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薪ストーブ

キャンパーを骨抜きにする薪ストーブ。設置が「難しそう」の勘違い。「もう帰れない」「帰りたくない」活用法とは?〜設営・撤収編〜

冬キャンプの寒さとの攻防戦は、薪ストーブの導入でついに決着!「帰りたくない」「もう帰れない」。全国のキャンプ場でキャンパーの叫びがこだまする。それほどまでに、人を骨抜きにする薪ストーブの魅力とは!?薪ストーブ24時。薪ストーブの熱き伝道師が、設営から楽しみ方、撤収までのコツとともに、注意点を紹介する後編。合言葉は「慣れてきてからに気をつけろ!」。

薪ストーブ≒アウトドアで引きこもるという快楽

薪ストーブ
舞台は、寒さが一段と増す冬のキャンプ場。キャンプサイト内を歩く人たちの視線の先には、アウトドアにもかかわらず、ぬくぬくとしているキャンパーたちの姿が…。テントの屋根からモクモクと上がる煙と、幕内に見えた「薪ストーブ」。アウトドアで「ひきこもる」という快楽の世界がそこには広がっていた!

薪ストーブの伝道師に聞く設営から撤収まで!

薪ストーブ
多くの薪ストーブの輸入、開発を手掛ける国内代理店アブレイズ(神奈川)。ここで、キャンパーの薪ストーブの普及と注意喚起に力を注ぐ熱きキャンパーが、牛澤駿介さん(28)。キャンプ場でオフィスで家で、常に薪ストーブのことを考え続け、その良さを伝えようとするキャンプ界の若き伝道師だ。 薪ストーブの選び方を紹介した前編に続き、牛澤さんの薪ストーブライフに密着。仕方、設営、撤収のコツまでを聞いた。
【プロフィール】 牛澤駿介(うしざわ しゅんすけ)さん アウトドアアパレル会社などを経て、薪ストーブの輸入を手掛けるアウトドア専門商社「アブレイズ」に入社。今年は猛暑日が続く8月からすでに薪ストーブの販売で多忙な日々。最近はテントサウナがブーム。神奈川県出身。

薪ストーブは「最初から選んでいい」暖房器具

薪ストーブ≒上級者の勘違い

灯油ストーブ
扱いが簡単な灯油ストーブ。灯油を入れ、ダイヤルを回して点火するだけ。あとは燃料がなくなるまで燃え続ける手軽な暖房器具だ。しかし、その手軽さゆえに、満足しなくなってくるのが、キャンパーの性。 「コーヒーを豆からひく」「焚き火の着火でライターを使わない」。ファミリーからソロのキャンパーまで、時間のある中で、「あえて手間を楽しむこと」を休日の非日常の楽しみにする人は多い。その中で、冬キャンプで極めたくなるのが「薪ストーブ」だ。 牛澤:薪ストーブは煙突があって空気も灯油ストーブより澄むのは、前編でも話してきました。なんとなく上級者向けと思われがちですけど、きちんと事前に予習していれば、初心者でも最初から選べるギアです。炉内で火を維持していく楽しみは、大人から子どもまでが共有できる魅力です。

一晩でどれぐらいの薪を用意すればいい?

薪ストーブ
薪ストーブというからには、燃料となる薪は欠かせない。原油高で灯油の値段が上がっているが、実はキャンプ人気を受けて薪の価格も高くなり始めている点は、それぞれを燃料とする暖房器具にとって逆風ではある。 牛澤:長く燃える広葉樹なら、1泊2日の普通の過ごし方で2束(10~15kg)ぐらい。火のつきやすい針葉樹も1束あると便利です。というのも、調理するときなど、火力を出したいときに針葉樹があると重宝します。ただ、最近は薪の価格が高くなっているので、関東一円のキャンプ場で薪を購入すると、広葉樹10~15kg、針葉樹5kgで、2,000円前後は必要になりますね。石油ストーブの灯油も値上がりしているとはいえ、薪を全部買って調達すると維持費はかかります。

激録!想像以上に簡単だった設営の手順

薪ストーブ
バッグを開き、薪ストーブを取り出した牛澤さん。我々が目撃したのは、無駄のない動きで、5分もかからずに設置、点火していく姿だった。

設営5分以内!

薪ストーブ
①ケースから取り出す。トランクカーゴなどの収納ボックスにシンデレラフィットする薪ストーブもあるので、保管や持ち運びを考えて選ぶのも選択肢。
薪ストーブ
②本体に収納されている煙突を取り出す。
薪ストーブ
②煙突をはめていく。
薪ストーブ
③テントの布地に当たる部分に合わせ、煙突プロテクターを装着。準備編でも触れたが、子どもがいる場合には、本体に近い下部にも装着すると、ヤケドのリスクを減らせる。
薪ストーブ
④幕から煙突を出す。高さは天井部から1mほどが理想。短い場合には、煙突からの火の粉で幕に穴があく可能性も。購入前に煙突の長さと幕の高さの確認は不可欠。ここまで5分弱。 煙突を出す穴があっても、メーカーは「火気厳禁」としていることが多い。推奨はしておらず、あくまで幕内での使用は「自己責任」となることは肝に銘じておきたい。

火を安定させるまで

薪ストーブ
薪ストーブ
▲薪を投入していく牛澤さん
ガストーチで一気に点火していく牛澤さん。 牛澤:焚き火では、火を段々と大きくしていく楽しみがありますが、薪ストーブでは一気に点火して炉内を早く温めるのが理想。煙突に上昇気流を作り出し、新しい空気を本体の炉内に取り込めるかが重要です。ここがうまくいかないと、「逆噴射」といって、煙が上にあがらず、炉内に逆流して悲惨なことになります。薪ストーブの点火時では、すみやかな炉音の上昇は強く意識したいところです。

薪ストーブの楽しみ方いろいろ

薪ストーブ
薪ストーブ
寒い日には、ハフハフと食べるおでんに勝る薪ストーブ料理はない。牛澤さんもその魅力を知る一人だ。 牛澤:天板での鍋料理は薪ストーブならではですね。一般的には、灯油ストーブより面積がとれるので、同時にお湯をわかすことも。アツアツおでんと熱燗のマリアージュを楽しめるのは、薪ストーブを使った冬キャンプの醍醐味です。火力が必要な場合には、燃えやすい針葉樹を入れることで一時的に火を強くできるのも、灯油ストーブにはない魅力です。

薪ストーブで「時短料理」の幅が広がる!

薪ストーブ
定番の薪ストーブ「Gストーブ」はオプションが豊富。牛澤さんのGストーブで気になったのは、煙突の間に挟んで使っていた楕円形の器具だ。 牛澤:排熱を利用したトースターもオプションにあり、コンビニで買ったパンも焼けば、焼き立てベーカリーの味です。薪ストーブのモデルによっては、ピザ窯になるモデルもあるので、焼くだけの肉料理や煮込むだけの鍋に飽きたら、新しいキャンプ料理に挑戦できます。

煙突メンテナンスの手間が省けるこの一工夫

現実に戻るための必須アイテムとは?

薪ストーブ
薪ストーブで気をつけたいのは、撤収という、現実に戻る時間。自分が帰る時間から逆算して、作業する必要がある。 牛澤:バケツでもいいのですが、灰捨場のないキャンプ場もあるので、火消し壺は必須です。Gストーブではセットになっていますが、灰を掻き出す器具も忘れずに持っていきましょう。消火してからも、しばらく熱いので、撤収の1時間前には灰を捨て、本体と煙突を冷ますようにしておきたいところです。

撤収後のひと手間

薪ストーブの煙突
煙突のほうの上部はどうしても、ススがついてしまいがち。なんとなく清掃が面倒くさそうなイメージもある。牛澤さんは使用後に、どのようなメンテナンスをしているのだろうか。聞けば、意外な答えが返ってきた。 牛澤:炉とつながる煙突部分が一番、温度が高くなります。なので、次回、本体に近い部分と先端のほうをローテーションで入れ替えれば、ススが焼き切れますよ!

こんなトラブルに注意

薪ストーブ
自分だけが快適であればいい、というキャンパーのわがままが、ときにほかのグループに迷惑をかけることもある。 牛澤:薪ストーブは煙突から火の粉が出ることがあります。隣のサイトと近い場合には、テントに穴が空いてトラブルになることもあるので、使用する状況には配慮と注意が必要。炉内から煙突にいく火の粉をとめる構造がない薪ストーブは特に注意してください。こちらも買うときには、「火の粉どめ」が炉内にあるか注意しましょう。テントは「難燃」がトレンドですが、必ずしも穴が空かない、燃えないというわけではありません。煙突は幕の天井から1mは出すようにしたいところです。

薪ストーブの可能性はさらに広がる!

薪ストーブ
牛澤さんが、ぽかぽかになったテント内で、思いついた。「薪ストーブで、テントサウナができるのでは?」。果たして牛澤さんはサウナで「ととのう」ことができるのか。次回、全国のキャンパーが衝撃の結末を目撃することになる! 撮影協力:アブレイズ
▼薪ストーブの選び方と準備についての前回記事はこちら

薪ストーブ24時

キャンプ場に枯れ葉が目立ち始めるころ、続々とあらわれるのが、アウトドアに「はびこる」寒さと戦うキャンパーたち。 その中で蔓延しているのが、一度その快適さを知ったらやめらない「薪ストーブ」というぬくもりギアだ。 「もうテントから出られない!」。愛用者のつぶやきはいまや全国に広がる。そこには「私は大丈夫」という過信が生み出す、手軽さのワナも。 薪ストーブの伝道師が、選び方から準備、設営、撤収までの注意点を紹介する。



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