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フェニックスライズのグリル

「火」に特化した新ブランド・フェニックスライズ!高い技術に裏打ちされた焚き火台の開発秘話【取材】

アウトドアフィールドに恵まれた青森で、アウトドアの「火」に特化した新ブランド「フェニックスライズ」が産声をあげました。モノづくりに欠かせない金型を製作する企業が設立したきっかけが、東日本大震災。「避難のときに囲んだ炎と人のぬくもりを、より多く人に気づいてもらえる商品を作りたい!」。熱い思いで作られたアイテムからは、どのブランドにも負けない情熱とモノづくりへのプライドが感じられます。

フェニックスライズ誕生のきっかけ

青森発のアウトドアブランド

新ブランド「フェニックスライズ」は、青森県八戸市の西に位置する五戸町で、精密プレス金型と高精度プレス部品の製造を手掛ける「サンライズエンジニアリング」が設立。先代から引き継いだ赤坂太樹社長は、立ち上げた経緯について、次のように振り返ります。 「これまでひたすらにやってきたのは、発注された商品をいただいた図面通りに、いかに忠実に作りあげるかという仕事。しかし、使い手である消費者に直接買ってもらえ、一般の人でも知っている商品を作った方が、社会への貢献と社員のやりがいにもつながるのではないかと感じていました」。

転機は「乗り気でなかった」キャンプ

転機は、新規の事業を模索し続けていた2019年春。友人から誘われたのが、キャンプでした。「正直、キャンプに行こうと思ったこともなく、あまり乗り気ではないけれど…」という気持ちで参加したところ、見事にドはまり。おいしい食事を囲んだ仲間や家族との会話、不慣れな調理と薪割りに、火の癒し…。数えればきりがないくらいの魅力に気づくことになります。 そこからはたくさんのギアを買い込み、週末はキャンプ三昧の生活に。キャンプ歴としては長くありませんが、キャンプに行った回数は数えきれないほどになりました。

震災時に囲んだストーブの火がきっかけ

ギアをそろえれば、そろえるほどに感じたのは、「これなら、(精密の金型を手掛ける)自社の技術でも十分に作れそう」という直感。そしてもう一つ、焚き火を囲みながら思い出した光景がありました。 それが、2011年の東日本大震災のこと。赤坂社長自身も実際に海辺に住む親戚を海から離れている自宅へ避難させました。自宅の倉庫には普段は使っていなかっただるまストーブがほこりを被った状態で置かれていました。 運よく燃料も手にいれ、さっそくストーブに点火。みんなで暖をとりながらの一夜でした。食事も十分なものはありませんでしたが、なんとかご飯と、卵だけの味噌汁をストーブの火で調理。ストーブを囲みながらみんなで食べたそうです。「ただそれだけの食事がたまらなくありがたく、今でも忘れられないほどおいしかったんです」。 そして、だんだんと夜が明けて空が明るくなり、みんなの顔が見えるようになると、驚くことにそれぞれの顔はすすだらけ。だるまストーブについていたすすが飛び、顔中についていました。「何もかもを失って、食事もままならないのにみんなで心の底から笑うことができました。みんなで囲む炎があって、笑い合える仲間がいることの尊さを感じた経験でした」。赤坂さんはしみじみと語ってくれました。 その後、キャンプで食事をしたときに、震災時の家族の絆や会話と、ともに食事をする喜びが共通していると感じました。 キャンプを通じて、この出来事をふと思い出した赤坂社長。「そうだ!これこそが社会に貢献することだ!」と、アウトドアギアの開発が始まりました。

秋冬キャンプで注目を集めるアイテム

フェニックスストーブ

10月に発売し、今年の秋冬キャンプで注目を集めている焚き火台が「フェニックスストーブ」。開発の当初は、四角いフレームで、赤坂社長が図面を書いて社内で制作しました。「他社は丸形が多く、マネしたくなかったので四角で始めました。ただ、出る炎が『ぶつかる』ことで少し汚くなりました。試作品を何度か作っても結局うまくいかず、最終的に焚き火台では一般的な丸い形にしました。丸い筒から出る炎はやはり綺麗に見えます」。 しかし、初期モデルの形状が決まったものの、実際に火をつけてみると、焚き火台の高さの3倍ぐらいの炎が上がってしまうことが判明。調理もできる焚き火台づくりを目指し、空気の流入量の調整のための試行錯誤が始まります。改良品の図面をひいては社内で組み立て、試作品が完成すると近くの山で試してみること約30回。キャンプ仲間にも意見を聞きながら、難産の末に完成させたのが、「フェニックスストーブ」です。
焚き火台の上部にのせる灯篭を追加することで、炎の中に勇壮なフェニックスが登場。組み立て式で折りたためる携帯性はもちろん、東日本大震災の被災経験から、アウトドアだけでなく、災害時の調理や暖房にも使えることを意識。火力調節機能があり、小枝やペレットを燃料として調理も手軽にできるようにしました。
【基本情報】 商品名:フェニックスストーブ(灯篭付) 使用サイズ:28.4㎝×直径20.6㎝(取手含まず) *灯篭設置時 42.4㎝ 収納サイズ:3.5×30.6×31.6㎝ 重さ:1.54㎏ 価格:33,000円(税込) 詳しくはこちら フェニックスライズ公式ホームページ

ジビエテッパンとジビエグリル

ストーブと並び、特徴的なのが「ジビエテッパン」。自社の金型技術を生かしてプレス加工で仕上げているので、鉄板の厚みが均一かつ角の部分もきれいに仕上がっているのが特徴です。さらに、さながらジンギスカン鍋のように底面が山なりになっているので、山になった中心部で焼けば油を避けられヘルシー。通常の鉄板以上の楽しみ方ができます。この微妙な山なりの角度も何度も調整しながらこの形になったというこだわりの逸品です。 さらに、「ジビエテッパン」が完成したお祝いに社員でバーベキューをしようと、ジビエテッパンに合うように作られた万能グリルが「ジビエグリル」。商品化の予定はありませんでしたが、あまりにも好評だったために、改良して商品化されました。 ジビエテッパンを乗せて楽しむのはもちろん、くしで焼く魚や焼き鳥も楽しめるように工夫されており、通常のバーベキューグリルとは一味違う工夫がされています。製造メーカーとしてこだわりたかったのは耐久性。軽くて安い商品は、数回火にかけただけで変形して使えなくなってしまったり、上手く収納できなくなることもしばしば。そうならないために、鉄の厚みや加工を工夫しています。
【基本情報】 商品名:ジビエグリル(フルセット) 使用サイズ:25.8×20×37.3cm 収納サイズ:2.2×20×27.3cm 重さ:約3.7kg セット内容:正面補強板・右側板・左側板・背版・五徳(5本1組)・ロストル・灰受け・取手(右)・取手(左)・収納袋、正面版(焚き火用パネル)・ステンレス製特製焼き網・汁受けトレイ 価格:27,000円(税込) 詳しくはこちらフェニックスライズ公式ホームページ
【基本情報】 商品名:ジビエテッパン サイズ: [鉄板部]2.7cm×1.84cm×2.59cm [ヘラ]0.2cm×0.31cm×1.55cm [取手]0.22cm×0.4cm×2.25cm 重さ:約1.34kg 価格:16,500円(税込) 詳しくはこちら:フェニックスライズ公式ホームページ

焚き火テッパン

さらに、赤坂社長のイチオシは鉄の厚みを3種類そろえた「焚き火テッパン」。厚みは3.2mm、4.5mm、6.0mmの3種類を用意していますが、イチオシは6mm。薄いものに比べて、当然のことながら焼くのに時間はかかるのですが、焚き火を楽しみながら、じわじわと焼くお肉は格別においしいそうです。 「ファミリーキャンプでじゃんじゃん焼くときは厚みの薄いものを。ソロキャンプでじっくり楽しみたいときは厚いものをと、用途に応じて厚みを選んでいただきたいです」(赤坂社長)。 厚みがあるとなかなか温度が下がらないため、洗う時に水をかければ、水の蒸発と一緒に汚れも落ちるので、汚れがこびりつきにくく、メンテナンス性も高いのが特徴。さらに、アルミ製飯ごうのメスティンにぴったり収納できるサイズで、メスティンに入れて持ち運べます。メスティンと焚き火テッパンの2つで焼いたり煮たりを楽しめるのは、メスティンユーザーならではの発想です。
【基本情報】 商品名:焚き火テッパン サイズ:1.2×8.8×15.7㎝(厚さ:6mm) 重量:610g 価格:4,400円(税込) 詳しくはこちら:フェニックスライズ公式ホームページ

今後の展開は?

今も精力的に開発を続け、「火にまつわる本物志向のアウトドアギア」を発売予定のフェニックスライズ。すでに、本格的な薪ストーブは開発が完了し、発売に向けて準備中。間もなく完成予定なのが、70㎝角の大きな焚き火台。高さも調整でき、立食でも楽しめる仕様。パーティーやグループのキャンプにうってつけのアイテムになりそうで、発売前から注目が集まっています。今後も高い技術と、焚き火への情熱が、斬新なアイテムを作り続けます。

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