「はじめてのキャンプごはん」は何をそろえたらいい? 失敗しないコツを先輩キャンパーに聞いた
はじめてのキャンプ。外で食べるごはんは、楽しみのひとつです。しかし、外での料理は、どんな道具がどれくらい必要なのか、パッとイメージが湧きにくいもの。そこで、埼玉県で「キャンプ民泊〈NONIWA〉」を運営する青木さん夫妻を訪ね、キャンプ料理に必要な道具や、知っておきたいポイントについて教えてもらいました!
野外料理は、キャンプの醍醐味! でも準備は大丈夫?
「キャンプでおいしいごはんを作りたい! でも、本にもネットにも情報がありすぎて、まず何から用意すればいいのか分からない…。もちろん、あれもこれもあったら便利なのは分かるけれど、いきなり全部をそろえるのは無理だし、高いものから安いものまでいろいろあって、一体どれを選べばいいの?」と、悩んでしまうキャンプビギナーは多いはず。そこで、まず、どんな火器&調理道具をそろえればいいのか、選び方のキホンと失敗しないコツを先輩キャンパーにリサーチ。
教えてくれた先輩キャンパーは、キャンプ民泊〈NONIWA〉主宰、青木さんご夫妻
キャンプ民泊〈NONIWA〉主宰/青木達也さん、江梨子さん
“自然のなかで、遊ぶように暮らす”をモットーに、公私ともにキャンプにのめり込んでいる夫婦。2019年6月から「キャンプ民泊〈NONIWA〉」を埼玉県ときがわ町でスタート。手ぶらでキャンプが体験でき、必要な知識や道具の使い方も学べます。隣接する自宅のお風呂やトイレを解放する“民泊”の要素も取り入れた初心者にやさしいキャンプ複合施設となっています。夫妻の愛称は〈野あそび夫婦〉。
初めてのキャンプごはん作りを必要最低限のアイテムで!どんな道具を準備する?
おうちで料理をする時は、どんなアイテムを使って調理をしているでしょうか?フライパンやお鍋、おたまや菜箸などさまざまなアイテムを思い浮かべると思います。しかし、キャンプでの料理を初めて作るとなると、どんなアイテムを準備すれば良いのか、イメージがつきにくくなります。そこで、今回はキャンプごはん作りのために必要なアイテムの準備を、たった3ステップで紹介します。
Step.1まずは火器を選ぼう
料理のマストアイテムといえば、“火器”。とはいえ、ひとくちに火器といっても種類はたくさんあります。そのため、「どれを選べばいいの?」と悩む人も多いでしょう。まずは、それぞれの特性を知り、自分に合った火器選びからはじめましょう。
キャンプで使う火器の種類はさまざま
キャンプで料理をする際は、おもに「ツーバーナー」、「シングルバーナー」、「焚き火台」などを使います。大きさや火力の調整のしやすさなど、それぞれ特色があります。そのため、自分のキャンプスタイルに合いそうなものを選ぶには、その火器の特色を把握しておくことが重要です。
火口が2つある「ツーバーナー」
「ツーバーナー」は火口が2つあるので、煮たり焼いたりとふたつの調理を同時進行できます。風防が付いているので、風の影響を受けやすい野外でも安定した火力をキープ。ロストルの面積が広いため、大きな鍋を乗せても安定感があり、ファミリーキャンプなどで3~5人分の料理を一度に作りたいときなどに向いています。反面、シングルバーナーと比べると、重さやかさばりが気になる人もいるかもしれません。
コンパクトで持ち運びに便利な「シングルバーナー」
手軽さを優先したいなら、「シングルバーナー」。火口はひとつですが、その分ツーバーナーと比べると大変軽く、手のひらに収まるほどのサイズです。お湯を沸かしたいときや、簡単に1品作りたいときにピッタリ。ゴトクが小さいため、小型の鍋を乗せるのに向いています。
キャンプの醍醐味を味わうならこれ!「焚き火台」
焚き火と調理を同時に楽しめるのが「焚き火台」のいいところ。火を囲んで調理するため、暖を取りながらコミュニケーションも深められます。ただし、火おこしや火消しの作業があるので、ツーバーナーやシングルバーナーよりも手間がかかります。調理器具としては玄人向け。
\ Noasobi fu-fu's Advice ①/
「ツーバーナーやシングルバーナーを買わなくても、火器は家庭用カセットコンロで代用できます。ただ、アウトドア用バーナーと比べると、火力が弱い、風に弱いなどのデメリットがあります。野外での使用に100点満点とは言えませんが、日頃から使い慣れているアイテムはキャンプビギナーにとって安心感があるため、選択肢の一つに入れておくといいですよ」と江梨子さん。
Step.2 火器燃料もいろいろ。適切なものを選ぼう
火器同様、燃料にもいろいろなタイプがあります。ガス、ホワイトガソリン、アルコール、固形燃料、薪、炭などありますが、初心者が扱いやすいのは、なんといっても「ガス」。しかし、火器の種類により使用できる燃料は変わるため、どの燃料が使える火器なのか、事前に確認したうえでのチョイスをおすすめします。
ガスは着火がらくちん
ガスは火おこしの手間がなく、着火がカンタン。シングルバーナーやツーバーナーにセットしてつまみを回せば、あっという間に火がつきます。火力の調整もとても容易で、弱火でコトコト煮込みたいときにもアシストしてくれます。
ガス缶には、「CB缶」と「OD缶」の2つがあります。CB缶は、「Cassettegas Bombe(カセットガスボンベ)」の略で、細長い筒状のガス缶のこと。冬のお鍋などでカセットコンロを使う方が多いと思いますが、そのときに使うガス缶と同じ種類です。OD缶は、「Outdoor(アウトドア)」の略で、屋外使用で出力が安定しやすい特長があります。CB缶とOD缶、どちらを使用するかは、バーナーの種類によって異なります。
\ Noasobi fu-fu's Advice ②/
「キャンプ初心者さんは見慣れているCB缶でデビューするのがいいと思います。火器も、最初は火口がひとつあれば十分。あれもこれもと欲張りすぎず、まずは1品作るところからはじめましょう。そのため、最初の1台にはさまざまなメーカーから発売されている『CB缶タイプのシングルバーナー』が個人的におすすめ!」と、納得の意見です。
ガス製品を使用する前にキャンパーなら必ず知っておきたい、3つのこと
キャンプごはんに欠かせない便利な火器も、使い方を間違えると大事故につながる道具のひとつ。安全に扱うために、3つのことを心得ておきましょう。
CHECK1 そのバーナー、「PSLPGマーク」ついてる?
「PSLPGマーク」とは、厳しい検査を合格し、国が定めたガス器具の基準に適合していることを証明するマークのこと。いわばこのマークのついた製品は、「法律で定められた検査に合格していますよ」という証です。しかし、近年は「PSLPGマーク」を取得していない輸入品がインターネット上を中心に数多く出回っています。
もちろん、このマークがついていても、各々が正しくガス器具を使わなければ100%安全とはいえないですが、ついていない製品は国内の法律で定められた検査に合格していない製品です。楽しいキャンプにするために、必ず「PSLPGマーク」があることを確認してから購入しましょう。マークがあるかどうか分からない時はお店の人に聞いてみましょう。
CHECK2 使用するときは、その都度「Oリング」の状態を確認しよう
「Oリング」は、ガス器具とガスカートリッジを接続させる部分についているゴム製リングのこと。ガス器具には大半のものについており、ガス漏れを防ぐためにとても大事な役割を果たしています。しかし、このOリングはゴムでできているため、年に一度しか使わないようなガス器具であっても、使用頻度や時間経過とともに劣化していきます。いわば、Oリングは消耗品です。
そこで大切なのが、劣化のチェック。一部が切れていたり、ささくれていたり、ひび割れていたりしませんか? 縮んだり、硬くなっていたりしても、それは劣化の合図。ガス漏れによる事故(火傷、火災、破裂など)を防ぐため、火器を使用する前は必ず“目視”で、異常がないことを確認しましょう。もし、異常を感じたときは、販売店やメーカーに相談を。
Oリングのメンテナンスをしっかりと行い、大事に使用していたとしても、すべての物には寿命があります。安全に使うには、カセットガス式コンロは10年を目安に買い替えることをおすすめします。
CHECK3 命を脅かす「一酸化炭素中毒」にご用心!
テントの中では、絶対に火器を使ってはいけません。換気の悪い室内で火器を使用すると、一酸化炭素中毒の引き金となり、場合によっては死に至ることがあるためです。
恐ろしいことに、一酸化炭素は無色・無臭。空気と判別がつかず、気がつかないうちに吸い込むと、自覚症状がないまま、あっという間に体調が悪化してしまいます。これはキャンプに限ったことではなく、毎年のように日本中で、一酸化炭素中毒関連の事故が起きてしまっています。火器の使用は必ず屋外で。車内での使用も厳禁です。
▼アウトドア用ガスコンロを安全に使うための参考動画
Step3.調理器具を選ぼう
キャンプ用の調理器具は、アルミやステンレス、鉄などの素材や大きさもさまざま。どんな料理をどのくらい作りたいのか、イメージすることが道具選びをスムーズにします。
どんな料理を作るかによって変わる、調理器具たち
鍋、コッヘル、フライパン、鉄板、焼き網、ダッチオーブン。これらの調理器具は、作りたい料理によって得意不得意があります。しかし、最初から全部そろえる必要はありません。まずは煮る、焼く、沸かす、この3パターンに対応できる「深めの鍋」があると便利です。人数に見合ったサイズを選びましょう。
キャンプ料理に万能な「コッヘル」の存在
コッヘルとは、アウトドアで使用される小型の調理器具のこと。家庭用調理器具よりも断然軽く、フタがフライパンになったり、サイズ違いをスタッキングできる仕様になっていたりすることが多いので、なにかと荷物の多いキャンプで重宝します。
アルミやチタン、ステンレスなど素材もさまざま
コッヘルにも、アルミやチタン、ステンレスといった素材があり、それぞれ一長一短があります。その特製を知り、自分にあった調理器具を見つけましょう。
【キャンプ用調理器具に使われる主な素材特徴】
・アルミ:とにかく熱伝導率がよく、比較的軽いので扱いやすく調理しやすい。傷や変形に弱く耐久性が低いのが玉にキズ。
・ステンレス:さびにくく、傷つきにくい。アルミやチタンより安価に手に入るが、重く焦げやすいのが難点。
・チタン:とにかく軽量で丈夫。ただし、熱が伝わりにくく、火が当たるところだけに熱が集中してしまうので熱むらが生じ焦げやすい。湯沸かしには便利ですが、本格的な調理にはやや不向き。
\ Noasobi fu-fu's Advice ③/
「もちろんアウトドア仕様の調理器具は、軽さや強度、熱伝導に優れていたり、重ねてコンパクトに収納できたりとメリットがたくさんあります。しかし、日頃使い慣れている家庭用の器具でも代用できます。わが家では雪平鍋が大活躍。
ある程度の深さがあるので、カレーやポトフなどの煮込み料理や、お肉を焼くときにも使えます。ただ、アウトドアでは火が風にあおられて持ち手が焦げたり溶けたりしないように気を付けましょう」。現役キャンパーの江梨子さんが語ると、説得力があります!
\ Noasobi fu-fu's Advice ④/
「最近のアルミ製品は耐久性や使いやすさが改良されてきているので、調理メインで楽しみたい場合はアルミ製のコッヘルがおすすめ。コーヒーやカップラーメンの湯沸かし程度なら、チタンもOKです!」
調理小物&カトラリーはどうしてる?
結論からいうと、ナイフやまな板といった調理小物こそ、ふだん使っている家庭用のもので十分です。ただでさえ、キャンプ道具は、テントやランタン、テーブルにチェアなど、イチからそろえようと思うと初期費用がかさむもの。もちろん、アウトドア専用の調理小物は軽くて耐久性があり、使い勝手よく作られています。しかし、まずは、家にあるものを活用していきましょう。キャンプに慣れたら、道具を少しずつ増やしていくことも楽しみのひとつです。
\ Noasobi fu-fu's Advice ⑤/
「木のまな板やお皿は、落としても割れにくく、なにより木目調のデザインが卓上の雰囲気を格上げしてくれます。紙製は安く手に入りますが、風に飛ばされやすく、使用後はゴミになってしまいます。何度でも繰り返し使える木製アイテムが役に立ちますよ」と江梨子さん。
\ Noasobi fu-fu's Advice ⑥/
「お楽しみアイテムとして、わが家ではくるくる回しながらマシュマロやウインナーを焼くことができるスティックを愛用中。なくても困りませんが、こういった+αのアイテムがあるとより一層キャンプが盛り上がります!」と達也さん。キャンプならではの遊び心のあるアイテム、欲しくなります。
\ Noasobi fu-fu's Advice ⑦/
調理のときにあると便利なグッズが、タッパーと密閉袋。余った食材の保存や濡らしたくないペーパー類入れておくなどとても重宝します。野菜のカットやお肉の下ごしらえなど、あらかじめ自宅で済ませておくと、現地での調理時間が短縮できます。ただし、野菜は切ると傷みが早くなるため、密閉容器で保冷して持ち運び、早めに消費することを忘れずに。
おいしいごはんで、楽しいキャンプを!
自然のなかで食べるごはんは、特別な体験そのもの。どんなスタイルで、どんなごはんを作るかによって道具のチョイスが変わるため、自分たちの目的を明確にしておくことがアイテム選びで失敗しないコツです。頑張りすぎず、道具もレシピも少しずつ増やしていきながら楽しみましょう。Have a nice camp!
監修:日本ガス石油機器工業会
キャンプ民泊〈NONIWA〉主宰/青木達也さん、江梨子さんの情報はこちら
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