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【2022年トレンド大予想】大人気ショップオーナーが教える、今知っておくべきネクスト・ゴールゼロ

2022.01.07ノウハウ

キャンプ人気が定着のフェーズに入ろうとしている2022年。コロナ禍という激動の時代にあっても、予想通りに数々のギアを完売させているアウトドアセレクトショップが「efim(エフィム)」(東京都多摩市)です。そこで、オーナーで、国内各地のアウトドアセレクトショップ関係者も注目している合同展示会「モンタージュ」を主宰する篠崎聡(さとる)さんを取材。キャンプ市場の今後や、どのようなギアやスタイルにシフトしていくのかを聞きました。

識者プロフィール

effim
篠崎 聡(しのざき さとる) 家具・雑貨の有名ブランドの店舗立ち上げやディレクションなどを経て、2015年9月、東京都多摩市にアウトドアセレクトショップ(自社ブランド)「efim(エフィム)」を立ち上げ、アウトドア業界に進出。最新アウトドアトレンドを発信する合同展示会MONTAGE(モンタージュ)にディレクターとして参加。 日本大学芸術学部や東京デザイナー学院の講師を務めてきたほか、現在は国内外アウトドアブランドの卸事業を行いながら、インテリア事業のショッププロデュースやコンサルティング、企業のマーケティング講師など、精力的に活動中。

社会の「ネガティブ」が人をキャンプに向かわせるワケ

キャンプ人気は今後ずっと続く定着フェーズに

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▲すぐに完売するアイテムが並ぶefimの店内
── 2021年のキャンプ市場を振り返って、ご自身のトレンド予想はどれぐらい当たりましたか。 篠崎:ショップではお客さんのほしいものとずれることなく完売が続き、卸事業をしている国外ブランドの新製品も、出すもの、出すものそのままバイヤーに受け入れてもらいました。予想が当たったというより、おかげさまで、何でも売れたというのが正直なところです。
── キャンプは一時的なブームになる懸念もありましたが、大手やガレージブランドの関係者問わず、「定着の段階に入ろうとしている」という声も多くあります。これについては、どのようにお考えですか。 篠崎:過去のトレンドをみても、天災や不景気など、社会にネガティブな出来事があるほど、「外」に意識が向かい、アウトドアが人気になります。1990年代のキャンプブームはバブルが崩壊した後ですし、現在のキャンプ人気も、2011年の東日本大震災後から上昇基調。16年の熊本大震災からさらにキャンプ人口拡大のスピードは早まりました。 災害になると、人間は「生きていかなければいけない」と思うようになり、外で暮らす術を身につけられるアウトドアがフューチャーされるようになります。今回のコロナも災害レベルですよね。ネガティブなインパクトが人々をアウトドアに向かわせることが、2021年にもあらためて裏付けられました。 ちなみに、主要先進国の中で日本だけ1人あたりのGDP(国内総生産)が下がり続け、世界24位になるほど所得が上がっていないということもネガティブな要素の一つ。そうみると、キャンプ人気はずっと続くかもしれませんね(笑)。

2022年も躍進するブランドとは?

製造、流通に精通した他業種がアウトドアで躍進!?

LEDランタン

出典:Instagram(@efimstaff)

▲ポストジェネラルの人気LEDランタン「HANG LAMP RECHARGEABLE UNIT TYPE1」
── 2021年に躍進したと思うブランドをあげるなら、どこでしょうか。 篠崎:アウトドア業界以外の本格的な展開が目立つ1年でもありました。具体的には、コストパフォーマンスに優れたシンプルでスタイリッシュなギアを展開する「ポストジェネラル」の躍進は目覚ましかったですね。 ブランドを運営している会社はもともとインテリアを手掛けている会社。アウトドアに参入するずっと前から雑貨をやっているので、製造はもちろん、コストの抑え方や流通など、アウトドア業界よりはるかにモノづくりに詳しいわけです。キャンプでの「高いものがいい」という神話が幻想とわかったのも、2021年の傾向だったのではないでしょうか。

他業種の参入がさらにマス層を開拓

メスティン

出典:Instagram(@efimstaff)

▲トランギアの本家メスティン。ダイソーなど、他業者の大手が次々と展開して追われる立場に
──他業種の大手の本格的な進出は2022年にさらに強まりそうな気配です。 篠崎:大手のホームセンターがキャンプ売り場を拡大し、トレンドを後追いしたデザインやカラーのギアの開発も強化していますよね。2021年もそうでしたけど、大型ホームセンター「ジョイフル本田」でも、かなりコストパフォーマンスの高いギアが並ぶようになっています。 100円均一のダイソーが販売するアルミ製の飯ごう「メスティン」も本家トランギアをしのぐようなクオリティのものを出しています。製造や流通に精通した他業種の大手が安くてそこそこいいものを出してくる流れは加速しています。 2022年はお手頃な値段で道具もそろえられるようになり、流行に左右されにくい一般のマス層にまで浸透し、キャンプが身近になる人は全体的には増えそうです。
説明をしてくれる篠崎さん
──つまり、キャンプ市場としては、さらに拡大を続けるとみていいのでしょうか。 篠崎:コロナ禍で始めた人にも必要なギアが行き渡り、反応がにぶくなった商品もあるようです。ただ、個人的な意見としては、市場の規模感としては変わらない、もしくは拡大すると思っています。 今のキャンプは、世の中のトレンドに敏感な人が、「まわりがやっていて、かっこいいから」で、やっている人が多くいます。ほかにアクティビティがあれば、そちらに流れる層ですよね。 とはいえ、このコロナ禍で、ほかのトレンドの動きも今は誰も見通せない状況です。ほかに興味、関心が移っていく層が一定規模いるのは、スノーボードなど、これまでのレジャー人気でそういう動きをしてきているので、確度は高いと思います。 ただ、自然の中で過ごす余暇としてのキャンプの魅力が減るわけではありません。キャンプの魅力に気づいた人は確実に残るわけで、これまで一緒に行っていた友人がほかに流れても、「自分はソロでも行く」というパターンが増えるのではないでしょうか。市場の規模的にはそこまでですが、ソロキャンプはコロナ禍でのキャンプ人気とは関係なく、今後も底堅く成長していくとみています。

2022年も個性派セレクトショップが牽引

セレクトショップに起こる、ある変化とは?

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▲キャンプ人気が高まる前の2015年にオープンしたefim
──2021年は、ギア選びのセンスの良さで勝負するセレクトショップもかなり増え、アウトドア人気を牽引しています。 篠崎:埼玉のキャンプヒルズさん、山梨のスタンダードポイントさんなど、キャンプがいまのように注目を浴びる前から先見の明があってファンづくりに成功しているショップは、同業者からみても尊敬しています。 自分の好きなキャンプを仕事にして、幸せそうにしている人の姿をみれば、ショップを出そうとする人が増えるのは当然のこと。2022年も全国各地でセレクトショップをオープンする計画が聞こえており、キャンプ好きな人は物欲を刺激され続けることでしょう(笑)。ただ、私は2021年とは違う、ある変化があるとみています。 ──変化とは具体的にはどのようなことでしょうか? 篠崎:この1、2年で始めたキャンプ好きの人もだいたいの道具がそろいます。一通りそろったら、次は個性を出すためにキャンプのスタイルや好みも多様化していくはずです。同業者向けの話となって恐縮ですが、1個のヒットで大きな売上を出すのが難しくなるのが、2022年ではないでしょうか。

キャンプギアも多様性の時代へ

ハンディLEDランタン

出典:Instagram(@efimstaff)

▲ハンディLEDランタン「ゴールゼロ級」のヒットは今後あり得るのか!?
── つまり、ホームラン級に売れるギアは少なくなるということでしょうか。 篠崎:そうですね。例えば、これまで100個売れていたものが、50個になるとして、減った分をどこで負担するかというと、いろいろなアイテムを増やしていくわけですよね。それだけに、在庫過多になって、店の経営の効率が悪くなることには気をつける必要がありそうです。
── アウトドアギアの値上げが相次いでいる点も、キャンプ人口の拡大では少し気がかりです。 篠崎:中国工場の電力不足で製造の遅延が相次いでいます。金属価格の高騰、コンテナ不足による物流コストの上昇など、お金が出せなくなっている日本の問題に、アウトドア業界も組み込まれてしまっています。そんな中で欠品して品薄になると、ほしくなるのが人間の心理。そういう意味では、レアなギアを求める熱量は継続しそうです。

2022年のトレンドを大予想

ネクスト・ベランピングはコレ!

ムートン

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▲チェアリングがぜいたくになる日進毛皮の本格ムートン
── 20年〜21年はベランダにアウトドア家具を持ち出して楽しむ「ベランピング」という言葉もおなじみになりました。22年に確実に拡大が見通せるトレンドはありますか。 篠崎:都心では、チェアとテーブルを持って近郊の公園や河川敷に出かける「チェアリング」ですね。21年から脚光を浴び始めていましたが、まだキャンプ好き以外にはそれほど広がっていません。タワーマンションに暮らしているような夫婦が「外でコーヒーを飲むのが、ぜいたくだよね」という認識がさらに広がると思います。 それだけに、バックパックにおさまるヘリノックスのような組み立て式のチェアは、お花見シーズンの前ぐらいから再度注目されると思います。 ちなみに、郊外、地方の人は一軒家で庭のある人も多く、すぐにキャンプ場や山にもアクセスできるので、チェアリングをやる人は多くないはずです。

家でも使えるモノがさらに重宝されるワケ

ホットサンドメーカー

出典:Instagram(@efimstaff)

▲家でも使えるホットサンドメーカー
── コロナが2022年に落ち着くと想定した場合には、どのような動きになるとみていますか。 篠崎:何が流行るかはわかりませんが、体験できるレジャー同士の時間の奪い合いで、キャンプに行く回数が減る人が増えるのは確かですよね。家族でディズニーランドなのか旅行なのか、月に3回行っていた人が1、2回、月に1回だった人が2、3ヶ月に1回となります。それにともなって、売れるギアの種類が大きく変わっていきます。 ── 具体的には、どのようなものでしょうか。 篠崎:回数が減ると、キャンプだけに使うものを家や車に保管するのが負担になってくるわけですよね。そうなると、家でも使えるようなものが中心になってくるとみています。コーヒーやキッチンの道具が中心になってくるかもしれません。
モルック

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▲人気急上昇中のモルック
──ほかに注目しているものを教えてください。 篠崎:ギアの多様化の話をさきほどしましたが、その流れでいうと、ペット関係のギアはまだまだ少なく、伸びる余地はあると思っています。 木の棒を投げて、ピンを倒すフィンランド発祥のゲーム「モルック」も、当店で入荷するたびに、即完売となっています。遊び関連のものはまだまだ新しいものが出てきそうですね。

本物感あるものが売れる

efim

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▲ゴールゼロをはめることで光が分散して輝くアクリル板テーブル「オクタゴン」は2022年に発売予定
──そのほか、2021年からの延長線上で、反響がありそうなものはどうでしょうか。 篠崎:2021年ではっきりと分かったのは、「本物感あるもの」は強いということです。 ホットサンド専門メーカー「燕三条キッチン研究所」のパン1枚でできるホットサンドメーカー「4w1h」とか、フェデカのナイフとか、ずっと使えるものはトレンドに左右されにくく、強いですよね。
ナイフ

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▲フェデカのナイフ
──ハンディLEDランタンでは、そろそろネクスト・ゴールゼロは現れるのでしょうか? 篠崎:当店では年末にゴールゼロのLEDライトを販売しましたが、いまだかなりの行列ができるほど。ゴールゼロはまだまだ行き渡っていないですよね。2022年に販売を予定しているアクリル板テーブル「オクタゴン」なんかは、来店での予約が毎日のように相次いでいて、ゴールゼロ人気の根強さがわかります。 そのほか、新興国産ブランド「ANOBA(アノバ)」が21年末に発売ハリケーンランタンケースなどは飛ぶように売れており、ギアが一通りそろった人向けの付属品、ケースの需要は確実といえそうです。

キャンプ人気定着もギアの品薄は続く2022年

キャンプ人気が定着のフェーズに入ろうとしている2022年。ただ、北米ではキャンプ人口の割合が日本の5倍ほどとされており、市場の成熟はまだまだ先です。時代は変わっても、自然の中でゆったり過ごす魅力が変わることはありません。キャンプ好き一人ひとりがファンを増やしながら、仕事で張り詰めた気持ちをゆるませられる、お金にはかえられない体験があることを伝えていきましょう。 【店舗情報】 店名:efim(エフィム) 住所:東京都多摩市鶴牧1-6-6-101 詳細はこちら:efim公式サイト Instagram:efim公式アカウント


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