ユニフレームのランタンを徹底解剖!関連アイテムまで全て紹介!
大手アウトドアブランドの社長が語るキャンプの未来 【アウトドア王国・新潟を探る 番外編】
2020.01.01キャンプ用品
高品質でコストパフォーマンスに優れた商品にこだわる大手アウトドアブランド「ユニフレーム」。同ブランドは、業務用の調理器具を製造する「新越ワークス」(新潟)が統括する一つの事業部です。同社の山後春信社長に、アウトドア業界の今後の展望やユニフレーム事業の今後の取り組みについてインタビュー。キャンプ人気の定着が見える中で、アウトドア業界を牽引する山後社長のお考えに迫りました。 *撮影したショールームは販売店向けで一般には解放していません。
自然との共生のきっかけとなるメーカーに
フィンランドのアウトドアスタイルに驚き
編集部:日本ではこの数年、キャンプ人気が高まり続けています。人気ブランドの企業としてはどのように見ているのでしょうか。
山後社長:今のキャンプは道具の優先度を高くしている人が多いと思うのですが、自然と共存するためにキャンプをしているかというと、少し疑問符はつきますよね。せっかく日本に豊かな自然があるので、メーカーとしては、もっと自然と共生するきっかけ作りができないかと考えています。
編集部:なぜそのようにお考えになっているのでしょうか。
山後社長:2019年秋にフィンランドを訪れる機会がありました。そこで現地のいろんな人に話を聞いた中で、「とにかく森に行く」という声をよく聞きました。森に何をしに行くかというと、夏はベリーの採取です。多くのフィンランド人が夏休みを2ヶ月とり、湖の湖畔の別荘でサウナに入る日々を過ごします。秋にはキノコが出るので、暇さえあれば、キノコ狩りに行くとのことでした。自然を上手に使っているフィンランド人の暮らし方と、日本人の休みの違いには驚かされました。
フィンランド人が余暇をアウトドアに費やしている時間は、世界有数です。フィンランドでは大きめとされるアウトドアショップに行きましたが、日本でいうキャンプの「ギア」というものは、ほとんどありませんでした。現地の人からも「キャンプ用品の会社って、サウナを作っているのか」と言われたほどです。
もっと自然を楽しむキャンプに
「道具にこだわらないで、まずは自然を」
編集部:確かに、私を含め、日本のキャンプ愛好家で、次々とギアを買う「キャンプ沼」にはまる傾向は強いかもしれませんね。
山後社長:釣り業界では「魚がいない方が、高い竿が売れる」とされているのと同様、キャンプに行く時間がない人ほど、お金はあるからキャンプ道具を買っている人が多いのではないでしょうか(笑)。道具にこだわらないのが、ある種の健全なアウトドアの姿ではあると思います。日本とその影響を受けた韓国、台湾のキャンプと欧米のキャンプは大きく違いますよね。
ユニフレームが目指すのは、単なるコレクションではなく、自然との共生を楽しむための道具作り。キャンプ場まで行くけど、キャンプ場から100m先のキノコや山菜には見向きもしない人が多いのは非常にもったいないです。そのためにも、ユニフレームの道具が表に出る必要はなく、自然との接点を増やす役割に徹したいです。
独自の物を作り続ける
編集部:山後社長は、ユニフレーム事業部を統括する新越ワークスの2代目として、業務用の調理器具メーカーからアウトドア事業を発展させてきました。
山後社長:もともとアウトドアは好きで、高校時代は山岳部。明治大でも山を続けていました。私は還暦になりましたが、1980年代〜90年代の第1次オートキャンプブームの時は、結婚して、子供も生まれ、家族でキャンプに行こうという年代でした。山岳部にいた時には、テント泊は荷物も重くてしんどいイメージがありましたが、知人から「キャンプ自体は楽しい」という人がいて、「それではやってみようか」と実際に「キャンプのためのキャンプ」をしたら、楽しかったんですね。ただ当時、日本メーカーの道具は少なかったので、アウトドア事業を本格化させました。
編集部:そこで他にないものを作ろうとするユニフレームの基礎ができたのですね。
山後社長:ざる製造業の長男として生まれたのですが、父親と同じざるを作るだけではつまらないと思いました。たまたまカセットボンベを使った仕事があって、アウトドアのコンロを手掛けようと思い、私が手がけて最初にヒットしたのは、2口のバーナーでした。当時の2バーナーはコールマンのものしかなかったのですが、汁受けがなかったので、煮炊きしたものがあふれると下がすぐ汚れ、手入れが大変でした。「家庭用のコンロには汁受けがあるのに、なぜキャンプ用には汁受けがなかったのだろう」と疑問に思い、開発を始めました。独自のものを作り続けて挑戦するユニフレームの姿勢は、今も変わりません。
キャンプの未来とは?
キャンプ場がもっと増えて欲しい
編集部:ユニフレームの事業は2011年ごろから2桁の成長が続いています。
山後社長:2020年で35周年の節目です。地道なものづくりが、やっと商売になリました。とはいえ、1990年代後半からの冬の時代で苦労していただけに、年々右肩あがりになっているのは感慨深いですね。
ただ、日本でキャンプ人気が完全に定着したのなら、キャンプ場はもっと増えるはずです。これがあまり増えていないところを見ると、楽観はしていません。メーカーとしての願いは単に人気が高まるだけでなく、キャンプ場がもっと増え、人気が形となってはっきり見えてくることです。製造業なので不得意なキャンプ場の運営をやる予定はないですが、キャンプ場で必要なものを製造できればと思います。「ユニフレームさえあれば安心だよね」と言われるように、「品質」「価格」「供給」の3本柱を大事に商品を作っていきたいです。
編集部:ユニフレームが目指すアウトドア事業の今後の取り組みについて教えてください。
山後社長:基本的に、好きでやっていくことが重要と考えています。アウトドア用品だけでなく、現在力を入れている木質ペレットストーブの事業も、環境に貢献できると思って好きでやっています。どんなこともそうですが、途中で止めなければ負けません。どっかで止めるから、買った、負けたの話になります。好きなことを止めることは、そんなにないと思います。好きなことを続けていくのがユニフレームの考え方です。
最近では、日本の国立公園内のキャンプ施設の話も動いているので、アウトドア関連の施設が増える可能性があります。建造物は制限があるにしても、そこで一番困るのは、トイレでしょう。国内では排水を浄化するバイオトイレはなかなか普及しないのですが、そういうことにも取り組み、アウトドアと社会に貢献できたらと思っています。
キャンプ市場の成長は必ず次の段階へ
編集部:最後に、今後のキャンプの未来について教えてください。
山後社長:キャンプ場がそこまで増えていないのは気がかりですが、キャンプ人口は定着の兆しがみえます。キャンプを経験した子供たちが30~40代となって、キャンプ市場の牽引役になっています。市場は十分に成長しましたが、そこで終わりとは思っていません。もうすこし次の段階はあります。
働き方改革などで休みは増える傾向にあるので、従来のように1、2泊でなく、1週間のキャンプが増えるのではないでしょうか。これからのキャンプは多様化し、もっといろんなことが変わっていくと思います。ユニフレームのテーマは「We want to make friends with nature」(自然といかに親しむか)。現代人が自然と共存するお手伝いをすることに変わりはありません。
取材を終えて
自然との共存のきっかけとなるものづくりを目指すユニフレーム。自然と親しむキャンプ本来の目的にあらためて気付かされる山後社長のインタビューでした。大人から子供までキャンプに親しめるように、キャンプ場がもっと増えることを期待せずにはいられませんでした。