【Outdoor Director's File#2】ネイタルデザイン 後藤 伸介
【Outdoor Director's File#1】アールディーズ ターザンAQZAWA
2019.04.12ファッション
アウトドア文化の作り手に話を聞くインタビュー企画「Outdoor Director's File」。その第一弾として、今回は独特な雰囲気で存在感放つ、アールディーズ、エルドレッソ、両ブランドのデザインを手がけるターザンAQZAWA氏に、インタビューを敢行し、自身のブランドについて語ってもらいました。
制作者
近藤みのる
hinata編集部のみのるです!
月2回は必ずキャンプに行くhinata編集部きってのキャンパー!グルキャンと、チャリキャンプが好き。
キャンプギアオタク。新しいもの大好きです!
車→カスタムプロボックス 自転車→オーダーメイド テント→いろいろ
もっと見る
もくじ
第1弾は、アールディーズ /ターザンAQZAWA
今回話を伺ったのは、独特な雰囲気で存在感を放つアパレルブランド「アールディーズ」、近年ランニングウェアシーンで唯一無二な存在として注目を集める「エルドレッソ」、両ブランドのデザインを手がけるターザンAQZAWA氏。同氏に、ブランド立ち上げの経緯や、ものづくりに対するこだわりについて聞きました。
プロフィール紹介
アールディーズを立ち上げるまで
「浅はかな考えでブランドを立ち上げてしまった」
インタビューでお邪魔したのは、ターザンAQZAWA氏(以下、AQZAWA)が代表を務める株式会社タイムマシーンの事務所兼ショールーム。元々店舗だったという部屋の中は、多くの装飾がなされ、他のブランドのショールームにはない異様な光景が広がっていました。
━━━━今となっては有名ブランドですが、もともとAQZAWAさんがアパレル業界に入ったきっかけはなんだったんですか?
AQZAWA:下北沢に住むぐらい、学生の頃から古着がすごく好きで、アルバイトをしなきゃまずいとなったときに、どうせなら好きな服屋で働きたいなと思ったのがきっかけ。当時は古着が全盛期の時代で、一気にのめり込んでいきましたね。
━━━━好きを仕事にしたい!というところが始まりなんですね。
AQZAWA:そうこうしてアパレルの仕事が楽しくなってきた時に、なんだか狭苦しい会議室で、みんなであーでもないこーでもないと会議をするような、いわゆる一般的な会社員像になんだか苦手意識ができてしまって。だったら、自分でやっちゃえばいいかな?という浅はかな考えでブランドまで立ち上げてしまったわけです(笑)。
━━━━そんなに気軽に立ち上げてしまうのがすごいですね(笑)。
AQZAWA:当時はドメスティックブランドブームで、みんながブランドを始めて乱立していた時代。まだアールディーズができる前、僕も、学生時代の友人4人でブランドを始めたんです。でも時が経つにつれて、1人減り、2人減り、最終的には1人になっていました...(笑)。その後、ブランドを変えて展示会に出展しようとして始まったのが、アールディーズなんです。
━━━━紆余曲折あったのだと思いますが、AQZAWAさんは今どんな仕事をされているんですか?
AQZAWA:主な仕事は、アールディーズとエルドレッソのデザインですね。少ない人数でやってるブランドなんで、店頭販売以外は全て僕がやっています。商品の生地の選択から企画、生産管理、営業や出荷作業等々、バックヤードの仕事全般をやっていますね。最近は、エルドレッソでランニングウェアを扱っているので、マラソンレースに参加したり、そのための練習をしたりと、ますます忙しくなってきました。
"LOVE&JOKE"を届けるアールディーズ
「10分ぐらい考えて、アールディーズをブランド名に」
━━━━アールディーズには、どんな想いが込められているんですか?
AQZAWA:アールディーズのコンセプトは、"LOVE&JOKE"。生地の柄や色の複雑な組み合わせから生み出されるハーモニーに、僕が一つ毒を盛ることで、コンセプトを体現しています。
━━━━服のハーモニーに毒を盛る。面白いコンセプトですね。アールディーズというブランド名にも、由来や意味があるんですか?
AQZAWA:名前の由来は、音楽でよく使われる言葉で、「時代を超えても認められる良いもの」という意味の”OLDIES”と、カウンターカルチャー的な意味合いの"ALTERNATIVE"を合わせた造語です。真面目に話していますが、ここだけの話、展示会が急に決まったので、案内状に印刷してもらうために10分くらいで決めたんです。それでも、これまでしっかり続けることができているので、やっぱり直感って大事だなって(笑)。
「無味無臭の真っ黒なパンツは作らない」
━━━━普段のものづくりも直感を大事にしているんですか?
AQZAWA:そうですね、直感や自分の感覚をすごく大事にしています。最近のアパレル業界のトレンドは、暗い服が主流になっていて、いわゆる「売れる服」というのは、シンプルなものが多い。でも、無味無臭の真っ黒なパンツは、アールディーズでは作りません。そういう意味で、うちの服は大多数がほしい服ではないかもしれない。それでも、一部の人に深く突き刺さるようなエッジの効いたブランドであればいいと思っています。
━━━━ アールディーズの服は、個性的な柄や切り返しが非常に印象的ですよね。
服を見た人が、ハッとしたり、どこかに疑問を感じたりするような服、ということを意識しています。アールディーズは見た目こそ派手ですが、形はいたってオーソドックス。切り返し、柄、配色でアールディーズの世界観を表現してます。
━━━━ アールディーズの服を見るだけで、作り手であるAQZAWAさんの強いこだわりが伝わってきます。
AQZAWA:服の生地は、現地に直接見にいって選んでいるんですよ。年6回は世界各地の生地屋に生地を探しに行きます。直接生地屋まで探しに行くのは、数多のブランドがあれど、僕くらいだと思いますよ。他のブランドは生地メーカーから届くサンプルを見て、決めることが多いんですけど、僕は直接見た方がわかりやすいし、それが次の服を作るためのいい刺激になる。15年もやっていると、はじめにやりたいと思っていたことは全部やったので、新しい刺激がないと新しいものを生み出せないという、強迫観念のようなものがあるんですよね。
━━━━アウトドアやフェスで人気なイメージがありますが、アールディーズとアウトドアの関係については、どう考えているんですか?
AQZAWA:アールディーズは何系?というジャンル分けはしたくないんですが、あえていうなら、自分ではモードブランドだと思っています。だから、カナダでランウェイを歩いたし、東京コレクションを運営する東京ファッション協議会にも参加していました。なので、正直、アウトドアウェアというつもりでは作っていません。それでも、フェスやアウトドアで使用するお客さまが多いので、僕自身すごく刺激になるし、アウトドアで使用する素材を取り入れてみても面白いかもな、とは思っています。
━━━━どんな人に、どんな風に、着てほしいというイメージはありますか?
AQZAWA:特別、誰に、どんな風に着てほしいというのはなくて、自由でいいと思うんですよ。アールディーズを着てみんなが元気になってくれたらいい、願うのはそれだけですね。フェスで着てもらうことが多いのも、アールディーズを着ることで高揚感を感じられるからなんじゃないかな。
ランニングウェアの新風となったエルドレッソ
「自分が着たいと思うランニングウェアを作りたかった」
━━━━2016年秋にスタートしたアースランニングブランド「エルドレッソ」はどのような経緯で始まったんですか?
AQZAWA:ランニングを始めた時に、僕のスタイルに合うようなウェアがスポーツ店にはなくて。純粋に、「自分が着たいウェア」がほしいと思ったのがきっかけです。完全に趣味の延長ですよ(笑)。
━━━━アールディーズに引き続き、こちらも気軽なスタートだったんですね(笑)。
AQZAWA:でも、趣味の延長だからこそ、妥協したくないという気持ちがより強くて。エルドレッソは、混沌とした東京のストリート要素を取り入れつつ、本格的なトレイルランニングにも対応できる機能性やコンテンポラリーなデザイン、クラシカルなモチーフを主軸に、独自のエッセンスやメッセージ性、ラジカルさを加えた唯一無二のコレクションになっています。
━━━━たしかに、ランニングウェアに大胆なプリントが入っているのは、他のブランドでは見たことがありません。
AQZAWA:アールディーズというブランドを15年近くやってきた蓄積も相まって、僕の長所である柄や切り替えをエルドレッソ的な解釈で取り入れています。メジャーブランドのウェアのような、機能性を追求したような物作りはできないけれど、逆に、彼らが絶対に作らないような毒々しい物を作るのが僕の仕事(笑)。彼らがいることによって、むしろエルドレッソが際立った存在になれるんです。
━━━━街でも違和感なく使える、プリントTシャツもいいですよね。
AQZAWA:このガイコツのグラフィックは、Tシャツの他に、キャップにも使っていて、エルドレッソでも人気のシリーズ。ガイコツのポーズを変えて、毎年リリースしてます。かれこれ15年の付き合いがあるグラフィックデザイナーに描いてもらってるんですが、もう阿吽の呼吸で、こっちが表現したいことを最小限のコミュニケーションで実現してくれるんですよ。
「期待を超えるものづくりをしていきたい」
━━━━立ち上がって2年経ちましたが、エルドレッソに対するランナーの反応はどうですか?
AQZAWA:トレイルレースで見かけることも少しずつですが増えてきた印象です。気持ちが高揚したり、ランニングのちょっとしたエッセンスに感じてくれたらと思ってます。インスタグラムの反響も大きいですね。アールディーズのフォロワーが約8,000人、対して、エルドレッソは約3,000人くらいなんですが、一つの投稿に対してアールディーズはいいねが150くらい。一方のエルドレッソは、フォロワーが少ないにも関わらず300のいいねが付いています。
━━━━より熱量の高いファンが多いということですね!
AQZAWA:完全に予想外の展開ですね。正直、絶対売れないと思っていたので(笑)。趣味の延長で始めたつもりだったのに、趣味では追いつけなくなっている。ただ、少しでも「欲しい」と思ってくれている人がいるのであれば、今後もその期待を超えたものづくりをしていきたいですね。
何十年後かに古着屋のレジ裏に飾られるブランドに
━━━━最後に、ご自身のブランドの今後の展望について聞かせてください。
AQZAWA:正直、短期的な目標とか戦略的なことは、特別ありません。しいて言うなら、世界進出。世界中の変な人達がアールディーズを着ていれば面白いし、海外のトレイルレースでエルドレッソを着ているランナーを見かけたら、もっとワクワクしますよね。
あと、古着屋のレジの後ろにある商品って、その店のアイデンティティが高い商品なんですよ。何だったら売りたくないものが飾ってあるんですけど、何十年後とかに古着屋のレジ後ろに自分の作った服がかかってたらいいなと思います。
次のバトンが渡されるのは...
本企画「Outdoor Director's File」では、次回インタビューに伺うお友達のアウトドアディレクターを紹介してもらいます。AQZAWA氏に、お友達のアウドドアディレクターに連絡を入れてもらいました。
━━━━今回ご紹介いただけるお友達はどなたですか?
AQZAWA:ネイタルデザインの後藤さんを紹介します。ネイタルデザインは物作りに真摯に向き合ってる印象。僕は、ドメスティックブランドは作り手の顔が現れてるブランドが売れていると思うんですけど、作ってる後藤さんはすごくいい奴で、ネイタルデザインにはそれがしっかり表れてますね。
まとめ
お店やネットで商品を見ることはできますが、どんな人がどのような思いを持ってその商品を作っているかは、なかなか知ることができません。でも、商品に隠されたストーリーを知ることによって、その商品の新たな魅力に気づくことができます。今後も「Outdoor Director's File」では、なかなか知ることのできないブランドの作り手のメッセージを伝えていきます。そして第2弾はネイタルデザインの後藤氏。次回も乞うご期待。
AQZAWA氏が手がけるアールディーズが気になる方はこちら▼