クルマは買い替えではなく“けん引”する!キャンピングカーよりハードルが低くてお得な「キャンピングトレーラー」って?
キャンプ上級者になるにつれ、テントが大きくなり、ギアがどんどん増え、車が手狭に。ならばキャンピングカーが欲しい!と思うけれど、初期費用も維持費も高くて手が出ない…そこでたどり着くのが、キャンピングトレーラー。今ある自家用車に連結させるだけ、けん引免許不要ですぐに運転が可能。維持費が安く、低コストではじめられる、おしゃれで身軽な夢のキャラバンライフについて、徹底解剖します!
キャンプギアで車の荷台がパンパンになっていませんか?
車の買替えか、2台持ちか。現実的な選択肢は?
回を重ねるごとに、レベルアップしていくキャンプ。当然、ギアを充実させたくなり、荷物も増えていきます。特にファミリーならば、子どもが成長してテントや寝袋、チェアのサイズが大きくなったり、食べる量が増えるにつれ、調理器具や食材も増えたりと、「これまで乗っていたクルマが手狭になってきた…」という事態に陥ることも。
そこで検討するのが以下のような選択肢。
- 積載量を、より大きなクルマに買替える
- 思い切ってキャンピングカーにする
- 1か2にした場合、普段の街乗りがしづらい→日常使いの軽自動車と、アウトドア車の2台持ちにする
- ギアをぜんぶコンパクトなものに買い換える
- ルーフボックス、ルーフラックを装着する
コンパクトな「キャンピングトレーラー」がねらい目!
ギアをコンパクト化したり車を買替えずとも、1〜3の用途を叶えられる方法があります。それは「キャンピングトレーラー」を購入するという選択。キャンピングトレーラー(以下「トレーラー」)は、日本ではまだ認知度が低く、街で見かけることはほとんどありませんが、アウトドアファンの間では、じわじわと注目を集めています。
狙い目は、けん引免許不要で、今乗っているクルマにそのまま付けて引っ張れる、コンパクトなもの。さらには本場の欧州で1980年代以前に発売されたキャンピングトレーラー“ヴィンテージキャラバン”がアツいということで、専門家に魅力を聞いてきました!
ヴィンテージキャラバンについて教えてくれるのはこの人!
ストローラーズ ヴィンテージキャラバンズ代表
高山 修司さん
ショップ「ストローラーズ ヴィンテージキャラバンズ」(千葉県千葉市)にて、欧州のヴィンテージを中心としたキャラバンの輸入・販売を行う。もともとは成田国際空港でけん引の仕事をしていたことがきっかけで、キャンピングトレーラーに興味をもつ。ヨーロッパで「フォルクスワーゲン」のイベントに行ったとき、トレーラーでキャンプを楽しむ文化に感銘を受け、その場でキャラバンを衝動買い。帰国後、自身のキャラバンを購入希望者がいれば都度譲り、普及を開始。
トレーラーなら手持ちの車に接続するだけ!メリットしかない!?
けん引免許がなくても大丈夫!
コンパクトなトレーラーを引っ張るだけなら、けん引免許は不要。条件としては「車両とトレーラーを連結したとき、前から後ろまでの長さが12mを超えず、トレーラーと積載物の総重量が750kg未満」ということ。けん引する方のヘッド車が何kgまでのトレーラーをけん引できるか登録する「950登録」をすれば、軽自動車でもトレーラーを引っ張ることが可能です。
維持費が安い
「トレーラーは自走機能のある『自動車』ではないので、エンジン、ブレーキなどのメンテナンス費用が基本的にはかかりません。維持費は、毎年かかる自動車税が10,200円(税込)と、2年に一度の車検費用等(重量税・自賠責保険含む)を合わせて、年間約3万円ほど。
大型キャンピングカーの場合、自宅や自宅近辺の月極駐車場に停めるのが困難なケースもありますが、トレーラーは一般の駐車場に保管できるので、自家用車と二台分のスペースがあれば大丈夫です」
運転は、前進だけなら3分で慣れます
「普通免許でOK」とはいえ、もちろん乗用車のみを運転するときと全く同じ感覚でというわけにはいきません。「前進するだけなら、いつも近所を走る道を3周、もしくは3分ほど走ればすぐに慣れます。曲がるときは連結部分が屈折してくれるので、トラックのように大回りする必要もありません」
コンパクトなトレーラーは女性ひとりで押して動かせるくらいの重量
「ヘッド車がブレーキを踏むと、トレーラーも簡易ブレーキがかかる仕組みになっています。一般道では他の車と同じく、制限速度に準じたスピードで走って問題ありません。
やはりバックはコツがいるので練習する必要があります。どうしても難しい場合は、トレーラー部分を切り離して手で押してしまう方が早いかもしれません」
トレーラーを買うならヴィンテージキャラバンがおすすめ
ヨーロッパでは、家庭用3台に1台はトレーラー付き
「ヨーロッパでは、一般的な乗用車の3台に1台はトレーラーと自家用車を連結する“ヒッチホール”が付いていると言われています。たとえば建設業の人が、ベンツのセダンにトレーラーを付けて現場まで資材を運び、トレーラーだけ置いて帰る。週末はまたトレーラーを付けて出かけ、旅行を楽しみます。サマータイムになると、街で車の10台に1台はトレーラーを付けている光景を目にします」バカンスに行き、宿泊先にトレーラーを設営して、近隣のドライブへは乗用車のみで身軽に。車一台で済み、経済的かつ実用的。
けん引車(ヘッド車)とトレーラーをつなぐヒッチホール。
古い欧州車は気難しい?答えはノー
ストローラーズで扱っているのは、1985年以前のヴィンテージキャラバンばかり。車業界では、現在のように大量生産・大量消費という考えでなく、きちんとした「ものづくり」がされていた時代です。「最近のプラスチック製などは耐久性がなくすぐに劣化してしまいますが、当時のものはコスト面を考えず、きちんとした材料で作られているので、結果長持ちしています」
キャンピングトレーラーの人気トップモデル、ハイマーの“エリバ”
ドイツのキャンピングトレーラーメーカー、ハイマーの中でもいまだに生産され続けている人気モデル“エリバ”。シリーズで一番コンパクトな“エリバパック”は、排気量の小さい小型車両でもけん引でき、1960〜70年代の良状態のオリジナルはとくに希少で、なかなか手に入らないレアものです。
ヴィンテージ調のレトロな佇まいが、女性をはじめ、クラシックなもの好きのココロをくすぐるエリバ。「外板はアルミ、窓周りは良質なラバーが使われており、コーティングはされていないものの、これまで雨漏りするものに出会ったことがありません。窓はアクリル製ですが劣化で白く濁ったり、割れたりしていないんです」
オリジナルのままの方が価値があり、ヴィンテージ品としても人気
「内装も40〜50年前のものになりますが、オリジナルのまま手を加えていません。使われているヨーロッパの木材が日本の風土に合っているのか木が締まっていて、シナシナになったりしないんです」
「冷蔵庫やコンロ、FFヒーターなどの電化製品も当時のものですが、シンプルな構造なので、壊れたものを見たことがありません。ヴィンテージのヒーターはスキー場でも、室内温度30度以上まで上げられ、バリバリの現役です」
室内は2〜3人が寝られるサイズ感。「欧州製のソファベッドは、スプリング式で一般的なキャンピングカーより寝心地がいいのも自慢です。宿泊先で窓を開放したときに、モスキートネットも備えられているので快適に過ごせます」
天井高く、居住性抜群!
「天井が高くなる工夫として、ポップアップルーフが備えられています。けん引時は畳み、風の抵抗をなくして走行します。このルーフ部分もオリジナルですが、当時の布はコットン100%で、濡れると縮むので雨漏りしないんです。10〜15万円ほどで張り替えることも可能ですが、コットンのヴィンテージテントが流行っていたりするので、このままの方がむしろ人気ですね」
中に人が入ると傾いてしまうので、足を出して固定。キャンプ場などデコボコしているところでもバランスを保てる。
気になる値段は!?
車や部屋をひとつ増やすより低予算
ストローラーズで扱う、デザインも、クオリティも文句なしのヴィンテージキャラバン、“エリバパック”。値段は、およそ150〜200万円程度です。自宅の庭に置いて部屋として使えることもあり、新車や、部屋をひとつ増やすと考えると、かなり安く感じるかもしれません。
「購入者層は、主に40代以上の方。キャンプは好きだけど、年を重ねるにつれ設営、撤収が面倒になったり、多少天気が悪くても外で寝泊まりできる便利さもあり、トレーラーに行き着きます。あとは、リーズナブルだけど、すぐに使えなくなるものより、多少値段が張っても長く使えるものに価値を見いだせる人でしょうか」
「キャンピングカーだと行き先や駐車スペースが限定されてしまうので、トレーラーに買い替えた女性もいます。彼女はジムニーでけん引していて、震災時に、ペットの飼い犬と一緒にトレーラーを避難所として利用したそうです。
アウトドアファンの間で人気が出たのは、もともと登山用のライトウェイトなテントからはじまり、次第にテントが大きくなっていき、素材もナイロンからコットンになり、スノーピークのナイロンテントで数万円、ノルディスクのコットンテントで何十万も、と流行を追っていけば、エリバパックが買えちゃうくらいの予算感になり、トレーラーに目を付ける感じですね。『質の良いものを長く使いたい』という価値観とマッチしたわけで、僕は“究極のギア”のひとつだと思っています」
これからは、おしゃれなトレーラーで手軽にキャンプ!
アウトドアを続ける中でも、「本当にいいもの」を追求した結果、たどり着くヴィンテージキャラバン。プライベートな空間が、現実的な価格で手に入れられるのも、魅力ではないでしょうか。これから街で乗用車がトレーラーをけん引する光景を、日本で目にする機会が増えるかもしれません。
撮影協力:
ストローラーズ