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キャンパーがたどり着く鍛造ペグ!「村の鍛冶屋」に聞いた人気の理由【アウトドア王国・新潟を探るvol.3】

新潟県三条市を拠点にするECサイト「村の鍛冶屋」。もともとは包丁の販売から始まった同サイトは、楕円形が特長の鍛造ペグ「エリッゼステーク」によって多くのキャンパーに知られるように。実際にペグを製造する工場で「鍛冶屋さん」に会うと、ペグの名品とされる多くの理由が見えてきました。

「エリステ」の強さ生む職人の手作業

流れ出てくる真っ赤なペグ

「ダン、ダン」。大きな打撃音が響き続ける新潟県三条市内の鉄工所。作られているのは、同市を拠点にするECサイト「村の鍛冶屋」が製造を委託し、鍛造ペグの代名詞的な存在となっている「エリッゼステーク」です。 長さ約20cm、直径1.3cmの鉄棒を約1100度で真っ赤になるまで熱した後、1.2トンのハンマーを規則正しく2回連続で打ちつけ、ペグ2本を成形。その後にもう一人がペグの周囲に余分に出た金型を外していきます。2人で同じリズムでペグを流すため、息が合わなければできない職人技。最後のコンベアの出口からは、まだ赤く輝いた長さ28cmのペグが次々と流れ出てきました。

自動化できない鍛造作業

「この鍛造ペグの製造は全自動化できないのです」 製造を担う丸山鍛工所の丸山敏昭社長によると、鉄は圧力を加えて密度を高めること(鍛造)でより強度がでるので、それだけ打ちつける衝撃も強くなります。自動化しても精密機械ではこの衝撃に耐えられないとみられ、職人に頼らなければできない工程となっています。

それまでなかった楕円のペグ

村の鍛冶屋を運営する「山谷産業」の山谷武範社長(写真)によると、ペグの名品「エリッゼステーク」が販売開始されたのは2013年。山谷社長の弟で、キャンプ好きだった専務の発案から生まれました。当時は地中でくるくる回ってしまう丸型のペグが主流。エリッゼステークは楕円にすることでガッチリと地面に固定でき、逆に90度ずらすと空間が生まれて抜きやすくなる特長があります。 「ただ、楕円にすると圧力が平均的にかかりづらいので、製造を断られた鉄工所もありました。それでも丸山鍛工所さんのように『挑戦しよう』とやってくれる工場があるのは、ここがものづくりの街だからです」。山谷社長は燕三条だからこそ、エリッゼステークが実現できたと感じています。
赤や青、黄色など全8色を展開。デザイン性だけでなく、サイトでの置き忘れを防げる実用性も人気の理由。大手メーカーの鍛造ペグと比較しても価格を抑え、販売と同時にインターネットの口コミを中心に話題に。「Amazon、楽天、yahooの通販サイトではペグ分野で1位を獲得し、現在では年間50万本を販売する製品に成長しました」(山谷さん)。

ネット通販は包丁からスタート

「村の鍛冶屋」はもともと、燕三条の包丁の販売からスタートしました。運営する山谷産業は約40年前に創業した漁具の卸問屋。20年前に山谷社長の母親が病気になり、先代の父親も出張が難しくなり、「インターネット通販をやらざるを得なかったのが本当のところです」(山谷社長)。 インターネットで漁具の販売は難しかったため、燕三条の商品を売ることに。当時は金物のインターネット販売が主流ではなく、取り扱いは最初に協力してくれた鍛冶屋1店の包丁だけ。ただ次第に売れ行きが伸び、ペグを販売する前にネット通販の土台を築きました。

「燕三条に来て欲しかった」

2年前には本社内に初めての直営店「村の鍛冶屋SHOP」をオープン。2013年から毎年、オープンファクトリーのイベントに参加し、職人が作っているものを見て、納得した上で買ってもらう仕組みに共感しての決断でした。 「若い人が減っている燕三条に多くの人がきてもらいたかった。それを考えたときに、村の鍛冶屋としてできるのは体験を売りにした店を出すことだった」。山谷社長は、ネット事業が好調でも、リアル店舗を出した理由についてこう強調します。
店ではただ自社のアイテムを販売するだけでなく、各社のペグやハンマーを用意。実際に使用して比較しながら、村の鍛冶屋の良さを納得して買えるようにしているのが特徴です。山谷社長の狙い通り、今では来店客の8割が県外。アウトドアブランドが多く拠点を構える燕三条で、キャンパーにとっての「聖地巡礼」スポットの一つになっています。 「これからも燕三条の商品の良さをもっと広め、地域に貢献したいです」と山谷社長。村の鍛冶屋は新潟のモノづくりを背負って、ペグを販売し続けていました。

取材を終えて

鍛造から酸化被膜の加工、塗装など、複数の工程を得て、消費者の手元に届く「エリッゼステーク」。開発や製造の苦労を聞けば、「8本で3000円程度で売られているのは安すぎるのでは…」と思わずにはいられませんでした。「売り手によし」「買い手によし」「世間によし」の三方よしの理念を体現したかのような村の鍛冶屋。今後もキャンパーの期待に応えてくれると確信できました。

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