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夏のキャンプ飯では食中毒への注意が必要

【医師監修】キャンプの食中毒!意外と知らないリスクを専門医が徹底解説

2024.06.30ノウハウ

屋外で食べるキャンプ飯は最高!しかし、気温が高くなり、湿度も上昇する夏の時期は「食材の保存や衛生管理が心配…」なんて声も耳にします。そこで今回は、キャンプに潜む食中毒のリスクや対処法について、専門医にインタビュー。ポイントを押さえれば、屋外での食事がより安全に楽しめるはず。ぜひチェックしてみてください!

夏場のキャンプ飯、食中毒に気をつけてる?

バーベキューやキャンプ、ビアガーデンなどアウトドアで食事を楽しむ機会が増える夏の時期。安心して楽しむために、食中毒のリスクや注意点を知っておきたいものです。 特に、キャンプで行う屋外での調理は要注意。衛生的に整っている自宅のキッチンとは違い、食中毒のリスクがあちこちに潜んでいます。気をつけているつもりでも、意外と見落としていることも。キャンプに潜む食中毒の危険について、総合内科の専門医に教えてもらいました。

専門医の船越真木子医師に教えてもらいました!

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京都の「まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック」院長

船越真木子(ふなこし・まきこ) 医師

2005年神戸大学医学部卒。その後、基幹病院や京都大学医学部附属病院の勤務を経て、2021年に「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」(京都市伏見区)を開院。がん死の第一位である大腸がん、第二位である胃がんを早期発見するため、苦痛の少ない高精度な内視鏡検査を提供している。ミッションは『人生を最高に楽しめる体と心を支える』。総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。

話を聞いたのは、京都市にある「まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック」院長の船越真木子先生。大腸がんや胃がんの早期発見に向けた提案や検査を実施しており、生活習慣病の診断や治療にも詳しい総合内科や消化器病などが専門の医師です。 プライベートでは、“アウトドア派”で料理好きという船越先生。キャンプならではの食中毒対策や、見落としがちな食の危険について、詳しく話を聞きました。

そもそも食中毒とは?

腹痛で苦しそうな様子の女性

出典:PIXTA

そもそも食中毒とは、もととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食材を食べることによって、下痢や腹痛などの症状が出る病気のこと。軽い腹痛で治まる軽度ものから、高熱が出て命に関わるものまで、さまざまな原因物質や病状があります。 細菌による食中毒にかかる人は、細菌が育ちやすい6月〜9月ごろが最も多い(※)といわれています。湿度や気温が高くなる夏の時期は、特に注意が必要になってくるのです。 ※農林水産省のデータによる

【症状と潜伏期間】腹痛や嘔吐…発熱も

主な病状としては、下痢や腹痛のほかに、発熱、嘔吐などが挙げられます。 ノロウイルスやアニサキスが原因の病状を、ニュースなどで耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。 潜伏期間は、短くて1時間ほどから、長い場合では7日間と幅広く「いつの食事が原因かわからないこともある」と船越先生は言います。風邪や熱中症と似た症状が出るケースも少なくないため、気がつかないうちに食中毒になっていることもあるようです。

【原因物質】肉や魚だけでなく、水や土にも注意

原因物質としてよく知られているのが、鶏の生食による「カンピロバクター」や、十分に加熱していない肉などに潜む「サルモネラ菌」、生肉や生野菜が原因の「腸管出血性大腸菌」などがあります。 土や水、動物に潜み、煮込み料理の際に気をつけたい「ウェルシュ菌」や、人間の皮膚にいる常在菌で、ニキビや傷口を触った手で食材を扱うと菌がつく「黄色ブドウ球菌」なども食中毒の原因として多いようです。 生肉や生魚だけにに気を配れば良いわけでなく、そのほかにも注意が必要。ここからは具体的なキャンプでのチェックポイントについて教えてもらいます。
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船越真木子 医師

生肉や生魚だけでなく、土のついた野菜や不衛生な水、指先の傷に貼ったままの不潔な絆創膏なども要注意です!

【ポイント1】食材の保存!小分けにして事前準備を

食材を小分けにしてクーラーボックスに入れている様子
1つ目のポイントは「食材の保存」です。夏キャンプの定番といえばバーベキュー!食材は生肉や野菜がメインですが「肉と野菜は、ジッパー付きポリ袋にわけて入れて」と船越先生は強調します。 野菜は土がついたまま販売されていることもめずらしくありませんが、土の一部に「土壌菌」が潜んでいることも。ピーマンや玉ネギなどは、事前に自宅で水洗いし「切って袋に入れておくのがベスト」といいます。 また、クーラーボックスの温度を低く保つことも重要で、目安は10℃以下。「肉は事前に切り、冷凍しておくと菌が繁殖しにくい」と船越先生。クーラーボックスの開閉回数が多いと、内部の温度が上昇してしまうのも気をつけたいポイント!生肉はポリ袋に小分けしたうえで、上下を保冷剤ではさむことが、温度を低く保つためには大切だそうです。
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船越真木子 医師

クーラーボックスから頻繁にドリンクを取り出したい場合は、ドリンク用と食材用、それぞれクーラーボックスを用意することが効果的です!

【ポイント2】食材とメニューも要チェック

ひき肉とかたまり肉を並べた様子
ひき肉(左)と、かたまり肉(右)
続いてチェックしたいのが「食材とメニュー」です。 上の写真を見てください。ひき肉とステーキ用のかたまり肉が並んでいますが、どちらが食中毒のリスクが低い“キャンプにおすすめの肉”だと思いますか? 正解はステーキ用のかたまり肉です。実は、ひき肉は空気に接触する面が多いことなどから菌がつきやすく「アウトドアには不向き」とのこと。また生の鶏肉は、カンピロバクターが付着する危険があるため、キャンプで扱うのは避けたい食材です。
手袋をつけて肉に下味をつける様子
生肉を扱う際には「手袋やトングを使って触ること」も基本的な食中毒対策として知られていますよね。実は、事前に自宅で肉を切ったり下味をつけたりする際にも、唾液や皮膚から菌が付着する可能性があるため「マスクと手袋をつけて下準備をするとより安全」だといいます。 調理方法やメニューについては、「鍋料理や煮込み料理など、しっかりと火を通す料理がおすすめ」と船越先生。バーベキューなど肉や魚を焼く場合には「十分に火が通ったか確認してから食べて」と優しく訴えます。
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船越真木子 医師

近年SNSなどで人気が高い、低温調理のローストビーフなどは、火が通りきっていないケースが多いため要注意!おしゃれだけど、アウトドアでつくるのは避けたほうが良さそうです。

【ポイント3】再加熱や水にも注意!

屋外でカレーを鍋にかけている様子
最後に見落としがちな注意点について聞きました。 多くの人がやってしまいがちなケースが、夜に調理したカレーや煮込み料理を、翌朝に再加熱して食べること。大皿料理で繁殖してしまうウェルシュ菌は、熱に強く、再加熱しても死滅しないのだそう。「残り物は出さずに、なるべく2~4時間以内に食べきることがおすすめ」と語気を強めます。 ふきんやダスター、タオルを使いまわすことで菌がついてしまうケースもあるそう。アウトドアではペーパータオルや使い捨てのウエットティッシュを使うほうが、食中毒を予防できることも覚えておきたいです。
川の水で野菜を洗う様子
さらに意外と見落としがちな注意点が、川の水です。 キャンプ場の近くに透き通った川が流れていて、思わず触ってみたくなり、顔や食材を洗ったりしたくなる気持ちになることも。しかし、要注意!河川や沢の水には、食中毒の原因となる菌が潜んでいる可能性があるため、容易に口に含まないよう気をつけたいものです。
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船越真木子 医師

飲み水や調理はもちろん、食材や食器を洗う際にも、水道水や飲用が認められている水を利用してくださいね。

キャンプで食中毒の症状が出てしまったら?

もし、キャンプの最中に、食中毒の症状が出てしまったらどうしたら良いのでしょうか。 子どもや高齢者など体力がない人の場合、嘔吐や発熱、下痢の回数が多いと、体内の水分が奪われてしまい脱水症状を引き起こす可能性もあるので特に注意が必要。「体力のない子どもやお年寄りがぐったりしている場合は、救急要請も検討して」と船越先生は話します。 また、体力のある大人の場合、1回の嘔吐や下痢で症状が治まるケースも。発熱や身体のだるさなど、熱中症と似たような症状が出るケースもあり、そのときには涼しい場所で休んで回復を待つのが良いそうです。
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船越真木子 医師

腹痛などの症状が続く場合や、食中毒が疑われるときは、内科や消化器内科、胃腸科を受診することをおすすめします。

安全にキャンプ飯を楽しもう!

夏のキャンプ飯で気をつけたいポイントについて、専門医の船越真木子先生に解説してもらいました。 せっかくのおいしいキャンプ飯も、食中毒で体調を崩してしまったら苦い思い出になりかねません。非日常を楽しむアウトドアだからこそ、普段の生活よりも一層、衛生管理に気を配りたいもの。しっかりとした知識を持って注意すれば、予防も殺菌もできるはずです。ポイントを押さえて、安全にキャンプ飯を楽しんでください!


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