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富士山とやぎちゃん&中村さん

【やぎちゃん&達人の“富士山”入門】これで失敗なし!安全登山のための「正しい準備&歩き方」

2024.07.01ノウハウPR

いつものキャンプにはない絶景に出会えるとあって、プラスアルファのそと遊びとしても人気のトレッキング。特に富士山は初登山や記念登山に選ぶ人も多い人気の山!とはいえ注意するべきポイントも多く、無謀な弾丸登山などでトラブルになることも…。そこで今回は、山に詳しい二人の達人(人気YouTuberのやぎちゃん・登山ガイドの中村さん)に、安心・安全な富士登山のためのノウハウを教えてもらいました。

その弾丸登山、本当に大丈夫ですか?

環境省の調査によると、富士登山者のうち“約3分の2もの人が初めての富士登山”であるとされています。 確かに、ユネスコ世界文化遺産にも登録された日本一の山。その姿も美しく「登山経験はないけど…人生で一度は登ってみたい!」とわくわくする人も少なくないはずです。 しかしながら、準備や知識に乏しい人が休息などをせずに一気に山頂を目指す「弾丸登山」が問題視されているのも事実です。
富士山

出典:PIXTA

富士登山にかかる時間は8時間〜10時間。長時間の行動に慣れていない人が、傾斜のある砂利道や砂地を夜通し歩き続けることはなかなか難しいものです。 さらに途中の五合目でも標高2,000m超と、アスリートが高地トレーニングを行うような場所。普段とは気温も酸素濃度も全く異なる環境下で、高強度の運動が求められることも忘れてはいけません。 つまり、行き当たりばったりの弾丸登山は非常に危険な行為。富士登山を楽しい思い出にするためにも、正しい知識の習得はもちろん、入念な準備と計画や適切な体調管理、怪我などを予防するための歩き方などを実践する必要があるというわけです。

教えてくれるのは登山に精通する2人!

そこで今回は初めての富士登山を目指す人のためにも、登山経験に富む二人に知っておくべきことをレクチャーしてもらいました。
プロフィール写真
実際に富士山を登りながら教えてくれたのは、アウトドアショップ「エルブレス」に勤務しながら、登山ガイドとしても活躍する中村由起さんと、YouTubeチャンネル「やまくっく・やぎちゃん」を運営する人気登山YouTuber・やぎちゃんのコンビです。
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エルブレス スタッフ

中村由起さん

高校生のときに初めてのトレッキングを経験。エルブレスではトレッキング部門を担当し、地元福島の「うつくしま百名山」を2年間で完登する。「日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージⅡ」を取得し、国内で登山ガイドとしても活躍中。

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登山YouTuber

やぎちゃん

自身のYouTubeチャンネルは登録者数10万人超え、Instagramフォロワーは3.4万人という人気登山YouTuber。トレッキング歴は12年で、山が好きすぎて長野県に移住したほど。車中泊旅をしながら山に登る「旅と山を繋げる遊び」を満喫中。

安全登山には「念入りな準備」が必須

安心・安全に登山を楽しむには“入念な事前準備”が不可欠です。コンディションが整わないまま訪れて体調不良になってしまっては、せっかくの富士登山が残念な思い出になってしまうはずです。また、持ち物も「アレを持ってくればよかった…」なんていうトラブルを未然に防ぐべき。 そこでここからは、後悔のない富士登山のためにどのような準備が必要なのか、やぎちゃん&中村さんに教えてもらいました。

前日は「十分な睡眠」でコンディションを整えよう

普段よりも早起きして登山に挑むという人も多いはず。とはいえ、睡眠不足での登山にはさまざまなリスクがあるようで…。
休憩中
中村さん:睡眠不足だと、判断力の低下で道を間違えてしまったり迷ったりしてしまうこともあります。特に、血中酸素濃度の低下による高山病のリスクも上昇してしまうので、気をつけたいところですね。疲れやすくなって、モチベーションが保てなくなることもデメリットです。 やぎちゃん:夜に仕事をしたり動画編集をしたりと、睡眠時間が短めの生活をしているんですよ。登山前日もいつもと同じサイクルになりがちで…。そのせいか、登山中に頭が痛くなったりすることもありますね。 中村さん:やることがあって寝られないとか、気持ちが盛り上がって寝つきが悪いこともあると思いますが、そこはグッとこらえてしっかり寝ておくことが大切ですよ。 やぎちゃん:どうしても睡眠時間に自信がないときは、バテないように前日の食事にも気をつけています。エネルギーになるタンパク質や炭水化物を意識して。 中村さん:栄養も大切ですね。ただ、それでも高山病になることがあるのが怖いところ。私の場合は、標高2,000mくらいを境に必ず頭が重くなるんです。特にバスやゴンドラなどで一気に標高を上げると起こりやすくて。それ以上の症状にはならず回復することが多いので、ゆっくり歩きながら様子をみて、回復したらペースを上げていくという感じです。 やぎちゃん:なるほど。十分な準備をしても高山病になってしまった場合はどのように対処すればいいのでしょう? 中村さん:頭痛くらいであれば停滞して、30分〜1時間の休息で回復することもあります。それでもめまいや吐き気をもよおすようであれば、下山を選択してください。

アプリの活用で上手な「事前計画」を

事前計画には登山系アプリを使うのもひとつの手。登山ルートやルートタイム、道中のポイントなどを確認できたり、ほかのユーザーのレビューをチェックできたりと、遭難などのトラブル回避や安全な登山計画を立てるのに役立ちます。
アプリを使うやぎちゃん
中村さん:アプリを使うなら、現在地の確認ができることはもちろん、登山計画の作成・提出ができるものがおすすめです。実際に登った人の投稿が見られるものであれば、登山道の状況なども把握できるはずです。アプリで登山計画をつくれば、仲間と共有しやすいですしね。 やぎちゃん:コースタイムが簡単に計れるものもいいですよね。標高差もわかるし、1日に登れる距離もわかるので、コースを計画するのに必須かもしれません。 中村さん:ほかには「ナノハナ」というアプリも使っています。登山中に知らない植物と出会ったときにカメラを向けると、その植物の候補を教えてくれるんです。そこから検索して特定できるんですよ。 やぎちゃん:登山の楽しみが広がりそう!私はアプリのほかには「ココヘリ」というサービスも利用しています。GPSを使って遭難した際にヘリコプターなどの救助を呼べたり、山岳保険にも加入できたりするんです。 中村さん:また、現地の最新の情報を把握しておくことも大切です。例えば吉田ルートに関しては、2024年から時間の制限や富士山保全協力金のほかに登下山道の使用料など、「新しい登山規制」も制定されました。富士登山オフィシャルサイトなどで事前にチェックしておくと、現地で慌てることもないですよ。 やぎちゃん:たしかに事前に調べておかないと、予期せぬストレスばっかりなんていうことにもなりそうですね。 中村さん:また、混雑状況の把握も重要です。吉田ルートを例に挙げると、七合目付近から山頂にかけて長い区間にわたって混雑する可能性があります。富士登山を計画する際は、こちらも合わせて富士登山オフィシャルサイトなどで事前確認しておきたいポイントですね。

怪我防止&快適歩行のためにも「登山靴」は必須

あまりに有名な富士山。それだけに身近に感じてしまい、気軽に登山を考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、富士山は3,000m超の高山です。しっかりとした装備で挑まなければトラブルに合う可能性も。 その中でも大切な部分のひとつが足元。快適・安全な富士登山を楽しむためには、しっかりとした登山靴が必須です。
中村さんの靴
中村さんはトレッキングシューズの中では軽量なTECHNICAの「FORGE」を選択。軽登山でのガイド時にも着用しているそう
中村さん:初めてだったり慣れていない方だと、登山道の状況や下りの辛さがわからないことも多いですよね。なので、靴も「軽い=楽」と感じて履き慣れたスニーカーなどをセレクトしてしまうケースも少なくありません。 中村さん:ローカットのランニングシューズは、中に砂利などが入りやすかったり、水に弱かったり、柔らかいソールで足裏に負担がかかりやすかったり…、捻挫のリスクもあるんですよね。なので、富士登山なら「ケガ予防」、「防水性」、「グリップ力」を意識して、ミドルカット以上の防水機能の付いたトレッキングシューズを選んでいただきたいですね。 やぎちゃん:速乾性のあるローカットシューズで登ることも少なくありませんが、1日7時間以上の歩行が必要な場合やハードな登山のときは、防水性も高いミドルカットを選んでいます!あと、「自分に合っているか」も大切ですよね。頭を使って登るようになってからは、シューズに対しても意識が変わってきました。
やぎちゃんの靴
やぎちゃんはサロモンのアウトライン ミッド ゴアテックスをチョイス
やぎちゃん:シューズのソールは硬いほうがいいのでしょうか? 中村さん:柔らかいソールだと足裏やふくらはぎの筋肉を使ってかかとを持ち上げることになるんです。しかし、それらの筋肉は小さいのですぐ疲れてしまうんですよ。最悪の場合、つってしまったり歩けなくなることも。硬いソールのシューズなら脚の負担が少なくなり、疲れにくくなるんです。 中村さん:実は登山を始めたてのころにスニーカーで登山したことがあるんです。とはいえソールは滑るし足首が不安。靴の中で足がズレるのでいろいろなところが当たり、痛くなって。すぐ登山靴を買いに行きました。 やぎちゃん:達人の中村さんでもそんなことが(笑)。登山靴を買うときのアドバイスはありますか? 中村さん:登山の専門店やスポーツ用品店の登山コーナーのスタッフに相談するのがおすすめですね。選び方がわかったらいろいろ履き比べするのもいいと思います。 やぎちゃん:私も履き比べながらお店の中を歩いてみたりと、時間をかけて選んでいます。あとは履き心地だけでなく防水性も気にしている部分。雨で靴の中がべちゃべちゃのまま歩くのは本当に気持ち悪いので…。 中村さん:濡れてふやけて柔らかくなった皮膚は靴擦れを起こしやすいですし、足元が冷えると低体温症になるリスクもあるんですよ。登山はシューズ選びで楽しめるかどうかが決まると表現しても過言ではありません。自分に合う最高のシューズで、最高に楽しみたいですよね。

正しい登山靴選びはソールがキモだった!?

トラブルは自己解決が当たり前!「道具選び」も慎重に

登山中のトラブルを想定して、自己解決できる最低限のアイテムを携行することも重要です。中村さんがいつも用意しているのはどのようなものでしょうか?
必須アイテム
中村さん:ダウンジャケットなどのインサレーションウェアは必須ですね。ご来光待ちなど、低気温の中で停滞しなくてはいけない際に着用します。行動中に寒さを感じるならフリースやサーマルウェアなどもいいですね。 やぎちゃん:富士山には過去に二度登りましたが、どちらも夜間にスタートしたんです。そういう場合は、寒さ対策に加えてライトも必須ですよね。 中村さん:そうですね。ヘッドライトも必ず用意してください。足を運ぶ位置が確認できないとケガをしてしまう可能性も…。下山が遅くなってしまったときにも使いますよ。ハンドライトも予備として持っていきたいですね。 やぎちゃん:夜の山は真っ暗ですもんね。富士山にもほとんど街灯はないですし。 中村さん:エマージェンシーシートも必須ですね。山頂でのご来光待ちの際に、防寒着を着ても寒い場合に使います。2〜3人で使用できますし、輻射熱で内部が温まり、快適に過ごせますよ。 やぎちゃん:私は常備薬も携行しています。頭痛薬や風邪薬、喉が痛くなったときの薬や胃薬も! 5〜6種類は用意していますね。 中村さん:ケガに備えて包帯や絆創膏も用意するといいですよ。虫刺されの対応にかゆみ止め薬やポイズンリムーバーも。ほかにはテーピングテープもあると便利ですね。足をくじいたり、膝が痛くなったりしたときだけでなく、靴底がはがれたときの応急処置にも使えますから。 中村さん:さらに加えるならサングラスです。私の場合、コンタクトレンズにUVカット機能が付いているのですが、眩しさはサングラスがないと防げないので。それからモバイルバッテリーも準備しておきたいですね。1泊だけでも撮影したり、アプリを確認しているとどんどん電力を消費しますから。いつでも充電できるようにしたほうが不安が少ないです。
【富士山登山に携行したいアイテム例】
  • インサレーションジャケット
    • ネックウォーマー
    • ニット帽
    • 防寒手袋
      • ゲイター/スパッツ
      • バンダナ/ターバン
      • ヘッドライト
      • ハンドライト
      • エマージェンシーシート
      • 包帯
      • 絆創膏
      • ポイズンリムーバー
      • かゆみ・虫刺され用薬
      • テーピング
      • サングラス
      • モバイルバッテリー
      • 携帯酸素

富士登山の正しい事前準備をチェック!

当日は基本に忠実な行動でケガ防止を!

富士山 山頂付近
準備を整えたらいよいよ富士登山がスタート! ここからが本番ではありますが、現地でも注意するべきことがたくさんあります。高度順応や道具の正しい使い方、水分補給など、安全な富士登山のためのポイントを押さえておきましょう。

高山病予防にも「高度順応」がマスト

富士登山のスタートになることが多い五合目でも標高は2,000mを超えています。当然、普段暮らしている場所に比べて酸素濃度も低いので、その環境に体を慣らさなければなりません。高山病の発症を防ぐのにもマストな行程です。
高度順応
中村さん:富士登山では最低1時間は高度順応に費やしたいですね。高地だと酸素を取り込める量が減り体内の酸素量が少なくなるので、睡眠不足と同様に高山病のリスクが高まるんです。 やぎちゃん:高度順応の大切さ、あまり意識していませんでした。 「頭が痛くなっても薬を飲めばいいや」くらいに…。でも、大事にならないようにちゃんとするべきですよね。中村さんはどのようにして高度順応していますか? 中村さん:5合目に着いたらひとまずご飯を食べます。その後は食休めしつつ、お土産屋さんで帰りに買うものを物色しておくんです(笑)。それでも時間が余れば、登山口前あたりでストレッチをしていますよ。周辺の散歩や散策をしながら過ごすのもいいですね。

トレッキングポールで安定歩行&疲労軽減を

安全で快適な富士登山を楽しむためには道具に頼るのも大切です。とはいえ正しい使い方ができなければ、逆効果になることも。ここでは、トレッキングポールの使い方を教えてもらいましょう。
トレッキングポールの使い方
下りでトレッキングポールを使うときは最大まで長くして、進行方向の少し先につくように。目線はポールの先に
中村さん:トレッキングポール無しでは、吉田ルートの砂礫下りや須走ルート・御殿場ルートの砂走りではスピードのコントロールが筋力任せになってしまいます。疲労が重なると転倒や滑落の要因にもなるので、富士登山ではトレッキングポールを必ず用意したいですね。 やぎちゃん:富士登山だけでなく、1日に1,000mや2,000m以上の標高差を下る場合や、下山に7〜8時間かかるような登山にはトレッキングポールを持参するようにしています。下りで膝が痛いな、疲れそうだなと感じてから使うようにしているのですが、どのようなことに気をつけると効果的でしょうか? 中村さん:下りでは、トレッキングポールを最大まで伸ばしてちょっと先につくこと。足裏のフラット接地を基本にして、トレッキングポールだけに体重を預けるのではなく、両脚とポールの3点支持を意識してください。 中村さん:また登りでは、ポールの長さをおへその高さほどに設定して、つく位置はかかとあたりに。そうすると、グリップに体重をかけたタイミングで体が斜め上に引き上げられる感覚があると思います。そのタイミングで脚を前に出していくと、腕の力も使って登れるので、脚の筋力を温存できるんです。 やぎちゃん:次に登るときはそれを意識してみます!体力に余裕ができれば、いろいろなことに気が使えるし、視野も広がりますよね。 中村さん:ほかの登山者にも気が使えるようになるといいですよね。特に富士登山の吉田ルートや須走ルートでは列になってしまうことが多いので、後ろにいる人にポールが当たらないように注意したいところです。

トレッキングポールの使い方はこちら!

下りは危険がいっぱい!砂礫は小股で攻略

日本山岳レスキュー協議会による『日本山岳協会山岳調査報告書』によると、なんと山岳事故の68%は下りで発生しているそうです。特に富士登山では、歩くスピードが速くなりがちな砂礫の道が続くポイントもあります。
富士山 砂走り

出典:PIXTA

やぎちゃん:下りは小股で進むことは以前から意識しているのですが、砂礫の下り坂だと意思に反して勢いがついちゃうこともありますよね…。 中村さん:やぎちゃんがやっているとおり、小股で下るのが基本です。できればフラットに足を着きたいところですが、場合によっては、ヒールストライク(かかと着地)でブレーキをかけることもありますね。ただ、その際は滑りやすくなることを念頭に足を置きましょう。その意識があるだけでも転びにくくなると思いますよ。
下りの歩き方
靴のサイズ分ほどの歩幅でしっかり膝を曲げながら歩くのが下りの基本。目線は進行方向の少し先の下めに
中村さん:下りの歩き方の基本は、小さな歩幅で重心をブラさないこと。そして足裏全体で接地することです。もちろん、急がずにペースを抑えて足腰の負担を少なくすることも大切ですよ。 やぎちゃん:下りで膝の痛みを感じたときから実践しています!体にダメージがないようにゆっくり慎重に進みたいですよね。

難関「須走」の失敗しない歩き方!

▼やぎちゃん&中村さんの【山歩きの基本】はこちら

理想は3L!こまめな水分補給で体調キープ

熱中症や高山病の原因にもなる水分不足は登山の大敵。安全に楽しむためには、こまめな水分補給が必須です。8時間以上も歩く富士登山ではどのくらいの水を用意するべきなのでしょうか。
水を飲むやぎちゃん
中村さん:高山病リスクの軽減にも水分補給は大切で、富士登山では3Lは飲みたいところですね。 やぎちゃん:でも3Lも背負って登るのは本当に大変ですよね。体力を奪われて歩けなくなる人もいるでしょうし…。 中村さん:山小屋での購入(500円~)を視野に入れて、1.5Lくらいを目安に準備するのもおすすめです。また、汗をかいた分だけそのつど少しずつ飲む「ちょこっと飲み」も効果的。がぶ飲みしてしまうと吸収されない分は尿になってしまいますから、トイレの回数を減らしたい方もちょこっと飲みがいいはずですよ。 やぎちゃん:トイレがあまりない区間もあるし、混んでいることもありますよね。水を購入する場所と合わせて意識しながら水分補給するとアクシデントも少なくなりそう。歩きながらも水分補給できるハイドレーションを使っている人もいますよね。私は、エネルギー補給のために水にアミノ酸を混ぜたりもしていますよ。 中村さん:補給する水分量を計算しておくと管理しやすいかもしれません。基本的には、【脱水量mL=(体重+荷物の重量)kg×5mL×行動時間】 で計算するのがいいと思います。たとえば、体重60kgで荷物は7kg、9時間歩くなら、(60+7)×5×9=3.015mLという感じですね。 やぎちゃん:私も初めのうちはその計算式どおりで実践していました。ただ、3年くらい記録を取り続けていたら、標準より少し少なめがちょうどいいことに気がついたんです。こんなふうに、登山を続けながら「自分にいい水分量」を探るためにデータを取るのもおすすめです!

富士山登山の安全対策4カ条

  1. 高度順応で高山病を予防

  2. トレッキングポールで安全歩行

  3. 下りは小股でゆっくりと

  4. こまめな水分補給でリスク回避

達人が教える「もっと楽しくなる」とっておき技

基本をマスターしたところで、ここからは達人ならではの“もっと富士山を楽しくするためのノウハウ”も教えてもらいましょう。
富士山 ご来光
ご来光を拝むことを富士登山のクライマックスに置いている人も多いのではないでしょうか。とはいえ、みんなが求めているだけに混んでいたり、列ができていたりと、意外と思うようにいかないこともあるはずです。 やぎちゃん:登頂してご来光を見たいけど、みんな同じタイミングで山頂を目指すから、当然のように人がいっぱいで…。ちょっとストレスも感じてしまいますよね。 中村さん:とっておきの裏技があります。それは八合目でご来光を見ること。頂上よりも空いているので、ベストポジションを取れる可能性も高いですよ。その後、頂上が空いてきたタイミングで登頂すればストレスもありませんよね。 中村さん:混雑を避けたいなら、平日の日帰り登山もおすすめですよ。午前4:30くらいから五合目に向かうバスがあるので、静かな登山が楽しめるはずです。ただし、一気に山頂に登ることになるので、高山病のリスクは高くなります。体調に気をつけながら楽しむことが重要なので、これは富士登山に慣れてきた人向けですけどね。 中村さん:一生に一度の山頂踏破とは言わず、全登山口を制覇してみたり一合目から登ってたりと、何度も足を運んでみるともっと魅了されますよ。下山後の温泉や景勝地巡り、地元のおいしいグルメなど、旅行を組み合わせる登山もいいですよね。 やぎちゃん:初めて登ったのは18歳くらいのまだ経験が浅いときで、3回くらい意識が飛んだような(笑)。思い返してみると高山病だったんでしょうね。二度目は「ゼロ富士」(海抜0mから山頂を目指す富士山登山ルート3776)に挑戦しました。しかも海抜−1m地点からスタートしたんですよ。「3777mになるからラッキーセブンだよね」なんて言いながら2泊3日で登頂しました。こんな楽しみ方ができるのも富士山のいいところ!

万全の準備&知識で富士登山をもっと楽しく!

まとめ
今回は登山YouTuberのやぎちゃんと登山ガイドとしても活動している中村さんに、知っておくべき富士登山の基本を教えてもらいました。 決して楽に登れる山ではありませんが、きちんとポイントを押さえておけば、安全に楽しめるはずです。「正しい知識を持って、トラブルなく憧れの富士登山を楽しみましょう! ※当記事の撮影は各関係機関への申請・情報共有のうえで行っています
▼【動画公開中】やぎちゃん&中村さんのレクチャーはムービーでも!
撮影/松下哲也