【アウトドアおやじが100回使ったギアvol.2】バーナー沼には気をつけろ!
キャンプ歴40年。登山に渓流釣り、バイクでのアドベンチャーツーリングと、国内外でさまざまなアウトドア経験を積んできたライター丹羽孝之。数々のキャンプギアとの出会いと別れを繰り返してきた"アウトドアおやじ"が、「100回は使った!」と断言する至高のアイテムとは?連載「アウトドアおやじが100回使ったギア」、第二回のテーマは「バーナー」です。キャンプのキッチンに欠かせないバーナーは、どんな基準でどう選ぶといいのでしょうか?
連載企画「アウトドアおやじが100回使ったギア」
キャンプの相棒となる道具選びで意外と大事なのが、自分のキャンプスタイルに応じた「妥協と割り切り」。どんなシーン、どんなスタイルにも合う万能ギアはそうそう見つかるものではありません。
登山やバイクツーリングでのテント泊を入り口に、キャンプ歴は40年ほどになる筆者。ファミリーキャンプや夫婦キャンプを経て、現在はもっぱらソロキャンプに勤しむ、自他ともに認める「アウトドアおやじ」です。その時々のキャンプスタイルに合わせ、今までさまざまなキャンプ用品を使ってきました。
いろいろな失敗も経験してたどり着いた「完成形」とも言える現在の装備は、「使いまわしやすさ」を追求した精鋭ぞろい。自信を持っておすすめできるアイテムを紹介します!!
アウトドアおやじ/ライター
丹羽孝之(にわ たかし)
キャンプ歴40年。登山(クライミング、沢登り、縦走)、ヒマラヤ山域や北インドでのトレッキングとバイクツーリングなどなど、アウトドア全般を愛する。 年間のキャンプ泊数は約20泊。2021年はバイクでの北海道一周と九州一周のソロキャンプツーリングに繰り出し、50泊を達成。
キャンプクッキングの必須ギア「バーナー」。種類がありすぎる…!?
ライター丹羽が40年もキャンプを続けていて、試行錯誤してきたギアの一つがバーナーです。登山、キャンプ、釣り、バイクツーリング、スキーなど、それぞれ使う場面や季節など環境が違ってくるため、理想のバーナーを探し続けてましたが、なかなか絞り込めないんですよ。さらに料理の種類によっても悩ましい…。
もう、どっぷり沼にハマって泥だらけな訳ですよ!
それでも最近ようやくバーナー沼から這い上がれそうです。その理由は自分のアウトドアスタイルが確立されたから。そんな状況ですから、これからバーナーを購入しようとしている方にとっては、燃料の種類も色々あるし、火力、大きさ、重量など検討事項が多すぎて困っているのでは?
それでは、まずは燃料の種類を説明してから本題のバーナーに進んでいきますね。必ず皆さんに役立つ情報なので、じっくり最後まで読んでみてください!
燃料の種類は何が良いの?
ガス
LPガスと総称されているノルマルブタン、イソブタン、プロパンの3種類のガスが使われてます。イソブタンやプロパンの配合割合により、寒冷地向けのパワーガスになるんです。ガス缶の形状は2種類あって、一般家庭でも使われているカセットコンロのガス缶のことをCB缶、アウトドア用の物をOD缶と呼びます。
ちなみに缶のカバーがいろいろと販売されてますが、保温効果はほとんど無いと思ってください。ガスが気化することにより缶の内部で冷やされるので…。あくまでもオシャレグッズなのかなと。ガス缶は寒さに弱いので、冬場の夜などは翌朝の使用を考えて、シュラフの中にガス缶を放り込んで寝てます。
CB缶
家庭用のカセットコンロでよく使われる、長細い缶がこちら。アウトドアショップではショートサイズを扱っていることもありますが、あまり使う機会は無いと思います。メリットは安くて旅先のスーパーやコンビニでも入手しやすいこと、ガスが余っても自宅のカセットコンロで使い切ることができることです。
元々は屋内使用を前提として開発されてますが、現在ではバーナー構造や周辺ギアとの併用により、アウトドアでも使いやすくなりました。缶の形が長細い円筒形なので、パッキングしやすいのもメリットかな。
OD缶
おわんを伏せた形状の缶がOD缶です。缶のサイズは110g,250g,500gの3種類。各バーナーメーカーのブランド物が発売されています。筆者の経験ではEPIとプリムスの缶はけっこう互換性がありますが、バーナー側のピンの長さによってはバルブを押しきらずガスが出ない物もあります。流用は自己責任ですが、必ずキャンプや登山に出かける前に燃焼テストをしておきましょう!
OD缶はアウトドアでの使用を前提としているため、高火力が出せるようになっています。バーナーの使い方によって缶のサイズ選びやスペア缶の追加を検討することになります。CB/ODのどちらにしても、自分の使用パターンでのガス消費量(缶のガス残量)を把握しておきましょう!それにプラスして、CO2排出量を抑えるためにもムダ使いはやめたいものです。
ガソリン
アウトドアの世界では、ホワイトガソリンは「白ガス」、車やバイクで使うガソリンは「赤ガス」と呼ばれてます。ガソリンは引火性が非常に高く、特に取扱いに注意が必要です。ガソリンの匂いはきついので、給油の際に手についたりすると、調理前などは気になっちゃいます。
通常はバーナーに使用するのは白ガスにしておくのが無難です。白ガスは高くつきますが、バーナー内部へのススが付きづらいので、バーナーのメンテナンスサイクルが長くなります。筆者はバイクツーリングでも白ガスをメインにしていて、足りなくなってしまった際に緊急用として、バイクから赤ガスを抜いて使うようにしてます。
アルコール
アルコールは主に、ドラッグストアでも入手できるような市販の燃料用アルコールを使用します。白ガスと比較すると燃料代は安くすみますが、CB缶と比較すると、バーナーの燃費によっては微妙かな…。低気温でも問題無く使えるのは強みです。
ちなみに、筆者がかつて暮らしていたインドの街中では燃料用アルコールが全く入手できませんでした。国によっては入手できないようです。アルコールは日中だと着火しても、炎が目視確認できない事が多く、取扱いには注意が必要ですよ!
バーナーの種類
さて、いよいよ本題のバーナーについてです。みなさんはどのような基準でバーナーを選んでますか?バーナーって、なんだか妙に男心をくすぐられるし、アウトドア気分の高まるギアですよね!
燃料の種類も液体燃料(ガソリン、灯油、アルコール)とガスのどちらにすべきか迷います。筆者は国内外を問わず、あらゆるアウトドア環境で様々なバーナーを使ってきました。旅の目的、季節、人数、調理内容などに合わせてチョイスしてます。使わないともったいないし…。
では、それぞれのバーナーの特性について説明しますね。
ガスバーナー
最も簡単手軽に使えるのがガスバーナーです。まずは製品を選ぶ前に、自分がCB缶かOD缶かどちらをメインに使うのか決めましょう。次にバーナーは一体型か分離型かを検討し、それから製品探しをすると良いです。そうしないと候補が多すぎて決められなくなりますよ!
選び方としては、使いやすさ、安定感、五徳の足が3本か4本かなどを検討していくと良いと思います。点火装置は故障しやすい部分なので、念のため、必ずライターなどを一緒に持っていきましょう。経験上では標高2,500mを超えるあたりから点火装置やガスライター(電子着火式)は機能しなくなってきます。高所登山にはマッチかフリント式ライターを忘れずに! バーナーが着火しないと命に関わりますから…。
最近ではCB缶/OD缶共に使えるバーナーも登場してきていますが、はたして普段切り替えて使うことがどのくらいあるのか!?キャンプ場のような里で万が一のことが起きるのか!?この辺りが悩みどころになるのかな。登山用に考えているなら切り替え機能は不要でしょう。
一体型
バーナー自体がガス缶に接続するタイプのものです。CB缶を使う物では、SOTO(ソト)のレギュレーターストーブST-310やイワタニのジュニアコンパクトバーナーCB-JCBがメジャーかな。
OD缶を使う物は主に登山用に開発されたものになります。プリムス2243(本体253g)なんて30年以上前からのロングセラーで故障知らずの名機です。今となっては重さが気になりますが、キャンプ用であれば問題なし!軽さならプリムスP-115フェムトストープ(本体はたったの56g!)。風には弱いけどスノーピークのギガパワーストーブ"地"GS-100R(本体75g)もおすすめです。
OD缶タイプのシングルバーナーを選ぶ際に注意したいのが、ガス缶の口金からバーナーヘッドまでの高さです。ここが長いとコッフェルを乗せた時の安定感が悪くなります。テント内で調理したり、大きめのコッフェルを乗せる際は慎重に扱う必要があります。3本タイプの五徳のバーナーは特に注意が必要です。テント内で鍋料理をぶちまけたらそりゃぁもう悲惨な事に!!
製品個別の情報はキリがないのでこの辺でやめときます。
分離型
卓上使用、大鍋使用、雪上などで安定感を求める場面では分離型が欲しくなります(バーナー台は必須)。
冬季にバーナーの熱でガス缶を温めながら使うことも可能(自己責任です)。EPIのAPSA-III STOVE S-1020がロングセラーです。なお、CB缶タイプはガス缶の向きに注意してくださいね。口金の切り欠き部分が真上に来るのが正解。缶を立てたり斜めにして使わないように!
ガソリンバーナー
ここでは、キャンプで一般的な白ガスを燃料としたバーナーについて説明します。キャンプ経験者でもガソリンバーナーの購入にはためらっている方も多いことと思います。匂い、引火性、燃料補給やメンテナンスの手間など気になることがありますよね。本題に入る前にガソリンバーナーについての会話で登場する用語を説明しておきますね。
ポンピング
燃料タンクまたは燃料ボトル内の内圧を高めて、その圧力で燃料が噴射するようにする一連の儀式をポンピングと呼びます。
プレヒート
点火する前にプレヒートと言うジェネレーター部分を熱して燃料を気化しやすくさせるのが「プレヒート」。ホエーブス625/725、オプティマス123R、MSRなどのバーナーで必要となります。プレヒートをせずにポンピングだけで着火できるストーブもあります。
ガソリンストーブのメリットは火力の強さと、気温の低い環境での安定した燃焼です。昔のコールマン製品は、白ガスを使うランタンやバーナーがスタンダードだったので、キャンプに持っていく燃料は白ガスで統一できました。現在だと、燃料にガス缶と白ガスの両方を持っていくことになりますね。とは言え、テントも凍る真冬の明け方にガソリンバーナーの大きな燃焼音と共にお湯を沸かす安心感は格別なんですよ!登山の時はやる気スイッチも入ります!
これからガソリンストーブを購入しようとしている方には、SOTO MUKAストーブ SOD-371をおすすめします。プレヒートが不要ですし、着火から消火までの操作がシンプルで安全です。白ガスの方が経路(ジェネレーター)が詰まりにくく、メンテナンスサイクルが長くて楽です。筆者はバイクでのヒマラヤ・ソロツーリングでは赤ガスで使わざるを得なかったのですが、ガソリンの品質も悪く、何回か分解清掃しました。ただ、MUKAストーブの火力はすごいのですが、弱火が使えません。よって、炊飯も苦手です。登山やアドベンチャーだったら、料理をすると言うよりは一気にお湯を沸かす機能が一番大事なのでこれで良いのですけどね…。弱火を使いたいときはいさぎよく諦めて、コッフェルやフライパンを火から遠ざけて調理してください(笑)!
持ち運びの際は燃料ボトルにポンプ部分を付けたままでOK。バーナー部分だけならとてもコンパクトです。燃料ボトルは一番小さい280mlボトルでの運用がおすすめです。予備燃料を480mlのボトルに詰めていき、都度満タンに補充して使うのが気持ち的に安心感があるのでこの方法にしてます。
アルコールバーナー
エバニューチタンアルコールストーブとバーゴヘキサゴンストーブの組み合わせ
アルコールバーナー(アルスト)は壊れる心配が無く、小型軽量でミニマルキャンプの強い味方です。空き缶で自作して、色々と工夫して楽しんでいる方もいますよ。近年のアウトドアブームで市販品が一気に増えた印象です。市販のものはそれぞれ火力、燃費、燃焼時間などに差が出ます。火力調整はできないため、フタで火口の面積を絞って炎を調整する程度です。消化方法は燃え切るのを待つか、フタで消化するかです。アルストは風に弱いので、五徳や風防と併用することが多いです。筆者はバーゴのヘキサゴンウッドストーブの中に入れて使ってます。
例えば300ccのお湯を沸かすには何mlのアルコールが必要か事前に燃費をテストしておき、アルストへの注入量を判断して使います。休憩時にコーヒーを飲みたい時など、さっとお湯を沸かすのに便利。ちなみに、チタンのアルストは軽いだけではなく、冷めるのが早いのでスピーディーに行動できますよ!燃費は良くないけど…。
シチュエーション別の使い方
キャンプには使いやすさと安定感を重視
ファミリーキャンプではシングルバーナーはサブ的な位置付けだったりするのでは?焚き火での調理にこだわりたい方も多いかと思います。
キャンプにおいては、ストイックな選定をする必要はないので、ギアが醸し出す雰囲気を優先したり、ポンピングやプレヒートなどの点火儀式にこだわるのもありですよ!一応、筆者のパターンを紹介しておきますね。大まかには季節によってチョイスしてます。
春、夏、秋はSOTOレギュレーターストーブ ST-310
最近はバイクでのソロキャンプツーリングが多いので、燃料調達のしやすいCB缶仕様のST-310を愛用してます。春先や晩秋で標高1,000m位のキャンプ場に行く際はパワーガス缶を持っていきます。日中使用ではパワーガスじゃなくても問題ないかと。
冬場はコールマンのPEAK1
親父から受け継いだPEAK1なのですが、もう41年間に渡りメンテナンスしながら使い続けてます。
冬場は低温での火力低下が起こらないガソリンストーブの出番です。大きくて重いけど、冬場は鍋料理の機会も増えるので、弱火の効くPEAK1が使いやすいんです。また、ヒーターアタッチメントを乗せて暖を取るのにも、ガスバーナーのようにガス缶への輻射熱の心配も無く、比較的安心なんです。
バイクでのキャンプツーリングには、コンパクトで燃料調達のしやすさを重視
SOTO ジェネレーターガスストーブ ST-310とバーナー台
バイクや自転車でのソロキャンプ・ツーリングでは他の装備との兼ね合いでパッキングスペースがネックになります。まぁ、小型軽量にはあまりこだわらなくてもよろしいかと! むしろ液体燃料だと液漏れの心配が有りますね。
長旅の場合は燃料の調達がしやすいCB缶のバーナーをメインにしてます。筆者の場合はSOTOレギュレーターストーブ ST-310を愛用してます。海外ツーリングでは、赤ガスでも使えるSOTO MUKAストーブ SOD-371とプリムスP-115 フェムトストーブを持っていきます。また、普段の日帰りツーリングでも景色の良い場所などで途中で汲んだ湧き水でコーヒーブレイクしたいので、エバニューのアルストも持っていきます。
登山には小型・軽量・信頼性を重視
登山の形態(縦走、登攀、沢登りなど)、季節によって装備を考えます。BC(Base Camp)を構えた登山か、バリエーションルートでのアタックなどスピード重視なのか…。1、2泊の夏山縦走ならば、ガスバーナーと予備のアルストの組み合わせが多いです。燃料消費量を最小限にするため、必要な量の水しか沸かしません。沸いたらすぐに消化。また、テント内でバーナーを使うことがあるので、必ず薄いベニヤ板で作ったバーナー台を持っていきます。雪上でのバーナー使用であれば必携ですよ!
ガスバーナー
OD缶タイプで小型軽量のものをチョイス。筆者の場合はプリムスP-115フェムトストープ。1泊なら250g缶 1個だけでOK(それでまかなう)。雪上使用ではバーナー台が無いと、OD缶の底が丸いため使用中にコッフェルごと倒れることがあります、、。
ガソリンバーナー
BCを設営するような山行(さんこう)の場合に検討します。筆者の場合はSOTO MUKAストーブ SOD-371を使用。
筆者所属の山岳会では現在もホエーブスが活躍してます。
アルコールバーナー(アルスト)
標高3,000m級の気圧の低いテン場(キャンプ指定地)でも問題なく使えますし、ガスバーナーが苦手とする氷点下の環境でも問題無く燃焼するんです。ただし、テント内での使用は厳禁です! 揮発したアルコールで目がチカチカするし、万が一こぼしたら一瞬でテントが全焼します…。
夜明け前のテン場でガソリンバーナーの轟音を響かせるのに気が引ける時は、アルコールバーナーならほぼ無音です。筆者は、エバニューのチタンストーブを愛用してます。
最初の1台に間違いないのはSOTO レギュレーターストーブST-310!!
ズバリ、筆者が最初の1台におすすめするのは、SOTOレギュレーターストーブ ST-310です!かれこれ10年近く愛用してますが、これといった不満なく活躍してくれてます。
おすすめポイントを説明していきますね。
火力を調整する「器具栓つまみ」がワイヤータイプになっていて、長さがあります。コッフェルを乗せている際にやけどをするリスクが少なく、非常に使いやすいです。
ワイヤータイプのつまみは強風下での使用中に炎が下向きに吹いたとしても溶けることは無いし、炎が当たったとしても冷めるのが早いのもうれしいポイントです!
オプションにはなりますが、点火装置レバーを取り付けると、指一本でポチッと押し下げるだけで着火できます。実はこれは使用感として大事なポイント。他の多くのバーナーは指一本での点火操作ができません。ガスバーナーって便利なので、着火・消化の頻度が多くなるのでなおさら便利さを感じます。
この製品は、ショップとのコラボによるブラックバージョンがあったりもするので、"他のキャンパーと被らないものがいい!" と言うあなたはぜひ調べてみてください。
バーナー沼の奥深さ(=恐ろしさ)、おわかりいただけたでしょうか?
さて、vol,2 バーナー編はいかがでしたか? バーナー沼から這い上がれそうな人、ハマらずに済んだ人、あえてハマったままでいい人もいるかも(笑)!
個々の商品知識など筆者よりも詳しい方も多いことと思いますが、これまで多数のバーナーを実戦投入してきた経験を元に記事をまとめてみました。vol,1のスリーピングマット編でも触れたけど、アウトドアギアって二度と同じ状況が無い大自然の中で使う物だから、一長一短あるし妥協も必要なんです。皆さんも自分のスタイルにあったギアを探し当てくださいね!