累計40万台の偉業!ユニフレーム「ファイアグリル」が本物たる所以と僕たちに愛されるための仕掛け
さまざまなメーカーやブランドから多くの焚き火台が登場し、焚き火台戦国時代としても過言ではない今のキャンプシーン。とはいえ、「どれを選ぶのが正解?」と悩む人も多いはずです。そこで今回は、元祖・焚き火台としても名高いユニフレーム「ファイアグリル」にスポットを当てて、その名品たる所以に迫ります。24年以上も姿を変えない理由とは?新潟県・燕三条地域が生み出す信頼の証とは?僕たちがファイアグリルを選ぶべき理由が見えてくるはずです。
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キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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もくじ
24年以上も基本設計を変えない「ファイアグリル」
ユニフレームの「ファイアグリル」が発売されたのは、第一次アウトドアブームも落ち着いた1998年のこと。当時は現在ほど焚き火台の使用は普及していませんでしたが、ユニフレームは環境保護の観点においても必要性を強く感じ、ファイアグリルの開発に着手しました。
それから約24年。四角形の炉を4本の脚(スタンド)で支えるデザインをほとんど変えることなく、ファイアグリルは今なお多くのキャンプファンに支持され続けています。初代ですでにユーザーが求めるプロダクトに至っていたことは、約40万台の累計出荷台数からも伺うことができるのではないでしょうか。
ファイアグリルの炉は、キャンプ場などで入手できる一般的な薪(30~40cm)が収まる約43cm四方とされているのも愛用者が多い理由の一つです。
ロストル(焼き網)で炭火焼きなどの調理も楽しめますが、炉に対して45度の位置にロストルをセットできるのも見逃せないところ。炉の四隅にスペースが生まれるので、薪や炭の出し入れ・位置調整が容易に行えるというわけです。
【基本情報】
- 商品名:ファイアグリル
- 使用サイズ:約43×43×33(網高)cm
- 収納サイズ:約37.5×37.5×7cm
- 分散耐荷重:約20kg
- 重さ:約2.7kg
- 価格:7,500円(税込)
プロ達のチームプレイで高める、ギアとしての価値
今やファイアグリルは誰もが認める焚き火台のパイオニア。それだけに同製品に倣った類似品も数多く登場していますが、元祖ならではの価値はどのようにして生み出されているのでしょうか。
私たちが惹かれる理由を紐解くべく、ユニフレームの事業部長を務める田瀬さんにお話を伺いました。
ユニフレーム事業部長 田瀬明彦さん
「ファイアグリルをはじめとする弊社の金属加工製品は、主に新潟県の“燕三条エリア”の協力工場のおかげで成り立っています。金属加工と言っても切削や研磨など、加工の種類は多岐に渡ります。各工場やその職人が得意とする分野・作業を分担してもらうことで、高品質で手にしやすい価格のギアが生産できています」(田瀬さん)
協力工場は140以上にのぼりますが、それぞれの生産スケジュールやコスト、品質などの管理を担うのがユニフレーム。もちろん自社工場での生産も並行していますが、これも長い歴史で培った信頼関係があるからこその取り組みです。
また、同社のクッカーセット「fan5シリーズ」のように、ステンレス、アルミ、ウッドなど、異なる素材が組み合わせられている製品も少なくありません。これも各協力工場との連携があってこそ。品質とコスト(製品の価格)をバランスさせる上で協力工場は欠かせない存在で、ユニフレームの最大の武器でもあると言います。
「品質とコストのコントロールが第一の目的ではありますが、地場産業の発展にも貢献したい。燕三条エリアのものづくりの良さをユーザーに知ってもらいたい。という思いも強く持っています」(田瀬さん)
こちらは30年近くユニフレームとの取り組みを続ける、三条市にある協力工場の様子。この日はユニフレームのファイアグリルや焚き火テーブルなどの生産を進めていました。
「最新の加工機械を取り入れながら高効率化も図っています。ファイアグリルの炉部分も以前は四隅を一カ所ずつ加工していましたが、現在は複数の金型を用意してプレス加工に変更。設備投資を怠ることなく、高品質なものをよりスムーズに生産できる体制を整えています。そのためには、ユニフレームの自社工場で使用したリースの加工機械を、買取り後に協力工場にお譲りすることも少なくありません」(田瀬さん)
ファイアグリルのスタンド組み立て工程の一コマ。熟練の職人が一つひとつ確かめるのも品質を保つために欠かせない作業です。たしかなものをスムーズに多く生産できる。これのおかげで、ユニフレームでは他社・他ブランドでは難しい素材を仕入れて製品にすることもできているそうです。
なすべきことは「たしかな工業製品を届ける」こと
「ユニフレームが手がけているいるのは、工芸品ではなく工業製品です」と田瀬さん。
イメージや流行も大切ではあるものの、高い実用性と品質を維持しつつリーズナブルに供給することが、ユニフレームに課せられたミッション。利用者に迷惑をかけないためのものが工業製品である。という考えのもと物作りに向き合っているのです。
もちろん、ユーザーファーストの思想はファイアグリルにも反映されています。
例えば炉に使うステンレス板の厚さ。耐久性の確保だけを重視する場合は板を厚くするのが常套手段でもありますが、ユニフレームが出した答えは薄めの0.8mm厚。その代わりに四隅を溶接などで接合せず隙間を設け、熱による変形を軽減する工夫が施されています。
これは重量がかさむことと、材料費(製品価格)が高額になることによるユーザーのストレスを軽減するための仕様。きれいにバリ取りされた縁や、現行品でさらに大きく落とされることになった角などからも、安全で長く使える工業製品に仕上げられていることが分かります。
多彩なオプションで「もっと楽しい」を叶える
ケトルなどがつるせるFGポットハンガーや、ヘビーロストル、焼き網、鉄板などの専用のオプション品が充実しているのも、ファイアグリルならではの強みです。用途に合わせて拡張できるので、ファイヤグリルを長く愛用することに繋げられるのです。
焚き火テーブルや炭おこしに活躍するチャコスタ、斧、炭スコップなどもラインナップしているので、ファイアグリルを中心としたキャンプの時間が充実させやすいのも魅力です。
こちらは、ファイアグリルでの調理におすすめのオプション品「エンボス鉄板」。表面に凹凸が設けられ食材がこびりつきにくく、傷付きも気にならない一品です。ワイルドな炒め物などにもぴったり。
こういうの欲しかった!な、新作オプションも
今後もオプション品は続々と仲間入りする予定です。写真は2023年春に発売予定の「ヘビーゴトク」。ヘビーロストルをベースに中央にスクエアな空間がリデザインされているので、薪や炭の出し入れがもっと簡単に!
「ソロ」と「ラージ」の復活はあるか?
ファイアグリルにはデザインや機能性はそのままに、サイズを縮小・拡大したモデルも展開されていましたが、2022年12月現在は惜しくも市場から姿を消してしまっています。
「ファイアグリルのレギュラーが予想以上の売れ行きで、安定供給させるために仕方なくソロとラージをカタログから削除しました。とはいえ、どちらも復活させて欲しいという要望を多くいただいているので、まずはソロを2023年春に再販スタートする予定です」(田瀬さん)
片手にのるほどコンパクトな「ファイアーグリル ソロ」が待望の復活!ソロキャンプにもうってつけですが、筆者はインテリアの一部として部屋に飾りたいとも感じました。一方、ファイアグリル ラージの再販は検討中とのことです。家族や友人など大人数での焚き火に適したビッグサイズなだけに、こちらもぜひ復活してほしいところです。
本物だから愛され続けるユニフレーム
ユニフレームからは、ファイアグリルの他にも人気製品が豊富に展開されていますが、これらは全てユニフレームによる直販がされていないのも特徴です。
「通信販売などのニーズもありますが、販売やブランディングに労力を割くらいなら、その分だけ物作りに力を注ぎたいと考えています」と田瀬さんは言います。
ファイアグリルにはブランドロゴが配されたことがないのもその証。余計な手間やコストをかけるより、それだけリーズナブルに提供したいという思いが表れている部分でもあるのです。
「カトラリーなど小物類のセールスも好調です。そのおかげもあって、新しいモノ作りに挑戦ができる環境にあるのもうれしいところ。はじめのうちは鳴かず飛ばずでも、辛抱強く作り続けられる体力と、必要なものを大量に供給できる体制があるのも弊社ならではの強みです。その中で、試行錯誤した製品よりもひょんなことから出来上がったギアの方が人気になったりするのも、物作りの楽しさを感じる瞬間でもあります」(田瀬さん)
「長く使っているギアがユニフレームだったと後から気が付いた。そんな声を聞くこともありますが、これは本当にうれしいことですよね」と、自然に手にして長く使えるギアがユニフレームの製品だった。そんな本物たる所以を物語るエピソードも伺えました。
撮影/渡辺昌彦