【鎌倉天幕】"唯一無二"の嵐!オーバークオリティにも納得のバックグラウンドを解明
「テント屋が仲間のためにつくったレーベル」として知られる鎌倉天幕。2018年に彗星のように現れて以来、突出したオリジナリティと妥協のないクオリティであっという間にキャンパーたちの間で話題になりました。そのアイデアや技術はどのように培われたのでしょうか。鎌倉天幕のバックグラウンドストーリーを掘り下げました。
数々のアウトドアブランドからオファーが来るテントのプロ
使う人のことを考え、テントに求められるものを熟慮したうえでTPOに合わせて特化させるべきところを決めるのが鎌倉天幕の信条
誰もが知る有名アウトドアブランドが信頼し、自社製品の品質を委ねている「ニューテックジャパン」。OEMのみならず、マーケティングから企画、製造までを自社で一貫して行う「ODM」も得意としており、知識と技術の高さは業界で知らない人はいません。
鎌倉天幕(かまくらてんまく)は、そんなニューテックジャパンがアウトドア仲間のために立ち上げた自社レーベル。――と、ここまでは割とよく聞く話なのではないでしょうか?でも、そもそも鎌倉天幕の技術や知識ってどうやって積み上げられてきたのか。代表の白石徳宏さんはどんな人なのか?
今回は、そんなバックグラウンドストーリーにスポットを当ててみました。
中国のテント工場で経験を積んだ稀有な日本人
キャンプに欠かせないテント。実は、オートメーション化がこれだけ進んだ現代でも、その縫製は全てミシンを使って人の手で行われています。
戦後間もないころまでは国内でも製造がおこなわれていましたが、現在ではそのほとんどが中国やタイ、ベトナムなどの海外。日本からテント産業がなりをひそめて久しい1992年、20代だった白石さんは、中国へ渡りました。白石さんの父親が韓国系テントメーカーの日本法人を立ち上げたばかりで、「中国福建省にある工場へ行かないか」と言われたのがきっかけです。
右も左もわからないまま訪れたその工場では、世界中のアウトドアブランドのテントがつくられていました。
実際に手を動かしてテントをつくり、企画を立て、アウトドアブームの中で次々と生まれるニーズに応えてアイデアを出す。その環境とここで得た人脈は、現在も白石さんにとって宝物。帰国後、ニューテックジャパンとして独立してからも多くの有名アウトドアブランドがニューテックジャパンを指名するのも納得です。
中身が伴ったテントをつくるためにアウトドアにどっぷり
白石さんのアウトドア体験についても少し触れておきましょう。
小学校5年生のとき、塾の友達と神津島でキャンプをしたのが初めてだったという白石さん。「当時のキャンプ用品でキャンプをするのは大変でしたが、今でも鮮明に記憶に残っています」と当時を振り返ります。しかし、それ以外では大人になってからツーリングをしていたくらいで、テントを使うようなアウトドアはあまりしていなかったそう。
今でこそ、ガレージブランドはオーナーがアウトドア好きで、つくることもやって…というのが当たり前ですが、当時、しかも世界中のテントを手掛けるメーカーで、アウトドアを楽しむつくり手はほぼ皆無でした。
そこで、「テント職人としても、アウトドアの趣味人としても、両方の立場で考えられる企画開発者になりたい」と、みずからがつくったテントでヒマラヤトレッキング、モンゴルでバイクツーリング、アメリカ西海岸をキャンピングカーで縦断など、大スケールでのアウトドアを楽しむように。
今では、釣りやサーフィン、ダイビング、スキー、スノーボードなど、レジャースポーツ全般も楽しんでおり、その経験をものづくりに生かしています。
コストではなく、「最適解」を常に見る
帰国後もアウトドアブランドのOEMを受けていましたが、アジア金融危機の影響で韓国の親会社が買収され、日本支社のクエストジャパンも閉鎖。1999年にニューテックジャパンを立ち上げました。お金も人もなく経営が困難な中、起死回生の一手として開発した「カンタンタープ」が日本で大ヒットとなり、再び仕事が軌道に乗りはじめたのです。
カンタンタープの開発においては、日本の気候や収納事情、アウトドアシーンを考え抜き、材質・形状・サイズ、全てが「これしかない」という裏付けが取れるまで検証を重ねたのだそう。「なぜ」を語れる、唯一無二の商品マインドが確立された瞬間でもあります。
2024年12月現在、累計300万台を売り上げているワンタッチタープの草分け的存在「カンタンタープ」
一つひとつが経験や技術の集大成!白石さんのおすすめ3選
テント工場でみずからテントをつくり、開発・設計もし、そのテントを持って大自然で遊ぶ白石さん。なおかつ、世界中の最新情報が集まってくる現場に長年いて、自社でODMができる…。こんな条件がそろっているメーカーはほかにはなかなかありません。
何より、鎌倉天幕のメンバーもキャンプやアウトドアイベントに積極的に参加して自社製品を使い、製品理解や新しいアイデアの模索をしている精鋭ぞろい。
こんな土壌だからこそ生まれる、オリジナリティあふれるアイテムからおすすめ3つを紹介します。
【HIDEOUT-02】アレンジ無限大!設営も簡単な大型シェルター
最初に紹介するのは大型シェルターの「HIDEOUT-02(ハイドアウト02)」。
白石さん自身、「公私ともに使っていて、さまざまなシーンで役に立った道具はシェルターでした」と語る通り、テントもタープも兼用できるシェルターはとても使い勝手がいいアイテム。湘南の仲間たちに頼まれてつくった最初のアイテムの一つでもあり、「大きいのに設営が簡単」「アレンジが無限大」「形が美しい」と、好評を博しました。
こちらの02は、日本の気候に合わせて使いやすさをさらに追求。全方向にメッシュパネルがあり、オールシーズン快適に過ごせます。
全方向にファスナーがあり、大型タープとして使うこともキャノピーを張り出したテントとして使うことも可能。もちろんフルクローズテントにも!
【GL CHAIR】家の中でも使いたくなる極上のルックスと座り心地
2つ目は多くの人から愛用されている、ロングセラーの「GL CHAIR(ジーエルチェア)」。
「アウトドアチェアの座面の布はなぜ一枚なのか?」
「アウトドアチェアの収納ケースはなぜ薄く弱そうなのか?」
「アウトドアチェアは個性がなく、なぜ似たような製品が多いのか?」
「このようなアウトドアチェアを家の中で使えるだろうか…?」
こうした「なぜ」から開発が始まったというGL CHAIRは、アウトドアに親和性の高い収納性や広げるだけでOKの簡単な組み立てでありながら、天然木の肘掛けを備えた上質感が魅力。求める条件を満たすためにアルミフレームをオリジナルで設計し、座面の縫製もcm単位で微調整を繰り返して座り心地を追求しました。
家具として使っても心が躍る魅力的なデザイン性とクオリティに、アウトドア以外の愛用者も急増中です。
【BASE CAMP T-2】ナショナルジオグラフィックの人気No.1テントがアップグレード
ラストは、ニューテックジャパンがODMとして手掛けていたNATIONAL GEOGRAPHIC(ナショナルジオグラフィック)で人気の高かったキャビンタイプのテント、T-2の復刻版。アメリカの登山ブランドWILD THINGS(ワイルドシングス)との共同開発で、さらなるグレードアップを果たしました。
ユーザーの要望に応えるため、縫製工場を鎌倉天幕の縫製工場に移し、熟練工が縫製。縫製技術が上がる分、コストも上がるため、素材から見直しました。
さらに、カンタンタープで培った知見を生かし、トラス構造の軽量で頑丈なフレームを開発。「ベースキャンプに相応しいものができたと思います」と白石さんも太鼓判の逸品です。
鎌倉天幕でずっと付き合える「唯一無二」な道具を手に入れよう
コストより先に、「本当につくりたいものをつくる」というほかにはない考え方でものづくりをしてきた鎌倉天幕。類似品が多く、価格競争ばかりが目に付く小売業界で、硬派なまでにものづくりに対する妥協のない姿勢を貫いています。だからこそユーザーをワクワクさせる「唯一無二」が毎回飛び出してくるのでしょう。
こだわりがギュッと詰まっていながらも、ファクトリーブランドだから価格を抑えているのも魅力。「長く愛用できて本当に使いやすい道具を…」と考えている人に、ぜひ知ってほしいブランドです。