「ANOBA」にかける想いとは?アウトドアの達人が探る、人気ブランドの成長秘話と意外な事実
今や飛ぶ鳥を落とす勢いで愛用者が増え続ける「ANOBA」。ユーザーに寄り添ったギアたちは、デザイン・性能・使いやすさに加えて、手に取りやすい価格帯も人気の理由となっています。とはいえ、それだけでは説明がつかない魅力が隠されているはず。そこで今回は、数多のアウトドアブランドを見続けてきた山田昭一さんが、ANOBAのプロデューサー・田中さんに直撃。ブランドに込められた想いや成功秘話を探ってもらいます。
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キャンプ・アウトドアWebマガジン「hinata」編集部。年間に制作・編集する記事は600以上。著書に『ひなたごはん』(扶桑社ムック)など。
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もくじ
「もう一つの居場所を作りたい」から始まったANOBA
ユニークな製品作りでキャンパーのハートを射抜く
2019年にその歴史をスタートさせると、瞬く間にキャンプシーンでの存在感を示した大阪発のアウトドアブランド「ANOBA(アノバ)」。代表作のブリザードソフトクーラーをはじめ、地面に対し斜めに打ち込むという斬新な発想のステイクハンガーやマルチに活躍するギアバッグなど、アウトドア好きの心をくすぐるギアを幅広く展開しています。
▲ANOBAのプロデューサー田中直樹さん
同ブランドの母体は、ホームセンターなどに並ぶ製品を作るメーカー「ユーザー株式会社」。ちなみにアウトドアシーンに欠かせないあの「銀マット」は、同社が考案したものなのだとか。では、ANOBAはなぜ生まれたのでしょうか?
田中直樹さん(以下、田中):新規で何か新しいことをやろうとなったタイミングがあり、アウトドア事業を始めることになりました。というのも、もともと弊社では「Field Station(フィールドステーション)」というアウトドア系のブランドを展開していたんです。そのステーションを一つの基地と捉えて、さらにもう一つ基地を作ろうと。
その「Another Base(=もう一つの場所)」という考え方が、ANOBAの名前の由来になっています。キャンプって実際、家でするようなことを外に持っていくだけという側面もあるじゃないですか。本を読んだり、お酒を飲んだり。なのでキャンパーにとっての、もう一つの帰る家・もう一つの基地という意味合いを込めて、ANOBAというブランドができたんです。
山田昭一さんが探る、ANOBAの製品作りにかける想い
今回ANOBAの魅力を深堀りしてくれたのは、アウトドア業界でマルチに活躍する山田昭一さん(写真左)。ブランドのPR業務のほか、撮影のディレクションからスタイリングまでこなすアウトドアの達人です。
田中さんとは以前から交流があるという山田さんに、その確かな選球眼でANOBAのギアや製品作りの姿勢について探ってもらいました。
山田昭一さん(以下、山田):ANOBAは製品ラインナップの増え方が早いですよね。年1回などと、決まったサイクルで新作をリリースしているのですか?
田中:新作発表のペースは決めておらず、新しい製品が出来上がったら随時展開しています。昨年はかなり増やしましたね。
山田:へえ、すごい。製品作りはどのようなプロセスで?
田中:SNSなどをチェックしてアイデアの種を探しています。正直なところ、もう新しいものを生み出すのってなかなか難しいじゃないですか。そのような中でもユーザーが不満に感じている点を掘り出して、メリットとデメリットを天秤にかけながら、新しいものを生み出していきたいと思っています。
山田:なるほど。基本的には田中さんのアイデアがベースで、最終的にはプロダクトデザイナーさんに形にしてもらって、ブラッシュアップしていくという流れですね。想定しているユーザー層やターゲットは?
田中:基本的にはファミリーキャンパーさん。ただ、自分もソロキャンパーなので、1人でのキャンプでも使いやすい製品作りも意識しています。あとは、女性が気に入ってくれるような配慮も。ファミリーキャンプ市場では、男性が女性に対して購入のプレゼンをする構図になることが多いかと思うので(笑)。
キャンパーに刺さるワケは「徹底的なユーザー目線」にあった
山田:では、ギアを見せていただきます。まずこれは…?
田中:「マルチミニボックス S」ですね。スパイスとか、仕切り板のセット場所を変えてシェラカップなども収納して運べるバッグです。
山田:おお、なるほど。ぴったりだ。サイズ違いも展開しているんですか?バッグインバッグとしても使えそう。
田中:たしかに、そのような使い方もおすすめです。今展開しているMやLサイズの中に入れて、グルキャンならそれごと持っていく。そんな活用方法も楽しそうですよね。
山田:アイデア次第でいろいろ入れられそう。
田中:たとえばLEDランタンなどを収納するのもいいかもしれません。このようなバッグのふたの裏の部分って、メッシュになってる製品が多いですよね。でも、それだとランタンの傘を入れる場所がなくて困っている人も多いはず。そこでANOBAでは、あえてメッシュではなくポケット仕様にしています。
山田:なるほど。ゴールゼロ用の傘だ。
田中:そうそう。傘がふた裏にこう…フィットする感じ。ぴったり収まるんです。
山田:こういう細かいパーツの行き場を作ったわけだ。すばらしいですね。
山田:で、これが人気のクーラー。
田中:「ブリザードソフトクーラー」です。こちらは10Lタイプ。
山田:グレー、いいですね。都会的。なんだかこう、ファッション的な印象を受けますね。でも人気があるのはやっぱりオリーブとかじゃない?
田中:そうですね(笑)。使いやすい定番のカラーではあるので。
山田:これ、落としぶたが付いてるんだ。
田中:アウトドア業界の人たちには、「盲点だった」と言われることも多い部分です。でも、もともと作っていたホームセンター向けの製品では、簡易シートを落としぶたとして使っていたんですよね。だから、逆に落としぶたを設けないっていう発想がなくて。
実際、ANOBAの製品でも採用してよかったと思います。冷やしたいものを落としぶたの下に、そうでないものを上に入れるみたいなマルチな使い方ができるので。自分の場合は、ソース類などを冷えない位置に収納するのが定番です。
山田:ブリザードソフトクーラーには、ほかのサイズやカラーの展開も?
田中:一回り大きい25Lもラインナップさせています。カラーはグレーに加えて、コヨーテ、オリーブ、ブラックをそろえています。
山田:素材もいいですよね。
田中:TPU加工を施しているので汚れにくいんですよ。完全防水なのでじゃぶじゃぶと洗えるのも助かる人が多いのではないでしょうか。
山田:それに、止水ジッパーだ。真面目にプロダクトを作ってますね。ルックスも機能性も完璧!
山田;小物も多くリリースしていますよね。このシェラカップ、いい色。
田中:材質は酸化発色加工を施したステンレスで、内側に螺旋仕上げを施すことでザラッとした風合いを意識しました。新潟県の工場で作ってもらっています。
山田:金属加工の本場ですね。深さもいい。
田中:これでご飯も炊けますよ。直火でいけますから。
山田:缶ホルダーもね、あるといいですよね。
田中:「バキュームカンホルダー」という製品です。キャンプ場に着いたら設営する前にまず飲むじゃないですか。
山田:フライングでね。
田中:とはいえ、そのタイミングに飲み切ることってあまりなくて、だんだんぬるくなってしまいますよね。でもこれを使えば、ゆる〜く設営するときも冷たいまま楽しめるというわけです。夏場だと、1時間で10℃くらい変わると思います。
山田:お酒が苦手な人にもいいかもね。そういう人たちって、ゆっくり飲みたいだろうから。
山田:このラックは素材がアイアンとウッドですね?おしゃれじゃないですか。
田中:この「2トーンウッドラック」は、インテリア家具ぽい感じにしたくデザインしたアイテムです。家の中でも映える雰囲気に仕上げてみました。
山田:この素材の組み合わせって意外と少ないですよね。3段なので物を置くスペースが広くていい!
田中:実は2段のバージョンも販売しています。あちらのテーブル下に設置しているラックがそう。
山田:本当だ。キャンプ向けで2段のラックってめずらしいですよね。
田中:テーブルの下にセッティングしやすいのがミソです。すぐに使いたい物をこのラックに置いておけば、テーブル上をすっきりとさせられますよね。テーブルと組み合わせて使いやすいラックがあると便利だなと思い、作ってみました。あとは、2段のほうは22〜32cmで、3段のほうは39.5〜58cmの範囲で3段階に高さ調節が可能。ユーザーの好みや都合に合わせて上下のスペースを活用できるんです。
山田:なるほど。気が利いてますね。しかし本当に、どんどん製品ラインナップが増えている。最初は収納ケースだけでしたもんね。
田中:次はウルトラライトとまではいかないですが、重さにも配慮したライトなギアがいいなと考えています。今もいろいろ模索してます。
キャンプ場に行きたくなる!もう一つの居場所が見つかる注目ギア
【基本情報(左上から時計回り)】
商品名:バキュームカンホルダー(保冷缶ホルダー)
カラー展開:ブラック、ホワイト
使用サイズ:約φ7.5×高さ13cm
重さ:約220g
価格:2,980円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:ブリザードソフトクーラー 25L(アイスグレー)
カラー:ブラック、オリーブ、コヨーテ、アイスグレー
使用サイズ:約52×26×31cm
重さ:約1.6kg
価格:13,800円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:ブリザードソフトクーラー 10L(アイスグレー)
カラー展開:ブラック、オリーブ、コヨーテ、アイスグレー
サイズ:約42×20.5×25cm
重さ:約950g
価格:10,800円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:2トーンウッドラック 2段
使用サイズ:約45×31.5×H(22/28/32)cm
重さ:約4.4kg
価格:11,800円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:2トーンウッドラック 3段
使用サイズ:約45×31.5×H(39.5/51/58)cm
重さ:約7.0kg
価格:14,500円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:ANOBA オフィシャル限定シェラカップ
使用サイズ:約117mm(取手含183mm)×H55×底94mm
重さ:約116g
価格:3,100円(税込)
公式はこちら:ANOBA
商品名:マルチミニボックス S(コヨーテ)
カラー展開:ブラック、オリーブ、コヨーテ
使用サイズ:約20×15×13cm
重さ:約0.3kg
価格:3,300円(税込)
公式はこちら:ANOBA
ユーザーとの「距離感」も大切なファクター
山田:田中さん自身もかなりの頻度でキャンプをするんですよね?
田中:もちろんです。実際のフィールドで新製品のテストも行います。
山田:まさにユーザー目線で物作りをしているということですね。人気の理由はやっぱりそこなんでしょうか?
田中:さっきも言ったように、ANOBAはSNSに力を入れているのもポイントかもしれません。インスタグラムでは迅速にDM対応したり、コメントをいただいた際にリポストしたりと、お客さんとの距離を近く保つよう意識しています。やっぱり、ユーザー命なので。そういった意味で、自分自身がユーザーになってテストすることは、質のいい製品作りにつながっているのかなと感じています。
これからのANOBAはどこへ向かう?
山田:今後の展開は?こんなギアを作りたいとか、こんなブランドに成長させたいとかはありますか?
田中:ANOBAの製品だけでキャンプが楽しめる。そんなブランドにしていきたいですね。弊社のものづくりの土壌を活かせば可能なはず。アクセサリーなども充実させて新規ユーザーも手に取りやすいようにしたいと考えています。
また、キャンプを楽しむための総合的な提案もできればうれしいかな。ANOBAでキャンプイベントを主催したいとも思ってます。シェラカップ一つでもANOBAの製品を持っていれば参加OKという感じで。
山田:ガチガチにANOBA製品をそろえるとなると、参加のハードルが上がりますもんね。
田中:「キャンプ道具を選ぶときに、小物でもいいからANOBAが選択肢にある」という状態になればありがたい。そういった意味で、手の届きにくい価格帯には絶対にしたくないんです。ANOBAだったらいろいろ試せる。そんな部分は意識していますね。
だから僕らはANOBAを選びたい!
シーズンを追うごとに、アップデートされたキャンプギアを生み続けるANOBA。その原動力となっているのは、プロデューサー田中さんの「ユーザーにキャンプを楽しんでほしい」という想いでした。こまめにSNSでリアルな使い心地をチェックし、プロデューサーが自らアウトドアフィールドでテストを重ねるANOBAこそ、ユーザーに寄り添ってくれるアウトドアブランドと言えるかもしれません。
ブランド設立から2022年で3年。これから先も、キャンパーを喜ばせるギアを作ってくれるに違いなし。まずはシェラカップなどの小物類からでも、試してみる価値ありです!
撮影/烏頭尾拓磨