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ダナー

Danner(ダナー)と巡る90年。アウトドアと私たちの歩み、変わるものと変わらないもの

「Danner(ダナー)」は、2022年に創立90周年を迎える、シューズブランドの老舗。どこにでも気軽に履いていけて、丈夫で、使い込むほど自分の足になじんでいく…。外遊びの揺るがない相棒として、アウトドア業界の移り変わりを見守ってきたダナー。90年という途方もない歴史を紐解きながら、「アウトドア」と人との関わり方がどう変化してきたか、今後どう変化していくかを探ります。

日本にまだ「アウトドア」という言葉が浸透していなかった1932年、シューズブランド「Danner」が誕生

ダナーが生まれた1932年は、アメリカ全土で歴史的な大不況にあえいでいた時代。当時の失業率は20%ほどで、労働者の5人に1人が職を失い、生活に困窮していたと言われています。そんな中、一足4ドルの安い仕事用ブーツを作って売り始めたのが、ブランド創業者のチャールズ・ダナー。 「可能な範囲の中で最も優れた靴を作る」というポリシーを掲げ、ワークシューズメーカーとしての歩みをスタートさせました。 ちなみにその頃、日本では国内初の商業山岳雑誌『山と溪谷』(山と溪谷社)が1930年に創刊。まだ現在のような「アウトドア」ではなく、「登山」を一部の人が趣味として楽しんでいました。

日本のアウトドア市場が動き出すのは1960〜70年代頃から

「キャンプよろず相談所」主宰、株式会社ヨンロクニ代表の滝沢守生さんに聞いた

滝沢守生さん
日本におけるアウトドア文化の変遷について話を伺ったのは、野外イベントの運営制作を数多く手がける「キャンプよろず相談所」を主宰する、株式会社ヨンロクニ代表の滝沢守生さん。学生時代より国内外で登山活動を続ける根っからのアウトドアマンで、『山と渓谷』など数々の雑誌・書籍の編集業務をはじめ、アウトドア業界の第一線を30年以上走り続けています。 滝沢守生さん(以下「滝沢さん」):もともと日本には登山文化が根付いていましたが、いわゆる「アウトドア」なんて風には呼ばれていませんでした。1960年代頃からハイキングブームが起こったことにより、大衆的に親しまれるようになっていった印象です。それまでは「アウトドアショップ」自体がほぼありませんでしたからね。

その間に、ダナーは世界でも有数のシューズメーカーに

ダナーのシューズ
[写真左から]ダナーフィールド、マウンテンライト、ダナーライト
アメリカ北部のウィスコンシン州で誕生したダナーは、1936年に北西部の街、オレゴン州ポートランドに拠点を移します。そこでも「可能な範囲の中で最も優れた靴を」という理念は曲げず、太平洋岸で林業を生業とする人々に向け、靴底に鋲のついた靴を販売。第2次世界大戦後には「造船所の靴」と呼ばれ、林業用の作業靴メーカーとしてアメリカ国内で名を馳せていきました。
ダナーライトのビブラムソール
その後も、1952年にアメリカ国内のシューズメーカーとして初めてビブラムソールを取り入れたり、1961年にはワークブーツ以外の靴として「エルクハンター」「マウンテントレイル」と呼ばれるハイキングブーツを製造したりと、新たな試みをし続けていくダナー。 特に、現行品の「マウンテンライト」の原型となった「マウンテントレイル」は、当時のバックパッカーマガジンによって「最も優れたハイキングブーツ」として認定されるなど、機能性の高さは当時から頭ひとつ抜きん出ていました。

日本国内では、1960〜70年代のハイキングブームがアメリカ的「アウトドア」の火種に

取材に応じる滝沢さん
滝沢さん:1960年代からのハイキングブーム以前は、登山とかハイキングとかはどこかこう…泥臭いというか(笑)。かっこいいものではなかった。それがブームとしてワッと盛り上がったことで、「まず形から入る」ようなこともできるようになったんですよね。 当時はみんな平気で運動靴でハイキングに出かけていたけれど、トレンドとしてメディアが取り上げることで、どんどんかっこいい商品が知られるようになって、ファッションや楽しみ方の選択肢が広がるようになって。ダナーもそうして日本に入ってきたブランドの一つかなと思います。
ダナーを履く男女
滝沢さん:そんなブームを背景に、70年代になると、アメリカ西海岸で流行っていた、フリスビーやカイトスポーツなどと一緒に「アウトドアスポーツ」と呼ばれるカルチャーが入ってきました。「アウトドア」という言葉は、最初は今と少し違ってスポーツという文脈が強かったんです。 さらには、そのようなアウトドアスポーツといっしょに、ヘビーデューティと呼ばれるアウトドアファッションが入ってくる。野外活動はカジュアルになり、外遊びの手段が増えたことで、アウトドアが今のイメージに近づいていくわけですね。

hinataと見つめる、アウトドアとDannerの90年

1979年、名作「ダナーライト」が誕生

アウトドア先進国・アメリカでも革新的だったスマートなアウトドアブーツ

ダナーライト
そんな中、1979年に誕生したのが「ダナーライト」。ゴアテックス社との共同開発により、世界で初めてシューズにゴアテックスを搭載することに成功しました。これまで頑丈さや防水性を確保するために「重くてゴツい」ことが当たり前だった登山・トレッキングシューズ界の中で、軽くてスマートな見た目のダナーライトは革新的な存在。 完成されたデザインは現在でもほぼ変わらず、時代に合わせてアップデートを繰り返しながら、完全防水ブーツの代名詞的な存在として広く愛されています。

日本でも、アウトドア好きの若者を中心に愛用者が続出

滝沢さんの愛用する「ケブラーライト」(ダナーライトの派生モデル)
滝沢さんの愛用する、ダナーライトをベースにしたモデル「ケブラーライト」。もう10年近く履いているという
実は、滝沢さんもダナーライト愛用者の1人。 滝沢さん:ダナー"ライト"というだけあって、ライトにどこへでも履いていけるのがいいですよね。初めて買ったのが社会人になりたての頃で、30年ぐらい前だったと思います。そこから20年ぐらい履き続けて、今履いているのが2代目の「ケブラーライト」。 90年代当時、イケてるアウトドアショップの代表的な存在だったのが日本橋にある「DAVOS」(東京都中央区)という店。ダナーのシューズをはじめ、雑誌で見たアメリカのかっこいいアウトドア用品の実物が見られる貴重な場所でした。「いつか買いたいなぁ」とダナーライトを眺めていた、僕みたいな若者は多かったと思いますよ。

1990年代のオートキャンプブームと、少し毛色の違う今のアウトドア人気

消費文化の中で、モノと行為にスポットがあたっていた90年代のオートキャンプブーム

オートキャンプ

出典:PIXTA

アウトドアがどんどんカジュアルな存在になり、キャンプ人工も増えていく中で、日本のアウトドアシーンを大きく動かしたのが、1990年代に発生したオートキャンプブームです。家族で楽しむレジャーとして定番化し、アウトドア市場も一気に拡大しました。 しかし「次の世代が憧れるような"カルチャー"にはならなかった」と滝沢さんは語ります。 滝沢さん:オートキャンプブームの中では、「キャンプに行く」という行為と、「必要な道具を買う」というモノにだけ注目されてしまって、そこで得られる体験や、そもそもアウトドアに繰り出す精神性の部分にはスポットが当たりませんでした。なので、ひととおりの道具をそろえて、家族で数年楽しんだらもう終わり。ユースカルチャーとして若い子たちに共感してもらえずに、トレンドとして消費されてしまったんですよね。
滝沢さん
滝沢さん:「90年代のオートキャンプはモノの数を充実させてキャンプに行く」ことが目的だから、シューズや服なんかも「あればいい」ぐらいだったんですよね。そこに真の使いやすさだったり、機能性なんてものは求められなかった。社会的にも戦後の高度経済成長を経て、バブルという物質飽和の極みのような状態だったので、モノは"消費される"のが当然、という考え方。 でも、ここ数年のキャンプ人気は、当時と性質が変わってきている印象です。アウトドア活動をすることの意義だったり、アウトドアによって得られる精神性を重視するような…原点回帰的な傾向が強くなっているように思います。

フィールドを蹂躙するのではなく、共存していくために「ホンモノ」が選ばれるようになる

ダナー
大量生産、大量消費社会ではなくなり、「SDGs」という言葉に代表される"持続可能性"が重要視されるようになった現代。アウトドアシーンでも、環境への配慮やモノに込められたストーリーに目を向ける人が増えています。 滝沢さん:アメリカのアウトドアカルチャーがそもそも、物質社会への反発から生まれたものなんですよね。都市生活への疲れとか、行き詰まり感みたいなものをみんなどこかで感じていて、そこからの開放を自然に求めるようになっていった…というのが起源。現代日本もまさにその状態だから、今こうしてアウトドアが人気になっているし、定着しつつある。 だからこそ、アウトドアで使う道具についても、より精神性や思いの部分がシビアに見られるようになってきています

ダナーの靴を履くことで、街とフィールドの距離がより近くなる

ダナー
「だからこそ、日本のアウトドア市場はもっと伸びるし、ダナーみたいな"ホンモノ"がより支持されるようになるはず」。滝沢さんは強く言います。 滝沢さん:日本とアメリカのアウトドア市場規模って、どれぐらい違うと思いますか?ちなみに人口は日本が1億数千で、アメリカは3億ちょっとなので約3倍です。アウトドアの市場規模はね…なんとアメリカのほうが200倍も大きいんですよ。なぜ人口に比べてこうも差があるのかというと、日本はまだまだ「アウトドアレジャー」色が強いのに対して、アメリカは「アウトドアライフ」が浸透しているから。
ダナーフィールド
滝沢さん:「ライフ=生活」だから、道具もそれに見合う品質や機能を持ったものが選ばれているし、モノを売り買いするだけじゃなく、どうアウトドアと生活を結びつけるか…というおもしろい試みも生まれてくる。日常を過ごす街の延長線上にフィールドがあるから、ダナーのような「履きやすくて頑丈、防水機能もある」機能的なシューズが当たり前に履かれているんです。 日本だって、いや日本こそ街と自然の距離が近いのだから、これから続く「コト重視」の社会では、ダナーのように「売るためでなく、使うための」ものづくりに真摯に向き合うブランドがかっこいいし、支持されるようになるはず。現実的な話、防災面から言ってもアウトドアシューズが一番万能です。
ダナー
滝沢さん:あくまで「道具」であることを忘れなければ、おのずと選ぶべきもの、優れたものが何か見えてくるはずですし、ダナーは間違いなくその一つだと思います。90年代のブームではアウトドアが世界に誇れる日本の文化として定着するには至りませんでしたが、今の日本が熱くなっているアウトドアには、"文化"になる土壌があります。 このままいい形でアウトドアカルチャーが定着して、今後続いてくるであろうアジア諸国の良いお手本に、ダナーのような"ホンモノ"の道具たちと日本固有のアウトドア文化がなっていけたら…と願うばかりです。

Danner×hinataの特別なコラボレーション

90年変わらぬものづくりを続ける、ダナーの"職人魂"に触れたい