【雨キャンプ勝利の法則】キャンプ歴30年以上のレジェンド直伝、雨ならではの楽しみ方【準備・設営編】
「キャンプ人気が定着するワケ」をレジェンド・田中ケン氏が語る。21年注目の「モンプ」とは!?
2021.01.06ノウハウ
2021年もとどまることを知らないキャンプ人気。キャンプ業界を約30年見続けているレジェンドで、快適生活研究家の田中ケンさん(56)は「今回は『ブーム』でなく、定着です」と明言する一人。その強気の理由とともに、2021年にトレンド入りの兆しがある車と融合した新しいアウトドアの楽しみ方「モンプ」について聞きました。
レジェンドに聞く、2021年トレンド予想
新型コロナウイルスの影響で、屋外で密にならないことで注目されているキャンプ。2021年もこの人気は衰える気配はありません。キャンプ業界を約30年見続けている田中ケンさんに2020年を振り返ってもらいながら、今回のキャンプ人気の特徴と2021年のアウトドアのトレンドを予想してもらいました。
キャンプ人気は定着の兆し
▲田中ケンさんがプロデュースした北軽井沢のキャンプ場
── 2020年のキャンプ業界を振りかえってみて、いかがだったでしょうか。
田中ケンさん(以下、田中):新型コロナウイルスの影響は、アウトドアのスタイルにも大きな影響を与えました。これまでは「車で遠出=アウトドア」というイメージを持っていた人も多かったと思います。しかし、「おうちキャンプ」の普及で、庭やベランダでキャンプに挑戦した人は「車で遠くに行かなくても、アウトドアできるじゃん」と気付かされた年だったのではないでしょうか。私自身も「庭こそ究極のアウトドアではないか」と感じるようになった一人で、関東圏で山と川がそばにある古民家をセカンドハウスとして探しています。
── よりアウトドアが生活と身近になった印象ですね。
田中:コロナに限らず、この数年続いているキャンプ人気は一時期的なファッションにとどまらないと考えています。部屋のインテリアにも合うおしゃれなアウトドア家具も今では多く出ており、ライフスタイルにアウトドアが取り入れられるのがもはや普通になりました。親子が公園で遊び道具を詰めたアウトドア用カートをひいていたり、ポップアップテントを広げたりする光景も今や一般的ですよね。アウトドアはライフスタイルの一つとして、文化として定着している様子がうかがえます。
もちろん今は「コロナだからキャンプ」というファッション的な部分はありますが、今後のコロナがコントロールできるようになって落ち着きはしても、ドンと落ちるようなブームではないと確信しています。
1990年代がブームだったワケ
▲今では豊富になったキャンプ料理
── そもそも、なぜ1990年代のアウトドアブームは過ぎ去ってしまったのでしょうか。
田中:終息の一番の理由は、個人的には、マナーが共有されていなかったことにあると考えています。昔は焚き火台を使う人はほとんどいなかったので、みんな直火でどんどん燃やして、テントを張るスペースがなくなっているキャンプ場なんかもいっぱいあったわけですよ。
さらに、管理人が夜に不在のところも昔は多かったので、グループでどんちゃん騒ぎをしても注意する人がいない無法地帯に遭遇することも多かったです。それで不快な思いをして「キャンプはもういいや」という人が多かった気がします。さらに、トイレやシャワーなど、なかなか女性が行きたくなる環境でないキャンプ場も当時は多かったですよね。ただ、今は管理されたキャンプ場ではウォシュレットやシャワー付きが当たり前になりつつあり、ここも女性の敷居が低くくなっていますね。
昔はSNSもなかったので情報源も限られ、キャンプスタイルの多様性のなさも課題でした。キャンプ料理といえば、バーベキューや焼き肉、カレーだけ。メーカーも今は反省していますが、アイテムを売ったら売りっぱなしで、その後に道具をどう使って、どうやって楽しむか、というサポートをしていた記憶はほとんどありません。それでも、今はメーカー主催のキャンプフェスティバルや講座も充実しているので、初心者が挫折しないで続けられる環境にあるのは、1990年代との大きな違いですね。
肌感は1990年代以上の人気?
全国各地でキャンプ場整備が活発に
▲森に囲まれた北軽井沢のキャンプ場
── ケンさんも全国各地のキャンプ場のプロデュースなど、2021年も引き続き忙しそうで、キャンプ人気の高まりを誰よりも感じている一人ですね。
田中:高知でプロデュースするキャンプ場が4月にオープンします。熊本や福岡、岡山でも動いていますし、各地方で1990年代に整備されたキャンプ場が大きくリニューアルされています。私がプロデュースするキャンプ場でのビギナー向けキャンプスクールは、20組の募集に対して、毎回100組〜150組も応募がきて、けっこうな倍率の抽選になるほど。初心者の参入はすごい勢いですね。
オートキャンプ協会によると、第一次キャンプブームのピークである1996年のキャンプ人口(1年に1回キャンプをする人)は約1600万人。そこから一時は約700万人まで落ち込みます。そこから2019年まで7年連続で右肩上がりで増えて860万人まで戻ってはいます。数字上では当時と比べればまだ半分ほどなのですが、私の個人的な感覚では、今は四半世紀前を上回る盛り上がりを肌で感じています。
キャンプ場にもwithコロナで変化の兆し
── 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、キャンプ場の運営にも変化の兆しがあるようですね。
田中:ソーシャルディスタンスに配慮するため、私が運営する那須のキャンプ場でも、区画サイトはほかのグループと距離が近づかないように、2区画を1サイトにしました。結果、隣のガイロープを気にしながらキャンプするより、そのほうがよりキャンプの雰囲気が楽しめ、実際に来ている人の満足度が高いことがわかりました。スタッフの労力も減りますし、料金は少々値上げをしないと経営的には厳しくなるので申し訳ないのですが、稼働率をあげれば、区画が減る分も吸収できそうです。広いサイトへの需要はコロナを契機にさらに高まるとみられます。
キャンプ場もかつては地主の方がやっているパターンが多かったのですが、今は代替わりして、若い人が清潔さやおしゃれさを意識して、より魅力を高める努力をしているところは増えています。ただ、全国各地で民間や自治体がキャンプ場を新たに整備する動きがかなり目立つようになっており、何もしないで待っているところは、キャンプ人気であっても淘汰されると思います。
フィールドに近い「宿泊施設」
── コロナにかかわらず、数年前からキャンプ人気が高まり続けていますが、思うところがあるようですね。
田中:最近はキャンプを「目的」にしたオートキャンプが人気ですが、それだけではアウトドアの醍醐味はまだまだ味わえていないと思います。キャンプはアウトドアのそばにいる一番いい「宿泊施設」。この利点をもっと生かし、アウトドアを楽しんでほしいと思っています。
▲カヌーを楽しむ田中ケンさん
設営してからずっとお酒を飲んで、昼寝してまた夜中まで酔っぱらいながら焚き火を楽しむのも、それはそれで楽しいのはわかります。ただ、せっかくフィールドのそばで寝泊まりするのですから、自然の中で早起きして、気持ちいい朝を感じてほしいですよね。
特に、朝の鏡のような湖を滑るカヌーは一度あじわったらやみつきです。湖から戻って朝ごはんをゆったり食べるなど、自分のスケジュールで動けるのはキャンプならでは。キャンプの醍醐味はフィールドの入り口を拠点にしながら、より深い自然の世界を見られることです。私は「キャンパーだけでなく、アウトドアマンになれ」ということをずっと伝え続けています。
キャンプ+アルファの流れが加速
── 最近では、ケンさんもキャンパーの人がアクティビティを多様化させ、「キャンプ+@」の流れを感じるようになっていますね。
田中:キャンプ場でお客さんと話すと、「カヌーや山に連れていってください」と声をかけていただく人が多くなっていますよね。実際に、2021年のスノーシューツア―も抽選倍率3倍〜4倍で、特に2020年に始めたキャンプエントリー層も目立つようになっており、多様なアウトドアの魅力を知りたいと思っている人が増えているのはうれしい限りです。
レジェンドが提唱する「モンプ」の正体!
国内でも2021年は「バンライフ」
── ケンさんは車で生活や旅を楽しむ「バンライフ」にも注目しています。2021年にさらに発展しそうなトレンドの兆しがあるようですね。
田中:コロナ時代に個の移動ができる車が再評価され、国内もで欧米発のバンライフの流れが強まっていますよね。車中泊向けの施設を駐車場に整えた「RVパーク」が今人気ですが、さらに施設の利便性を高めたり、景色のいいところに設営しようとする動きが私の周辺でもみられます。道の駅での仮眠ではない車中泊が問題になっている中で、2021年にはさらに車中泊やバンライフを発展させた「モビリティキャンプ」、略して「モンプ」が脚光を浴びるとみています。
実際にキャンプ場で焚き火やキャンプ料理を楽しみながらも、拠点を車にすれば、約1時間もかかっているような設営撤収の手間もわずか。チェアやテーブル、焚き火台をセットするぐらいですみます。何よりも、悪天候のときにも安心してゆったり寝られるのは、いいですね。アウトドアと車中泊の組み合わせは便利です。
▲2021年は武骨な鋳鉄のギアに回帰?
キャンプでは、地元の食材を買えるようになって、その地域の魅力をより味わえるような施設も増えていってほしいです。アウトドア向けのレンタカーやカーシェアもさらに充実するとみられ、チェアやテーブル、バーベキューグリルなどの必要なものがそろったサービスもさらに拡充するのではないでしょうか。
もちろん、個人的にはカヌ―の楽しさを知ってほしいですし、武骨な鉄の調理道具に回帰したり、時間があるのでDIYキャンプギアの動きなど、キャンプを軸に多様化しているのが、2021年のキャンプではないでしょうか。
快適生活研究家 田中ケン氏プロフィール
高校3年のときにサッカーの東京代表として全国大会に出場。高校卒業後は「ポパイ」「メンズクラブ」などの男性雑誌を中心にファッションモデルとして活躍。25歳で父親になり、子供のころに体験したアウトドアに再会。サバイバルレースや冒険型トライアスロンに積極的に出場。「アウトドアを取り入れることで、生活はもっと快適になる」を信念に、「快適生活研究家」として各メディアで活動。自身のプロデュースで、キャンプ場「outside BASE」(群馬県北軽井沢)とファミリーパーク那須高原(栃木県那須町)をオープン。東京都出身。
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