キャンプ・アウトドア情報メディア | hinata〜もっとそとが好きになる〜
ネグラキャンプグラウンドのイメージ画像

39歳で脱サラ、発信源はTwitter!?普通のサラリーマンが「キャンプ場オーナーになる」夢を叶えるまで。

2021.09.17キャンプ場

「脱サラして、自分のキャンプ場を開く!」。アウトドア好きからすれば夢みたいな話ですが、まさにその夢を実現したのが静岡県に住む渡部竜矢さん。今年の6月まで普通の会社員として働いていた彼が、キャンプ場をオープンするに至った10年分のアツい思いとは?気になるクラウドファンディング事情も含めて、理想のキャンプ場づくりについて話を聞きました。

夢を実現したキャンプ場のオーナーにインタビュー

趣味を仕事に

ネグラキャンプグラウンドの看板
「本当にやりたいことを仕事にする」。これってある意味、理想的な暮らしですよね。自分の大好きな趣味だから、どんどんアイデアが湧いてくる。愛する趣味でお金を稼いで、生活を送る。もしそんな生き方を実現できれば…。とても充実感のある毎日を過ごせるのではないでしょうか。 今回お話をうかがった渡部竜矢さんは、そんな「やりたいこと」を仕事にした人。大学を卒業後、今年の6月まで都内のIT企業で13年間働いていましたが、かねてからの夢を叶え、もうすぐキャンプ場のオーナーとなります。 普通のサラリーマンだった彼がなぜ、キャンプ場をオープンすることになったのか。キャンプにハマったきっかけや、開始1週間で500万円を集めて話題となったクラウドファンディング、キャンプ場作りのこだわりについて話を聞きました。

【渡部竜矢さんプロフィール】

negura campground オーナー 渡部竜矢さん(39) /Twitter@ken_negura 静岡県函南町在住。10月よりプレオープン予定のキャンプ場「negura campground(ネグラキャンプグラウンド)」を運営。理想のキャンプ場作りを目標としたクラウドファンディング(8月18日〜9月30日)では、スタートから3時間で当初の目標金額140万円を達成。現在は最終目標の970万円に向けて引き続き支援を募集中。趣味はキャンプと渓流釣りと音楽。

焚き火への想いがキャンプ熱に火をつけた

とある小さなフェスがきっかけに

━━まず、渡部さんがキャンプを始めたきっかけを教えてください。 渡部さん:10年前、とある小さなフェスに行ったんです。僕自身がバンドをやっていたということもあり、当初の目的は音楽でした。でも、そこで聴いた鳥や蝉の鳴き声、木の葉がこすれあう音、川のせせらぎなど、自然のすばらしさに魅了されたんです。 なかでも特に惹かれたのが焚き火でした。薪のはぜる音に、グッと心を掴まれてしまったんです。直火の焚き火って、なんか本能に訴えかけてくる感じというか。言葉にできないのですが、ワイルドな雰囲気に魅せられました。 以来「また酒でも飲みながら焚き火がしたいなあ…」と考えるようになって。それがキャンプにハマったきっかけです。

「渋滞にハマらず遊びたい」。もともと遊び場として好きだった伊豆へ移住

━━そこからなぜ、現在お住いの函南町へ移住することになったのでしょうか?東京在住でも、週末に外遊びはできると思いますが…。 渡部さん:週末に東京から脱出すると、たいてい渋滞にハマっちゃうじゃないですか。なので、そのストレスなく自然の中で遊べる場所に住みたいと思うようになりました。 今の場所を選んだのは、言うならば「自然のクオリティ」でしょうか。東京からの同心円上で比較したときに、山も海も川も、総合的に質が高いのは伊豆や下田だと思いました。で、そこからほど近い函南町に、バブルのころに建てられた別荘が余っているのを見つけて引っ越して来たんです。 もともと、キャンプはもちろん渓流釣りや海水浴なんかで、よく伊豆に来ていたんですよ。だからある程度の土地勘はありました。

静岡と東京を往復する日々

━━━━移住後も4年間は都内の会社で働いていたんですよね?新幹線での通勤は、大変だったのではないでしょうか。 渡部さん:電車に乗ってる時間は意外と40分くらいなんですよ。勤めていた会社が品川にあったので、新幹線通勤自体はそこまで苦ではなかったです。ただ、自宅のある函南町から熱海駅まで車で30分くらい走らないといけないため、通勤は片道1時間半くらいかかっていました。

移住先の仲間に感化され、キャンプ場オープンを決意

「このまま今の仕事を続けていいのだろうか…」という葛藤

焚き火で直火するキャンパー
━━移住後、キャンプ場の開設を決心するまでの経緯を教えてください。 渡部さん:函南町の別荘地で、友達ができ始めたんです。彼らは僕と同い年くらいで、画家やデザイナー、家具を作っていたりするような、いわゆる「自由業」の人たち。本当に好きなことを仕事にしています。 そんな環境のなかで自分だけサラリーマンをやっていると、まわりから「なんでそんな辛いことしてるの?」って聞かれるんです。東京で暮らしていたときは、昔からの友達もみんな会社員だったので、とくに疑問は抱きませんでした。「ああ、嫌だな」って言いながらも、会社へ行って仕事をするのが普通で。 函南町の友人たちは、まったく違う価値観を持っていました。そうすると次第に「なんか俺、やってること間違ってるんじゃないかな」って考えが浮かび始めて。でも、東京の会社では割といいお給料をもらっていたので、辞めるのは現実的ではないというか。 ただ、それでもやっぱりおかしいな、今自分がやってることは正しいのかなって、ずっと自問自答していました。そうして何年間も悩んだ結果、お金よりも「やりたいこと」を優先すべきだと決心したんです。そこで踏ん切りがついて、念願だったキャンプ場をオープンすることになりました。
━━━━安定した収入を捨てるのには勇気が必要だと思いますが、商売が成り立つという確信はあったのでしょうか? 渡部さん:はい。『オートキャンプ白書』などに載っている過去のデータを参考に、稼働率や売上を控えめに試算してみました。この土地の広さならこれくらいかな、という感じで。そしたら意外と収入が見込めたんです。会社員のときみたいに安定はしていないし、すごく稼げるわけではないですが、まあこれなら食べていけるだろう、と。

いざ、理想の土地探しへ

伊豆中の山の中を歩き回る毎週末

━━キャンプ場を開くとなると、場所を探すのに骨が折れそうですね。 渡部さん:ええ、大変でした。本当にオープンすると決めてからの1年間は、キャンプ場に適した場所を探して伊豆の林道を隅々まで走りました。もともと渓流釣りをやっているときに、「あ、ここキャンプ場にいいんじゃないか」みたいにチェックしていた場所もあって。そうして候補を見つけては、グーグルマップ上にピンを打っていきました。 ただ、良い土地が見つかってもキャンプ場に転用できるとは限らないんです。だから候補はたくさんあったのですが、肩を落とすことも多くて。1年間で、伊豆の北半分の林道はほぼすべて走ったと思います。 やがてグーグルマップに200ほどのピンが立った頃、ようやく理想的な場所が見つかりました。

富士山と駿河湾を眺められる美しい高台

ネグラキャンプグラウンドからの風景
━━━━その場所がネグラキャンプグラウンドに? 渡部さん:はい。ただ、あまりにうってつけの場所すぎたので、最初に見つけたときは「どうせまたほかの候補と同じで転用できない農地だろうな…」と期待していませんでした。 でも、ダメ元で地番を調べ、函南町の役場へ行って土地管理台帳を確認したんです。台帳には「原野」と記載されていました。キャンプ場として利用できる土地だったんです。思わず二度見しました。 そして所有者を調べると、さらに驚くことがありました。やっと見つけた理想の場所は、僕が函南町で一番仲良くしている友達の、同級生のお父さんの土地だったんです。これは運命だと思いましたね。

仕事を辞めて、クラファンを始める

最初の目標は数時間でクリア

ネグロキャンプグラウンドのシエラカップ
クラウドファンディングのリターンのひとつ、シェラカップ
━━その後退職し、クラウドファンディングを開始しますよね。反響はどうでしょうか? 渡部さん:はじめは正直、実際にお金を出して支援してくれる人がこんなにたくさんいるとは思えなくて、「開拓資金のほんの一部でもまかなえたら…」という思いで140万円という金額を目標にしていました。でも、思った以上に反響があって。今は皆さんの気持ちに応えられるようなキャンプ場を作るために、ファイナルゴールに向けて金額を設定しています。
━━支援のリターンがバラエティー豊富で、応援する側も楽しそうです。4000円の支援でもらえるこのシェラカップも可愛いですね。 渡部さん:ありがとうございます。知人のクリエイターに相談しながらいろいろと作っていたら、楽しくなってきちゃって(笑)。グッズだけでも11種類、合計で24種類のリターンを準備しました。このシェラカップは、ステンレスに黒色のシリコン塗装を施して、ロゴをレーザーで刻印しました。計量に使える目盛り付きで、浅型の330mlと深型の300mlの2種類から選べます。

資金以上に「仲間が増えた」という感覚

ネグラキャンプグラウンドのイメージ図
━━クラウドファンディングの進捗や開拓の様子などは、Twitterでリアルタイムに情報発信されていますよね。応援の声は届いていたりしますか? 渡部さん:これもありがたいことに、何かと協力を申し出て下さる方がたくさんいます。たとえばこの、クラファンのページに掲載しているバースペースのイメージ図は、ツイッター経由で描いてくれる人が見つかりました。そうやって応援してくれる方々と、完成したキャンプ場で実際にお会いするのが楽しみです。

渡部さんの「好き」を詰め込んだキャンプ場とは

やっぱり直火を体験してほしい

ネグラキャンプグラウンドの焚き火
━━ネグラキャンプグラウンドの一番のこだわりを教えてください。 渡部さん:富士山が見えるとか、トイレが綺麗とか、いろいろとアピールポイントはあるんですが、やっぱり一番は直火で行う焚き火です。雑に組んだかまどに、拾ってきた大きい木をそのままくべて、地面ごとあたたまっていくあの野性味というか…。キャンプ場の土地探しもそこが軸になっていたので、こだわっているポイントですね。

基本はどのエリアも直火OK

ネグラキャンプグランドのエリア図
━━キャンプ場内ではどこでも直火が可能なのでしょうか。 渡部さん:一応、全エリアで直火での焚き火ができるようにしたいと思っています。ただし芝の密集している「集(つどい)」と「狢(むじな)」エリアは全面というわけではなく、直火が可能なスポットを用意するつもりです。

函南町に還元できる環境を

━━━━管理棟やバースペースで地元の食材を提供されるそうですが、どういったものを予定していますか? 渡部さん:キャンプ場のある函南町の丹那地域は稲作や畑作、酪農が盛んで、町中のいたる所に牛がいます。なので新鮮な乳を使ったチーズやヨーグルト、地元産の野菜やジビエ、そして近所の農園が醸造しているクラフトビールなんかを提供できればと。せっかくこの函南町でキャンプ場を開くので、地元にも還元したいと思っています。

いよいよ10月にはプレオープン

お客さんと友達のような関係でいられたら

ネグラキャンプグラウンドの画像
━━━━ネグラキャンプグランドには、どんなお客さんに来てほしいですか? 渡部さん:ファミリーやグループも来てほしいと思いますし、アウトドアと音楽が大好き、みたいな僕が友達になれそうな人だと、なおうれしいですね。 キャンプ場には富士山の見えるバースペースを設ける予定なので、キャンプ目的ではなく「ただお酒を飲みに来るだけ」でも大歓迎です。あとはワークショップを行えるような出店スペースや、コワーキングスペース等も設置できないかなと考えています。「こんなキャンプ場があったらいいな」というお客さんにとって理想的な空間を作るので、気軽に遊びに来てくれればうれしいです!
━━━━今後キャンプ場に来られる方々と新しい出会いがあって、いろいろと楽しみですね。 渡部さん:はい。開拓作業をするにあたっても、それこそTwitterで出会った方を含めて30人くらいが「やりたい」って手を挙げてくれて。自分と同じキャンプ好きの仲間がどんどん増えることが一番ありがたくて、本当にうれしいです。 ネグラキャンプグランドの詳細を見る:CAMPFIRE


あわせて読みたい記事