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犬が車から顔を出しているところ

愛犬の「車酔い対策」で長距離キャンプをもっと楽しく!症状やグッズも紹介【獣医師監修】

2023.09.26ノウハウ

※本記事には一部プロモーションが含まれます

風も涼しくなり、ドライブが気持ちいい秋。「愛犬を連れてちょっと遠くのキャンプ場まで行ってみよう」と計画する犬連れキャンパーさんも多いのではないでしょうか。一方で、「うちのコ、車酔いするから遠出はムリ…」という人も。そこで、今回は車酔いの原因と対策を獣医さんにヒアリング。ドライブの不安をなくして、行楽シーズンを満喫しましょう!

先天的にも後天的にも原因あり!犬も「車酔い」する

クルマの座席に置いたバッグに入っている犬

出典:PIXTA

犬連れキャンパーさんの中にも悩まされている人がいると思いますが、「犬も車酔い」します。ブリーダーとして7匹の甲斐犬と暮らす筆者宅の愛犬たちも、7匹中4匹はドライブが苦手。 原因には遺伝もあるようで、車酔いをする犬の子どもには、同じく車酔いする個体が多いように感じています。また、後天的な理由で「平気だったのに車酔いになった」という話を聞くことも少なくありません。キャンプや登山などで車に乗せたいときも、愛犬が具合が悪くなったら…と腰が重たくなってしまいますよね。

専門家に教えてもらいました

そこで今回は日本橋動物病院の園田院長に原因と対策を取材!少しでも愛犬を快適にアウトドアへ連れ出してあげるためのノウハウを伺いました。
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日本橋動物病院 院長

園田 開(そのだ かい)

2007年に開業した「日本橋動物病院」(東京都中央区)の院長であり、皇居の警察犬担当獣医師。年間のべ10,000匹以上もの犬・猫・その他動物を診療し、豊かな経験を基にした、動物と飼い主に寄り添うスタイルが好評。近々、愛犬のボーダーコリー・さよちゃんとのアウトドアデビューを計画中。診療で出会う物語を分かりやすくかきとめたブログ『かいぼっち』は、愛犬・愛猫家必見!

日本橋動物病院のサイトはこちら:日本橋動物病院 園田院長のブログはこちら:かいぼっち
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hinata編集部

舟橋 愛

乗馬のインストラクター、制作会社などを経て編集ライターとして独立。甲斐犬に魅せられて2020年に房総半島に移住。本業の傍ら、保存のために甲斐犬のブリーダーをしている。現在、一緒に暮らす犬は7匹。愛玩動物飼養管理士2級、ペット共生住宅管理士。

犬の車酔いの「原因」と「症状」は?

小さなクルマに乗っているボストンテリア

出典:PIXTA

犬が車酔いする「2つの大きな原因」

――そもそも、犬が車酔いする原因って何でしょうか?
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園田院長

犬の車酔いの原因は、身体的なもの精神的なものの2つに大きく分けられます。中耳炎や前庭疾患などの耳の病気があるコや、「副作用に嘔吐や下痢がある薬」を服用しているコがなることもありますが、これらは一時的なものです。
――身体的な原因と精神的な原因、それぞれ詳しく教えてください。 園田院長:まず身体的な原因ですが、平衡感覚を司る「内耳」が、乗り物の揺れや景色の流れといった視覚的な刺激などにより混乱することに起因します。 ――なるほど。人間でも「三半規管が弱いと乗り物に酔いやすい」と聞きますね。 園田院長:はい。ちなみに、人間の子どもは大人より車酔いをしやすいですが、それって三半規管を含む内耳の発達が十分ではないからなんです。同様に、犬でも車酔いは内耳が未発達な子犬に多いとされています。ただ、そのような場合は1歳くらいまでに車酔いを克服する犬も多いんですよ。もちろん、個体差はありますけどね。 ――もう一つの、精神的な原因はどのようなものでしょうか?
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園田院長

不安やストレスです。体験したことのない揺れや車内の温度などが犬にとって不快な場合などに起こりやすいです。また、初めての乗り物で、どこに連れて行かれるんだろう?という不安も車酔いの一因になり得ます。
――こちらの方が身体的原因よりも対策しにくそうですね…。 園田院長:そうかもしれません。一度車に酔ってしまうと、そのときの嫌な記憶や感覚が思い出されて、車に乗っただけで、動いていなくても反射的に涎が出たり息が荒くなったりと、酔ったような症状があらわれることもあります。

犬の車酔いに「におい」は関係ある?

マスクをしているパグ

出典:PIXTA

――車に乗るだけで酔うといえば、車の「におい」に酔うという話を聞くこともあります。犬はガソリンや芳香剤のにおいが苦手だったりしますか?
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園田院長

という説も確かにありますが…。犬って、いいにおいとか悪いにおいとかはあまり感じていないのかもしれない、と考えています。
――と、言いますと? 園田院長:彼らは人間の3,000倍から10,000倍もの嗅覚力があると言われていますが、平気でほかの犬のお尻を嗅いだりうんちを食べたりしますよね。悪臭だと感じているなら、とてもそんなことはできないと思うんですよ。 ――確かに…。ガソリンが苦手で酔うなら、排気ガスを出しながら車が走る道路沿いなんて散歩できないはずですね。 園田院長:そう、だからどちらかというと、酔って気持ち悪くなったときにガソリンや芳香剤のにおいがあったことで、嫌な記憶にそのにおいが紐づけられているのではないでしょうか。 ――これこそまさに精神的原因ですね…。

急に車酔いするようになるのはなぜ?

ぐったりしているトイプードル

出典:PIXTA

――今までは平気だったのに急に車に酔うようになった…というのも精神的な原因でしょうか? 園田院長:そうですね、それまで平気だったなら身体的というよりは精神的な原因のように思えますが、内耳の平衡感覚の限界、という可能性も考える必要があるでしょう。 ――内耳の平衡感覚の限界?
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園田院長

例えば、これまでは1時間程度の乗車しかしたことのない子が、3時間の乗車になったら酔ったとか、これまで平坦な街中だけだったのが、カーブの多い山道を経験したら吐いたとか。
――そういう話、周りでもよく聞きます! 園田院長:そうした経験があると、その後、これまでと同じような短時間の乗車時間にも関わらず、車酔いをするようになることがあるんですよ。 ――うちのコは平気だと思ってドライブしていると、いつの間にか限界突破することがあると…。 園田院長:そういうことです。車酔いの症状には、車酔いじゃなくてもあらわれる一般的な症状もあって、飼い主さんが気付いていないだけ…ということもあるかもしれません。愛犬を車に乗せるときは、注意して見守ってあげてください。

こんなサインがあったら注意!車酔いの主な「症状」

チェックシート

出典:PIXTA

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園田院長

以下は、車酔いの症状であらわれやすいものです。鳴いたりあくびしたりというのは普段から見かける行動かもしれませんが、例えば声が切羽詰まっていたり、あくびが頻繁だったりと、いつもと違う様子が見られたら車を停めて休憩させてあげるといいですよ。
【主な車酔いの症状】
  • 鳴く
  • よだれを垂らす
  • あくびが多い
  • 唇をなめる
  • 震える
  • 喘ぐ
  • 嘔吐

TPO別・車酔い対策と防止策~出発から帰宅まで~

エサを待っている犬

出典:PIXTA

乗車前にできる車酔い「防止策」

――車酔い対策ですが、乗る前・乗車中・目的地到着後・帰宅後などタイミングによって対策も変わると思います。シーンごとに車酔いの防止策と対策を教えてください。まずは乗車前から!
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園田院長

乗車8時間前までには食事を済ませるのが理想です。直前には食べ物を与えない方がいいですね。
――2~3時間前、というのは聞きますが8時間前って結構早いですね! 園田院長:「空腹すぎるのもよくない」とする説もありますが、胃の中に吐くものがない方が嘔吐につながりません。完全に胃の中のものが消化される時間を考えると8時間前くらいには食事を終えているのがいいんですよ。ただ、生後半年未満の子犬の場合には、低血糖症のリスクがあるので乗車2時間前からの食事制限で十分です。 ――酔い止め薬はどうですか? 園田院長:酔い止め薬も有効です。主に、「マロピタント」「ジフェンヒドラミン」という薬が使われるのですが、身体的原因に効果が期待できるマロピタントは吐き気止めとして、精神的原因に効果が期待できるジフェンヒドラミンは軽い鎮静薬として与えます。 どちらも副作用の心配の少ない、あったとしても眠くてボーッとする程度のお薬です。動物病院で目的に合わせて処方してもらってください。これらのお薬以外では、過去に動物病院で処方してもらって実際に良く効いたものがあれば、そのお薬を使うのがおすすめです。

乗車中にできる車酔い「対策」

サービスエリアのドッグラン

出典:PIXTA

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園田院長

乗車中は、水がいつでも飲めるようにしておくこと、完全に酔う前に休憩を取ること、車内を犬にとって快適にするといったことを心掛けてください。
――食事は早めに済ませますが、水は制限しなくていいんですね。 園田先生:はい。ただ、吐いてしまうようなら与えない方がいいです。飲んだ水を吐いた場合、吐く水分量は飲んだ水分量より多いので、繰り返すことで脱水症状が起きることがあるんですよ。 ――それは車酔いそのものより怖いですね…。 園田先生:車内が暑いときなどに脱水症状になれば命に関わりますからね。水を吐いてしまった犬に「喉が渇くだろうから」と与えて、また吐いて、また与えて…ということを繰り返している飼い主さんがたまにいらっしゃいますが、これは完全に悪循環です。 ――完全に酔う前に休憩を~というのは、先ほどのお話にあった「酔った記憶をトラウマにさせない」「内耳の限界を超えさせない」ということでしょうか。 園田先生:そういうことです。また、車内を快適な温度に保ち、慣れたクレートやキャリーバッグで安心させてあげるのも大切です。 ――最近はドッグランのあるSAなども増えているので、事前に調べておいてこまめに休憩を取りながら行けば、ドライブに楽しい記憶が加えられそうですね。

目的地到着後や帰宅後の「ケア」

テントの隣に2匹の犬がいるところ

出典:PIXTA

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園田院長

到着後、犬が酔ってしまっていたり、ナーバスになっているようなら水と食事に注意してあげる必要があります。また、落ち着かせるためにスキンシップや日常を思い出させるアイテムを取り入れるといいでしょう。
――水と食事はどんなことに気を付ければいいですか? 園田院長:いずれも、十分な量を用意してあげる必要がありますが、それを食べるかどうかは犬に任せてください。食べないからとあれこれ用意して無理に食べさせる必要はありません。水も、繰り返し吐くようなら与えないようにし、あまりに嘔吐が続くようなら動物病院で受診してください。 ――日常を思い出させるというのは? 園田院長:車での移動で知らない場所に行くというのは、犬によっては大きなストレスになることがあります。そこに犬にとっての「日常」を持ち込むことは、安心感を与える助けになります。 飼い主さんと遊ぶことが好きな子なら、いつもやる遊びでもいいし、思いきり撫でてあげるスキンシップでもいいでしょう。犬は嗅覚がすぐれているので、家庭でいつも嗅いでいるにおいというのも有効です。

あると安心!車酔い対策「グッズ」

愛犬を車酔いにさせないためには事前の準備や途中での休憩が大切。それでもなってしまったときにあると便利なグッズを、獣医さんと愛玩動物飼養管理士の立場から選びました。また、犬が入るクレートのサイズも意外に重要なので併せて紹介します。
クルマに積んだクレートの中にいる犬

出典:PIXTA

1.体にぴったりなサイズの「クレート」

「クレートの中で自由に動ける方がいいのでは…」と思うかもしれませんが、動けるということは車の振動で体が大きく揺れるということです。車が苦手な子は、できるだけぴったりサイズのクレートに入れて、振動がもっとも少ない場所に固定して置いてあげましょう。下にクッションになるものを敷くのもおすすめです。

2.厚手の「ペットシーツ」

酔うと、クレートの中で嘔吐したり排せつしたりしてしまうことも。厚手のペットシーツを敷いておけば、クレートに落ちた汚物もまとめて拭き取って新しいものに交換するだけ。愛犬の手足が吐しゃ物で濡れたときも、タオルだとすぐ駄目になってしまいますがペットシーツなら使い捨てできて便利です。

3.においを漏らさない「防臭袋」

狭い車内では、愛犬の排せつ物や吐しゃ物を片付けたあとにそれらを入れておくゴミ袋も重要。「BOS(ボス)うんちが臭わない袋」は、普通に口を縛るだけでにおいをカット。長時間置いても悪臭が発生しません。

4.消臭効果もある「除菌スプレー」

クレートが汚れてしまった場合、汚れやにおいが取り切れないまま犬を戻すと不衛生なばかりか、また酔ってしまう原因にもなりかねません。犬が舐めても安全な除菌スプレーがあれば、もし汚してしまっても安心です。

5.心を落ち着かせる「CBDオイル」

CBDオイルは、近年、人間の医療や健康分野でも話題の成分。大麻草由来の抽出物、カンナビジオールのことですが、生体へ有効な影響があるという研究報告がされています。大麻草由来といっても、いわゆるマリファナとはまったく異なり、依存性もありません。犬用CBDオイルも発売されており、リラックスやストレス解消への期待がもてます。※事前にかかりつけ獣医に相談し、用法を守って使用しましょう

ウソ?ホント?犬の車酔いに関するetc.

最後に、巷で聞く車酔いの気になる噂あれこれを聞いてみました。生き物なので、個体差や状況による変化はもちろんありますが、方向性だけでも正しいのか好ましくないのか分かると安心ですよね。参考にしてみてください。
犬と〇×の札

出典:PIXTA

――ラベンダーの香りが犬の車酔いに聞くって本当ですか?
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園田院長

〇!ラベンダーの香りは犬を落ち着かせる効果があるようです。ただ、車酔いをしたときにラベンダーの香りがしていると嫌な記憶への紐づけになりかねないので、酔いそうなら車を停めて、落ち着かせた状態で嗅がせてあげるのがいいでしょう。
――車に乗る前に生姜を少し与えると酔いにくいって本当ですか?
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園田院長

〇!生姜は車酔いの自然療法として使われることがあります。生姜汁やすりおろした状態で与えますが、車酔いの程度によっては効果が限られます。与える量は、大人が薬味に使うくらいの量を10とするなら、10kg以上の犬には同量程度あげて構いません。5kg以下の犬にはその半分。子犬や超小型犬はさらに減らして様子を見ながら与えてください。
こちらもチェック!
●漢方の生姜ドリンク● ・生の生姜2片と水1カップを5分煎じたものを冷ましておき、すっかり冷めたものを車に乗る1時間前に飲ませる。猫や子犬なら茶さじ1、中~大型犬は1/3カップ程度
※犬にハーブ類やサプリメントを与える際は、事前にかかりつけ獣医に相談しましょう。
――耳の気管が発達する子犬のうちに車によく乗っていると酔わないって本当ですか?
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園田院長

×!車酔いの原因の一つは内耳の未発達ですが、耳の発達には、成長するための時間が必要です。車に頻繁に乗せることで、耳の発達が早くなることはありません。ただ、車に慣れさせるという意味では、子犬の頃からトレーニングするのは良いことです。
――クレートに入れておくより、座席に座らせておくほうがいいって本当ですか?
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園田院長

×!クレートに入れても入れなくても、大切なことは犬をできるだけ車の振動が少ないところに置くことです。犬に移り変わる景色を見せないことも車酔い防止には大切なので、座席は酔ってしまう可能性も…。ただ、何を気にしていて、どうすれば安心するかは犬によるので一概には言えません。愛犬に合わせたベストポジションを探してあげてください。

車酔いの心配を減らして、愛犬と新しい風景を見に行こう

行ってみたいキャンプ場があっても、愛犬が車酔いすると、どうしても二の足を踏んでしまうのが親心。でも、対策次第では車が苦手なワンちゃんとも新しいお気に入りスポットを開拓できるかもしれません。少しずつ慣らしていけば、克服しちゃうワンちゃんもいっぱい!この秋はちょっぴり遠い場所に目標を立てて、ドライブも楽しむキャンプをしてみては?

今回紹介したアイテム

商品画像N&S ペットキャリーバッグ 2ドア Sサイズアイリスオーヤマ 超吸収ペットシーツ 【超厚型タイプ】BOSうんちが臭わない袋 Mサイズビューティーエコ パルジェット 500mlNATURECAN 小型犬用CBDオイル 10ml
商品名N&S ペットキャリーバッグ 2ドア Sサイズアイリスオーヤマ 超吸収ペットシーツ 【超厚型タイプ】BOSうんちが臭わない袋 Mサイズビューティーエコ パルジェット 500mlNATURECAN 小型犬用CBDオイル 10ml
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