【独自取材】アウトドアスパイス「ほりにし」がヒットしたワケ。堀西さんが語った中毒性の秘密
発売1年で約10万本を販売した万能調味料「アウトドアスパイスほりにし」。なぜ中毒性があるのか。生みの親である「堀西さん」に調味料の秘密を取材。堀西さんがソロキャンプで感じていたある不満から、商品化に至るまでの長年の試行錯誤がありました。
アウトドアスパイス ほりにし誕生秘話
堀西さんが手掛けた「ほりにし」
「ほりにし」は、和歌山県の有名アウトドアショップ「Orange(オレンジ)」が2019年4月に発売した万能調味料。同店のマネージャー堀西晃弘(あきひろ)さん(39)がプロジェクトリーダーを務め、商品化を実現しました。肉はもちろん、魚や野菜に合う調味料として、発売からわずか1年でキャンパーの食卓を席巻。キャンプをしない人の間でも愛用者が増えています。
日本人に合う調味料の秘密
「ゆっくりビールが飲みたい」から5年の道のり
「キャンプでちょこっとお酒を飲むのに、おかずがもっと簡単につくれないのかな」
釣りやキャンプなどのアウトドア好きを買われ、Orangeの店舗立ち上げからかかわる堀西さん。料理店での修行経験の持ち主ですが、キャンプをする中で特に不満に思っていたのが、準備に時間がかかり、楽しみなお酒の時間が短くなってしまうことでした。
「キャンプに行って昼にチェックインすると、テントなんかの設営が終わったと思ったら、次はすぐに料理。飲み始めるのは、夕方ぐらいになってしまうのがもったいないんですよね」
それもそのはず。堀西さんの楽しみは、キャンプ場でのビール。手の込んだ料理は家族といるときだけにしたいもの。ソロキャンプに感じたふとしたお酒好きの思いから、当初に想定していなかった商品化までの長い道のりが始まることになります。
中毒性の秘密は「日本人ぽさ」にあり
目指したのは、「日本人の舌に合い、キャンプでの肉料理に合う味」。当初は自分たちで市販品を配合して万能調味料作りを始めます。しかし、市販品では細やかな味の調整もできず、自前での開発の限界を知りすぐに断念。スパイスを調合してくれる企業を探し出して協力を依頼し、調味料の専門家にサンプル作ってもらいました。
商品化までに試作したのは、約70パターン。日本人の舌に合うイメージは、しょうゆのパウダーを使用することで、日本人なら誰でも好むベースの味に。さらにフランス料理でソースのベースにも使われる香味野菜(ミルポワ)のパウダーを使用することで、和食にも洋食にも合う万能性を高めました。
販売してもよい味に仕上がってはいましたが、「何かが足りない」と感じていた堀西さん。決め手となるスパイスを探します。
「何かが足りない」。最後に解決した「和歌山らしさ」
最後に解決したのが、ミカンの果皮を乾燥させた「陳皮(ちんぴ)」。柑橘の爽やかさで脂っこい料理に合わせやすくなるのはもちろん、名産品がミカンの和歌山らしさと店名「Orange」のイメージを追加。約20種類のスパイスをブレンドを混ぜた「ほりにし」が、構想から5年を経てついに完成しました。
「ほりにし」命名の瞬間
鶴の一言で名前が決定
調合は完成したものの、最後に悩んだのが名前。キャンプ用品店で売ることを前提に、開発の当初は単に「アウトドアスパイス」と呼ばれていた調味料。「それだけではインパクトに欠けると感じており、日本人の舌に合う調味料を目指していたので、名前も西洋の言葉ではなく、和のイメージで考えていました」。
堀西さんが悩んでいたのを見て、Orangeの代表が一言。
「『ほりにし』でどや」。
「最初に聞いたときは恥ずかしくて、妻にも『なんや、それ』と言われたのですが、自分の名前の商品はなかなかつくものでないかなと…」と納得。開発に奔走した堀西さんの名前がつけられ、2019年4月についに同店で発売されることになりました。
ほりにしは販売1年で約10万本の大ヒット
新ジャンル「アウトドアスパイス」を確立
2019年4月にOrangeで販売を開始。キャンプイベントで知り合いのメーカーやガレージブランドの関係者に配っていると、その万能性と中毒性がSNSで話題に。またたく間にキャンプ愛好家の中で認知度が高まり、約1年で約10万本を販売する大ヒット(2022年3月時点で150万本)。
堀西さんは「アウトドアスパイスという新しいジャンルと、やっぱりキャンプで料理に時間をかけないでゆったりしたい人が意外と多いことが分かりました」と分析しています。
「アウトドアスパイス」にこだわったので、販路はアウトドア用品店に限定。スーパーには置かないようにしたことで、「結果的には、探さないと見つからない『プレミアムスパイス』のイメージつくりにつながったのではないでしょうか」。
想定外に子供たちにも人気の「ほりにし」
販売前はキャンプでのお酒好きをターゲットにしていましたが、素材のおいしさを活かすために塩味をおさえたことで、子供たちにも受け入れられるように。「白米にかけ、ふりかけとして食べているという話もよく耳にするようになりました」と喜ぶ堀西さん。
堀西さんによると、全国各地の料理のプロが続々と使用するようになっており、北海道のある居酒屋では、マトンに「ほりにし」を使ったメニューを提供。1日1本は使う人気料理になっており、キャンプ場を飛び越えた人気ぶりに本人が一番驚いています。
続々と新しい味のほりにしを開発中!
リピーターが続出していることで、2019年11月には詰め替え用を発売。その後、ノーマルほりにしに加えて、辛口・トリュフ塩・燻製味が定番化されています。また、ほりにしを配合したレトルトカレーも登場。これまでにTシャツ、釣りのルアー(疑似餌)などを展開するなど、その勢いは止まるところを知りません。
「すごい勢いで好評いただいていますが、ブームだけで終わってしまってはさみしいので、長くみなさんの食卓に存在できるような展開を考えています」。堀西さん自身も朝食でベーコンエッグや卵かけご飯で毎日のように愛用。お気に入りは、マヨネーズとあえて、ゆで野菜を食べるのも好み。オリーブオイルにかけた豆腐にふりかけるだけなど、シンプルな料理。
「お酒を楽しみながら、仲間や家族と談笑する時間を多くとる方が楽しいですよね」。キャンプの時短と団らんの時間に貢献できていることが、堀西さんが「ほりにし」を開発した一番の喜びになっています。
取材を終えて
「キャンプで簡単におつまみをつくれるようにしたい」という堀西さんの願いから開発がはじまった「アウトドアスパイス ほりにし」。単に調味料としての万能性だけではなく、料理の時間を短くすることで、家族や仲間との語らいの時間、自然を楽しむ時間を増やし、多くのキャンパーにキャンプの原点を気づかせてくれました。
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