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取材に応じる馬杉監督

「おやじキャンプ飯」の馬杉監督が中華鍋に込めた「キャンプのあるべき姿」への想いとは?【2022年アウトドアトレンド予測】

謎のおやじがひとり、キャンプ場で焚き火を前に、黙々と中華鍋を振る——。2020年に公開され、口コミでジワジワと熱狂が広がったYouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」。2022年1月にシーズン2となる「和歌山編」の公開がスタートし、その勢いはとどまるところを知りません。「キャンプ×中華鍋」という文化の仕掛け人、馬杉雅喜監督に、作品の裏話と2022年のアウトドア業界の展望について話を聞きました。

キャンプ業界で異彩を放つYouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」

YouTubeに突如現れた、中華鍋を振る謎のソロキャンおやじ

料理をする「おやじ」
「おやじキャンプ飯」は、2020年10月に突如始まったYouTubeドラマ。キャンプ場のすみっこでソロキャンプ生活を続ける元中華料理人・坂本明夫と、彼を取り巻く個性的な登場人物が織りなす、静かで温かい物語です。 俳優・近藤芳正さん演じる、ぶっきらぼうだけどどこか憎めない"おやじ"のリアルなソロキャンプ姿と、おやじが焚き火と中華鍋で作るおいしそうな料理の数々に魅了される人が続出。口コミでまたたく間に人気となり、シーズン1は全6話で522万回の再生を超える大ヒットとなりました。

2022年1月から公開中のシーズン2では、舞台が京都から和歌山へ

おやじキャンプ飯シーズン2
アウトドア人気が定着し、リアルでもYouTube動画でもビジュアル重視のおしゃれなキャンプスタイルが支持される中で、「おやじキャンプ飯」は、ある種の"生々しさ"でキャンプ本来の魅力を私たちに教えてくれます。 現在公開中のシリーズ第二弾「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」でも変わらぬ魅力を放つ"おやじ"の物語。日々移り変わるアウトドアのトレンドの中で、なぜ「おやじキャンプ飯」が無性に心に刺さるのか…。 "おやキャン"の生みの親である馬杉雅喜監督に、作品についてはもちろん、YouTubeとアウトドア業界の関係、2022年の展望を聞きました。

「どうせやるなら新しい文化を作ってやろう」という思いで挑んだシーズン1

馬杉雅喜監督プロフィール

取材に応じてくれた馬杉雅喜監督
渋谷モディのポップアップショップで取材に応じてくれた、「おやじキャンプ飯」馬杉監督
馬杉雅喜(ますぎ・まさよし) 2017年、映画『笠置ROCK!』で初メガホン。西日本で最も人口が少ない町、京都府笠置町を舞台に「町民1,400人全員で映画を作る!」という斬新すぎる企画で一躍話題に。その後も監督作品がプロデューサーの逃亡や新型コロナウイルスの影響で立て続けに頓挫するなど、波乱万丈の監督人生を送る。2020年、YouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」が公開後1カ月で100万回再生を達成。現在、「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」が公開中。アーティストのMVや広告の映像制作など、忙しい仕事の合間をぬってライフワークのキャンプを楽しむ。1983年生まれ、京都府出身。

制作陣の想像を超えた「おやじキャンプ飯」というムーブメント

馬杉さん
——まず、2021年を振り返っていかがでしたか? 馬杉監督(以下「馬杉」):2020年の年末ぐらいに「おやじキャンプ飯」のシーズン1が公開されて、制作陣の予想以上に話題になり、おかげさまで中華鍋をはじめ、いろいろなグッズを発売させていただきました。そんなことができたのも、やはり「キャンプ」というものがトレンドとして勢いがものすごくあったからかなと。僕自身も「おやキャン」きっかけでアウトドア関係の映像制作のオファーがかなり増えました。 ——ここ数年のキャンプ人気について、馬杉監督はどうお考えでしょうか。 馬杉:「流行りだから」となんとなく始めたものの、ハマりきらなかった人たちが一定数出てくると思うので、ガッと一気に盛り上がった「ブーム」としては落ち着いていくんだろうなとは思います。でも業界が小さくなっていくわけではなく、メーカーもキャンパーも新しいことを探しているのかなという印象。それこそ「おやキャン」のようなドラマを応援してみようかな、とか、新しく他業種とコラボしてみようかな、とか。
中華鍋
ポップアップショップでも即売り切れとなった、「おやじキャンプ飯」×ヨコザワテッパンの中華鍋
——「キャンプ×中華鍋」ということ自体が、ドラマから生まれた新しいスタイルなのでは、という印象です。 馬杉:実際にキャンプ場で見かけることもありますし、SNSで写真をアップしてくれる人もよく見るのでうれしいですね。ヨコザワテッパンさんとコラボして作った中華鍋も、クラウドファンディングで700個があっという間に完売してしまって…ありがたいことにかなり好調です。中華鍋がそもそも高火力で使うものなので、キャンプで合うなとは思っていて。で、どうせ元中華料理人を主人公にドラマを作るなら、新しい文化を作りたいと思っていたので、こうして広まってくれてうれしいです。

2022年に変わるもの、変わらないもの

結局は長く使える実用的な道具が厳選されていく

おやじキャンプ飯の小道具
ポップアップショップに展示されている劇中の小道具たち
——違ったスタイルに挑戦するなど、キャンプに新しい楽しみ方を求めるようになったのが2021年。では2022年はどんな動きがあると思われますか? 馬杉:「家でも外でも使える」や「防災用に使える」など、キャンプ単体ではなく他の用途にも使える道具がより支持されていくんじゃないかと思います。たとえば「おやキャン」の視聴者は男性が多いのですが、そのパートナーの女性から「自分はキャンプ行かないけど、寝袋はいざという時のために家にあってもいい」という声がけっこうあがるので。キャンプがより日常に組み込まれていくようなイメージですかね。 ——ファッション、おしゃれというより、より実用的なギアが選ばれるようになる? 馬杉:そうですね。流行に乗ってキャンプを始めた人たちがひと通り道具を買いそろえた頃だと思うので、長く使えるものや、使い勝手のいい実用的なものが残っていくのかなと。 ——「おやじキャンプ飯」劇中に登場する道具も、まさにそんなイメージですよね。今の主流であるおしゃれキャンプにある意味逆行しているというか。 馬杉:物語の中でも描いているのですが、ギアでマウントをとる人が現れたり「キャンプはこうだよ!」と決めつける人がいたりもしますよね。その中で、中華鍋もそうですが、やかんやウォータージャグなど、主人公の明夫が使っている道具は決しておしゃれではありません。流行りのギアを次から次へと買いそろえる人に、「キャンプの時間を楽しむには、これでいいんだよ」ということは言いたかったことです。

YouTubeとキャンプの親和性

YouTubeの銀の盾

出典:Makuake

YouTubeチャンネル登録者数10万人を称える銀の盾
——ここ数年のYouTubeでのキャンプ動画人気についてはどう思われますか? 馬杉:ブームに乗って芸人さんや一般のYouTuberさんが一気に増えましたけど、やはり視聴者の目が肥えているので、少なからずいる「この人は数字を取りにとりあえずキャンプネタで撮っているな」という人は見抜かれますよね(笑)。本当にアウトドアが好きな人が残る…というか、本当に好きな人しか残れないシビアな世界だなと思います。 ——ドラマを作っていて、視聴者のシビアな目を感じることも? 馬杉:感じます。そこが他のメディアとの一番の違いかなと。テレビや映画を作っていても、視聴者の率直なコメントを直接見ることってほぼないんですよね。でもYouTubeだとリアルタイムで目に入ってくる。最初はそこがとても怖かったんですけど、やってみたら意外とディスられないとわかって安心(笑)。 ——意外と温かかった? 馬杉:そうですね。「おやじキャンプ飯」に関しては、視聴者さんが物語をコメントで補足してくれる面がかなりあって。それがおもしろいなと思いましたね。

ドラマ自体が視聴者にとってのコミュニケーションツールに

おやじキャンプ飯

出典:Twitter(@Official_Oyaji)

「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」第一話で明夫が見た景色
——視聴者が物語を補足、とは具体的にどんなことでしょう? 馬杉:たとえば、シーズン2の第一話で明夫が「イカと空芯菜の塩炒め」を作るシーンがあるのですが、映像でもセリフでも「空芯菜」という単語は一度も出てこないんですね。でも気づいた人がコメントで書いてくれて、当たり前のようにそれが「イカと空芯菜」であることがみんなに伝わっている。そんな状況がちょくちょくあるんですよね。それがすごく気持ちいいし、楽しいです。 ——同じ空気感を共有する者同士でわかりあっているような感覚ですね。 馬杉:実は、コメントから拾ってオフィシャル設定にしたものもあるんです。 ——ぜひ教えて下さい! 馬杉:シーズン1の第2話で、明夫の娘が宇宙飛行士だということが明かされるんですね。娘が宇宙にいて、明夫が星空を見上げるというシーンがあったんですけど、「あ、そうか!娘が一番良く見える場所に移動したんだ、明夫は」というコメントが書き込まれていて。僕のなかでそこまで決めた設定ではなかったので「なるほど!!」と思って、その後の物語は公式に「明夫はそういうつもりなんだ」ということになっています(笑)。 ——それもYouTubeドラマならではですね。 馬杉:まさにそうですね。作品を見て、みんなでダラダラしゃべるという…。コメント欄が「友達の家」みたいになっている感覚もあって、すごいなと思います。今後もそんな「ならでは」の面白さが生まれたらいいなと思いますね。 ——「友達の家」とはまた素敵な表現ですね。 馬杉:今、世界がめまぐるしく変わっていかなきゃいけない中で、意識して「おやキャン」の"坂本明夫"は変わらないように描こうとしているんです。いろんなことが変化するなかで、変わらないものもたしかにあって、そんなところに触れて、少しだけほっとしてもらえたらなと。シーズン1に比べて、シーズン2は主人公にフォーカスしている部分も大きいので、そこを注目して観ていただけたらうれしいです。

「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」はYouTubeで公開中!

シーズン2も変わらぬ空気感。何も考えずに観て楽しめる作品

ドラマ「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」は、YouTube公式チャンネルにて現在4話まで公開中。物語の始まりとなるシーズン1「京都編」も含め、過去のストーリーもさかのぼって視聴可能。観たことがない人も、まだ間に合います! あわせて、ドラマ制作応援サポーターもMakuakeで募集中。オリジナルの手ぬぐいや箱馬、ロゴ入りシェラカップなど、ファンにはたまらないリターンが満載です。 詳細はこちら: 「おやじキャンプ飯」公式YouTubeチャンネル 「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」Makuake制作応援プロジェクト

2022年1月31日(月)まで、渋谷モディでポップアップストアを展開中!

ポップアップストアの様子
現在「おやじキャンプ飯シーズン2〜和歌山編〜」の公開を記念し、渋谷モディ7階のイベントスペース「2B CONTINUED」でポップアップショップを展開中。人気アウトドアセレクトショップ「Orange」とコラボして、明夫が営んでいた中華料理店「旬華秋冬」のロゴグッズやNANGA別注の焚き火ダウンジャケットを販売しています。 ステージ上には、撮影で実際に使われた焚き火台や中華鍋も展示。2022年1月31日(月)までの期間限定なので、気になる方はぜひ立ち寄ってみてください。 【基本情報】 会場:渋谷モディ7階イベントスペース「2B CONTINUED」 住所:東京都渋谷区神南1-21-3 営業時間:11:00〜20:30 「旬華秋冬」ロゴ入りグッズは、オンラインショップでも購入可能。遠方に澄んでいる人も、限定グッズを手に入れるチャンスです!2022年1月30日(日)まで受注受付中。詳細は下のURLをチェック! 購入はこちら:2BE CONTINUEDオンラインショップ

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