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遊んでいたら、いつの間にか仕事になっていた!?誰もが憧れる「外遊びの何でも屋」の正体とは【アウトドア職業図鑑002】

アウトドアを生業にしているあらゆる職業の人にインタビューする連載「アウトドア職業図鑑」。第2回は長野県野沢温泉村で1日1組限定のキャンプ場“nozawa green field”を運営し、ザ・ノース・フェイスアスリートとしても活躍する河野健児さん。地域振興に貢献するべく、地元・野沢温泉村の観光協会会長も務め、スキーの開発やSUPブランドのデザインにも携わる、アウトドアを極めた名人の仕事とは?

アウトドア職業図鑑【002.外遊びの何でも屋】

nozawa green field代表 河野健児さん

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©︎Jun Yamagishi
「大好きなアウトドアを仕事にしたい」。キャンプ好きなら、そう願う人は少なくないはず。でも、「趣味を仕事にするにはどうすればいいのか」「アウトドアで本当に食べていけるの?」と一歩踏み出すのは難しいものです。 そこでhinataでは「アウトドア職業図鑑」と題し、毎月1人ずつ、アウトドアを生業にする人をピックアップ。仕事内容やプライベートの様子など、インタビューを通して紹介します。 今回登場してもらうのは、長野県野沢温泉村にある1日1組限定のキャンプ場“nozawa green field代表の河野健児さん。キャンプ場経営のほか、アウトドアブランド『ザ・ノース・フェイス』の契約アスリートや、SUPブランドのプロダクトマネージャー、スキーブランドのプロモーションマネージャー・開発、地元野沢温泉の観光協会会長など、あらゆる角度からアウトドアに関わるお仕事をされています。自分が好きな「外遊び」を提案・共有することで生計を立てる河野さんに、仕事の中身やメソッドについて聞きました。
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nozawa green field代表ザ・ノースフェイス公式アスリート/野沢観光協会会長

河野健児

1983年長野県野沢温泉生まれ。10代からスキークロスのワールドカップ選手として12年活躍。2016年に地元、野沢温泉村に1日1組限定のキャンプフィールド、nozawa green fieldをオープン。SUPツアーや野菜収穫・自然体験など、あらゆる外遊びを提案している。2015年よりザ・ノース・フェイスのアスリートとしても活動中。仲間と立ち上げたSUPプブランド『PEAKS5』を通して“SUP CAMP”の文化も発信している。野沢温泉村観光協会会長の肩書をもつ。

自分たちの理想のキャンプ場、それがnozawa green field

収入源のおよそ半分がキャンプ場。残り半分は…

アウトドア職業図鑑
©︎Jun Yamagishi
——nozawa green field(以下「ngf」)の運営ほか、多くのアウトドア関連のお仕事に関わられていますが、それぞれの業務の割合はどれくらいでしょうか。 河野健児さん(以下河野):収入面でいうと、ngf関連が5〜6割、ザ・ノース・フェイス契約アスリートの仕事が約2割、『PEAKS5』という自分たちで立ち上げたサップブランドの仕事が約2割、あとは『ヴェクターグライド』という、国内のスキーブランドのプロモーションマネージャーと開発に関わっているのですが、それが約1割、その他、野沢温泉村の観光協会会長の仕事もしています。
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©︎Jun Yamagishi
——メインの業務となる、ngfでは、ツリーハウスでのキャンプのほか、SUPツアーや野菜の収穫体験も提供していますよね。河野さんのやりたいことが詰まった場所だとお見受けしますが、ngf立ち上げの経緯はどのようなものでしたか? 河野:2016年の立ち上げの前から、10年くらい遊びでキャンプをしていて。自然の中でくつろぐためにキャンプに行っているのに、隣の区画の人とめちゃめちゃ近いのが窮屈に感じていました。当時まだ、プライベートのキャンプ場ってあまりなかったんです。であれば、プライベートな空間で自然を思い切り満喫できる、1日1組限定のキャンプ場を自分たちで作ろうと考え、妻と一緒にngfをスタートさせました
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©︎Jun Yamagishi
——人気もあるキャンプ場なので、1日1組限定、というのがもったない気もしますが。 河野:敷地も以前より広くなりましたし、「1日2組とかにすればもっと儲かるのに」とかまわりの人によく言われます(笑)。でもそうすると、当初のコンセプトがブレてしまうので、もし広げるなら、他の地域で別のキャンプ場を作るでしょうね。

新たな外遊び“SUPキャンプ”を提案

大手アウトドアブランドの広告塔の仕事とは?

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©︎Ranyo Tanaka
——ザ・ノース・フェイスの契約アスリートは、広告塔のようなイメージがありますが、実際はどのようなお仕事をされているのでしょう? 河野:僕はスキーヤーとして所属していて、スキーウェアなどのプロダクト開発や、プロモーションビデオに出演したりしています。他にも、キャンプ場の経営もしているので、キャンプグッズ関連のプロダクト開発へのアドバイスや、カタログや動画の撮影にモデルとして参加したりもしますね。
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©︎Jun Yamagishi
2015年に仲間と立ち上げたサップブランド『PEAKS5』 を通して、サップとキャンプを一緒に楽しむ「SUP CAMP」というカルチャーも発信しています。ザ・ノース・フェイスと組んで、プロモーション動画も制作しました。
——サップは、今では日本のアウトドアシーンでもかなり浸透していますが、河野さんが火付け役でもあったんですね。ザ・ノースフェイスとのお仕事はご自身の活動とリンクする部分も多いですが、契約にはどのように至ったのですか? 河野:スキーはもちろん、あらゆる外遊びの提案をザ・ノース・フェイスのギアを通してしたいと思い、自分からプレゼンをしに行きました。ザ・ノース・フェイスの契約アスリートには、スキーやスノーボーダーのほか、クライマーやランナー、登山ガイド、写真家など、日本人は40名ほど所属しています。一年に一度アスリートミーティングがあったり、野沢温泉にきてスキーをしたりと、メンバー同士での交流もあります。

冬季に得たアイデアを、ngfにも循環させる

生ゴミやソーラーエネルギーを活用した、循環型のキャンプ場!

河野:ngfは今、「1日1組限定」ということ以外に「循環型のキャンプフィールド」という取り組みもしています。コロナ禍になる前は、お客様にランタンなどを持ってきていただいていましたが、今は太陽光パネルを導入し、場内の灯りはソーラーエネルギーで賄っています。 キャンプ場の下の畑では、前の年にお客様が置いていかれた生ゴミの一部をコンポスト(堆肥)にし、それを使って野菜を育てています。水は湧き水が使えますし、環境に負荷の少ない、持続可能なキャンプ場をお客さんと目指しているところです。
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©︎Jun Yamagishi
——ngfでは、コンポストに利用できる生ゴミ以外のゴミはお客さんにすべて持ち帰ってもらう仕組みになっていますよね。 河野:はい。それも、ゴミを持ち帰ることで自分たちがどれだけゴミを出しているか、肌で感じてもらうというねらいがあります。誰だって、持ち帰るゴミは少ない方がいいですよね。キャンプ場でゴミを捨てられないとなると、次からどれだけゴミを減らせるか、工夫するようになるんです。
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©︎Jun Yamagishi
——たしかに、何でも捨てられる高規格キャンプ場はとても便利ですが、何でも持ち込んでしまっている気がします。以前、私もゴミが捨てられないキャンプ場を利用したとき、食材は事前に切ってジップロックなどに入れておき、袋はすべて自宅で捨てて行くなど工夫しました。ジップロックは洗ってリユースできますし、帰りにゴミがほとんど出なかったことに、自分でも感動したのを覚えています。 河野:そうやって、キャンパー側の意識や技量も上がってきますよね。僕はファミリーキャンプもしますが、仕事で雪山でキャンプをすることもありまして。必要最低限の荷物しか持ち込めない厳しい条件でのキャンプ経験を、ngfでの循環型キャンプフィールドを運用するアイディアに生かしているんです。

夏も冬も、「外遊び」で仕事を生み出す

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©︎Jun Yamagishi
——メインのngf関連のお仕事が夏期限定になると思いますが、冬期はスキーの大会などの出場されない場合、室内でのお仕事が多くなるのでしょうか? 河野:スキーヤーとして今でも、冬も外にいる時間はあまり変わりません。プロダクト開発や、ブランドのPV制作ためにフィールドでスキーをしますし、シーズン中はライディングアカデミーも開催します。 自分がスキーをし、自然の中に身を置かないと仕事になりません。一方、PEAKS5の映像編集のディレクションや、WEBに掲載する写真の選定といったクリエイティブも僕自身がやっています。夏でも冬でも、外と家で仕事をする時間は変わらないですね。
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©︎Ranyo Tanaka
——夏も冬もご自身が楽しいと思う「外遊び」を提案するのがお仕事ですが、オンとオフの切替えはないのでしょうか? 河野:あまりないですね。家にいるときは奥さんや子どもと遊んでいるし、外に行けば、お客様と遊んでいます。人と遊ぶことが、仕事になっている感じです。
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©︎Jun Yamagishi
——遊びを仕事にしているとはいえお仕事なので、何か困難に感じることはありますか? 河野:ないですね。TREE CAMPもSUPも、基本的に自分がいいと思ったことを仕事にし、提案・共有しているので。僕は嫌なことは仕事にしないです。あとは飽き性なので、「次は何をしようかな?」と常に新しいことを考えています。 ——好きなことを仕事にするとき、ひとつのことにのめり込む「凝り性」の人だと、どこかで行き詰まってしまうかもしれません。しかし河野さんのようにいい意味で飽き性の人だと、また新しい好きなことを見つけられるので、ずっと好きなことを追いかけていられるのかもしれませんね。

将来のビジョンは、外遊びの集大成

子どもには、都会と自然の両極端の環境を与える

——「スーツを着て会社に行くお父さん」に比べ、お子さんと遊べる時間も多いと思います。子育てで大切にしていることはありますか? 河野:もちろん、子どもたちとはSUPやスキー、キャンプをしたり、アウトドアを一緒に楽しむ時間が多いです。自然の中での遊びはもちろん大事ですが、自分が東京で仕事があるとき、長男だけ連れて行くこともあります。都会で自然と対極の環境も体験させ、選択肢を増やしてあげたいですね。自分の価値観だけで、子どもの可能性を狭めたくない。子育てで一番大切にしていることです。

知り合った人、みんなが遊びに来れる場所を作りたい

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©︎Jun Yamagishi
——近い将来、またお子さんが成人されご自身が引退するころに、何か描いているビジョンはありますか? 河野:近い将来でいえば、四国にもうひとつ拠点をもちたいとやんわり思っています。以前、ザ・ノース・フェイスのSUP CAMPの撮影で、キャンプ道具をもって、四万十川を下ったんです。そのときの景色が素晴らしく、体がふたつあればぜひ高知に行きたい。今でも、毎年10月に、ngfの常連のお客様と四万十川でのSUP CAMPツアーを実施していて、家族も呼んで楽しんでいます。
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©︎Jun Yamagishi
河野:もう少し先のこととしては、ひとつの目標として、60歳くらいになったら、自分が出会った人や、その人たちの紹介のお客様がひっきりなしに四季を通して訪れてくれるそんな宿を作りたいと漠然と思っています。宿泊だけでなく、四季折々の外遊びも提案し、ガイドも自分がして。もちろん自分たちの作ったプロダクトも置きます。なので、当面はいろいろなところに遊びに行って多くの人に会い、多種多様な経験をし続けるというのが僕のミッションですね。

アウトドア職業図鑑

「大好きなアウトドアを仕事にできたら」。キャンプ好きなら一度は憧れるものですが、実際には「どんな職業があるのか」にはじまり「どうやったらなれるの?」「辛いことはないの?」「ぶっちゃけどのくらい稼げるの?」とわからないことばかり。 そこでhinataでは「アウトドア職業図鑑」と題し、毎回1人ずつ、アウトドアを生業にする人をピックアップ。仕事内容や生活の様子など、インタビューを通して紹介します。



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