日本酒ソムリエ 田代さんのアドバイス
日本酒ソムリエが教える「最高の日本酒体験」をキャンパーが実践。秋キャンプでうまい酒を飲むには?
野山の木々が色づきはじめ、いよいよ本格的な秋到来です。お酒好きな人なら、季節に合わせたおいしいお酒を飲みたいもの。夏に外で飲むキンキンに冷えたお酒のように、秋ならではの至高のキャンプ酒もきっとあるはず。そこで注目したいのは日本酒。落ち着いた雰囲気の中、景色や焚き火を楽しみながらの晩酌ができたら最高です。日本酒のプロである日本酒ソムリエに取材をし、秋の日本酒キャンプを最大限に楽しむ方法を提案してもらいました。
制作者
キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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もくじ
お酒好きにとって、キャンプで何をどう飲むかは重要命題
自然を感じながらうまい酒を飲むのは、お酒好きキャンパーにとって至福の時間。秋キャンプの落ち着いた雰囲気に合わせて日本酒を持参したものの、ただ何となく味わっているだけのような気がする…。YouTubeやSNSでキャンプの魅力を発信しているピーヤちゃんねるさんも悩めるお酒好きキャンパーの1人です。
オシャレでかっこよく、日本酒を楽しむのが理想
お酒の味をベストな形で楽しむ方法も知っておきたいですが、さらに欲をいえばオシャレにかっこよく日本酒をたしなみたい!自分に合う日本酒を知っているというのも、大人のかっこよさのひとつですから。
日本酒ソムリエに聞く!日本酒×キャンプを最大限に楽しむ方法とは?
そんな悩めるキャンパーに救いの手を差し伸べてくれたのは、日本酒ソムリエの田代智也さん。溢れんばかりの日本酒愛を醸すプロに、秋キャンプで日本酒を最大限楽しむ方法を伝授してもらいました。
キャンパー兼日本酒ソムリエがおすすめする、秋キャンプでの日本酒の楽しみ方
日本酒ソムリエ 田代智也さん
キャンパーで日本酒ソムリエ。休みの日は山に登るハイカーでもある。下山後は、温泉とサウナが定番。アウトドア好き日本酒ソムリエ(日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA)・茨城県認定いばらき地酒ソムリエなど多数の資格・肩書きを持つ。
知りたいのは、自分のキャンプスタイルにあった飲み方
いつ、だれと、どんな雰囲気で飲むかに合わせてお酒を選べられれば、キャンプ酒の楽しみ方はもっと広がるはず!そこで田代さんには、シチュエーションごとにおすすめする日本酒と飲み方を教えてもらいました。
誰かと一緒に楽しむ。デュオキャンプ、グループキャンプの場合
まずは、乾杯!会話が盛り上がる起爆剤となる一本
複数人でのキャンプの始まりは、まずは乾杯でテンションを上げたいところ。そんな時は、おしゃれなデザインのボトルを選ぶのが吉。
運転疲れのピーヤちゃんねるさんのために、奥さんがサッと取り出したのは、淡い色調の軽やかなデザインのボトル。「きれいなボトルだね」と、いつもとは少し違ったお酒の登場に興味津々。
こういった目を惹くデザインのボトルだと、初めましてのメンバーがいるグループキャンプでも、会話のネタになって、盛り上がるはず。飲みきりサイズを選べば、ボトルのまま飲めてお手軽です。
少し酸味があり甘い口当たりの日本酒ならなおよし。軽い味付けの料理や素材自体に淡い甘みを持った前菜にも合うため、キャンプ序盤に飲むお酒としてぴったりです。
純米酢で和えたサーモンのマリネにもよく合う!
選んだのは「SHUSHU Light」
【基本情報】
酒質:純米酒
アルコール度数:8.5度
日本酒度:-23.0
酸度:1.1
価格:330円(税込)
積もる話に花を咲かせるなら、酒器にこだわる"大人な飲み方"に挑戦
乾杯のムードもひと段落すれば、ちびちびやりながら積もる話に花を咲かせていくのが日本酒キャンプの流れの一つ。そんな場面でぜひとも登場させたいのが、オシャレなうえに日本酒をさらにおいしくするこだわりの酒器です。
今回は、高級感のある錫(すず)の片口とおちょこのセットを使って、非日常を楽しむ大人な日本酒の飲み方にチャレンジ。
錫(すず)で作られた酒器は、素材に含まれる高いイオン効果でもってお酒の雑味や角をとり、口当たりをまろやかにする便利アイテム。熱伝導率が高いので燗酒のほか、冷酒を冷たいまま飲むのに最適です。
川沿いのキャンプ場なら、飲む前に川でボトルを冷やしておくのも手です。
普段日本酒を飲まない方は、ロックにするのがおすすめ。スッキリ軽快な味わいでアルコール感が和らぎ、ぐっと飲みやすくなります。氷が溶け出しても、日本酒本来の甘みや華やかな香りは損なわれないので、日本酒への苦手意識がある人も印象が変わるはず。
選んだのは「100人の唎酒師」
【基本情報】
酒質:純米生原酒
アルコール度数:18.5度
日本酒度:+2.5
酸度:2.0
価格:1,375円(税込)
誰の目も気にせずに自分時間に没頭するソロキャンプの場合
見てくれよりも大事なのは中身!絶対うまい酒と飯をかっくらうなら
気温が下がってくるこの季節、おでんと燗酒でちびちびやりながら気ままな時間を過ごす――。ソロキャンパーなら一度は憧れるシチュエーションでしょう。
そんな場面を実現させるなら、ぜひ用意しておきたいのが燗酒を簡単に作れるアイテム「ちろり」。クッカーでお湯を沸かし、日本酒をちろりで温めることで燗酒が作れる便利アイテムです。
おでんと味わうなら、沸騰したお湯に2〜3分入れて日本酒を40〜50℃に。
取っ手と注ぎ口がついているので手酌もスムーズ。ひとり飲み気分も一気に高まります。燗酒用のお酒は、温めても味が崩れないコクのあるうまみと甘みをもつ日本酒がベスト!
酒器は、少量を注げる60ccのシェラカップが冷めなくて丁度良い大きさです。
今回選んだのは「米だけの酒」
【基本情報】
酒質:純米酒
アルコール度数:14.5度
日本酒度:+2.0
酸度:1.5
価格:845円(税込)
日本酒×アテ、テイスティングをマスターしてベストなペアリングを見つける
自分のキャンプスタイルに合った日本酒の飲み方が分かれば、次に知りたくなるのは日本酒に合うアテ。
飲み比べを楽しみながら、自分好みのペアリングを探してみましょう。
「ピーヤちゃんねる」さんのマストおつまみ「ポキ」に合う日本酒はあるのか!?
ピーヤちゃんねるさんのキャンプでの定番おつまみは、ハワイ料理の一つ「ポキ」。アボカドやマグロなどを甘辛いタレで和えた一品です。醤油ベースの甘辛な味付け、かつハワイ料理であるポキに合う日本酒なんてあるのか...。
料理とお酒の相性を探る基本的な方法を教わりながら、さまざまな日本酒を飲み比べてみます。
テイスティングの基本①香りと味の濃淡で4種類にお酒を分類
①薫酒(香りが華やか、味が淡い)
華やかな香りで軽やかな味わい。大吟醸や吟醸酒が多い。
素材が生かされたあっさりした料理と相性が良い。カルパッチョや白身魚の刺身、サラダなど。
②爽酒(香りがおだやか、味が淡い)
香りは控えめ、ほのかな甘みにスッキリした味わい。生酒や本醸造系が多い。
どんな料理にも合わせやすい。素材の味が生きた料理やこってりした肉料理とも相性が良い。モッツァレラやクリームチーズ、豆腐料理など。
③醇酒(香りがおだやか、味が濃い)
芳醇な香り、コクのある味わい。まろやかで甘みや酸味、苦味のバランスが良い味わいで純米酒が多い。しっかりした味付けの料理と相性が良い。肉料理、焼き鳥、煮物、脂の乗った刺身など。
④熟酒(香りがおだやか、味が濃い)
熟された果実やナッツのような香りでとろりとした濃い甘み。熟成酒や古酒が多い。
濃い味付けの料理と相性が良い。中華料理やチーズなど。
テイスティングの基本②味の濃淡と温度帯を、お酒と料理で合わせる
味の濃い料理なら味の濃い日本酒、冷たい料理なら冷酒といったように、アテと日本酒の味の濃淡と温度帯を合わせるだけでも、かなり良いペアリングができます。
「こっちが合うんじゃない?」「ん~、でもあっちも合いそうだよ」
いくつかのお酒を比べてテイスティングする際は、常温にそろえるのがポイント。それぞれの味の違いが分かりやすくなります。そのうえで自分の好みを探すなら、基本は押さえつつ、自分の舌に忠実なのが一番!分類などはあくまで参考に、直感で「これが合う!」と思ったものこそ、自分にとってのベストペアリングなのです。
田代さんがポキの相棒に選んだのは、純米酒の「米だけのお酒」。コクと甘み、酸味のバランスが良く、ポキの醤油ベースの味付けがよく合います。
ピーヤちゃんねるさん達も「このお酒と合わせると、マグロの風味がスッキリと際立ち、かつアボカドのクリーミーさも残る感じがします。いつもはビールと合わせてとにかくサッパリ!という感じですが、日本酒とこんなに相性がいいとは」と感動していました。
米だけのお酒は、どんな料理とも相性抜群。日本酒キャンプの頼りになる相棒として1つは持っておくと間違いないでしょう。
秋キャンプ×日本酒=無限の楽しみ
少し角度を変えれば、楽しみ方がガラッと変わる日本酒。香りの高低や味の濃淡など、それぞれのお酒の特徴を理解しつつ、自分だけの楽しみ方を見つけて日本酒キャンプを楽しんでください。