よく噛んでも小さいので噛み切れているかわかりません。
アニサキスを正しく知っておいしいサンマの秋を満喫!
サンマやサケなど、秋においしくなる魚にも寄生しているアニサキス。世に出回っているイメージほど怖がりすぎることもないものだというのがわかりましたが、かかってしまうと楽しいキャンプも台無しです。海の魚は冷凍を使うか、しっかり焼いて!それでもかかってしまったら、内視鏡ができる消化器内科へ緊急で。このポイントをしっかり押さえて、食欲の秋を楽しみましょう。
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