【検証】冬キャンプ用の薪ストーブでととのえる!?テントサウナで試してみた結末とは?〜番外編〜
全国各地のキャンプ場と同様、にぎわいを見せている「サウナ」。ただ、隣の人との距離の近さが気になったり、頻繁にドアの空け閉めがあったりと、ゆっくり落ち着けない施設が増えているのも事実。こうした事情から、一気に普及しているのが、プライベート感のある「テントサウナ」だ。それを見て、キャンパーなら、ふと思ってしまうだろう。「薪ストーブでサウナはできるのだろうか」と。1年を通して使えるようになれば、コスパのいいギアになるはず。そこで、薪ストーブでととのえるか、検証してみた!
薪ストーブで「ととのいたい」!
サウナの人気もまたスゴイ!
▲ととのいイスに座る牛澤さん。果たしてととのえるだろうか!?
キャンプが好きな人にとって、週末の人気キャンプ場ぐらいと表現すれば、サウナの人気ぶりがすぐにイメージできるかもしれない。サウナをテーマにした漫画「サ道」などによって、正しい入り方が普及。脳と体が「ととのう」快楽を知った20代の若者から大手企業のCEOまでが、今日も最高の1セットを目指して汗を流している。
通年で使えるなら、コスパに優れた薪ストーブ
アウトドア専門商社「アブレイズ」の社員で、薪ストーブの若き伝道師、牛澤駿介(28)さんも、普段からサウナに通う一人。そして、ある日、ふと思った。
「薪ストーブが冬だけでなく、夏でも使えるようになれば、もっと売れると思うんですよね」。
薪ストーブの販売を手掛ける牛澤さんの目にかすかにお金の「$」マークが見えなくもなかったが、薪ストーブでサウナが実現できれば、キャンパーにとっては通年で使えるかなりお買い得なギアになるはず!
そこで10月上旬、社運をかけた牛澤さんと、専用のストーブでなくてもととのえるのか、実際に検証してみることに。
テントサウナのために使ったギアはこちら
ガラス付きで暖炉的なサウナストーブに変身!?
ストーブには、台湾発のアウトドアブランドWTGのWorkTuff Stove 500を使用。側面にも窓があるため、暖炉のようにゆったりと炎をながめながらサウナを楽しめるのがなかなかいい。水にも強い耐熱ガラスを使用しているので、天板にサウナストーンを置き、水をかけて蒸気で体感温度を上げる「ロウリュ」を楽しめるのも安心だ。
冬キャンプにも使える本場ロシアのサウナテント
テントサウナについては、まだ知らない人も多いと思われるので、一般的な冬も使えるテントとの違いを交えながら解説する。
今回使用したテントは、サウナの本場ロシアのBereg(ベレグ)のもの。「過酷な環境下でハンターや地質学者が快適に暮らせるように設計され、冬は薪ストーブのテントとしても使える」(牛澤さん)。北米でも愛用者は多く、アブレイズでも今季から取り扱いを始める一幕だ。
アウターテントとインナーテントの間に空気の層ができ、一般的なテントよりも保温性を向上。冷気の侵入を防ぐため、インナーテントには、内向きスカート ・アウターテント 外向きのスカートの両方を備えている。
▲普通のテントとの違いは入り口にも。ドアパネルがついていて、空け閉めも簡単。保温性も良さそう
天井部についた金属棒を押し上げるだけで設営できる、ワンタッチのテント。大きさは直径3m、高さ2mほど。木製のベンチを入れてみると、大人3〜4人がゆったり座れる大きさ。ポップアップ式で、屋根を上げる金属製のポールを抜けば、設営は1分ほどで完了する。
ベレグの詳細はこちら:
Instagramの公式アカウントを見る薪ストーブ点火
すぐに80℃を突破
バーナーで一気に薪ストーブを点火する牛澤さん。煙からモクモクと白い煙が出て、次第に白みがおさまっていく。15分も置いておけば、温度はすぐに80℃を突破した。
ただ、自然の中での最高にととのうためには、一般的なサウナ室と同様に90℃は超えてほしいところ。ここのラインが変わらなければ、薪ストーブでテントサウナを実現する夢は早くもついえることになる。
いつものサウナと同じ室温に!
検証時は季節はずれに30℃近い気温となったが、あいにくの曇り。晴れていれば、もっと早く上がりそうだ。
とはいえ、約30分待ってパネルを開けば、そこに広がるのは自分たちだけのプライベートサウナ。知らない人の汗がしみこんだタオルを気にする必要もない天国だ。
牛澤さんが「実際の温度表示が遅いんですよね」という温度計だが、すでに90℃近くまでなっている。
最近は週3回の頻度でサウナに通うhinata編集部のテント石田。いつも通っている「ゆパウザひばり」(東京都西東京市)のサウナの2段目と同じぐらいの感じ方!同サウナの温度の表示はだいたい95℃ほどだったが、それとほぼ同じだ。
5分もすれば、全身から流れでるほどの汗が吹き出す。体は灼熱の空間に一気に「危機モード」へと変わり、仕事のことや撮影のことは忘れ、頭の中は無心のオフモードに。禅の世界にちかい、瞑想の世界へとトリップする。
ほかの人を気にせずロウリュ
▲他の利用者を気にせず、好きなタイミングでロウリュできるのも、テントサウナの醍醐味
「一般的な屋内のサウナだと、知らない人の汗がしみついたタオルの上では、なかなかちょっと…という人も多いと思います。でもテントサウナは、誰でも気にしないプライベート感が楽しめるのもいいですよね。仲間と
気軽に話せるのも魅力なのかもしれません」
牛澤さんは、そう言って、石に水をかけるセルフロウリュで、蒸気をたたせ、室内の体感温度を高めていく。自分の好きなタイミングで、好きなだけロウリュできるのも、テントサウナならでは。
目の前が水風呂!
10分たたずに汗が地面にしたたり、「行きますか」と、キャンプ場の脇を流れる川に入って「水風呂」。これこそアウトドアサウナの醍醐味。流れる水に体をひたしながら、今度は逆に、冷たさで体を危機状況に追い込んでいく。自然の水風呂で体の表面の血管がしまり、そこにあった血液が頭の中や体の中心部へと流れていくのがわかる。
ととのいイスは忘れずに!
そして、最後に「ととのいイス」で外気浴。キャンプで使うにはかさばるため、フルリクライニングできるチェアは遠慮されがちだが、「テントサウナで、これほど外気浴に向いたチェアはない」と牛澤さん。目をつむり、恍惚とした様子で、1セット目からととのっていく。
そこに感じるのは、川のせせらぎと小鳥のさえずり。他人の大声やサテラシー(サウナ+リテラシー)を気にする必要はない。まるで宇宙の中で漂い、自分の境界線が次第になくなっていくような神秘的な体験。アウトドアサウナだからこそ、たどりつける世界があった。そして自分も思わずつぶやく。「ととのった〜!!」
サウナの正しい入り方
これでととのえる
ちなみに、サウナで「ととのう」ために必要なのは「人体にとっての危機的な状況」。
①サウナ室
②水風呂
③外気浴。
①〜③を1セットとして、3〜4セットが基本。1セットでもととのうとされるが、より効果的になる。
慶大医学部特任助教で、日本サウナ学会代表理事を務める加藤容崇氏は、著書「
医者が教えるサウナの教科書」(ダイヤモンド社)で、医学的にサウナの効能について解説。
同氏によると、人はサウナと水風呂に入ることで、自律神経や血流、心拍などのありとあらゆる力を総動員。極限の熱さと、冷たさに体を適応しようとする。最後に外気浴をして危機状態から開放することで、それまで負荷のかかっていた人体は、エネルギーの浪費をストップ。脳がサクサクと動いて頭がすっきりするほか、血流の増加によって、腰痛や肩こりがやわらぐとされる。
サウナ室に入るだけでととのえないのは、上記の理由から。①〜③のセットの繰り返しが欠かせない。
100℃を突破!
2セット目を終えようとしたとき、「100℃を超えましたよ!」と牛澤さん。証拠に撮影しようとするも、「あ〜、レンズが曇る」となげくF本カメラマン。仕方なく外に温度計を持ち出すと、もちろん90℃まで下がる。牛澤さんは「たしかに100℃までありました。これなら普通にサウナで使えます」と興奮した様子だ。
結論は…
外のほうが「ととのった〜!!」
「これならデイキャンプでも、満足度はかなりのもの。もはや泊まらずに返っても、充実した休日が過ごせますよね」。薪ストーブで、サウナは実現できることも確認し、いつも以上にととのっていく牛澤さんだった。
ほかの薪ストーブでもできた!
後日聞いたところによると、アブレイズが取り扱うノルウェー発のポータブル薪ストーブ「Gストーブ」でもサウナができることを確認。ただ、耐熱ガラスが水に触れると割れてしまう可能性があるので、ロウリュをする場合には、オプションのプレミアム耐熱ガラスに交換する必要がある。
薪ストーブがあれば、あとはテントサウナを買うだけ。そこに待っているのは、これまで以上に頭と体がすっきりするアウトドア体験だった!
撮影協力:
アブレイズ
Instagramはこちら:
アブレイズ公式アカウント