【EVERNEW】“世界初”のチタンクッカーさえ通過点!限界突破を続ける100年企業
世界初のチタンクッカーや燕三条の職人たちと生み出す超軽量ギアなど、革新的なアイテムを次々と生み出している「EVERNEW」。2024年には創業100年を迎え、今や世界に名を馳せる日本のアウトドアブランドとして揺るぎない地位を築きました。そんなEVERNEWの“老舗なのにチャレンジング”なものづくりについて深堀りします。
1924年創業、日本の「山道具」の草分け的存在
「EVERNEW(エバニュー)」が産声を上げたのは1924(大正13)年のこと。
創業者の岩井新蔵氏は、当時勤務していた玩具の増田屋から暖簾分けをしてもらい、玩具メーカーで得た金属加工の知識を生かしてスポーツ用品の「増新商店」を立ち上げました。
「部活や運動会でお世話になった」という人も多いのでは?スーパーライン引もエバニュー製品!
さらに、昭和に入ると外国人がメインだった登山シーンに日本人も増えてきたため、彼らに向けて1933(昭和8)年に登山用品の販売も開始。日本の草分け的な山道具ブランドとなったのです。
このパイオニア精神は実は社名でもあり、社是にもなっています。“EVERNEW”に込められた思いは「ますます新しい」。1世紀という時間をたゆまず歩み続けながらも、常に新しい頂を目指して進み続けるエバニューについて、営業課長の太田一寿さんにお話を聞きました。
職人との切磋琢磨が生む、“世界初”のギアづくり
今でこそ当たり前になった「チタンクッカー」。でも、1995年にエバニューが世界初のチタンクッカーを発表するまでは、加工の難しさからつくり手たちからは敬遠されていたのです。
軽量なのに強靭で安全性が高く、素材の味を変えないチタン。これでクッカーがつくれたら、登山やキャンプの食のシーンがきっとがらりと変わる――。「常に新しいものを探していく」ことを社命としているエバニューにとって、これは価値のある挑戦でした。
プレスの力やスピード、オイルの配合や量を細かく変えながら、燕三条の職人たちが長年培った経験や知識を総動員して「世界初」にともに挑戦してくれました
しかし、アルミやステンレスよりも硬いチタンは、薄くしたうえでプレスしようとすると割れたりシワが寄ったりと、とにかく加工が難しい素材。ものづくりの町として知られる新潟県・燕三条の熟練の職人たちの手を借りても、最初のクッカーを完成させるまでに約2年もの年月がかかったといいます。
エバニューと燕三条の職人たちとの関係は40年以上にわたって続いているそう。長年築き上げてきた信頼関係と、お互いが持つプロとしての「いい意味での緊張感」が世界にないものを生み出す原動力になっています。
“このシーン特化”で機能を極める、UL発想の美学
エバニューのアイテムは、どれも見た目はシンプル。しかしその裏には、「どんなシーンで、どう使われるか」を突き詰めた明確な意図があります。
肉を挟むために生まれたバーベキュー用マイトング「NICKTSUCAM(ニクツカム)」。料理用には小さいけれど、いざ自分の肉を確保するときには誰よりも優秀!
たとえば太田さんが「山にひとつしかクッカーを持っていけないとしたら」と選ぶ「チタンカップ570FD」は、カップラーメンやアルファ米、スティックコーヒーなど、山で定番のメニューに必要なお湯が“これひとつで済む”絶妙な容量設計。
直火もOKで、カップとしても使える汎用性を備えながらも、あくまで“一人分”に特化した実用性で、多くの登山者に愛されています。
「欲しい機能を削ぎ落とし、必要なものだけを足す」──それがエバニュー流のデザイン哲学です。
軽さも快適さも譲らない!エバニューのおすすめアイテム3選
毎年約40~50アイテムを開発し、その中から展示会などで取引先の意見もヒアリングしながら「真の一軍」を世に送り出しているエバニュー。「このシーンで使うなら最高」という哲学を盛り込んだアイテムは、「そこにそんな本気出す!?」という遊び心と、他の追随を許さないクオリティが同居しています。
そんなエバニューのアイテムたちから、2025年6月現在の太田さんおすすめ3品を紹介します。
【ReMax Potlifter】本体重量9.9gで1kgを持ち上げられる脅威の鍋つかみ
最初に紹介するのは、ReMax composite(リマックスコンポジット)というアウトドア業界では初めての素材を使った「ReMax Potlifter(リマックスポットリフター)」。
アウトドアギアにも使用されることが多い一般的なカーボン素材(炭素繊維強化プラスチック)は、軽くて強度も高いのが特徴ですが、これまで、端材が出たとしても埋め立て処理するしかなかったのだそう。そんなカーボンを粉砕して樹脂と混ぜ込んだのがリマックスコンポジット。
アルミ並みの強度があり、このアイテムもわずか9.9gながら1Lのお湯(つまり1kg!)を持ち上げられるというのだから驚き。ハンドルレスのクッカーはスタッキングできる点が便利ですが、熱くなってなかなか手に取れないことも。そんなとき、このポットリフターの出番です。
3点ホールドだから傾けても安定感抜群!沸かしたお湯をカップに注ぐときやラーメンをシェアしたいときなどに大活躍
3点で挟んでしっかりホールドできるのでズレにくく、指3本で握れる71mmという絶妙な長さもエバニューならではのこだわり。「軽さと強さ、使いやすさをギリギリまで突き詰めた新定番です」と、太田さんも太鼓判です!
【Thermal pot sack/XG】クッカーケースとコジーの二刀流!
2品目は「2025年の新製品の中で一番のヒット作」だという「Thermal pot sack/XG(サーマルポット サック)/XG」。
お気に入りのクッカーを守ってくれるケースでありながら、食事のときにはクッカーを保温する“フードコジー”としても使える多機能ギアです。
スナップボタンでサイズ調整でき、底まで広げられるので、さまざまなサイズのフリーズドライ食を入れられるのもポイント。「フリーズドライ食が、お湯を注いでからできあがるまでに冷めてしまう」という悲しい山飯体験をしたことがある人もいると思いますが、これがあれば山で温かい食事が楽しめます。
【Trail Shade】ワンアクションでパッと開く日傘としては最軽量級!
ラストは、春・夏に大活躍間違いなしのULな日傘「Trail Shade(トレイルシェイド)」。
折りたたみ傘の中でも骨を折りたたむタイプのものはもっと軽くできるそうですが、ワンアクションで開ける傘としては最軽量級の136gを実現しています。
生地のベースやコーティングをギリギリまで薄くして軽さを実現しながらも遮光・UVカット率99.9%、晴雨兼用と機能もしっかり!
軽くても普通の傘と同等の強度が担保されているため、「森林限界を超えない範囲で風速2~3m程度の風なら問題なく使えます」と太田さん。
ロングトレイルなどで長く歩きときの直射日光は体調不良やへたをすると命に係わることも。軽いからこそ、バックパックに入れておけば安心です。
100年目のその先へ。“外遊びの楽しさ”を、もっと広く
2024年に100周年の節目を迎え、今後は「軽量コンパクト」を改めてエバニューの原点でもある、ストックやアイゼンといった登山道具全般へ広げていく方針がある、と太田さん。
「ただし、山道具における軽量コンパクトというのは調理道具よりもずっとシビア。日本の登山黎明期からあるブランドだからこそ、信頼性、品質、安全性という軸をぶれずに置きたいと思います」
「この業界はたくさん遊んだほうが強い!フィールドに出てどれだけ遊ぶかだと思います」と太田さん。エバニューのメンバーもガシガシ山登りやトレイルを楽しんでいます
そしてもちろんその一方で、「世の中にまだないものをつくる」という使命も忘れてはいません。
「そと遊びって、できなかったことができるようになるという楽しさがあると思うんです。エバニューの道具がその変化のきっかけになれたらうれしいですね。エバニューが次にどんな世界へ連れて行ってくれるのか、ぜひ楽しみにしていてください」