【日本一探検隊】最も「縄文人」的なキャンプ場を発見!竪穴住居で過ごす温故知新な時間とは?
【日本一探検隊】最寄り店から20kmも!?「到達不能」なキャンプ場を群馬県で見つけました
2024.05.27キャンプ場
キャンプにまつわる日本一のモノ・コトを、hinataが勝手に認定する連載【日本一探検隊】がスタート!記念すべき第1回のテーマは、日本で「最も到達しにくい」キャンプ場です。道迷い多発?買い出しに一苦労?群馬の山奥にポツリと存在する「到達不能」なキャンプ場は、一体どのような場所なのでしょうか。自称・日本一ハンターの筆者が深堀りしていきます。
制作者
hinata編集部 松本璃子
登山、キャンプ、温泉が大好き。父から譲り受けた30年もののギアと新作ギアを織り交ぜつつ、アウトドアを楽しんでいます。自然の魅力をたくさんの人にお届けできるよう、頑張ります!
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もくじ
独断と偏見で「キャンプの日本一」を探っちゃう!
出典:PIXTA
どんな分野にも必ず存在する「日本一」。一見普通のモノやコトも、視点を変えれば何かの「日本一」だった、なんていうことも少なくありません。それは活況続くアウトドア・キャンプ業界でも同じこと!
そんな隠れた「日本一」を、hinata編集部が勝手に認定して深堀りしていくのがこの連載。「日本一○○なキャンプ場」「日本一○○なキャンプギア」などなど、実は知らなかった豆知識に出会えるはずです。
記念すべき連載1回目は、知られざる「最も訪れにくい」キャンプ場!
群馬県にあった!日本一「到達不能」なキャンプ場
出典:PIXTA
陸上で海から最も遠い点が「到達不能極」。日本では長野県佐久市の山中に存在し、「日本で海岸線から一番遠い地点」の標柱が立ちます
突然ですが、「到達不能極」という言葉をご存じでしょうか。「陸上で最も海から遠い地点」を指すこの言葉。日本の場合、長野県佐久市と群馬県南牧村の県境付近、海岸線から約115km離れた地点が「到達不能極」であるとされています。
今回取り上げるのは、そんな「到達不能極」に最も近いキャンプ場。つまり、日本一「海から遠い」キャンプ場です。太平洋からも日本海からも110km以上離れた、究極の山奥。この地にポツンと存在するのは、いったいどんなキャンプ場なのでしょうか?
海もコンビニもはるか先「なんもく村自然公園キャンプ場」
日本一海から遠いキャンプ場は、群馬県南牧村にある「なんもく村自然公園キャンプ場」。
下の地図のように、県庁所在地の前橋から直線距離で南西に約50km、避暑地として人気の軽井沢からも南に約20kmと、東京在住の筆者にとってなじみが薄いエリアですが…。
なんもく村自然公園キャンプ場
住所:370-2815 群馬県甘楽郡南牧村大字熊倉981番地
電話:0274-87-3657
公式サイト:なんもく村自然公園キャンプ場
「なんもく村自然公園キャンプ場」の公式サイトで真っ先に目につくのが、「日本一海から遠い、圧倒的に山の中のキャンプ場」との、なんとも刺激的なフレーズ。アウトドア好きの好奇心をくすぐる文言ですが、スクロールをしていくとこんな情報が続いています。
「東京から車で2時間半」「最寄りのICから50分」
特に「最寄りのICから50分」は、関東エリアではなかなかお目にかかれない数字かも。さすが日本一!
そこでさっそく、同キャンプ場を運営するサンエイト企画の代表・古川さんに、なんもく村自然公園キャンプ場の「リアル」を根掘り葉掘り聞いてみることにしました。道迷い注意、食品の買い出しも困難
――やはり山奥なので、アクセスに苦労される方も多いのではないでしょうか?
古川さん:もともとは、道路が長野県側にも繋がっていました。しかし2019年の台風で崩れ、キャンプ場への経路は群馬県側からのみに限られてしまったんです。結果的に、最寄りの「下仁田IC」からクルマで50分という、ハードなアクセスに。
古川さん:道路の状態も良いとは言えず、始めてだと迷いやすいかもしれないです。山奥なので携帯電話が圏外になり、キャンプ場に連絡もできず…。気がついたら辺りが暗くなってしまい、泣く泣くキャンセルに…というお客様が、昨年は3組ほどいました。
――まさに到達不能!食料品の調達はどうなさっているのでしょう?
古川さん:ICを下りると、買い出しに立ち寄れそうなコンビニが3軒、スーパーが1軒あります。しかしそれらがあるのは、キャンプ場までの50分の道のりのうち、最初の10分のうち。長野県側の道路が通っていたころは、キャンプ場から約20分でスーパーに行けましたが、現状、買い出しは大きなネックですね。
日本一「海から遠い」と名乗り始めたワケ
日本一は数あれど、「海から遠い」というのはなかなか新鮮に聞こえます。最も「到達不能」なキャンプ場は、どのようにして生まれたのでしょうか?
きっかけは、南牧村のもうひとつの「日本一」
出典:PIXTA
――そもそもなぜ「日本一海から遠いキャンプ場」と名乗ることになったのですか?
古川さん:実は、南牧村には他にも「日本一」があるんです。それは、高齢化率日本一。人口に占める65歳以上の割合が65%を超えており、消滅可能性都市にも数えられる自治体です。
古川さん:そんな南牧村でキャンプ場を運営するにあたり、少しでもポジティブな「日本一」はないかと、着目したのが海から最も遠い「到達不能極」でした。そこから直線距離にしてわずか数kmに位置するキャンプ場ということで、「日本一海から遠いキャンプ場」になったんです。
日本一遠いからこそ味わえる、ここだけの魅力
――ネガティブな日本一から生まれた、新しい日本一だったのですね。実際に「海から遠い」ことを目当てに訪れるキャンパーもいるのでしょうか?
古川さん:現状、ほとんどいません(笑)。それよりも、水の綺麗さや静けさ、暗さを求めてやってくる方が多いです。
――それは「不便さ」の裏にある、山奥のキャンプ場だからこそ味わえる魅力ですね。
古川さん:経験豊富なキャンパーさんから、「ここは本当に静かだね」と言われます。というのも、なんもく村自然公園キャンプ場は標高が高く、川の遙か上流にあるんです。裏に川が流れているようなキャンプ場とは異なり、水の音が聞こえませんし、もちろん街の生活音も聞こえません。聞こえてくるのは、風で揺れる木の葉の音や獣の足音くらい。そんなキャンプ場はめずらしい、と足を運んでくださるリピーターさんも多いです。
「苦労」が「楽しさ」に変わるとき
山奥でのキャンプ場運営に多くの困難があることは、想像に難くありません。どんな苦労が、そしてやりがいがあるのでしょうか?
山奥の広大な施設に四苦八苦
約5ヘクタールもの広大な敷地に広がるなんもく村自然公園キャンプ場
――すばらしい環境を保つために、苦労していることとは?
古川さん:大変なことについてお話しするといくら時間があっても足りないほどなのですが…(笑)。まず弊社が運営を始めた当初は、インフラ設備の理解が大変でした。水道が通っておらず、標高も高いので、沢の水を一度貯めてから流しているんです。その水路が、広いキャンプ場全体にクモの巣のように張り巡らされていて。電気の経路も同様に、複雑に入り組んでいるので、1年経っても完全に理解できないほどでした。
あとは当然ながら、物資の調達も山奥では一苦労です。ただ私自身、都市から離れた南牧村で普段から生活していることもあり、慣れた部分も大きいですね。
――逆に、楽しさややりがいを感じるのはどのようなときでしょうか?
古川さん:目の前のことに一生懸命だと、どうしてもうれしいことより大変なことが見えてしまうので難しいのですが、「やってて良かった」と思えたのが、今年のゴールデンウィークのときです。ほぼ満員状態だったので、テントの明かりやランタン、焚き火の炎がたくさん灯っているのがうれしくて。普段は真っ暗な山奥が、暖かい光で満ちている光景は良いなと、あらためて思いました。
圧倒的な「山奥」と、充実「施設」のコントラスト
山の奥深くにあるキャンプ場にもかかわらず、綺麗なコテージやバンガローを備えているなんもく村自然公園キャンプ場。そのアンバランスさが、キャンパーを惹きつけます。
実は「ファミリー」や「3世代」にも大好評
アウトドア初心者も安心して楽しめるコテージ・バンガローも。
- コテージ8棟(トイレ、キッチン、シャワー室付き・1棟あたり最大10人)
- バンガロー8棟(トイレ付き・1棟あたり最大5人)
五感で自然を感じるテントサイト。
- テントサイト(20区画以上)
- オートキャンプサイト(10区画)
――苦労も多い道のりですが、辿り着いた先には山奥とは思えない、充実の施設がありますよね。
古川さん:アクセスの悪さに反して設備が充実しているのは、バブル時代に作られた施設という背景があるからです。当時は食堂などの飲食営業も盛んにやっていて、アルバイトの高校生が40人くらい手伝ってくれていたみたいです。
古川さん:団体利用にも対応しているのが強みですね。今夏も保育園や小学校など、団体のお客様の予約が多く入っています。また、コテージも大きいので、2組の家族で利用する方や、3世代で楽しむ家族が多いのも特徴です。
「大浴場&テントサウナ」も日本一!
大きな窓から南牧村の豊かな自然を望む大浴場(週末営業・繁忙期は一部平日も営業)
古川さん:イチ押しは、日本一海から遠い大浴場と、テントサウナ。西上州の山並みが一望でき、清々しい空気と緑、山の天然湧水に癒やされてリフレッシュできます。
自分のペースで楽しめる、山奥のプライベートサウナ。西上州の大自然に抱かれる外気浴で、究極の整い体験を
薪ストーブ式、セルフロウリュ可能。薪を次々とくべて高温で楽しむもよし、低い温度でゆっくり楽しむもよし
水風呂はドラム缶でワイルドに。夏でもキリッと冷えた天然湧水を掛け流しで提供
(テントサウナは事前予約が必要。4人程度まで利用できます)
キャンプ場への想い、これからの目標
本格的な運営が始まってから1年足らずと、まだまだ進化の過程にあるなんもく村自然公園キャンプ場。これから目指すキャンプ場の姿を伺いました。
キャンプ場から、森林の恵みを伝えたい
――キャンプ場の運営にかける想いを聞かせてください!
古川さん:もともと林業を軸として立ち上げた会社で、森林管理やパン屋など、数ある事業の1つとしてキャンプ場を運営しています。そのため、「木の大切さ」を感じ取ってもらえるようなキャンプ場作りを目指しています。
古川さん:キャンパーの皆さんは薪を使う機会も多いと思いますが、「この木が何年かけて育った何の木で、それを割ってどのくらい乾燥させた薪なのか」ということを考えて燃やしている人はほとんどいません。そこを変えたいんです。
――身近に自然と親しんでいるキャンパーでも、なかなか意識できない部分ですよね。
古川さん:将来的には、薪割り体験や植林体験など、森林資源を使ったイベントを皆さんとやっていきたいです。「薪を購入するなら、苗を1本植える」くらいの心意気で。森林のサイクルを勉強し、木のありがたみを感じて帰ってもらえるような場作りが目標です。
――最後に、「日本一到達不能なキャンプ場」での、おすすめの過ごし方を教えてください!
古川さん:できれば2泊以上滞在するのをおすすめしたいです。どうしてもアクセスがよくないので、1泊で帰るのはもったいないなと。たしかに食材の調達は大変なのですが、コテージには冷蔵庫・冷凍庫も備わっているので、連泊して楽しく過ごしてほしいです。せっかく山奥に来たのなら、大自然をゆっくり満喫していただければと思います。
――ありがとうございました!!
日本一「到達不能」なキャンプ場には、時間をかけてでも辿り着きたい、唯一無二の魅力がありました。都市の喧噪とは無縁の山奥、なんもく村自然公園キャンプ場で、圧倒的な自然体験をぜひ!
日本一探検隊
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