【山と食欲と私×hinata】炙ればなんでもご馳走に!その前に知っておきたいガス機器の使い方
大人気アウトドア漫画「山と食欲と私」の主人公、日々野鮎美さん(27)が「ちまたで話題になっている映える女子ソロキャンプも体験してみよう」と向かったのは、キャンプ場。「いつもの山の上とは違う豪華なアウトドア料理ができる」と期待が高まります。そこで出会ったキャンプコーディーネーターのこいしゆうかさんに、鮎美さんも知らなかったガス機器の安全な使い方を教えてもらいました!
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キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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春の陽気と食欲が向かわせたのは山でなく、キャンプ場!
日に日に気温も高まり、アウトドア日和が続きます。単独登山女子の日々野鮎美さんは、最近話題の女子ソロキャンプに挑戦してみることに。到着したのは、山と川に囲まれた神奈川県相模原市の人気キャンプ場「青野原オートキャンプ場」。
鮎美:はあ、緑に癒やされる〜。山もいいけど、川沿いのキャンプ場も癒やされるなあ。テントはどこに張ろうかな〜。
「ゴォォォぉぉぉぉぉぉ!」
「!?」
キャンプ場の目の前を流れる渓流の写真を撮っていると、突然背後からの音に驚く鮎美さん。
こいし:こんにちは!
鮎美:こ、こんにちは……。
こいし:どうかされましたか?
鮎美:い、いえ!(お、おいしそう…)あの、それは何を作っているんですか?
こいし:これはですね〜、カレーを作っているんですよ!
鮎美:スキレットでカレーを!?
こいし:はい、そうです!なぜなら、仕上げにチーズをのせて、トーチバーナーで炙る!家では作りにくい焼きチーズカレーをしたいからです!!
鮎美:(スキレットのカレーを凝視して)ゴクり……。お、おいしそう~!!
こいし:でしょ!一口いかがですか?
鮎美:ありがとうございます!でも大丈夫。実は私も今日はカレーなんです。炙らないけど……。
こいし:チーズならまだありますよ!どうぞ!
鮎美:……ありがとうございます。やってみたいけど、トーチバーナーには少し怖い思い出が……。
こいし:たしかに、ガス機器を使うとき、慎重になるのはとっても大事ですよね。そうだ!せっかくのご縁。私と一緒にガスツールの安全な使用方法をあらためて勉強しませんか?
鮎美さんも初めて知った!?ガス機器の安全な使用方法
こいし:ガス機器って、買ったばかりで使い始めの頃はよく調べたり勉強したりするけど、使い方に慣れてしまうと、たくさんある道具のひとつになっちゃいますよね。
鮎美:そうですね〜、私にとってガスストーブ(こんろ、※1)は山を始めたときに思い切って買った道具のひとつなので、ずっと愛用しています。
こいし:ガスストーブ(こんろ)は山ご飯の必需品ですもんね!ところでメンテナンスとかやっていますか……?
鮎美:えっ、メンテナンス……。そういえばしてない……。というか、どこをメンテするんでしたっけ!?
※1 正式名は「カートリッジガスこんろ」。鍋などを調理カートリッジ式のガス缶を取り付けて使用するガス機器
接合部のO(オー)リングの劣化に注意
こいし:たぶん買ったときにショップのスタッフの方に教えてもらったり、登山の雑誌などでも注意喚起の記事などで見かけたことがあると思うんですけど、ここ!!Oリングです。聞き覚えありませんか?トーチバーナー(※2)にもありますね。
※2 カートリッジ式のガス缶を取り付け、炙り料理や炭の着火などに使用するガス機器
鮎美:あー!そういえば……、すっかり忘れていました、Oリング!缶とガスストーブ(こんろ)の間に隙間をなくすためのゴム製のパーツですよね。
こいし:そうです。ゴムは経年劣化で硬くなりますよね。それによってガス漏れが起きることがあるんです。
鮎美:そうだった!え、ちょっと私のガスストーブ(こんろ)大丈夫かな!?ちなみに、どのくらいで劣化するものなんですか?
こいしさん:使い方や保管している環境などにもよりますが、いつも使う前に「硬くなってないかな?」「ひび割れてないかな?」とチェックしてみましょう。いつもと違うなと思ったらメーカーさんに問い合わせるといいですよ。
鮎美:は〜い、そうします!
PS LPGマークがあるガスストーブ(こんろ)を使おう
鮎美:あ、あの、もしかしてほかにも何かあったりしますか?
こいし:よくぞ聞いてくれました。はい、次はこれです!ガスストーブ(こんろ)にこの札みたいのがついているもの、何かなって思ったことないですか?
鮎美:あ!ついていますよね。はい、注意書きがあるなと。そこに名前を書く人もいますよね。その札が何か……?
こいし:札や、本体に記されているこのマークがめっちゃ大事なんですよ。このマークはPSLPGマークといって、法律で決められた試験を合格したマークなんです。日本ではこのマークが無いとガスストーブ(こんろ)は販売できないんですが、最近はPSLPGマークが付いていない製品も出回っているようです。
鮎美:マークを目にしたことはありますが、気にしたことがなかったかも。むしろ、マークがついていないガスストーブ(こんろ)があるんですね。
こいし:そうですね、買おうとしたガスストーブ(こんろ)に検査を受けた印が無いと心配になりますよね。
鮎美:知りませんでした!キャンプ用のガスストーブ(こんろ)が欲しいなと思っていましたが、きちんとマークをチェックしてから購入することにします〜。
(注)トーチバーナーは2021年4月現在、PSLPGマーク表示対象ではありません。
一酸化炭素中毒に注意しよう!
こいし:あと、ガス機器は屋外専用です。屋内・車内・テントで使用すると、一酸化炭素中毒死や酸欠で、窒息死する恐れがあります。火災の危険性もあります。
鮎美:たしかに登山でも、予報が大きく外れて天候が荒れてしまったときの山でのテント泊では、テントでの使用に誘惑がありますね。前室がないテントだと、ついついテント内で使用してしまう人もいるかもしれません。
こいし:屋外なので、つい密室ではない気がしてしまいますが、テントでの使用はNGですね。気をつけましょう〜。
安全にトーチバーナーを使うには?
こいし:以上、ガスストーブ(こんろ)の基本的な注意点はお伝えしました。
では、キャンプだからこそ使いたいトーチバーナーの注意点です!炙るときは燃えない素材のテーブルで行うとか、ガス缶との取り付けがしっかりしていない、などはもちろんのことですが、意外と知られていないことがあるんです。
それは炙るときの缶の角度です。
鮎美:角度!?
こいし:はい。トーチバーナーには製品によって、45度以上の傾け使用禁止のものがあるんです。それを大きく傾けたり、逆さにして使用してしまうと、液体のままのガスがトーチに入り、大きく炎が出て危険です。ゴジラの炎のような火が出るので、ゴジラ火なんて呼ばれています。ちょっとおおげさですが、例えばこんな角度はNGです。
鮎美:怖がりすぎて変な角度にしちゃうかも!?気をつけないとですね!
▲正しいガス缶の取り付け方
こいし:トーチバーナーとガス缶を取り付けるときも、逆さにしないで取付けてくださいね。
ガスメーカーの安全への取り組み
水中でガス漏れを確認
こいし:実は私、キャンプコーディネーターとして、ガスメーカーさんとよくお話させていただくのですが、どのメーカーさんも、ガス機器を安全に使ってもらえるように、さまざまな取り組みをされてることを耳にします。
▲水没気密検査の様子
※検査方法はメーカーによって異なります
このガスストーブ(こんろ)の製造工場にお邪魔したことがあるんですが、製造工場では、製造過程でいくつもの確認テストを行っていました。
例えばガス漏れの確認。私がお邪魔した時には製品を水中で空気圧をかけて、どこからもガスが漏れないか試験を行っていました。
鮎美:へぇ、そんなことをしているんですね。
PSLPGマークは信用の証
▲燃焼試験の様子
※検査方法はメーカーによって異なります
こいし:それから燃焼試験。異常燃焼や、ガス漏れがないかなどを見ているそうです。
これらはすべての製品を確認されていました。その他にも繰り返しの使用に耐えられるための耐久試験、落下試験や一酸化炭素の排出量の試験など、数々の試験があることを教えて頂きました。
安全のための試験を繰り返し、検査機関の検査を受けて、やっとPSLPGマークを付けて販売できるそうです。見学をして私もPSLPGマークの見方が変わりました!
またトーチバーナーはPSLPGマークの対象外ですが、同じようにガス漏れや燃焼試験を行っていました。
山やキャンプ場で楽しく安全に使ってもらえるように製造されていて安心しました。
鮎美:あのマークにそんな裏話があるとは……。
ガス機器を安全に使って、キャンプをもっと楽しもう!
こいし:おいしそうにできましたね!
鮎美:(そっかあ、こうやって使えば安全なんだ!)
こいし:ガス機器は、アウトドアの楽しみを豊かにしてくれます。ただ、安全にはくれぐれも気を付けて!
鮎美:はい!