
【TMR Industries】金属加工のプロが生んだ、本物のジャパニーズULギア【W.R.Cooke】
2026.05.22キャンプ用品
アウトドアギアを選ぶ際、軽さやデザイン、価格など選択肢は無限にあります。しかし、厳しい自然環境において何よりも求められるのは「いざというときに確実に機能するか」という信頼性ではないでしょうか。その信頼性を精密加工技術によって形にしているのがTMR Industries(ティーエムアール インダストリーズ)。日本の熟練した職人がひとつずつ金属の塊から削り出したプロダクトには、過酷なフィールドを生き抜くための機能が凝縮されています。
もくじ
雪山での「沸かないお湯」が変えた、ものづくりの視点
TMR Industriesが設立されたのは2020年。栃木県真岡市に拠点を置き、防衛産業向けの精密金属加工を手がける「田村工機」から誕生したブランドです。
代表の戸頃智浩さんは、自身の登山の経験からこのブランドをスタートさせました。
それは厳冬期に雪山で直面した体験にあるそうです。寒さの中で立ち止まれば体温は急激に奪われますが、手元にあった道具では、暖を取るためのお湯がなかなか沸かず、「これは命に関わる」と痛感したのだとか。
自然は美しさと同時に、命に関わる厳しさも持っています。だからこそ過酷な状況で確実に機能する道具を、自らの技術で形にしたいーー。
その強い動機が、金属加工のプロとしてアルミニウムの熱伝導率を最大限に活かした「独自構造を持つクッカー」が生まれるきっかけとなったのです。
5軸加工機が実現した、唯一無二のヒートシンク構造
TMR Industriesのギアを手にとったとき、まず驚かされるのはその緻密な造形です。
一般的なアウトドア用のクッカーは、金属の板をプレスして成形する「ヘラ絞り」などの手法で製造されることがほとんど。
しかし、TMR Industriesは「5軸複合加工機」という、航空宇宙産業や防衛産業でも使われる工作機械を使い、金属の塊から一つひとつ削り出しています。
この技術によって、例えばW.R.Cookerの場合は側面0.5mmという驚異的な薄さと、底部2mmという十分な強度の両立を実現しました。さらに、底部に施された無数の突起(ヒートシンク構造)も、この精密な削り出し技術があるからこそ成し得たものです。
表面積を劇的に増やすことで熱吸収率を高め、熱を逃さず効率的に伝える。この構造はまさに「技術でしか生み出せない機能美」と言えるはずです。
1分30秒で沸騰する、熱伝導の極致“W.R.Cooker”
ブランドのアイコンとも言えるプロダクトが こちらの「W.R.Cooker」です。
最大の特徴は、先述した底面のヒートシンク構造。アルコールストーブや固形燃料の炎を効率よくキャッチし、350mLの水をわずか1分30秒ほどで沸騰させる能力を持っています。
コーヒーを淹れる時間はもちろん、冷えた身体をすぐに温めたい雪山や高山での食事において、このスピードは何物にも代えがたい安心感になるはずです。
容量も330mLから660mLまで展開されており、自分のスタイルに合わせて選べるのもうれしいポイント。
さらに0.5mmという極薄の側面が軽量化に貢献しており、飲み口の部分は3.4mmと厚みを持たせ、テーパー加工を施すことで、お湯を細く注げるよう設計されています。
【基本情報】
W.R.Cooker
- サイズ:[W.R.Cooker 330]口部φ91×中底部φ85.3×内径φ84.5×高さ74mm [W.R.Cooker]口部φ99×中底部φ91.6×内径φ90.6×高さ87mm [W.R.Cooker 660]口部φ119×中底部φ111×内径φ110×高さ107.5mm
- 重さ:[W.R.Cooker 330]50g [W.R.Cooker]73g [W.R.Cooker 660]107g
- 容量:[W.R.Cooker 330]推奨330mL Max360mL [W.R.Cooker]推奨350mL Max450mL [W.R.Cooker 660]推奨770mL Max900mL
- 素材:Aluminum(A5056)
安全と効率を両立した、ミニマルな“F.D.Stove Plain”
もう一つの名作が、植物由来のエタノール固形燃料に最適化された「F.D.Stove Plain」です。このストーブが生まれたきっかけは、テント内での一酸化炭素(CO)中毒事故のニュースでした。
安全に、誰でも、どこでも使える火器を作りたいという想いから設計されたこのストーブは、二次燃焼構造を採用することで燃焼効率を高め、クリーンな燃焼を実現しています。
また、シンプルな3ピース構造にすることで、故障の原因となる可動部を排除しており、さらに密閉性の高いリッド構造なので、余った燃料をそのまま入れて持ち運べるため、無駄もありません。
そして非常にコンパクトで34gと軽量なので、ハイキングのパッキングを圧迫しません。その安全性の高さから、アウトドアだけでなく防災用の備蓄火器としても使えます。
【基本情報】
F.D.Stove Plain
- サイズ:リッドφ64.4×中底部φ62.9×高さ32.8mm
- 重さ:34g
- 素材:Aluminum(A5056)
道具の性能を知ることが、自分や周囲を守る備えになる
アウトドアギアを選ぶうえで、重視したいのはやはりフィールドでの機能性です。軽さや携行性、使いやすさ、そして過酷な環境でも確実に機能する信頼性。実際のアウトドアシーンで安心して使えるかどうかは、道具選びの重要な基準になります。
そのうえで、アウトドアギアは日常の延長にある「防災」という視点でも捉えることができます。自然の中で使うことを前提に作られた道具は、非常時にも高い実用性を発揮するものが少なくありません。
だからこそ、精密な金属加工技術によって生み出されるTMR Industriesのプロダクトは、フィールドでも日常でも、確かな安心をもたらす実用的な選択肢となるはずです。
撮影:渡辺昌彦
制作者

白澤亜動
メンズファッション誌の制作に長年携わったのち、フリーランスへ転身。日課は、精神を整える15kmランニング。自然の中でのリセットを大切にしながら、ヴィンテージからアウトドアまで数多のアーカイブに触れてきた審美眼で、道具の本質と“モノ語り”を綴ります。
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Outdoor Brand Chronicle
キャンパーの生活に欠かせないアウトドアブランドだけど、その実、ブランドの生い立ちだったり、ものづくりの哲学は意外と知らなかったりする。でも背景を知れば知るほど、ギアやウェアに対しての愛着は深まるし、興味がなかったブランドのことも「かっこいいじゃん」と思ったり。 深掘りをすることで見えてくるブランドの良さを再発見する連載です












