ゴアテックスの寿命を伸ばすコツとは?寿命を伸ばすアイテムも紹介
レインウェアにはなぜゴアテックスなのか!メーカー突撃取材で明らかに!
2021.06.17ファッション
アウトドアウェアで超定番の防水透湿素材「ゴアテックス」。アウトドア経験を問わず、今では多くの人が知る素材です。しかし、ゴアテックスの名前は知っていても、どのような革新的な素材かを、はっきりと把握していない人も多いはず。そこで、国内でゴアテックスを取り扱う日本ゴア合同会社に、素材の特徴や手入れの方法などを、詳しく聞きました。
制作者
近藤みのる
hinata編集部のみのるです!
月2回は必ずキャンプに行くhinata編集部きってのキャンパー!グルキャンと、チャリキャンプが好き。
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もくじ
アウトドアウェアの超定番素材ゴアテックス
ゴアテックスは、言わずと知れたアウトドアウェアの定番素材。登山などのアウトドアアクティビティを楽しむ人にとって、なくてはならない存在です。近頃では、アウトドアに限らず、カジュアルウェアやビジネスウェアにも用いられ、より多くの人が着用するようになりました。
ですが、実際に着たり、名前を知っていたりしても、アウトドアで愛用される素材の特徴を説明できる人は少ないかもしれません。そこで、ゴアテックスを手掛ける日本ゴア合同会社に、素材について徹底的に取材。機能性や手入れ方法などについて深掘りします。
ゴア社員に改めて聞く、「ゴアテックスとは?」
質問に答えてくれるのはゴア社の伊藤さん
今回話を聞くのは、日本ゴア合同会社でゴアテックスのPRを担当する伊藤由里子さん。素材の機能やお手入れの方法に熟知し、伊藤さん自身も「ぜひ知ってほしい」ということもあるそうです。
ゴアテックスはこのような素材
──まず基本的なところからお聞きしたいのですが、ゴアテックスとはどのような素材なのでしょうか?
伊藤:まず、ゴアテックスがアイテムそのものを指す名前ではなく、アイテムを構成する"素材(布)"のことであるということ自体が、意外と理解されていません…。この布は3層構造になっており、真ん中の層が"ゴアテックスメンブレン"という薄い膜で、素材の肝となっています。このメンブレンの持つ特徴が、防水性、透湿性、防風性というゴアテックスの三大機能になっています。
▲ゴアテックスメンブレンの拡大写真
──ゴアテックスメンブレンとはどのような膜なのですか?
伊藤:これがゴアテックスメンブレンの顕微鏡写真です。メンブレンには、肉眼では見えない小さい孔(あな)があります。この孔(あな)が、水分は通さず水蒸気は通す大きさなんですね。これによって、服の外からの雨や風は防いで、体から発する蒸気を服の外に逃がす機能を実現しています。
ゴアテックスのもの作りについて
──ゴアテックスは画期的な素材ですね。そもそも、機能性あるゴアテックスの開発は、どのようなものだったのでしょうか。
伊藤:本国アメリカのゴア社はもともと、PTFEというフッ素樹脂を取扱う絶縁ケーブルなどを作る会社です。このPTFEが薄く加工でき、それがアウトドアウェアに良いと分かったことから、1970年からウェアの素材を作り始めました。
現在は、登山やキャンプなど、アクティビティの種類ごとに最適化した素材をリリースしています。アウトドアにおいて、体が濡れて冷えると命にかかわるので、まずは雨や雪、風を防ぎ、しっかり体を保護することが大前提。ただ、いくら耐風性や耐水性に優れていても、使いにくくては仕方ありません。軽さや動きやすさなど、それぞれのアウトドアに集中できる快適性も重視しています。
全メーカーの製品をテスト
──いろいろな機能は全て着ている人を守るためなのですね。
伊藤:そうなんです。実は、ゴア社は生地を作って売るだけではなくて、メーカーが製品にしたものを、全てテストしています。せっかく高機能の生地を使用しても、首もとや手首から水が入ってきてしまったら、そのウェアは防水性があるとは言えません。同様に、生地にプリントがたくさんあったり、ポケットがたくさんあったりすると、透湿性を損なう可能性もあります。
ゴア社は、防水透湿の機能が十分に発揮される構造になっていることにも基準を設け、試作品の段階で試験をしています。そこで品質が確認された製品だけが、ゴアテックスのロゴを付けて販売されるのです。ゴアテックスは生地だけではなく、製品そのものが「ゴアテックスの品質」であることを保証しています。
ゴアテックスには種類がある。各素材の特徴は?
ゴアテックスにはいくつかの種類がある
──ゴアテックスにもいくつか種類がありますが、それぞれどのような機能や違いがあるのでしょうか。
伊藤:ゴアテックスは用途に合わせた素材を作っているので、一口にゴアテックスといっても、その中で多くの種類に分かれます。私たちはその種類を「テクノロジー」と呼んでいます。現在、ゴアテックスのWEBサイトではアウターウェアでゴアテックスプロ、ゴアテックスインフィニアムなどの7種類、フットウェアでゴアテックスフットウェアやゴアテックスサラウンドフットウェアなど4種類を紹介しています。
しかし、「ラインナップは計11種類です」と言えるものでもありません。それぞれの素材の中でも、さらに細かい種類に分かれ、表と裏の生地の組み合わせ一つで、特性が変わってきます。用途に合わせて、最適な生地を作っているので、世の中のアクティビティの数だけ、ゴアテックスにも種類があるといっても過言ではありません。
公開中のテクノロジー一覧はこちら
【アウターウェア7種類】
①ゴアテックスプロ…非常に耐久性が高い
②ゴアテックス…アウトドアアクティビティから日常使いまで汎用性が高い
③ゴアテックスパックライト…軽量・コンパクトで携帯性が高い
④ゴアテックスパックライトブラス…優れた携帯性と耐久性を兼ね備える
⑤ゴアテックスシェイクドライ…高い撥水性と透湿性を備える
⑥ゴアテックスインフィニアム_ウィズパーシステントビアディング…撥水性と高い防風性がある
⑦ゴアテックスインフィニアムウィンドストッパー…高い防風性と優れた透湿性がある
【フットウェア4種類】
①ゴアテックス…雨に濡れず蒸れない
②ゴアテックスインビジブルフィット…防水と高いフィット感
③ゴアテックスサラウンド…足のあらゆる方向から湿気を逃す
④ゴアテックスインフィニアムサーミアム…温かさとスタイルを両立
ゴアテックスはどんなアイテムに適しているか
アウトドアのアウター、レインウェアには最適な素材
──ここまでゴアテックスの特性について聞いてきましたが、実際どんなアイテムに適しているのでしょうか?
伊藤:やはりアウターには最適ですね。アウトドアのアウターでも、普段使いのレインウェアでも、防水透湿性によって快適に過ごせます。冬でもダウンアウターがおすすめ。羽毛は湿気を含むと保温性が落ちますが、ゴアテックスであれば羽毛をドライに保ち、あたたかいままです。アウターのほかにも、グローブやハットなど、雨や外気に触れる部分のアイテムに使われています。
登山靴だけじゃなくスニーカーも!シューズでもゴアテックスがおすすめ
伊藤:これは案外知られていないのですが、靴はゴアテックスが最適です。足が濡れたまま仕事やキャンプをしていると、最悪の気分になりますよね(笑)。足はとても蒸れやすいので、透湿性があることでとても快適に過ごせます。
今は、アウトドアシューズに限らず、スニーカーやビジネスシューズでもゴアテックスを使用したモデルがあるので、日常生活でも愛用している人が増えています。
洗濯して大丈夫!正しいお手入れ方法
ゴアテックスは洗濯してはダメ?それは間違い。
──これは多くの方が誤解していることだと思うのですが、ゴアテックスは洗濯しても大丈夫なのですね。
伊藤:確かに、「ゴアテックスは洗ってはいけない」と思っている方が非常に多いのですが、それは間違いです。逆に洗濯しないで着続けると、せっかくのゴアテックスの機能が損なわれてしまいます。
まず表生地の話をすると、目に見える汚れはもちろん、目に見えない皮脂や、空気中のチリなどの汚れがたまると撥水性が落ちます。そうなると、生地の表面に水が広がり、透湿性が失われます。その結果、生地が体にひっついたり、汗で濡れたりして、体を冷やす要因になってしまいますし、とても不快ですよね。
一方、裏生地は、一見分かりにくくても、汗や皮脂の汚れがたまっています。それらの汚れは、記事の縫い目からの浸水を防ぐシームテープが剥がれる原因になります。シームテープが剥がれると、防水性が落ちて、体が濡れる原因になります。
ゴアテックスの洗濯方法
──ではゴアテックスはどうやって洗濯すればいいんでしょうか?
伊藤:まずは商品の洗濯表示を確認してください。ゴアテックスだけでできている商品は存在しなくて、ジッパーや綿など、さまざまな素材が組み合わさってできているので、商品ごとに洗濯方法は変わります。とにかく、洗濯表示は必ず確認してください。
ゴアテックスの生地だけで言えば、洗濯機で洗ってもOKです。洗剤は生地表面に成分が残りにくい液体洗剤がおすすめです。ただ漂白剤や柔軟剤、芳香剤の使用は避けてください。生地の表面に成分が残り、結果的に生地の機能を損なう場合があります。洗剤が生地に残らないように、すすぎは2回以上がおすすめです。そのあとは、日陰で吊り干しで乾かします。製品によってはそのまま乾燥機にかけられます。
乾燥できたら最後は、熱処理です。方法は乾燥機で20分。または、低温スチームなしで当て布をしてアイロンをかけます。これを行うことで、撥水性が回復します。
結局どれだけ着られるの?寿命の見極め方
──ではゴアテックスの買い替えどきや、寿命って何を見ればわかるのでしょうか?
伊藤:厳しい山岳環境でのパフォーマンスを求める人にとっては、シームテープが剥がれてきたり、どうしても撥水性が回復しなくなったら、買い替えどきです。ですが、キャンプなどのライトアウトドアや普段使いにおいては、シームテープが剥がれてもまだまだ使えることもあります。使い道に合わせて、どんな性能を求めるかで、寿命や買い替えの時期を考えてみてください。
ゴアテックスは全てのアウトドアアクティビティの味方
ゴアテックスは、ただ単に防水透湿機能のある布ではなく、あらゆるアウトドアアクティビティに寄り添うパートナーであることがわかりました。これから、アウトドアウェアやレインウェアを買うときは、ぜひショップの人と相談した上で、自分の使い道にあったゴアテックスウェアを手に取ってみてください。どんなアクティビティやシチュエーションでも、高い快適性が手に入ります。
ゴアテックスについてさらに詳しく知りたい方はこちら:ゴアテックス公式HPを見る