立場が変わると視点が変わる。キャンプスタイル別「私と雨のイイ関係」【雨キャンプ勝利の法則】
2021.07.07ノウハウ
雨の中のキャンプが「設営・撤収に手間がかる」「遊びの方法や時間が限られる」のは事実。しかし、ネガティブなイメージばかりが先行して、雨予報が濃厚になった瞬間にキャンプの予定をキャンセルするというのも、もったいない感じがします。ほかのキャンパーは雨をどう楽しんでいるのでしょうか?キャンプスタイルの異なる3タイプのキャンパーに取材し、それぞれの思う雨の魅力を聞きました。
制作者
hinata編集部 中西優花
編集長。出版社にて月刊メンズファッション誌の編集を経て、hinata編集部へ。外で最高のお酒を飲むために、手軽なおつまみ作りはお任せあれ。キャンプと野球観戦をメインに、好きなものは広く深く。アウトドア以外にファッション、料理、美容など多ジャンルに興味あり。
Instagram:@yukantoi
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もくじ
雨とのうまい付き合い方を見つければ、キャンプをもっと深く楽しめる
自然を相手にするのがキャンプという遊び。当然、その日の天候によってキャンプ場での過ごし方が変わります。言い換えると、雨の日は雨ならではの楽しみ方ができるということ。準備や片付けが面倒だからと予定をキャンセルするのではなく、その日の環境に合わせて臨機応変に対応する方が、よっぽど楽しくいられます。
今回は「家族での遊び」「キャンプ×お酒」「ブッシュクラフト」の3つに注目。それぞれのスタイルで雨の中でもキャンプを楽しむ4名に、雨を楽しむコツを教えてもらいました。
自分が率先して雨を楽しむ!ファミキャン王・ユウイチロウさんの場合
3人の子どもと一緒に、雨の中でもはしゃぎまくる!
hinataにもたびたびモデルとして登場してくれているファミリーキャンプの達人、ユウイチロウさんは「我が家では危険なレベルの天候でない限り、雨でもキャンセルせずキャンプを決行します」と語ります。
そもそもキャンプとは、人の手ではコントロールのできない自然相手の遊び。「その日の天気や気候を受け入れ、その中で楽しむ工夫と心を、子どもたちに身につけてもらいたい」という思いのもと、父親自らが率先して楽しむ努力をしています。
ユウイチロウさん一家は全員、父親譲りのキャンプ・アウトドア好き。3人の娘さんたちは雨でも外に飛び出します。そのため、雨の日のキャンプでは長靴が必須。着替えもいつもより多めに持っていきます。
とはいえ、やはり雨の日はタープの下やテントの中で過ごす時間が大半です。子どもたちが退屈しないよう、幕内でできるアクティビティを多めに用意するのもユウイチロウ流。家族でテーブルを囲みながら、カードゲームやボードゲーム、折り紙や塗り絵で遊ぶのも、非日常感があって楽しいものです。
雨ならではのハプニングも楽しい
雨の日の思い出を聞くと、「テント内に小川を流しました」とユウイチロウさん。かなりの雨が降っている中でキャンプをしていると、テントの四方八方から雨が入り込んできてしまいました。「このままだとリビング側の地面全体がぐちゃぐちゃになる!」と、家族全員で地面に溝を掘り、雨の通り道を作成。キレイな小川となり、全面がぬかるんでドロドロになることを防ぎました。
「雨水がキレイに流れ出したときは、不思議な達成感と、テーブルの真下に川が流れている光景にみんなで大笑いしました。もちろん撤収後は元どおりに埋めましたよ!」
雨だって、みんなが笑顔であれば成功!
「設営も撤収も普段の倍ぐらいは時間がかかりますし、帰宅後も濡れたテント・ギアの片付けが大変。正直に言えば、キャンプの日は晴れているに越したことはないです(笑)。でも、雨が降っている中にあえて飛び出していって”雨やめ〜!”と踊ったりとか、いつもと違った思い出もできる。天気を変えることはできないですから、心構えを変えていかに楽しむかが大事なのかな、と思いますね。キャンプを終えた時に”パパの雨男!”って笑ってもらえたら、雨キャンプも成功じゃないでしょうか」
雨音とワインのマリアージュを楽しむソムリエ・アンナさんの場合
ワインを楽しむためのキャンプ。五感をとぎすまして香りを感じる
京都を拠点に、フリーのソムリエとして活動しているアンナさん。キャンプでも「自然の中でワインを楽しむ」ことがモットーです。雨の日はタープの下で焚き火をしながら、読書とワインをゆったりと楽しんでいます。
雨ならではの魅力を聞くと、「雨そのもの、がそのまま魅力です。私は雨だと森の中のキャンプ場に行くようにしているのですが、雨粒を受けて生き生きとする植物に森の香り、水のはじける音…。晴れた日よりも自然を近く感じられる気がしますし、五感が研ぎ澄まされて、雨のほうがより強くワインの味わいを感じられます」という返答が。
雨のキャンプでおすすめのワインは?
ソムリエがおすすめする、雨キャンプにぴったりなワインをふたつ教えてもらいました。シチュエーションはアンナさんの愛する「雨の森」。
「まずひとつめは、ドライな微発泡の白ワイン。だんだん蒸し暑くなる初夏〜夏にかけて、さわやかな気分で過ごしたい人におすすめです。はじける雨音とほんのり涼しい風を感じつつ、スモークナッツをつまみながら、微発泡の白ワインをスッキリといただくのはいかがでしょうか」
自身と同じく、ゆったりと静かなときを味わいたい人には「深いフルボディの赤ワイン」をおすすめしてくれました。「合わせるおつまみは、ちょっとビターなチョコレート、そしてドライフルーツなどがよさそうです。雨を受けて立ちのぼる土や草木の香りを深く吸い込みながら、少しづつ、ゆっくりと味わってみてください」
キャンプにはウイスキー!夫婦でのバータイムを過ごすAyakoさんの場合
静かなキャンプ場でゆっくりウイスキーをたしなむ
夫婦でキャンプを楽しむAyakoさん。雨キャンプのおともはキリッと冷やしたウイスキーが定番です。「雨の日はテントの中でおこもりキャンプに。我が家はテントもタープもコットンなので火に強く、タープの下で焚き火もします。雨だからといって特別何かをするわけではありませんが、いつもよりも時間がゆっくり流れるので、ウイスキーを飲みながら、とりとめのないおしゃべりをしたりなど、夫婦の時間を楽しんでいます」
おつまみ作りも雨キャンプの醍醐味
「夜に雨の音を聞きながら飲むウイスキーと、手作りの燻製チーズは最高です」と語るAyakoさん。キャンプの時には、自身の大好きな銘柄である「OBAN(オーバン)」と、ご主人の好きな「クライヌリッシュ」を飲むことが多いそう。どちらもスコットランドで作られています。
オーバンは柑橘系の香りが広がるシングルモルトウイスキーで、梅雨のジメジメ感を吹き飛ばすフレッシュさが魅力。クライヌリッシュも同じくシングルモルトですが、前者と比較するとハチミツのような独特の甘さが感じられ、雨のキャンプ場の静けさをより感じられる一杯です。
自然界の困難を知恵と工夫で楽しむ、ブッシュクラフター・かせまるさんの場合
自分しか知らない、美しい雨の森を散策
南信州にある「マイ山」で、野営や釣りを日々満喫するかせまるさんは、ありのままの自然を知り尽くした生粋のブッシュクラフター。「晴れの日と比べてより多くの困難や不便さが伴う雨の日は、設営や火おこしの難しさが段違い。その時々に応じた発想や知恵が必要になるのでつい没頭してしまうし、自分のシェルター設営能力は雨が降って初めてわかるので、雨のたびに勉強になります」と、雨による「難しさ」を丸ごと楽しむスタイルです。
「雨の森はいつもより静かで、緑の香りが立ち上ってきて空気がとてもキレイ。草木やコケも水を浴びて青々として、晴れた日にはない美しさがあります。私は釣りも好きなのですが、雨が降ると魚が活性化するので時間を忘れて没頭してしまいます」と楽しそうに語ります。
かせまるさん流・雨の日の火おこしのコツ
野営をするのに火は必須。しかし、整備されたキャンプ場と違って、山の中では薪となる木も野ざらし状態。火をおこすのにもコツが必要です。悪天候の中で役立つ焚き付けは、樹脂を多く含む木(通称「ファッドウッド」)や樹皮、フェザースティックなど。
「これらは天候関係なくよく使われるものですが、湿った主木に火がつくまでは思った以上に時間がかかるので、雨の日はいつもの2倍、3倍の量の焚き付けを用意する必要があります。杉の葉などの油分を含んだ落ち葉も、落ちて間もない状態なら表面の水分を拭き取るだけで意外と簡単に燃えてくれるのでおすすめです」
森を知り尽くしたかせまるさんが教えてくれた、耳より情報がもうひとつ。「どんな雨でも、森の中にはちゃんと乾いた木がある」ということです。
「大木や岩の影、分厚い樹皮の内側など、雨が当たらない場所は必ずあります。いろいろ予測をつけながら、そういった場所を見つけ出す楽しみも雨の日しか味わえませんね」
デメリットだけを見ず、「雨を楽しむ方法」を考えるほうが楽しい
今回話を聞いた4人のキャンパーが語るように、雨でもアウトドアで楽しく過ごす方法はいくらでもあります。準備や片付けの手間など、ネガティブな側面にばかり目をむけてしまうと、雨の日しか見られない世界を知れずに終わるかもしれません。どんなものでも、デメリットの裏側に必ずメリットがあるもの。雨キャンプを食わず嫌いしている人も、ぜひ一度、雨の魅力やメリットに目を向けてみてください。
雨キャンプ勝利の法則
設営・撤収や帰宅後の片付けが面倒だからと、避けられがちな雨キャンプ。しかし、実は人気のキャンプ場に空きが出やすかったりとメリットもあります。雨でもキャンプを楽しむためのテクニックや、みんなのキャンプスタイルを紹介します。