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キャンプのクルマにUS風味を!不遇のライトSUV・マツダ「トリビュート」
2024.08.28ライフスタイル
主に1990〜2010年ころに発売された、「ちょっと古いけどツウならいま乗りたい」そんなキャンプな自動車をサラリと紹介する当企画。今回hinata的名車としてお届けするのは、アメリカンフィールあふれるキャラクターのマツダ「トリビュート」です。短命に終わってしまった理由と、いまだから感じる魅力を紐解いてみましょう。
制作者
増田 満
国産旧型車専門誌『ハチマルヒーロー』創刊編集長、『ノスタルジックヒーロー』編集長を経て独立したフリーランスライター&編集者。
以前は頻繁にキャンプに出かけたが、コロナ禍前に山間部へ移住して自然を満喫中。現在クルマ3台、バイク4台を所有して持て余し気味。
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「トリビュート 」って、どんなクルマ?
マツダがラインナップするSUVは現在、CXシリーズとして好評です。ですが、それより前にもマツダはSUVをラインナップしていたことを覚えているでしょうか?
それが2000年10月に発表された「トリビュート」です。
マツダ初のSUVとして登場した同車は、全長を4,395mmに抑えつつ、全幅を1,790mmと比較的ワイドに設定。ライトながらも広いインテリア空間を確保した、ありそうでなかったクルマに仕上げられていました。
ビギナーや運転が苦手な人でも気軽に操れるうえに、積載性の良さも手伝って、ファミリーキャンプにもぴったりな1台だったのです。
このような輸入車ライクなサイズ感にこそ、トリビュートの本質が隠されているのかもしれません。
実はこのクルマは、マツダが当時提携していた「フォードとの合作」という、生まれも育ちもワールドワイドなモデルだったのです。
マツダ防府工場での記念式典
フォード・エスケープとの兄弟車として、右ハンドル車が「マツダの防府工場」で、左ハンドル車が「アメリカ・カンザスシティ工場」で生産されていました。
アメリカ・カンザスシティでの発表会
また、発売当時は「2L・4気筒エンジン車」と「3L・V型6気筒エンジン車」の2種類がラインナップされていましたが、どちらのエンジンもフォード製。
つまり、マツダがフォードと共同開発した、アメリカ風味が強めのSUVだったということなのです。
4気筒・V型6気筒、あなたはどちらを選ぶ?
実際に乗ってみると、マツダ車らしい優れたハンドリング性能とともに、アメリカ製エンジンのフィーリングも感じられます。
特に2L・4気筒エンジンは、日本製に比べて微振動があり少々ガサツ。でも軽さとボディの短さを生かしたフットワークの良さも光ります。
一方で、V型6気筒エンジンには明らかな余裕を感じ、アメリカのフリーウェイをクルーズするのにぴったり。ハンドリングは車重の重さも影響して少し鈍く感じますが、それがアメリカ車のような感覚で、なんとも魅力的なのです。
3L・V型6気筒エンジン搭載車はアメリカンな味わい
そんな2L・4気筒エンジンのガサツさはやはり不評だったようで、2003年のマイナーチェンジ時には、マツダが開発した「2.3L・MZR型オールアルミ製エンジン」に切り替えられました。
これによって洗練されたフィーリングとともに排気量も増えたわけですが、そうなるといっそうV型6気筒エンジン車で“トリビュートらしさ”を味わいたいと考えるのも必然なのかもしれません。
キャンプの相棒に抜群の装備も
アメリカ車のような余裕とマツダらしいハンドリングの良さは4WDモデルでこそ体感できます。
低グレードにはFFも用意されていましたが、なんといっても電磁ロック付きロータリーブレードカップリング式4WDによる、優れた走破性が魅力です。
前輪のスリップを感知すると自動的に駆動力を後輪にも配分してくれるので、雪道などでの安心感は抜群。ヘビィデューティな4WD性能ではないものの、普段は舗装路がメイン・キャンプのときだけ悪路を走る。そのような使い方にぴったりな仕上がりだったというわけです。
また、1,810mmもの室内長(ラゲッジだけでも922mm)が確保されているのもポイントです。最大1,820Lものラゲッジ積載可能容量を誇るので、みんなのキャンプ道具も余裕で収まるはず。
テールゲートはガラス部分だけの開閉も可能です
リヤシートは6:4に分割して倒せ、室内空間をさまざまなスタイルにアレンジすることも可能。マウンテンバイクの積載もできるので、さまざまなそと遊びに活躍してくれるはずです。
3L・V型6気筒エンジン車は、インテリアの色使いも国産車離れしていました
さらに、発売当時世界トップレベルの衝突安全性能が実現されていたのも見逃せないところです。
クルマ対クルマでの衝突実験を繰り返して乗員保護が確認されているうえ、運転席・助手席にはSRSエアバッグも標準装備。リヤシートには、チャイルドシートをしっかり固定できるアンカーも設置されていました。
アンダー200万円のお買い得車なのに…
発売時の新車価格はFF車が179.8万円、4WDの2L・4気筒エンジン車が199.8万円、3L・V6型エンジン車が224.8万円と、価格面にも優位性をもっていました。
にもかかわらず…、なぜあまりヒットしなかったのか不思議に思う人も多いかもしれません。
後期型にはアウトドアユース向けの特別仕様車「フィールドブレイク」もラインナップされていました
そこにはやはり、フォードのアメリカンなテイストが日本のユーザーに合いにくかったことと、ある意味で中途半端なボディサイズが誘因していたのかもしれません。
ですが、アメリカ車が好きだけれど信頼性に不安を感じる人や、キャンプなどのそと遊びを楽しみたい人にはジャストな選択肢だとも考えられるはずです。
中古車市場では僅少。根気よく探すべし
国内販売は2005年に終了(海外向けはその後も生産が継続)し、販売台数もそれほど多くはありませんでした。それゆえに現在流通している中古車も数少なく、希少車と表現しても差し支えないレベルになっています。
2024年8月時点での筆者調べでは、国内で流通している中古車はわずか3台のみ。しかもそれらは2L・4気筒モデルだけというありさまです。
とはいえ、いずれも走行距離は10万km以下の極上車ばかりだったので、まだまだ長くキャンプの相棒として活躍してくれそうです。
アメリカ車のフィーリングを感じられる個性的な1台。ほかの人とは少し違う、こだわりの愛車を探しているキャンパーなら選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
【基本情報】
2000年・トリビュートLX 4WD(4速AT)
- 全長×全幅×全高:4,395×1,790×1,750mm
- 車両重量:1,470kg
- エンジン種類:直列4気筒DOHC
- 排気量:1,988cc
- 最高出力:129ps/5,400rpm
- 最大トルク:18.7kgm/4,500rpm
- 発売当時価格:199.8万円
次回は、SUVとミニバンをミックスしたようなスタイルや観音開きドアが特徴の、ホンダ「エレメント」の魅力をお届け予定です。キャンプの相棒を探している人はお見逃しなく!
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