「飾らないけど、かっこいい」ソロキャンプの仕方とは?ダムドのジムニーシエラとYOKAで分かる「サイトとギアの鉄則」
ノスタルジックな丸目と直角的なフォルムで自動車業界に一石を投じ、アウトドアファンの心をつかんだ新型ジムニー。シンプルで洗練されたデザインで共通するのは、国内アウトドアブランド「YOKA(ヨカ)」も同じです。そこで、レトロな自動車カスタムを手掛けるDAMD(ダムド)の人気モデル「ジムニー ザ・ルーツ」に合うキャンプサイトを、YOKAがコーディネート。ソロのサイトの作り方のコツとともに、楽しみ方も教えてもらいました。
ジムニーシエラで行く、飾らないソロキャンプ
YOKAの角田さんが湖畔サイトをアレンジ
素朴な木目を生かしたチェアやテーブルなどのファニチャーが人気の国内アウトドアブランド「YOKA(ヨカ)」。そのデザイナーである角田崇さんは、キャンプ業界でも有名なジムニーファンとしても知られています。その熱の入れようは、愛車1993年式の2代目ジムニー(JA11) を、人気のワンポールテント「YOKA TIPI」のダークカーキに近いカラーに全塗装するほど。各地のひっそりとしたキャンプ場にソロキャンプに出かけています。
今回は角田さんも注目しているダムドの初代ジムニーを再現した「ジムニー・ザ・ルーツ」とあわせて、ソロキャンプのサイトをコーディネート。普段どおりに過ごしてもらいながら、ソロキャンプのサイトコーデや楽しみ方だけでなく、プロ目線でのキャンプ道具やクルマのデザインについて語ってもらいました。
YOKAを設立した角田さん略歴
YOKAデザイナー 角田 崇(つのだ たかし)さん(46)
おもちゃのデザインなどを経て、2015年にアウトドアブランド「YOKA」ブランドを立ち上げ。「かっこいいキャンプ道具がまだ少なかった」という当時、組み立て式の木製家具をリリース。おしゃれな道具で楽しむ現在のキャンプ人気の先駆けに。群馬出身。
ジムニーで分かった、ミニマルなソロキャンプの醍醐味
「アイテムを増やすだけが楽しみじゃない」
──YOKAといえば、針葉樹の合板を使ったシンプルなデザインの組み立て式テーブルやチェアが有名です。プライベートでのキャンプスタイルでは、どのようなスタイルを心がけているのでしょうか。
角田崇さん(以下、角田):最初は私もクルマに道具を満載したグランピング的なキャンプを楽しんでいたんですよね。もちろん、飾り付けのために何枚も布を持っていくのですが、気付いてしまったんです。テーブルやチェアにかけて撮影すると、木目や素材感が売りのYOKAの宣伝にならない、と(笑)。
そして布無しで撮影することにしたのですが、そこであらためて、YOKAの家具たちが「何もしないのが一番カッコいい」ということにも気づいたんです。
──たしかに、YOKAのアイテムは、シンプルに自然を楽しむスタイルが似合います。特にソロキャンプで、飾らない、シンプルなスタイルに戻る人が増えています。
角田:自宅マンションでの積み下ろしも面倒だったこともあり、だんだんとミニマルなスタイルに落ち着いていきました。夏なんかはチェアを使わず、麻袋の上でキャンプをしていることもあります。ジムニーは入る道具も限られているのですが、逆に本当にキャンプで必要なもの、持っていきたい「本質的なギア」を厳選する楽しみがあります。
「キャンプは冒険。それなら料理も」
──角田さんは、なぜソロキャンプを楽しむようになったのでしょうか。
角田:キャンプでおいしいものを食べて飲んでくつろいで…なんてしていると、一見、ただユルい楽しみの中に身をおいているだけのようですが、街中の生活では体験できない「冒険」をしていると僕は思っているんですよね。
当たり前過ぎて気づかないことなんですけど、人間って実はインフラの中でしか生きられないんです。そこからちょっと外れた「動物の領域」に一晩身を置く。これって立派な冒険だと思うんですよ。
僕がソロキャンプにハマったのは、実は初めて行ったソロキャンで、夜がすごく怖かったからなんです。大人になってからそんな感情を持つことなんかなかったし、逆にそれが面白いなと思っちゃったんですよね。
──最近のソロキャンプでは、釣りだけでなく、キャンプ料理にはまっているとお聞きしております。
角田:ステーキなどの自分の好きなものの独り占めはだいぶやったので、今は『冒険料理』が楽しみですね。普段は食べない世界の料理や、妻に怒られそうな組み合わせのものを作ってます。ただ、失敗することもあるのですが、外で食べればだいたいおいしいですよね。ソロなら文句を言われることもありません(笑)。
▲今回の撮影で作ってもらったフランス南西部の郷土料理「カスレ」風の料理
──今回も「冒険料理」を見せてくれるとのことで、楽しみにしています。
角田:今回は、フランス南西部の豆を使った郷土料理「カスレ」風のトマト煮込み料理です。ホルモンを入れて「冒険」しています。「カスレ風」とは言ったものの、元の料理とかなりかけ離れてしまっていますね…。僕はこうした料理を「角田洋食」と自分で呼んでいます(笑)。
ソロキャンプでは自分の好きなものだけを堂々と食べるのが魅力です!焚き火台の下であたためておいたピタパンと一緒に食べてみてください。絶品ですよ。
(撮影スタッフやDAMD関係者に振る舞ってもらい、皆がおかわりする味の良さ!)
スパイスはオリジナルの時代に突入!
▲YOKAオリジナルの鉄板「YOKA GRIDDLE」で焼いた鶏肉は表面パリパリ、中ジューシー
(角田さんがさっとコンテナボックスから「すり鉢」を取り出す)
──YOKAにすり鉢のラインナップって、まだありませんよね…。
角田:もともとはミックスされたアウトドアスパイスを作ろうとは思ったのですが、もう各ブランドやショップからいっぱい出ていて…。それなら「自分でオリジナルを作ろうぜ」と思ってすり鉢を開発しています。キャンプで豆をひいてコーヒーを味わう人が多いように、普段の生活にはない「手間」をあえて楽しむのもキャンプの良さです。
今回はすり鉢で、こしょう、クミン、岩塩、フェンネルをまぜあわせ、料理に投入します。ゴマと同様にその場ですったほうがよりスパイスの香りが高いですからね。一度、これを味わえば、自家製ミックススパイスから離れられません!
角田さんが語る、新型ジムニーに「ギア感」がある理由
「ほら、こっちだった」
──角田さんは普段から2代目ジムニーのJA11に乗って、ソロキャンプを楽しんでいますね。
角田さん:実はですね、ジムニーの前は1983年のJeep・チェロキーチーフという巨大な車に乗っていたんです。でもそれだと、街中での使い勝手は悪くて、ほぼキャンプに行くだけのクルマになっていました。修理もしょっちゅうで、部品の調達もなかなか大変なワケですよね。
サイズ的には、都内の住宅街を走る普段の生活を考えると、ジムニーぐらいの取り回しのいいクルマに行き着きました。故障のリスクも考えると、現行モデルにこしたことはありません。ただ、デザイン的にシンプルなキャンプギアに合うようなクルマが、なかったわけですよ。この新型のジムニーが出るまでは…。
DAMDとYOKAが目指す「何もしなくてもかっこいい」
▲軽モデルより車幅が広く、運転時の安定感があるジムニーシエラ
▲日常生活でクルマを使うなら、取り回しのいいジムニーは選択肢の一つ
──プロダクトデザイナーから見ても、新型のジムニーには衝撃があったワケですね。
角田:スクエアなデザインで正直、「やばいのが出てきた」と思いましたよ。周りのプロダクトデザイナーにも大好評で、今の自動車ブランドは流線型や曲線のフォルムに流れがちですけど、「ほら、俺たちがほしかったのはこっちだよ」と代弁してくれたようでうれしかったです。ただ、新車は納車までかなり待たないといけなかったり、その他もいろいろな事情が絡んで、旧モデルのJA11を選ぶことにしました。
旧車=必要なカタチ
▲クラシックなストレートシェイプが特徴的なリアバンパー
──そもそも、角田さんをはじめ、キャンプ好きな方はなぜ古いクルマにひかれるのでしょうか。
角田:私が旧車が好きなのは、「必要な形をしている」からです。今の形は流線型の流れるようなラインのものが増えていますが、日々の生活で使う乗用車で300km出るようなスーパーカーのような空気力学はあまり意味がないわけです。それにカクカクしていたほうが質実剛健な感じがして、ギア感がありますよね。
▲サイドには懐かしい「自家用」のペイント。好評を受けて、DAMDはシールも販売
──今回は、1970年代の初期型をオマージュしたDAMDのジムニー・ザ・ルーツを実際に運転してもらいました。デザイン含めて、いかがでしょうか。
角田:今はなかなか見なくなった鉄バンパーなどの雰囲気を、うまく今の樹脂製素材で再現できていますよね。YOKAのものづくりにおいては「何もせずにかっこよくて当たり前」をコンセプトにしていますが、プロダクト開発の根底にDAMDと同じ理念を感じられ、うれしいです。
ジムニー・ザ・ルーツに見えたYOKAとの共通点
──最後に、角田さんにとって、アウトドアギアに必要なデザインとはどのようなものでしょうか。
角田:アウトドアギアには、まず機能性が必要なのは間違いありません。ただ僕はそれだけでは十分ではないと考えています。持っていてうれしくなるような「精神的な価値」が、特別な時間を過ごすキャンプのギアには必要なんじゃないかと。
わかりやすくいうと、「ながめているだけで、楽しくなるもの」。心と機能の欲求をバランスよく満たしてくれるギア作りを、YOKAは目指しています。
ダムドのジムニーには、そのバランスがあてはまります。「頭の中でも楽しめるギア」にたどりついた、DAMDさんのジムニー・ザ・ルーツには、デザイナーとしてうらやましさを感じます。そこに、それがあるだけで酒が飲めますからね(笑)。
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