【キャンプ×日本酒】アウトドアで話題のボトル缶のおいしい飲み方!火付け役のメーカーに聞く!
持ち運びの手軽さから、キャンプなどのアウトドアで存在感を増している日本酒のボトル缶。特に大手日本酒メーカー日本盛がアウトドアも意識した「生原酒ボトル缶」は販売から5年で約800万本を販売するヒット商品に成長。多くのキャンプ愛好家に親しまれています。同社に取材し、「アウトドア×日本酒」の構想から、生原酒ボトル缶のおいしさの秘密、外でも気軽にできるおすすめの飲み方までを聞きました。
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キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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もくじ
日本盛にキャンプでオススメの飲み方を取材!
紹介してもらったのは、商品開発のお三方
▲(左から)商品開発の青木さん、林さん、広瀬さん
アウトドアと日本酒について、取材に応じてくれたのは、兵庫県西宮市の本社に務める商品開発の青木さん、林さん、広瀬さんのお三方です。
最初はアウトドアがコンセプトではなかった!?
ボトル缶は「生原酒を味わってほしいから」
━━━ キャンプや登山で日本盛のボトル缶を愛用する人をよく見るようになりましたが、なぜアウトドア向けに商品を作ることになったのでしょうか。
青木さん:実は、「日本盛 生原酒ボトル缶」はアウトドア用の商品として開発が始まったわけではありません。もともと蔵元でしか飲めなかったおいしい「生原酒」を手軽に楽しんでもらうため、容器に遮光性と密閉性に優れたボトル缶を採用し、2015年に発売しました。当時も他社のプルトップ型の缶製品はありましたが、生原酒で再びキャップを締められる200mlボトル缶は清酒業界では初めての試みでした。
▲ボトル缶について語る青木さん
━━━ すっかりアウトドアで飲んでもらうため、持ち運びしやすいボトルを取り入れたのだと思っていました。
青木さん:高品質の生原酒を味わってもらうのはもちろん、日本酒メーカーとして「生」のおいしさを広め、日本酒市場の活性化を図りたいという狙いもあります。ビールではすでに、家庭でも手軽に「生ビール」を味わえるようになりましたよね。日本酒でも「生」を一般化し、もっとおいしいお酒を飲んでいただき、本来の日本酒の味わいを感じてもらうことを一番に考えていました。そこで選択したのがボトル缶だったわけです。
結果的に、ボトル缶がアウトドアで大人気に
━━━ 味を求めてボトル缶に行き着いた結果、アウトドアでも大人気の商品になったわけですね!
青木さん:開けたら飲みきらないといけないカップ酒と違って、飲み残してもペットボトルのようにキャップが出来るようになりました。家飲みだけでなく、電車での旅行や、お花見、バーベキューを想定していたのですが、ボトル缶の発売後にちょうどキャンプ人気が始まっており、ボトル缶の長所が注目され、「アウトドアに便利な日本酒」として認知していただくようになりました。
モンベルとのコラボでアウトドアに普及
━━━ モンベルとコラボしたボトル缶が、アウトドア愛好家に受けていますね。
青木さん:生原酒ボトル缶は2013年4月に検討を開始し、2015年2月に発売した商品です。2019年から行っているアウトドア総合ブランドの「モンベル」とのコラボで徐々に定着している実感があります。特に、ECサイトでモンベルとコラボし、おちょことボトル缶を保温・保冷するクージー(専用ホルダー)とボトル缶のセットを販売したところ、わずか10日で完売。モンベル主催のイベント「フレンドフェア」に出店した際も、モンベルファンの方から「このお酒知ってる~」「いつも山に持っていくよ」「これ便利なのよ」などと声をかけていただき、コアなファンに支えられていることを実感しています。
▲モンベルとのタイアップデザインボトル
━━━ 日本酒というと一升瓶と中高年のイメージがまだまだありますが、これなら若い人や女性のアウトドア愛好家も手にとりやすそうですね。
青木さん:見た目や手軽さにおいては30代以上の男女もターゲットとして視野に入れています。現にファンも増えていますよ。日本酒の味わいにこだわりがある方はもちろん、少量でも満足のいくおいしいお酒を味わいたい人におすすめです。
生原酒ボトル缶のこだわり
「生」が常温で持ち運べる
▲非加熱製法について語る林さん
━━━ 青木さんにボトル缶や味のこだわりを教えてもらいましたが、林さんはいかがですか?
林さん:女性の手に収まりがいいサイズ感と軽さはもちろん、広口のボトルも香りが楽しめて飲みやすいようになっています。個人的には飲み口が垂れにくいのでシェアしやすく、キャップを開けるまで外にも触れていないので衛生的なところも嬉しいポイントです。
スーパーなどでよく見かける日本酒は加熱殺菌されている商品がほとんどですが、「生原酒」は加熱をしない非加熱製法で、読んで字のごとく、まさに「生」の状態。生の状態はとてもデリケートですが、常温で持ち運びできるのは、けっこう画期的なことですよ!
━━━ 生原酒が気軽に飲めるのはうれしいですね。非加熱製法という言葉が出てきましたが、詳しく教えてください。
青木さん:一般的な日本酒は、米、米こうじ、酒母などの原料を発酵させた醪(もろみ)を搾ってから、加熱殺菌(火入れ)を2回行います。火入れするすることで、味わいが変わり、香りが飛んでしまうことがあります。一方、生酒は非加熱で、搾ったそのままの状態を詰めること。酒蔵見学に来ていただき、タンクから直接汲んだお酒を飲んでいただけるイメージです。実際には極めて目の細かいフィルターを通し、酒中の酵母や雑菌を除去しています。
少し高いアルコール度数がおいしさに
━━━ ボトル缶はアルコール度数が一般的なスーパーで販売されている日本酒より少し高いのですが、これもまたおいしさに関係があるのでしょうか?
林さん:日本酒はアルコール度数が16~20度くらいある「原酒」に水を加えて15度程度に調整しているのですが、この「生原酒」は水を加えていません。加熱もせず水も加えないことで、生まれたてのフレッシュな“お酒本来の”味わいが楽しめます。初めて飲んだ時の衝撃といったらもう…!
━━━ もう??
林さん:私にとっては「これが日本酒?」と思うほどの感動体験だったのですが、この生原酒ならではの香りと味わいをうまくお伝えできる言葉が見つからないので、「百聞は一見(一飲?)に如かず」!ぜひ一度味わってみてください!
大吟醸、本醸造…、違いを解説
ボトル缶4種類の味の違いは?
━━━ 「日本盛 生原酒ボトル缶」では、本醸造、純米吟醸、大吟醸、純米大吟醸、とありますが、初心者のために違いを教えてください。
林さん:まず、日本酒は大きく「特定名称酒」と「普通酒」に分けられます。「特定名称酒」は大吟醸や純米、本醸造など8種類。そのどれにも該当しないものが「普通酒」です。分類には色々な条件があるのですが、大きくは次の3点があげられます。
3つの違いとは?
①原材料の違い
純米や特別純米、純米吟醸、純米大吟醸の「純米」がついているものは米と米こうじの2つ、「純米」の文字がない大吟醸や吟醸、本醸造、特別本醸造は米、米こうじ、醸造アルコールの3つで造られています。
②造りの違い
「吟醸」とついている純米大吟醸、純米吟醸、大吟醸、吟醸は、「吟醸造り」という製法で造られています。「吟醸酵母」という特別な酵母を使い低温でゆっくり発酵させるなど手間暇かけて造ることで、「吟醸香(ぎんじょうか)」というフルーティな香りが楽しめるお酒ができあがります。
③精米歩合の違い
原材料のお米は、精米することで外側からどんどん削られ、その中心部だけが使用されます。もとの玄米に対して何%を使っているかが「精米歩合」で、精米歩合60%の場合は「40%削って中心部60%を使っている」ということになります。「吟醸」とつく純米大吟醸と純米吟醸、大吟醸、吟醸は60%以下、その中でも「大」がつく純米大吟醸と大吟醸は50%以下などと決められています。より削る割合を多くすることで、一般的には雑味がなく香り高い味わいになると言われています。
「生原酒ボトル缶」の精米歩合、原材料、味わいの一覧
【大吟醸】
精米歩合・・・50%(お米を50%削る)
原材料・・・・・米、米こうじ、醸造アルコール
味わい・・・・・・華やかな吟醸香が一番高く、味わいはスッキリ辛口
【本醸造】
精米歩合・・・70%(お米を30%削る)
原材料・・・・・米、米こうじ、醸造アルコール
味わい・・・・・生酒の為、香りも豊か。濃厚な味わいでアルコール度数も高いので、飲みごたえ抜群
【純米吟醸】
精米歩合・・・55%(お米を45%削る)
原材料・・・・・米、米こうじ
味わい・・・・・華やかな吟醸香と、濃醇な味わいのバランスが絶妙
【純米大吟醸】
精米歩合・・・50%(お米を50%削る)
原材料・・・・・米、米こうじ
味わい・・・・・日本酒の最高酒質。華やかな吟醸香は高く、さらに濃醇かつ芳醇な味わい。
おすすめの飲み方
ボトル缶×冷凍フルーツ
━━━ キャンプのどんなシーンで、どんな飲み方がおすすめですか?
広瀬さん:キャンプ場に着いたらまずは休憩。ちょっとだけ生原酒ボトル缶を飲んで、中身が減ったところに保冷剤代わりにクーラーボックスに入れておいた冷凍フルーツをそのまま缶に入れておきます。そして、その間にテントを張ったりご飯の準備をしたり…。準備が終わったら「ボトル缶×冷凍フルーツ」でひんやり乾杯!ちょうどいい具合にフルーツの香りがうつっておいしいのでオススメです。
日本盛流?みぞれ酒チャレンジ
━━━ 暑い夏には、やはり冷たいものも飲みたいですね。
広瀬さん:最近ですと「おうちキャンプ」を楽しむ方も多いと思います。おうちだからこそ楽しめる冷た~いみぞれ酒がオススメです。冷凍庫で2~3時間冷やした生原酒ボトル缶をグラスに注いでみぞれ酒にチャレンジしましょう!
━━━ そもそも、普通に冷やすときは何℃にして飲むのが適切なのでしょうか
林さん:一番のおすすめは5~10℃。大体冷蔵庫で冷やした温度です。生原酒はアルコール度数が高いので氷を入れてロックにするのもおすすめです。広口のボトルなので冷凍フルーツを直接入れてフレーバーをつけ、さらに炭酸水を注いだりもできます。あくまで“おすすめ”なので、燗をしても良いですし、飲むシーンや料理に合わせて自由に楽しみ方を見つけてほしいです。
夏の夜に熱燗??
▲熱燗も好きな広瀬さん
━━━ ボトル缶なので熱燗にしやすいのは個人的にもうれしいですね。
広瀬さん:熱燗といえば冬キャンプのイメージですが、標高が高い地域の夏の夜も意外と冷えるので実は熱燗がおすすめです。ボトル缶はキャップをあけてそのまま湯煎ができるので、小鍋にお湯をはって温めたり、野燗炉(のかんろ)でお酒を温めてゆっくり語りながら、横でちょっとしたおつまみを焼いたり。あとは、フグを入れてひれ酒など、おつまみをボトル缶に入れてしまうのもオススメです。
飲むときのおすすめのアウトドアなグラス、おちょこは?
飲むときの容器にもこだわりを
━━━ 広瀬さんはどんな容器で飲むのが好きなのでしょうか?
広瀬さん:一番のオススメは、日本盛×モンベルおちょこつきクージーです。自社の宣伝になりますが、保冷保温効果があるので、ボトル缶をそのまま飲むときにおすすめです。そのほかにも次のような容器がおすすめです!
ホーロー製ぐいのみ
入れたものの匂いが付きにくいホーロー製のぐいのみは、蓄熱性が高く、保温、保冷効果もあります。
割れないおちょこ
ステンレス製、スチール製、チタン製など、さまざまな製品が出ています。
KINTOのグラス
持ち手部分とグラス部分が取り外し可能なので、コンパクトに持ち運べます。そしてキャンプあるあるですが自分のグラスがわからなくならないように、色分けできて誰のグラスなのか人目見て分かる上、見た目が可愛いのでオススメです。
シェラカップ
沸かす・焼く・煮るができる調理器具でみなさん1つはお持ちだと思います。料理だけでなく、もちろん酒器としても使えます。シェラカップに日本酒を入れて、徳利代わりにみんなでシェアしたり、そのまま温めて熱燗も楽しめます。
料理にも使える万能性
━━━ 日本酒ならキャンプ料理にも使えるのはありがたいですね。
林さん:料理酒として、酒蒸しやお鍋、ホイル焼き、お肉やお魚の下味、焼きそばをほぐすのに使うのも便利です。もちろん生原酒を飲みながら(笑)。余ってちょっとパサついたパンがあれば、日本酒を染み込ませてお好みでお砂糖をかければ、サヴァラン風の即席スイーツにもなりますよ!
━━━ 料理に使える日本酒の万能性はもちろん、キャンプではボトル缶もいろいろ重宝しそうですね。
林さん:飲み終わった缶は簡易の計量カップ代わりにもできますし、調味料を入れてシェイクすればドレッシングボトルにも。暑いときには氷や冷た~い水を入れてクールダウン用としても使える万能選手です。飲むのも、飲む以外もアレンジ無限大のボトル缶、ぜひ一度アウトドアのおともに連れて行ってください!
お酒のこだわり
━━━ いろいろお酒のことを聞いてきましたが、最後に、おいしい日本酒、良い日本酒の条件とは何でしょうか?
青木さん:おいしいの定義は人それぞれだと思います。口に合うものがおいしい日本酒。造り手のこだわり・うんちくは二の次。日本酒は酸化しやすく、開封すればさらに劣化するため、メーカーとしては新鮮であることが条件だと考えています。
林さん:おいしい空気を吸いながら、おいしいお料理を食べながら、仲間とわいわい、そんなおいしい環境があればどんな日本酒もおいしいのですが、強いて言うならそのお酒が造られた場所を知ることでしょうか。
日本酒を造る蔵は全国各地に1,300以上。同じ原料、同じ造りをしていても、気候や風土、造り手によって味わいが変わる日本酒は、「地酒」という言葉もあるようにその土地に根付いた味わいを楽しめます。日本酒が生まれた土地に合わせて料理を選んでみたり、その土地の話に花が咲いたり、さらに日本酒が楽しくなると思います!
日本盛が消毒液も発売!
新型コロナウイルスの影響で全国的に消毒液の品不足が続く中で、酒造メーカーの日本盛も、手指の消毒液「薬用 手指消毒用ハンドジェル」を発売。ジェルタイプで手指に塗りやすくなっているほか、肌に優しい天然ユーカリ油を配合。容量75mlの持ち運びしやすい携帯サイズで、出先でも重宝します。
【基本情報】
商品名:薬用 手指消毒用ハンドジェル(指定医薬部外品)
容量:75ml
エタノール:50〜59%
価格:800円(税別)
※通販のみ
取材を終えて
アルミ缶の軽量性と持ち運びのしやすさで、 アウトドアにも便利なボトル缶。飲み口が広いので、氷や冷凍フルーツを入れた楽しみ方もできるのは次のキャンプでも楽しみたいもの。夏のゆったりしたいときのおともに、よさそうです。