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焚き火台

本物を求める人のための焚き火台「MOSS」。無駄のない美しさに秘めた、名作ギアとの共通項とは?【グッドデザイン受賞】

ロックやクラシックの名曲のように、ずっと時間をともにできる焚き火台。「組み立て式焚き火台スタンド MOSS(モス)」には、そんな表現が似合う。長年愛されているキャンプ道具に共通する条件は、無駄のない完成された美しさに、計算し尽くされた耐久性と機能。これらを満たす焚き火台が、人材難や原料高にもめげず、「本物」を伝えようとする日本の町工場で生まれた。


組み立て式焚き火スタンド MOSS 304 + ソフトケース

23,000円(税込)


近年まれにみる完成度の高さを実現した「MOSS」

感じる心地良さ、満たされる所有欲

焚き火台
「組み立て式焚き火スタンド MOSS(モス)」の第一印象は、スマートフォンの画面で見ただけでは弱いかもしれない。ただ、グッドデザイン賞を受賞した飽きのこないシンプルなインダストリアルデザインが、庭先でも自然の中でも、ながめるたびに心地良さを感じさせる。 もちろん、焚き火台をするときにも、さまざまなフィールドやキャンプスタイルを想定した完成度の高さが垣間見える。

A4サイズの持ち運びやすさ

焚き火台
▲プレートを5枚使ったパターン
焚き火台
▲プレートを4枚使ったパターン
最大の特徴は、パネル4枚でソロ、5枚でデュオのキャンプに対応する可変性。次にくるのが、ツーリングやバックパック旅にも対応する重さ1.2kg、A4サイズの持ち運びの良さ。 ただ、その前提として、試作機約40個でテストを繰り返し、一般のキャンプ場で約120組が使用しても問題がなかった耐久性がある。OEM(相手先ブランドによる生産)がアウトドアブランドでも増えているなかで、このテストを徹底的に繰り返せるという点では、圧倒的なモノづくりの違いがある。

持ち上げても分解せず、片手で灰を捨てられる

焚き火台
▲逆さにしても分解しないのが特徴
キャンプ場では、よほど整備されたサイトでない限り、真っ平らな地面を探すのは難しい。段差が約25mm以内であれば、全ての脚が地面をとらえ、砂利でも砂地でも安定して対応する。 組み立て式の焚き火台は多くあるが、場所を移動させようと持ち上げた瞬間に崩れたり、倒れたりするものがあるのは事実。MOSSは、火による歪みが計算され、1度はめ込めば分解しない設計。片手でロストルをつけたまま灰を捨てられることも考慮されている。 これらのデザインと機能だけでも、これからのキャンプの時間を共有するには十分だが、MOSSを使い続け、応援したくなる理由はほかにある。
詳細はこちら:hinataストアを見る

「完璧」を求めた焚き火台「MOSS」の開発秘話

精密板金の町工場が本物にたどり着いたワケ

焚き火台
キャンプをしない人でも、その人気ぶりが感じられるようになっていた2019年。全国で焚き火の魅力にはまり始める人が増え始めていた。 自身も焚き火が好きで、自宅の庭でも楽しむ小沢昌治社長。国内大手メーカーのインフラ機器部品を手掛けてきた町工場で、技術を生かせる付加価値の高いアイテムとしてたどりついたのが焚き火台だったのは、ほかの金属加工の工場と同じだったかもしれない。

ロングセラーの焚き火台にみえた課題とは?

焚き火台
違いは、インフラの精密板金という完璧さが求められるモノづくりで培われた目線。当時に定番とされていた大手ブランドのものでも、小沢社長は開発時のテストに甘さを残していると感じずにはいられなかった。 その一つが、国内の大手ブランドが1990年代半ば、焚き火台の先駆けとして出したもの。小沢社長は振り返る。「今も支持されているロングセラーで灰も落ちないのですが、火吹き棒を使わないとそのまま『窒息状態』になりやすく、煙が多くなる点に疑問もありました。暖炉みたいに自己燃焼をなぜ続けないのか、と」。

技術屋のプライドをかけた戦い

焚き火台
課題があれば、技術的な解決を考えるのが、世界的な国内大手メーカーの大規模集積回路(LSI)開発経験を経て、2012年に家業を継いだ2代目のエンジニアの本能。 板金の本業があるなかで、焚き火台に向かわせたのは、消費者向けのプロダクトを作りたいという渇望だけではない。人手が慢性的に足りないことに悩んでいた中で、「モノ作りの魅力を示したい」という強い意識があった。 「技術屋」としてのプライドをかけた、完成まで睡眠時間を3時間ほどに削りながらの戦いが、2020年冬に始まった。新型コロナウイルスの感染が拡大すると誰も想像すらしていなかったころだ。

最後の苦悩の先にあった画期的発明とは?

逆さにしても分解しない

焚き火台
小沢社長が開発で最初に掲げたコンセプトが、燃焼性の良さと、ソロ・デュオで使える組み立て式の2way仕様、バックパックやバイク・自転車での持ち運びやすさ。そして、特に苦労したのが、「片手で逆さにしても分解しない」という構造だ。 本体については、プレートをつなぐフックの位置や形状、そこに設けたディンプル(くぼみ)のアイデアによって、熱にさらされ続けても分解しない耐久性を獲得。焚き火をしていて、少し移動させたいときにも対応できるようにした。 ただ、最大の苦悩は、別のところに隠れていた。

「灰の捨てやすさ」でたどりついた特許申請2件

小沢製作所
「難しいなあ…」 2021年2月。板金のプレス音が「ダン、ダン」と連続的に響く工場。小沢社長はこうつぶやきながら、1階作業場の中央にある階段を上がり、加熱テストを終えた完成間近の試作機を手に事務所に向かった。 焚き火台の開発を一緒に担ったのは、高校時代からの友人で、技術チーフの増田英之さん(53)。2人で設計室のいすに座って向き合い、テーブル上にあった焚き火台の底を2人でながめていた。 その悩みの中心が、火床(ロストル)が落ちてしまうという問題。「せっかく持ち上げても分解しないで炭が捨てやすくなったのに。ロストルが落ちてしまっては意味がない…」。小沢社長は落胆を隠せずにいた。
焚き火台
▲接続部分をT字形状に変更 ▼カギのようにすることでロストルの落下問題を解決
焚き火台
妙案は出ず、2人ははっきりと言葉にはしなかったものの、「いっそ、もうロストルは落ちてもいいんじゃないか」とさえ思い始める。 「唯一の妥協をしなくてはならないのか…」。毎日3時間ちょっとの睡眠で、自宅の庭でも毎日、焚き火をしてテストし続けてきた日々を思い出すと、2人には納得できない感情があった。うなること15分ほど。ツメ形状にひっかかるようにしていたロストルを、小沢社長が考えもなしにガチャガチャといじっていると、そのときは突然にやって来た。 「『あっ?!今のじゃね?』って、マッスー(増田さんのあだ名)が言ったんですよ」。 増田さんの提案はこうだ。「接続する部分をT字にして、カギのようにスリット(細長い穴)に入れてまわせば、落ちないんじゃないか」。 妥協することのない「技術屋」の試行錯誤の勝利。特許を申請できるほどのアイデアとなった。

1000度を超えても使い続けられる耐久性

焚き火台の部品
国内の最大手メーカーの下請けとともに社会インフラ機械の開発に携わってきた小沢製作所。評価テストを徹底できるのが、開発から製造までを一貫する町工場の強みだ。 燃えている薪を使っていない焚き火台に入れ、温度の急変化をみるテストを40回ほど繰り返し、分解しないかも確認。軽量性を出すためにステンレスの厚みを1mmとしても、ときには中心温度が1000度以上に達した後でも問題なく使える耐久性を確認した。 小沢社長によると、最初の1回の焚き火(シーズニング)によって、きっちりとプレートがつなげやすくなり、5回もすればほぼ変化はしなくなる。実際に知り合いのキャンプ場に無償で貸し出し、120組が使っても、ほとんど変化はみられなかった。

撤収の手間を徹底的に分析

焚き火台
焚き火で炭焼きロストルが900度を超えて真っ赤になるほどの焚き火の後でも、気温10度〜12度の場合なら、灰を捨ててから平均4分20秒〜5分後に手でさわれる45度になることを確認。デイキャンプや朝の焚き火で撤収をすぐにしたいときにも、灰を捨てればすぐに冷え、すぐに片付けられることまで考えをめぐらせている。

本物は、ケースも妥協しない

焚き火台の袋
ツーリングやバックパックでのキャンプを想定しているだけに、ケースにも妥協しなかった。クラッチバッグスタイルを採用し大きな開口部による出し入れの容易さと手で持ちやすい専用サイズのケース。12オンスの綿キャンパスを2枚重ねて縫製し、丸めてジャケットのポケットに入れられるしなやかさと、アウトドアで必要な強度のバランスに配慮した。

達成率2000%超の応援購入でわかった反応

Makuakeの高評価で起きたある変化

小沢製作所
具体的な開発に着手してから1年後。コロナ禍によって、キャンプ人気の勢いはさらに加速しようとしていた。 初めての発表となるクラウドファンディングサイト「Makuake」の担当者は、自分よりも20歳ぐらいは年下の男性。新製品を常に見続けているが、小沢社長からそのこだわりと徹底したテストを聞き、モニター越しに興奮の様子を隠せないのがわかった。 「かなりとんがった特徴なので、すごく支持を得るか、まったくか…。そのどっちかですね(笑)」。 小沢社長が今振り返ると、その見通しは正しかった。Makuakeで発表した初日の約4時間で100万円を達成。結果は1カ月半で約750万円で、目標金額の2523%、想定していた5倍。町工場のこだわりが、一般の消費者に初めて届いた。 半世紀の会社で初めての消費者が生まれ、従業員17人、平均年齢も約50歳になろうとしている会社に大きな変化がもたらされたことを、小沢社長は感じとった。 「支援者の皆さんに『ちゃんとしたのをわたしたい』という気持ちが入り始めたんですよ。プラス・マイナス0.15mm以内の精度を確保する精密板金の熟練工はもちろん、誰が言ったわけでもなく、製造過程でできる油汚れや、わずかな洗浄の残りも気にするようになったんです」

大手に負けないモノづくり

焚き火台
これまでは日本の最大手メーカーの下請けとして、社会インフラの部品を製造。「お客様の検査基準にあっていること」(小沢社長)という意識だったが、Makuakeでの好評とグッドデザイン賞の受賞を受けて、会社の士気の高まりが、売上以上の成果となって現れた。 「初めての一般消費者向けの商品で、いい加減な製品は作れない」という一体感。「自分たちの商品で焚き火を楽しんでほしい」という熱量。 小沢社長の胸には、大手のアウトドアブランドにも負けない、本物のモノづくりができた達成感があった。「気付いて築くモノづくり、眼だけでなく、心も奪うモノづくり」。社員によく語っていた会社の理念を体現できたからだ。 その気持ちが、ギアにこだわるキャンプ好きの共感と応援につながった。今なら断言できる。「まだまだ日本の町工場のモノづくりは魅力を秘めているんだ」と。
焚き火台
【基本情報】 商品名:組み立て式焚き火スタンド MOSS 304 + ソフトケース 使用サイズ: [4枚組]高さ約210×幅205×奥行き205mm [5枚組]高さ約160×幅340×奥行き325mm 収納サイズ:約210×340×10mm 重さ:約1.2kg(専用プレート5枚+ロストル2種) 価格:23,000円(税込) 詳細はこちら:hinataストアを見る

同業者からも評価される焚き火台

小沢社長の熱意は、確実に購入者へと届いている。「MOSS」の由来は「燃す」から。中途半端を嫌うエンジニアのモノづくりへの執念を燃やす焚き火台は、持っているキャンパー誰でも、誇りを共有したくなる一台だ。

組み立て式焚き火スタンド MOSS 304 + ソフトケース

23,000円(税込)



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